確信犯
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今日は部活がない為、放課後は暇だ。ボーっとしながら窓の外を眺めて、元気な掛け声を上げながら活発に動き回る、野球部やサッカー部が練習しているグラウンドを見つめる。
真夏の灼熱の太陽の元、練習に励む彼らはキラキラと輝いているように見える。
室内でさえ、暑くて嫌になるくらいなのに凄いなと感心しながら、お気に入りの曲をウォークマンでシャッフルで聞いている。今流れている曲は今流行りのORANGE RANGEだ。ロコローションやら上海ハニーやら、夏っぽい曲を聞きながら、夏を感じている。
何でORANGE RANGEが好きなのかっていうと、理由は諸々ある。流行って言うのもあるけれど、1番の理由は、まぁ、うん。あれだ。
そんな事を思っていると、教室のドアがガラッと音を立てて開いた。ドアの方を見れば、教室に入って来た人物と目が合うと、彼はニッと眩しい笑顔を見せた。
「なんで残ってんの?今日、部活ないだろ?」
そう声を掛けてくれたのは、同じ手芸部で部長の三ツ谷だった。私の返事を聞く前に三ツ谷は私の元へ歩いて来て、私の座っている席の前の椅子を引いて座った。
突然の近距離に心臓がドキッと鳴った。
「いや、特に理由はないんだけど…」
「ふーん。それにしても、暑いな」
「うん、夏だしね」
「夏休みももう少しで始まるな」
話し掛けてくれたので、イヤホンの片方を外して三ツ谷と会話を始める。会話を上手く広げられない私の返しに詰まる事無く、次の会話を投げてくれる事に心の中で感謝をした。
三ツ谷は分け隔てなく、男女問わず色んな人と会話をするのが上手い。それが羨ましくもあり、好きだとも思う。
そう、私は1年の頃から三ツ谷に片思いをしている。初めは不良で怖いと思ったが、部活はなんとイメージと真逆の手芸部だし、面倒見は良いし、そしてなによりも優しい。
逆に欠点ってどこ?と聞きたくなるくらいに完璧だ。
「ところで、何聞いてんの?」
「えっと、ORANGE RANGEの…」
説明しようとしたが、三ツ谷は何食わぬ顔で「貸して」と言って、外した片方のイヤホンを自分の耳にはめて聞き始めた。そして、「あ、この曲、オレ好きなんだよね」と言って、口ずさみ始める。
今、流れているのは花だ。サビを口ずさむ彼の歌声は心地良い。
好きなんだよねって言われなくても知ってます!と大きな声で言いたくなるのをグッと堪える。私がこの曲を好きな理由の一つが、前に三ツ谷が口ずさんでいるのを聞いた事があるからだ。それ以来、私も好きになってしまったという単純明快な理由だ。
伏し目がちで口ずさみ続ける三ツ谷の顔を見ていると、彼がフと視線を上げた事によりパチッと視線が交差する。
「なに、どうしたの?」
目が合ってしまった事に焦って視線をさ迷わせていると、三ツ谷は顔を上げて挙動不審な私の顔を覗き込んで来る。その顔との距離は数センチしかない。近すぎる。どうしたの?じゃないんですけど!と言いたくなるが、言えずに口をモゴモゴとさせていると、三ツ谷はこてんと首を傾げた。
「いや、あの…顔、近くないデスカ…?」
緊張しすぎて、最後の方は片言になってしまう。その顔の距離もそうだけど、シレッとイヤホン半分ことか、色々とパーソナルスペースが近すぎる。
表情には出さないように表情は凪いだ海のような静けさを心がけているが、心の中は密接距離!!と訳分からない事を叫びながら大荒れしている。
「そうか?」
「三ツ谷って天然タラシだったりする?」
「は?」
「いや、だってこの距離とかイヤホンとかさ」
「オレ、こういう事は好きな子にしかやらねぇけど」
「へー、そうなんだ…って、えっ!?」
まさかの発言に目を大きく見開いて、思わず大声をあげてしまった。
そんな私の反応を見て、三ツ谷は右の口角だけを上げて、したり顔で笑った。
その表情を見て、私の中で浮かんだ1つの答え。
三ツ谷は天然タラシなんかでは無い。
「確信犯!?」
「さぁ、どうだろうな」
そう笑いながら私の顔を覗き込む三ツ谷は、完全に揶揄う様な表情を浮かべている。
そして、「で?」と聞いて来た彼の表情はさっきとは打って変わり、真剣な瞳で私を真っ直ぐに見ていた。
「で?…とは?」
「苗字は好きじゃねぇヤツとこの距離になんの?」
これは、告白を強要されているのだろうか。
こんな距離になる訳ないじゃないですか!と叫びたいけれど、それすら恥ずかしい。でも、三ツ谷は私が好きだから、この距離になっている事を知った。だったら、私も同じだと一言伝えればいい。
固唾を飲んで口を開こうとすると、突然三ツ谷はブブッと吹き出して、ゲラゲラと腹を抱えて笑いだした。
「えっ、何?私、何かした!?」
「いや、ごめん。だって、今流れてる曲…!」
緊張で全く気にしていなかった曲を意識してみると、鼓膜を通じて流れて来た曲はまさかのマツケンサンバIIだった。
恥ずかしさのあまり、急いでウォークマンから流れるマツケンサンバを止めたが、三ツ谷はゲラゲラと笑い続ける。シャッフル再生をしていた自分を恨む事しか出来ず、項垂れてしまう。
「選曲、渋すぎねぇ?」
「ヒット曲にランキング入りしてましてですね…」
言い訳もしてみるが、彼は未だに笑う。そして、一通り笑い終わった後、「はー、笑った」と目尻に溜まった涙を親指で拭ってから、椅子から立ち上がった。
そして、私の方に手を差し出して来た。
謎に差し出された手と三ツ谷の顔を交互に見つめていると、「帰ろうぜ」と笑った。
その顔は真夏の太陽のように輝かしくて、爽やかだった。
差し出された手に自分の手を重ねると、優しく包み込んで上に引っ張って立たせてくれた。
「さっきの続きは帰りながら、な?」
その言葉に顔を真っ赤にしながらも、小さく頷いたのだった。
真夏の灼熱の太陽の元、練習に励む彼らはキラキラと輝いているように見える。
室内でさえ、暑くて嫌になるくらいなのに凄いなと感心しながら、お気に入りの曲をウォークマンでシャッフルで聞いている。今流れている曲は今流行りのORANGE RANGEだ。ロコローションやら上海ハニーやら、夏っぽい曲を聞きながら、夏を感じている。
何でORANGE RANGEが好きなのかっていうと、理由は諸々ある。流行って言うのもあるけれど、1番の理由は、まぁ、うん。あれだ。
そんな事を思っていると、教室のドアがガラッと音を立てて開いた。ドアの方を見れば、教室に入って来た人物と目が合うと、彼はニッと眩しい笑顔を見せた。
「なんで残ってんの?今日、部活ないだろ?」
そう声を掛けてくれたのは、同じ手芸部で部長の三ツ谷だった。私の返事を聞く前に三ツ谷は私の元へ歩いて来て、私の座っている席の前の椅子を引いて座った。
突然の近距離に心臓がドキッと鳴った。
「いや、特に理由はないんだけど…」
「ふーん。それにしても、暑いな」
「うん、夏だしね」
「夏休みももう少しで始まるな」
話し掛けてくれたので、イヤホンの片方を外して三ツ谷と会話を始める。会話を上手く広げられない私の返しに詰まる事無く、次の会話を投げてくれる事に心の中で感謝をした。
三ツ谷は分け隔てなく、男女問わず色んな人と会話をするのが上手い。それが羨ましくもあり、好きだとも思う。
そう、私は1年の頃から三ツ谷に片思いをしている。初めは不良で怖いと思ったが、部活はなんとイメージと真逆の手芸部だし、面倒見は良いし、そしてなによりも優しい。
逆に欠点ってどこ?と聞きたくなるくらいに完璧だ。
「ところで、何聞いてんの?」
「えっと、ORANGE RANGEの…」
説明しようとしたが、三ツ谷は何食わぬ顔で「貸して」と言って、外した片方のイヤホンを自分の耳にはめて聞き始めた。そして、「あ、この曲、オレ好きなんだよね」と言って、口ずさみ始める。
今、流れているのは花だ。サビを口ずさむ彼の歌声は心地良い。
好きなんだよねって言われなくても知ってます!と大きな声で言いたくなるのをグッと堪える。私がこの曲を好きな理由の一つが、前に三ツ谷が口ずさんでいるのを聞いた事があるからだ。それ以来、私も好きになってしまったという単純明快な理由だ。
伏し目がちで口ずさみ続ける三ツ谷の顔を見ていると、彼がフと視線を上げた事によりパチッと視線が交差する。
「なに、どうしたの?」
目が合ってしまった事に焦って視線をさ迷わせていると、三ツ谷は顔を上げて挙動不審な私の顔を覗き込んで来る。その顔との距離は数センチしかない。近すぎる。どうしたの?じゃないんですけど!と言いたくなるが、言えずに口をモゴモゴとさせていると、三ツ谷はこてんと首を傾げた。
「いや、あの…顔、近くないデスカ…?」
緊張しすぎて、最後の方は片言になってしまう。その顔の距離もそうだけど、シレッとイヤホン半分ことか、色々とパーソナルスペースが近すぎる。
表情には出さないように表情は凪いだ海のような静けさを心がけているが、心の中は密接距離!!と訳分からない事を叫びながら大荒れしている。
「そうか?」
「三ツ谷って天然タラシだったりする?」
「は?」
「いや、だってこの距離とかイヤホンとかさ」
「オレ、こういう事は好きな子にしかやらねぇけど」
「へー、そうなんだ…って、えっ!?」
まさかの発言に目を大きく見開いて、思わず大声をあげてしまった。
そんな私の反応を見て、三ツ谷は右の口角だけを上げて、したり顔で笑った。
その表情を見て、私の中で浮かんだ1つの答え。
三ツ谷は天然タラシなんかでは無い。
「確信犯!?」
「さぁ、どうだろうな」
そう笑いながら私の顔を覗き込む三ツ谷は、完全に揶揄う様な表情を浮かべている。
そして、「で?」と聞いて来た彼の表情はさっきとは打って変わり、真剣な瞳で私を真っ直ぐに見ていた。
「で?…とは?」
「苗字は好きじゃねぇヤツとこの距離になんの?」
これは、告白を強要されているのだろうか。
こんな距離になる訳ないじゃないですか!と叫びたいけれど、それすら恥ずかしい。でも、三ツ谷は私が好きだから、この距離になっている事を知った。だったら、私も同じだと一言伝えればいい。
固唾を飲んで口を開こうとすると、突然三ツ谷はブブッと吹き出して、ゲラゲラと腹を抱えて笑いだした。
「えっ、何?私、何かした!?」
「いや、ごめん。だって、今流れてる曲…!」
緊張で全く気にしていなかった曲を意識してみると、鼓膜を通じて流れて来た曲はまさかのマツケンサンバIIだった。
恥ずかしさのあまり、急いでウォークマンから流れるマツケンサンバを止めたが、三ツ谷はゲラゲラと笑い続ける。シャッフル再生をしていた自分を恨む事しか出来ず、項垂れてしまう。
「選曲、渋すぎねぇ?」
「ヒット曲にランキング入りしてましてですね…」
言い訳もしてみるが、彼は未だに笑う。そして、一通り笑い終わった後、「はー、笑った」と目尻に溜まった涙を親指で拭ってから、椅子から立ち上がった。
そして、私の方に手を差し出して来た。
謎に差し出された手と三ツ谷の顔を交互に見つめていると、「帰ろうぜ」と笑った。
その顔は真夏の太陽のように輝かしくて、爽やかだった。
差し出された手に自分の手を重ねると、優しく包み込んで上に引っ張って立たせてくれた。
「さっきの続きは帰りながら、な?」
その言葉に顔を真っ赤にしながらも、小さく頷いたのだった。
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