クリスマス 三ツ谷
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今日は待ちに待ったクリスマス。一週間前から、彼氏のタカちゃんと何をするかを話し合った。外にお出かけをしてイルミネーションを見るのも良いよねとか散々話し合ったけれど、最終的にはお家で過ごす事になった。
タカちゃんはそんな遅くならなければ大丈夫と言ってくれたが、まだ幼い妹のルナちゃんとマナちゃんをおうちにお留守番させるのは可哀想だったので、お家なら気兼ねなくゆっくり出来るだろうと思い、タカちゃんのお家で一緒にクリスマスケーキを作る事にした。
現在、二人でキッチンに立っているワケだが、全くもってケーキ作りなんてした事のない私は何から手を付けて良いのかすら分からず、目の前にずらりと並んだ材料や製菓器具を呆然と眺めているだけだ。
作った事はないけれど、少しでも褒めて貰いたい想いは人一倍あるので、気合いだけは充分だ。
「今日は、何を作るの?」
作るものはオレが決めて材料を揃えておくと言っていたので、全てタカちゃんに任せてある。ココアパウダーやミルクチョコレート、生クリームなどが置いてあるので、きっとチョコ系なのは作った事のない私にでも予想は出来る。ガトーショコラでも作るのだと予想を立てて、タカちゃんに聞くと、予想とは全く違う名前が返って来た。
「ブッシュ・ド・ノエルを作ろうと思ってさ」
「ん?ブッシュ…?」
脳内に浮かぶのは、元アメリカ大統領の顔。浮かんでは、打ち消し、浮かんでは、打ち消しを繰り返していると、私のおかしな様子に気が付いたタカちゃんは怪訝そうな顔で私を見た。
「まさか、知らねーの?」
「えーと、元アメリカの…「大統領じゃねーよ?」」
「ですよねぇ」
察しのいいタカちゃんはすぐに私の言いたい事を理解し、食い気味に突っ込みを入れた。分からないと首を振る私に、彼は「マジかよ」と驚きながらも愉快そうに喉を鳴らして笑った。
「そんなに笑わなくても良いじゃん」
「悪い悪い。まぁ、そんな難しくねぇし、分からない所はオレが教えるから作ってみようぜ」
タカちゃんの難しくないを鵜呑みにして、難しくないなら良かっただなんて甘く考えてしまった。タカちゃんの「よし、作るか」の声を合図にケーキ作りをスタートさせた。
しかし、いざ始めて、レシピを読んで見るが、ちんぷんかんぷんで頭が爆発しそうだ。ケーキなのに湯煎にかける意味がまず分からないし、人肌ってどのくらいかが分からない。
その次を読んでもハンドミキサーで高速で混ぜるのは理解できるのだが、生地でリボンを描くの意味が分からない。
タカちゃんの方を見ると手際良く、薄力粉などをデジタルスケールの上に乗せて必要な量を計っていた。彼に助けを求めるようにジッと見つめていると、計る手を止めて「分からない所あった?」と聞いてくれたので、正直に全部と答えると、目を見開き「は?全部!?」と驚きの声を上げた。
「全ての女が料理出来ると思うなよ」
「別に思ってねーけど…」
苦し紛れにそんな口を聞いてみだが、余計な事を言ってしまったような気がして恥ずかしくなってしまった。
「レシピのどこが分からないの?」
「混ぜ方のサックリ混ぜるとかよく分からない。混ぜ方なんて全部一緒じゃないの?」
「サックリ混ぜなきゃいけない理由としては、グルテンが出過ぎないようにする為なんだけど…」
ここから暫く、タカちゃんのお菓子作り講座が始まってしまった。途中から何言ってるのか全く分からず、脳はショート寸前だ。その様子を察したタカちゃんは話すのをやめて、一人で納得したように頷いた。
「やっぱ、細かい事は気にしなくていいわ。手取り足取り、オレが教えた方が分かり易いよな」
「なんかすみません…」
諦められたような気がして、ちょっとだけ悲しくなったが、タカちゃんは優しく笑いながら、頭の上で数回右の手を弾ませた。優しく触れる手が心地良くて、私も彼と同じように笑った。
分担して作る事はやめて、タカちゃんが付きっ切りで教えながら作る事になったのはいいが、問題が一つ発生した。
それは、彼の距離が異常に近い事。真後ろに立って、私の肩越しから顔を覗かせ教えてくれたり、手を握って「そこはこう」と一緒に動かしてくれる。全く分からない私には有難い事なのだが、触れる手の体温や微かに耳にかかる吐息が気になってしまって、ケーキ作りに集中なんて出来ない。
「名前?聞いてる?」
「聞いてるような、聞いてないような…」
「なんだそれ」
苦笑いで私を見てくるタカちゃんに申し訳なく思う。私の為にちゃんと説明してくれているのに、聞いていないなんてそんな顔にもなると思う反面、彼のせいでもある。ボソッと「タカちゃんのせいだよ」と呟けば、不思議そうな顔をして「オレ?」と自分を指差して首を傾げていた。
「顔とか近すぎて、集中出来ないんだもん」
「え?もっと近い時あんじゃん」
「それとこれは別の話だよ」
「その違いがよくわかんねぇわ」
困ったような表情を浮かべるタカちゃんは、少し黙った後、「あぁ」と何かを思い付いたような声を上げて、グッと私の顔を覗き込むように近付いて来た。いきなりの至近距離に胸が高鳴り、頬に熱が集中するのが分かる。
「え、なに…」
何をするつもり?と言いたかった言葉は、更に距離を詰めた彼によって続きを言う事は出来なかった。重なる唇が緊張で震えてしまっているような気がした。ゆっくりと顔が離れ、タカちゃんと目が合うと口角を右だけキュッと上げた。
「この距離に慣れればいいんじゃん?」
「そういう問題じゃないと思うんだけど…!」
「もう一回、しとく?」
もう一度、顔を近付けて来たので緊張で体を仰け反らせて彼から距離を取るが、右手で頭を抑えられてしまい、距離を取る事は出来なかった。
「逃げんなって」
鼻先が触れる距離でそんな事を言われてしまっては、彼を受け入れる以外の術はなかった。
タカちゃんはそんな遅くならなければ大丈夫と言ってくれたが、まだ幼い妹のルナちゃんとマナちゃんをおうちにお留守番させるのは可哀想だったので、お家なら気兼ねなくゆっくり出来るだろうと思い、タカちゃんのお家で一緒にクリスマスケーキを作る事にした。
現在、二人でキッチンに立っているワケだが、全くもってケーキ作りなんてした事のない私は何から手を付けて良いのかすら分からず、目の前にずらりと並んだ材料や製菓器具を呆然と眺めているだけだ。
作った事はないけれど、少しでも褒めて貰いたい想いは人一倍あるので、気合いだけは充分だ。
「今日は、何を作るの?」
作るものはオレが決めて材料を揃えておくと言っていたので、全てタカちゃんに任せてある。ココアパウダーやミルクチョコレート、生クリームなどが置いてあるので、きっとチョコ系なのは作った事のない私にでも予想は出来る。ガトーショコラでも作るのだと予想を立てて、タカちゃんに聞くと、予想とは全く違う名前が返って来た。
「ブッシュ・ド・ノエルを作ろうと思ってさ」
「ん?ブッシュ…?」
脳内に浮かぶのは、元アメリカ大統領の顔。浮かんでは、打ち消し、浮かんでは、打ち消しを繰り返していると、私のおかしな様子に気が付いたタカちゃんは怪訝そうな顔で私を見た。
「まさか、知らねーの?」
「えーと、元アメリカの…「大統領じゃねーよ?」」
「ですよねぇ」
察しのいいタカちゃんはすぐに私の言いたい事を理解し、食い気味に突っ込みを入れた。分からないと首を振る私に、彼は「マジかよ」と驚きながらも愉快そうに喉を鳴らして笑った。
「そんなに笑わなくても良いじゃん」
「悪い悪い。まぁ、そんな難しくねぇし、分からない所はオレが教えるから作ってみようぜ」
タカちゃんの難しくないを鵜呑みにして、難しくないなら良かっただなんて甘く考えてしまった。タカちゃんの「よし、作るか」の声を合図にケーキ作りをスタートさせた。
しかし、いざ始めて、レシピを読んで見るが、ちんぷんかんぷんで頭が爆発しそうだ。ケーキなのに湯煎にかける意味がまず分からないし、人肌ってどのくらいかが分からない。
その次を読んでもハンドミキサーで高速で混ぜるのは理解できるのだが、生地でリボンを描くの意味が分からない。
タカちゃんの方を見ると手際良く、薄力粉などをデジタルスケールの上に乗せて必要な量を計っていた。彼に助けを求めるようにジッと見つめていると、計る手を止めて「分からない所あった?」と聞いてくれたので、正直に全部と答えると、目を見開き「は?全部!?」と驚きの声を上げた。
「全ての女が料理出来ると思うなよ」
「別に思ってねーけど…」
苦し紛れにそんな口を聞いてみだが、余計な事を言ってしまったような気がして恥ずかしくなってしまった。
「レシピのどこが分からないの?」
「混ぜ方のサックリ混ぜるとかよく分からない。混ぜ方なんて全部一緒じゃないの?」
「サックリ混ぜなきゃいけない理由としては、グルテンが出過ぎないようにする為なんだけど…」
ここから暫く、タカちゃんのお菓子作り講座が始まってしまった。途中から何言ってるのか全く分からず、脳はショート寸前だ。その様子を察したタカちゃんは話すのをやめて、一人で納得したように頷いた。
「やっぱ、細かい事は気にしなくていいわ。手取り足取り、オレが教えた方が分かり易いよな」
「なんかすみません…」
諦められたような気がして、ちょっとだけ悲しくなったが、タカちゃんは優しく笑いながら、頭の上で数回右の手を弾ませた。優しく触れる手が心地良くて、私も彼と同じように笑った。
分担して作る事はやめて、タカちゃんが付きっ切りで教えながら作る事になったのはいいが、問題が一つ発生した。
それは、彼の距離が異常に近い事。真後ろに立って、私の肩越しから顔を覗かせ教えてくれたり、手を握って「そこはこう」と一緒に動かしてくれる。全く分からない私には有難い事なのだが、触れる手の体温や微かに耳にかかる吐息が気になってしまって、ケーキ作りに集中なんて出来ない。
「名前?聞いてる?」
「聞いてるような、聞いてないような…」
「なんだそれ」
苦笑いで私を見てくるタカちゃんに申し訳なく思う。私の為にちゃんと説明してくれているのに、聞いていないなんてそんな顔にもなると思う反面、彼のせいでもある。ボソッと「タカちゃんのせいだよ」と呟けば、不思議そうな顔をして「オレ?」と自分を指差して首を傾げていた。
「顔とか近すぎて、集中出来ないんだもん」
「え?もっと近い時あんじゃん」
「それとこれは別の話だよ」
「その違いがよくわかんねぇわ」
困ったような表情を浮かべるタカちゃんは、少し黙った後、「あぁ」と何かを思い付いたような声を上げて、グッと私の顔を覗き込むように近付いて来た。いきなりの至近距離に胸が高鳴り、頬に熱が集中するのが分かる。
「え、なに…」
何をするつもり?と言いたかった言葉は、更に距離を詰めた彼によって続きを言う事は出来なかった。重なる唇が緊張で震えてしまっているような気がした。ゆっくりと顔が離れ、タカちゃんと目が合うと口角を右だけキュッと上げた。
「この距離に慣れればいいんじゃん?」
「そういう問題じゃないと思うんだけど…!」
「もう一回、しとく?」
もう一度、顔を近付けて来たので緊張で体を仰け反らせて彼から距離を取るが、右手で頭を抑えられてしまい、距離を取る事は出来なかった。
「逃げんなって」
鼻先が触れる距離でそんな事を言われてしまっては、彼を受け入れる以外の術はなかった。