好きの言葉よりも
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今日は、東京卍會の集会所にお邪魔している。今までの黒龍では、集会に関係ない人間、ましてや女の私が顔を出すなんて有り得ない事だったのに、イヌピーとココから東京卍會の集会に顔を出したらどうだと誘われた事には心底驚いた。関係ない人物が行っても良いのかと戸惑ったが、11代目総長の花垣武道を紹介したいと言われては断る理由は無くなり、お邪魔する事にした。
私達が中学3年の時に10代目黒龍が柴大寿へと受け継がれたが、高校2年の冬に東京卍會に敗れ柴大寿は引退。後に11代目黒龍は東京卍會の傘下へと降り、東京卍會の壱番隊隊長、花垣武道へと受け継がれた。イヌピーが次に命を預けた人物は私が見て来た中で1番優しそうで、言い方は悪いかもしれないが、喧嘩は強そうには見えなかった。私の知る限りの歴代総長達、黒川イザナ、斑目獅音、柴大寿とは違って、威厳はないように見えてしまう。だけど、イヌピー曰く、ずっと憧れ続けていた人物の初代総長、佐野真一郎の面影を彼に見たらしい。
集会所で見た黒龍は今までとは違って殺伐とした空気は一切なくなっていた。イヌピーもあの頃には見られなかった柔らかい表情を見せるようになり、高校2年生らしい雰囲気を出すようになった。イヌピー自身はそれを自覚しているのかは分からないが私とココはそれを嬉しく思っていた。
「黒龍、変わったね」
「あぁ。花垣が総長になってから、大分な」
「私、花垣君の事、結構好きかも」
「へー。やっとイヌピーから乗り換えたのか」
「違うよ、そういう意味じゃないから」
「あーあ、イヌピー可哀想に」
「人の話聞いてる?」
私が呆れながら言うと、ココは楽しそうに歯を見せながら笑っていた。ココのこんなに生き生きとした表情を見るのは久しぶりな気もして、少しだけ嬉しくなる。少し離れた所で花垣君と話すイヌピーも薄ら笑みを浮かべていた。2人がこうなるまで何年かかっただろうか。きっと、花垣君が居なければこうはならなかったのかもしれない。そう思うと、彼を好きになるのは当然の事だ。好きと言うのは、人としてという意味なのだが、ココは違う風に受け取ったらしい。いや、きっと、からかう為にワザとそう言っているだけのような気もするが、イヌピーへの感情を嘘でも間違った風に受け取られるのは嫌だ。
「で?どっちにすんの?」
「分かってる癖に」
「分かんねぇなぁ」
ニンマリと笑うココにため息をつきたくなってしまう。子供じゃないんだから、そんな楽しそうな顔でからかうのやめてよね。と心の中で毒づきながら、ココの目をシッカリ見てから口を開く。
「私が好きなのは、ずっと昔からイヌピーただ1人。知ってるでしょ?」
「ふーん。だってさ、イヌピー」
「…は?」
理解不能なココの発言に一瞬呆気に取られるが、まさかと思って恐る恐る振り返ると、後ろにはいつの間にか若干頬を赤く染めた花垣君と驚いたように目を見開いているイヌピーが立っていた。バッとココの方を見ると、相変わらずニヤニヤとしていて1発ぶん殴りたくなった。
しかし、殴るよりも一刻も早くここから立ち去りたかった。イヌピーの前から消え去りたいと思い「さよなら!」と叫んで走って逃げた。少しでも遠くへ行くべく、全力で走って走って走りまくった。
暫く走って、もう良いだろうと足を止めて振り返ると遠くから徐々に近付いて来る人影より大きな影と走っている時は全く気が付かなかった大きな音。まさかと思えば、嫌な予感は的中した。その影は私の横でピタッと止まり、イヌピーは「何で逃げた」と一言だけ発して私をジッと見ていた。イヌピーは走って追いかけて来るどころか、愛機のナナハンキラーで追いかけて来やがった。全力で走った意味は全くもってなくなってしまった。逃げるのは諦め「ごめん」とだけ呟けば、イヌピーは「乗れ」と言って、視線だけをバイクの後ろに移した。
「乗っていいの?」
「じゃなきゃ、言わない」
「そっか」
バイクに跨り、緊張もあって遠慮がちに腰辺りの特服を掴むと、腕を掴まれてグイッと前に引っ張られた。その勢いでイヌピーの背中に顔面から突っ込んでしまった。
「痛っ!」
「何してんだ?」
「いきなり引っ張るから…!」
「ちゃんと掴まんねぇと落ちるぞ」
「すみません…」
腰に回した腕に力を込めるとバイクはゆっくりと走り出した。自分の心臓の音が聞こえてしまいそうな気がして余計にドキドキしてしまう。無意識に呼吸も止めてしまい、苦しくなる。
集会所とは反対に走り出したので戻る訳でも無さそうで、どこに向かっているかは分からないが、早く着いて欲しいと願うばかりだ。心臓と呼吸が持たない。だって、こんな抱き着いているような体勢、恥ずかしすぎる。まぁ、イヌピーは何とも思ってないんだろうけど。むしろ、さっきの好きなんて言葉すら何とも思ってないのかもしれないとすら思えて来る。だから、こんな平然とした態度で居られるんだ。それしかないと思うとため息が零れてしまう。昔から意識してたのは私だけなのは知っているけど、ここまで無関心なのは悲しくなって来る。
「少しくらい意識してよね」
彼に聞こえないくらいの小さな声でそう呟いた。
暫く走り続けてバイクが止まったのは、図書館だった。そう言えば、イヌピーが出所してから来てなかったから酷く懐かしく感じた。バイクから降りて、2人でいつものベンチへとやって来て、イヌピーが先にベンチに座った。私もその隣へ腰を降ろす。2年前までは1人でずっと座っていたから、隣にイヌピーが居る事が嬉しいようなむず痒いようなで変な気持ちになった。
私達に特に会話はなく、無言の状態が続いている。昔から、イヌピーはベラベラと喋るタイプじゃなかったので、私が話さなければ無言になるのは当たり前なのだが、何を話そうか迷ってしまう。今ここで告ってしまう?いや、でもフラれる心の準備はまだ出来ていない。1人でモヤモヤと考えていると、イヌピーに名前を呼ばれ、フと顔を上げるとすぐ目の前に彼の顔があった。いきなりの至近距離に固まっていると、そのままイヌピーは距離を0センチまで詰めた。
「…え?何?は?え?」
突然の出来事に頭の中はパニックで理解が追い付かない。どういう状況だったのかを1度頭の中でリプレイすると、一気に顔に熱が集中した。
彼の行動が予測不可能過ぎて大混乱に陥る。
えっと、今のは何?キスされたんだよね、イヌピーに。何故?え、彼にとっては挨拶的な?いやいや、そんなスキンシップ多い人間じゃない。じゃあ、あれか?つい魔が差して的な。いや、イヌピーはそんなチャラ付いた男じゃないと思う。脳内で自問自答を繰り返していると、イヌピーは顔を顰め始めた。
「今更、言葉にするより行動に移した方が効き目ある」
「…はい?」
「ってココが言ってた」
イヌピーになに吹き込んでんだ、あの野郎。先程のニヤニヤしているココの顔が脳裏に浮かんで軽くイラッとする。私とイヌピーはココの掌の上でコロコロと転がされているようで、何だか悔しくなる。しかし、冷静に考えてみるとイヌピーはなかなかの爆弾を投下したような気もして来た。
「えっと、今更言葉にするよりも…?」
「名前がさっき好きって言った」
「言いました、けど…」
「別に意識してない訳じゃない」
「それも聞こえてたの…?」
「あれだけ近ければ聞こえるだろ」
「えっと、つまり、イヌピーは私の事…?」
そう聞くと、イヌピーはコクリと頷いて「だから、行動に移した」と言った。思いがけない状況で両思いと分かり、呆気に取られる。ほら、愛の告白があって、お互い好きと言い合ってお付き合いしましょうみたいな展開を普通想像するじゃない。それをすっ飛ばしたもん、この人。でも、それもなんだか彼らしくて、笑いが込み上げて来る。クスクスと笑っているとイヌピーは何で笑われているのかが分からないようで、首を傾げていた。そんな彼も愛おしく思えて、私も言葉より行動に移す事にした。
「青宗」
名前を呼んでから、顔を近付けてソッと唇を重ねた。顔を離すと、ポカンとした顔の彼と目が合う。すると、眉をひそめてからプイっとそっぽを向いてしまった。よく見ると、耳が赤くなっているのが見え、照れている事を知る。
ココの言う通り、好きの言葉なんかよりもずっとずっと魅力的だ。
私達が中学3年の時に10代目黒龍が柴大寿へと受け継がれたが、高校2年の冬に東京卍會に敗れ柴大寿は引退。後に11代目黒龍は東京卍會の傘下へと降り、東京卍會の壱番隊隊長、花垣武道へと受け継がれた。イヌピーが次に命を預けた人物は私が見て来た中で1番優しそうで、言い方は悪いかもしれないが、喧嘩は強そうには見えなかった。私の知る限りの歴代総長達、黒川イザナ、斑目獅音、柴大寿とは違って、威厳はないように見えてしまう。だけど、イヌピー曰く、ずっと憧れ続けていた人物の初代総長、佐野真一郎の面影を彼に見たらしい。
集会所で見た黒龍は今までとは違って殺伐とした空気は一切なくなっていた。イヌピーもあの頃には見られなかった柔らかい表情を見せるようになり、高校2年生らしい雰囲気を出すようになった。イヌピー自身はそれを自覚しているのかは分からないが私とココはそれを嬉しく思っていた。
「黒龍、変わったね」
「あぁ。花垣が総長になってから、大分な」
「私、花垣君の事、結構好きかも」
「へー。やっとイヌピーから乗り換えたのか」
「違うよ、そういう意味じゃないから」
「あーあ、イヌピー可哀想に」
「人の話聞いてる?」
私が呆れながら言うと、ココは楽しそうに歯を見せながら笑っていた。ココのこんなに生き生きとした表情を見るのは久しぶりな気もして、少しだけ嬉しくなる。少し離れた所で花垣君と話すイヌピーも薄ら笑みを浮かべていた。2人がこうなるまで何年かかっただろうか。きっと、花垣君が居なければこうはならなかったのかもしれない。そう思うと、彼を好きになるのは当然の事だ。好きと言うのは、人としてという意味なのだが、ココは違う風に受け取ったらしい。いや、きっと、からかう為にワザとそう言っているだけのような気もするが、イヌピーへの感情を嘘でも間違った風に受け取られるのは嫌だ。
「で?どっちにすんの?」
「分かってる癖に」
「分かんねぇなぁ」
ニンマリと笑うココにため息をつきたくなってしまう。子供じゃないんだから、そんな楽しそうな顔でからかうのやめてよね。と心の中で毒づきながら、ココの目をシッカリ見てから口を開く。
「私が好きなのは、ずっと昔からイヌピーただ1人。知ってるでしょ?」
「ふーん。だってさ、イヌピー」
「…は?」
理解不能なココの発言に一瞬呆気に取られるが、まさかと思って恐る恐る振り返ると、後ろにはいつの間にか若干頬を赤く染めた花垣君と驚いたように目を見開いているイヌピーが立っていた。バッとココの方を見ると、相変わらずニヤニヤとしていて1発ぶん殴りたくなった。
しかし、殴るよりも一刻も早くここから立ち去りたかった。イヌピーの前から消え去りたいと思い「さよなら!」と叫んで走って逃げた。少しでも遠くへ行くべく、全力で走って走って走りまくった。
暫く走って、もう良いだろうと足を止めて振り返ると遠くから徐々に近付いて来る人影より大きな影と走っている時は全く気が付かなかった大きな音。まさかと思えば、嫌な予感は的中した。その影は私の横でピタッと止まり、イヌピーは「何で逃げた」と一言だけ発して私をジッと見ていた。イヌピーは走って追いかけて来るどころか、愛機のナナハンキラーで追いかけて来やがった。全力で走った意味は全くもってなくなってしまった。逃げるのは諦め「ごめん」とだけ呟けば、イヌピーは「乗れ」と言って、視線だけをバイクの後ろに移した。
「乗っていいの?」
「じゃなきゃ、言わない」
「そっか」
バイクに跨り、緊張もあって遠慮がちに腰辺りの特服を掴むと、腕を掴まれてグイッと前に引っ張られた。その勢いでイヌピーの背中に顔面から突っ込んでしまった。
「痛っ!」
「何してんだ?」
「いきなり引っ張るから…!」
「ちゃんと掴まんねぇと落ちるぞ」
「すみません…」
腰に回した腕に力を込めるとバイクはゆっくりと走り出した。自分の心臓の音が聞こえてしまいそうな気がして余計にドキドキしてしまう。無意識に呼吸も止めてしまい、苦しくなる。
集会所とは反対に走り出したので戻る訳でも無さそうで、どこに向かっているかは分からないが、早く着いて欲しいと願うばかりだ。心臓と呼吸が持たない。だって、こんな抱き着いているような体勢、恥ずかしすぎる。まぁ、イヌピーは何とも思ってないんだろうけど。むしろ、さっきの好きなんて言葉すら何とも思ってないのかもしれないとすら思えて来る。だから、こんな平然とした態度で居られるんだ。それしかないと思うとため息が零れてしまう。昔から意識してたのは私だけなのは知っているけど、ここまで無関心なのは悲しくなって来る。
「少しくらい意識してよね」
彼に聞こえないくらいの小さな声でそう呟いた。
暫く走り続けてバイクが止まったのは、図書館だった。そう言えば、イヌピーが出所してから来てなかったから酷く懐かしく感じた。バイクから降りて、2人でいつものベンチへとやって来て、イヌピーが先にベンチに座った。私もその隣へ腰を降ろす。2年前までは1人でずっと座っていたから、隣にイヌピーが居る事が嬉しいようなむず痒いようなで変な気持ちになった。
私達に特に会話はなく、無言の状態が続いている。昔から、イヌピーはベラベラと喋るタイプじゃなかったので、私が話さなければ無言になるのは当たり前なのだが、何を話そうか迷ってしまう。今ここで告ってしまう?いや、でもフラれる心の準備はまだ出来ていない。1人でモヤモヤと考えていると、イヌピーに名前を呼ばれ、フと顔を上げるとすぐ目の前に彼の顔があった。いきなりの至近距離に固まっていると、そのままイヌピーは距離を0センチまで詰めた。
「…え?何?は?え?」
突然の出来事に頭の中はパニックで理解が追い付かない。どういう状況だったのかを1度頭の中でリプレイすると、一気に顔に熱が集中した。
彼の行動が予測不可能過ぎて大混乱に陥る。
えっと、今のは何?キスされたんだよね、イヌピーに。何故?え、彼にとっては挨拶的な?いやいや、そんなスキンシップ多い人間じゃない。じゃあ、あれか?つい魔が差して的な。いや、イヌピーはそんなチャラ付いた男じゃないと思う。脳内で自問自答を繰り返していると、イヌピーは顔を顰め始めた。
「今更、言葉にするより行動に移した方が効き目ある」
「…はい?」
「ってココが言ってた」
イヌピーになに吹き込んでんだ、あの野郎。先程のニヤニヤしているココの顔が脳裏に浮かんで軽くイラッとする。私とイヌピーはココの掌の上でコロコロと転がされているようで、何だか悔しくなる。しかし、冷静に考えてみるとイヌピーはなかなかの爆弾を投下したような気もして来た。
「えっと、今更言葉にするよりも…?」
「名前がさっき好きって言った」
「言いました、けど…」
「別に意識してない訳じゃない」
「それも聞こえてたの…?」
「あれだけ近ければ聞こえるだろ」
「えっと、つまり、イヌピーは私の事…?」
そう聞くと、イヌピーはコクリと頷いて「だから、行動に移した」と言った。思いがけない状況で両思いと分かり、呆気に取られる。ほら、愛の告白があって、お互い好きと言い合ってお付き合いしましょうみたいな展開を普通想像するじゃない。それをすっ飛ばしたもん、この人。でも、それもなんだか彼らしくて、笑いが込み上げて来る。クスクスと笑っているとイヌピーは何で笑われているのかが分からないようで、首を傾げていた。そんな彼も愛おしく思えて、私も言葉より行動に移す事にした。
「青宗」
名前を呼んでから、顔を近付けてソッと唇を重ねた。顔を離すと、ポカンとした顔の彼と目が合う。すると、眉をひそめてからプイっとそっぽを向いてしまった。よく見ると、耳が赤くなっているのが見え、照れている事を知る。
ココの言う通り、好きの言葉なんかよりもずっとずっと魅力的だ。