ロマンスは突然
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「キミはどんな人?」
そんな風に聞けたら、良いなといつも思う。
その一言が言えない。ただ遠くで見ているだけ。
話しかける勇気もない。だけど、キミを知りたい。
そうやって、1人でモヤモヤとしながら、半年が経過した。同じクラスなのに、話せない。
斜め後ろに座る彼にたった一言の挨拶でも良いからしたいとは思うけれど、その姿を見るだけで、心臓が大暴れ。息なんてしている感覚なんてしない程に緊張してしまって、目を合わせる事すら難しくて、挨拶なんて到底無理。
本来ならね、涼しげな表情でサラッと「おはよう」と言いたのに、熱を帯びてしまう。話してもいないのに真っ赤になってしまう。本当に話したら多分、爆発する。でもね、今日は勇気を振り絞って声をかけてみようと思う。顔が真っ赤でも声が震えてたとしても。
だけど、今日は失敗に終わった。なんたって、彼は朝から学校に来なかったから。登校して来たら、挨拶をしようと、ドキドキドキドキ…ずっと、待っていたのに。気付いたら、1限の始まりを告げるチャイムが鳴っていた。ガックシと肩を落とす。私の気合いは無駄に終わってしまった。
こういう日に限って遅刻?それとも、サボり?いつもは、ちゃんと始業前に来てるじゃない。なんで、こういう日に…。と心の中で恨み言をつらつら並べてみる。ただの八つ当たりだ。もう、嫌になっちゃう。自分の運の無さを呪うしかないだろう。
1限目を終え、次の授業は移動教室なので休み時間のうちに移動をしようと廊下へと出る。
歩いている途中に、目の前から鞄を持って歩いてくる人物が目に入った。その顔には新しい傷と痣が幾つかあるのに気付いた。喧嘩してて、
遅刻したのだろうか。そんな事を考えているうちに歩みを止めてしまった。そんな私を見た彼とバッチリ目が合ってしまった。
「あっ…」
「ん?どうした?」
呆然と立ち尽くしながら声を漏らした私を見て、彼も立ち止まり、声を掛けてくれた。
だけど、それ以上声が出せない。心の中で練習した、おはようも突然過ぎて意味をなさない。
「… 苗字さん?具合悪いの?」
「い、いえっ!」
「何か、オレに用事でもあった?」
「あ、あの…」
「うん?」
「お、おはよう…ございます…」
最後の方はごにょごにょとしてしまい、聞き取れなかったと思う。でも、何故このタイミングでおはようとか言ってしまったのだろう。もっと、他に言う事あったじゃん?今日は珍しく遅刻なんだね?とか。そうしたら、もっと会話が広がったのに。と軽く後悔。
すると、少し驚いた表情をしていた彼は、フッと吹き出して笑いながら「おはよう」と返してくれた。
その笑顔に胸がギューッとして、苦しくなる。
「あの、三ツ谷くん…」
「なに?」
「やっぱり、何でもないです…!」
踵を返して、足早にその場を立ち去る。真っ赤に火照った顔が熱い。
やっぱり、おはようが限界でした。それ以上はとてもじゃないけど、話せない。胸が苦しくて、息も苦しくなってきてしまった。私は、元々コミニケーション能力がさほど高くない上に三ツ谷くんと話すとなれば、それ以上に無くなってしまう。三ツ谷くんのキレイな瞳が私を捉える度に、頭が真っ白になって何も考えられなくなってしまう。恋って厄介だ。
「待って」
そう声が聞こえたと思ったら、右腕を掴まれ、引き止められた。後ろを振り向けば、意外にも近くにある三ツ谷くんの顔。その距離に胸がドキッと跳ねた。それからは、物凄い勢いで心音が加速する。
「後で屋上来て」
「え…?なんで…」
「昼休み、待ってるから」
パッと手を離して、今度は三ツ谷くんが踵を返してその場を立ち去った。
掴まれた腕が熱い。それ以上に胸が熱い。胸がギューッと締め付けられ、独特の苦しい感覚がする。
「…なんで屋上…?」
そう呟けば、近くで見ていたクラスメイトはヒソヒソと「苗字の奴何したんだ?」「三ツ谷に呼び出されてたぜ?」「女が喧嘩売られるってやべぇよ」と話していた。
えっ…?私、喧嘩売られたの?屋上に来てって喧嘩の事!?え、呼び止めたの腹立ったの?と一瞬不安になるが、すぐに違うと思った。
たった半年だけど、ずっと三ツ谷くんを見てきたから分かる。そんな事する人じゃないという事は。
だって、いつも手芸部の子達には笑顔を向けてて、優しかった。たまに、林くんと林田くんには辛辣だったりするけど。それに、三ツ谷くんは、中学2年生の時、私が不良に絡まれてたのを助けてくれた。それが、恋に落ちるきっかけだったんだけど、怖くて震える私の頭を優しく撫でてくれた。彼は、オレも不良で怖いかもしれないけどって笑っていた。その笑顔にどれだけ安心した事か、本人は分かってないでしょう。
3年生に上がって、まさか同じクラスになれるとは思っていなくて凄く嬉しかったのを覚えている。
三ツ谷くんは、あの日、助けたのが私って気付いているのだろうか。あれから、一言も話してないから、きっと覚えていないかもしれない。
**********
4限まで三ツ谷くんは教室に居なかった。ずっと、屋上に居るのだろうか。4限の終わりのチャイムと同時に急いで屋上へと向かう。何も考えずにただひたすら走って、彼の元へ向かった。
屋上のドアを開ければ、柵の手摺にも垂れながら空を見ている三ツ谷くんの後ろ姿があった。
ゆっくりと近づいて行くと、足音に気が付いたのか彼は振り返った。
「あ、苗字さん」
「三ツ谷くん…」
「急に呼び出してごめんね」
「ううん、どうしたの?」
「いや、あの時、何か言いたそうだったからさ」
彼は、あの日と同じように眉を下げて笑った。
また、彼の優しさに触れて好きが強くなる。
彼がくれたチャンスをここで無駄にしたくはない。
緊張で口の中はパサパサだし、唇が震えて上手く言葉を出せない。焦る私に三ツ谷くんは「ゆっくりでいいよ」と言ってくれた。
言葉が出てこないから、代わりに勇気を出して彼の手に触れてみる。すると、驚いたように私を見た。心臓がバクバクして破裂しそうだ。
1つ、深呼吸をして、三ツ谷くんの瞳をみつめる。
「キミに恋する私に気付いてますか?」
これが、今の私の精一杯だ。
そんな風に聞けたら、良いなといつも思う。
その一言が言えない。ただ遠くで見ているだけ。
話しかける勇気もない。だけど、キミを知りたい。
そうやって、1人でモヤモヤとしながら、半年が経過した。同じクラスなのに、話せない。
斜め後ろに座る彼にたった一言の挨拶でも良いからしたいとは思うけれど、その姿を見るだけで、心臓が大暴れ。息なんてしている感覚なんてしない程に緊張してしまって、目を合わせる事すら難しくて、挨拶なんて到底無理。
本来ならね、涼しげな表情でサラッと「おはよう」と言いたのに、熱を帯びてしまう。話してもいないのに真っ赤になってしまう。本当に話したら多分、爆発する。でもね、今日は勇気を振り絞って声をかけてみようと思う。顔が真っ赤でも声が震えてたとしても。
だけど、今日は失敗に終わった。なんたって、彼は朝から学校に来なかったから。登校して来たら、挨拶をしようと、ドキドキドキドキ…ずっと、待っていたのに。気付いたら、1限の始まりを告げるチャイムが鳴っていた。ガックシと肩を落とす。私の気合いは無駄に終わってしまった。
こういう日に限って遅刻?それとも、サボり?いつもは、ちゃんと始業前に来てるじゃない。なんで、こういう日に…。と心の中で恨み言をつらつら並べてみる。ただの八つ当たりだ。もう、嫌になっちゃう。自分の運の無さを呪うしかないだろう。
1限目を終え、次の授業は移動教室なので休み時間のうちに移動をしようと廊下へと出る。
歩いている途中に、目の前から鞄を持って歩いてくる人物が目に入った。その顔には新しい傷と痣が幾つかあるのに気付いた。喧嘩してて、
遅刻したのだろうか。そんな事を考えているうちに歩みを止めてしまった。そんな私を見た彼とバッチリ目が合ってしまった。
「あっ…」
「ん?どうした?」
呆然と立ち尽くしながら声を漏らした私を見て、彼も立ち止まり、声を掛けてくれた。
だけど、それ以上声が出せない。心の中で練習した、おはようも突然過ぎて意味をなさない。
「… 苗字さん?具合悪いの?」
「い、いえっ!」
「何か、オレに用事でもあった?」
「あ、あの…」
「うん?」
「お、おはよう…ございます…」
最後の方はごにょごにょとしてしまい、聞き取れなかったと思う。でも、何故このタイミングでおはようとか言ってしまったのだろう。もっと、他に言う事あったじゃん?今日は珍しく遅刻なんだね?とか。そうしたら、もっと会話が広がったのに。と軽く後悔。
すると、少し驚いた表情をしていた彼は、フッと吹き出して笑いながら「おはよう」と返してくれた。
その笑顔に胸がギューッとして、苦しくなる。
「あの、三ツ谷くん…」
「なに?」
「やっぱり、何でもないです…!」
踵を返して、足早にその場を立ち去る。真っ赤に火照った顔が熱い。
やっぱり、おはようが限界でした。それ以上はとてもじゃないけど、話せない。胸が苦しくて、息も苦しくなってきてしまった。私は、元々コミニケーション能力がさほど高くない上に三ツ谷くんと話すとなれば、それ以上に無くなってしまう。三ツ谷くんのキレイな瞳が私を捉える度に、頭が真っ白になって何も考えられなくなってしまう。恋って厄介だ。
「待って」
そう声が聞こえたと思ったら、右腕を掴まれ、引き止められた。後ろを振り向けば、意外にも近くにある三ツ谷くんの顔。その距離に胸がドキッと跳ねた。それからは、物凄い勢いで心音が加速する。
「後で屋上来て」
「え…?なんで…」
「昼休み、待ってるから」
パッと手を離して、今度は三ツ谷くんが踵を返してその場を立ち去った。
掴まれた腕が熱い。それ以上に胸が熱い。胸がギューッと締め付けられ、独特の苦しい感覚がする。
「…なんで屋上…?」
そう呟けば、近くで見ていたクラスメイトはヒソヒソと「苗字の奴何したんだ?」「三ツ谷に呼び出されてたぜ?」「女が喧嘩売られるってやべぇよ」と話していた。
えっ…?私、喧嘩売られたの?屋上に来てって喧嘩の事!?え、呼び止めたの腹立ったの?と一瞬不安になるが、すぐに違うと思った。
たった半年だけど、ずっと三ツ谷くんを見てきたから分かる。そんな事する人じゃないという事は。
だって、いつも手芸部の子達には笑顔を向けてて、優しかった。たまに、林くんと林田くんには辛辣だったりするけど。それに、三ツ谷くんは、中学2年生の時、私が不良に絡まれてたのを助けてくれた。それが、恋に落ちるきっかけだったんだけど、怖くて震える私の頭を優しく撫でてくれた。彼は、オレも不良で怖いかもしれないけどって笑っていた。その笑顔にどれだけ安心した事か、本人は分かってないでしょう。
3年生に上がって、まさか同じクラスになれるとは思っていなくて凄く嬉しかったのを覚えている。
三ツ谷くんは、あの日、助けたのが私って気付いているのだろうか。あれから、一言も話してないから、きっと覚えていないかもしれない。
**********
4限まで三ツ谷くんは教室に居なかった。ずっと、屋上に居るのだろうか。4限の終わりのチャイムと同時に急いで屋上へと向かう。何も考えずにただひたすら走って、彼の元へ向かった。
屋上のドアを開ければ、柵の手摺にも垂れながら空を見ている三ツ谷くんの後ろ姿があった。
ゆっくりと近づいて行くと、足音に気が付いたのか彼は振り返った。
「あ、苗字さん」
「三ツ谷くん…」
「急に呼び出してごめんね」
「ううん、どうしたの?」
「いや、あの時、何か言いたそうだったからさ」
彼は、あの日と同じように眉を下げて笑った。
また、彼の優しさに触れて好きが強くなる。
彼がくれたチャンスをここで無駄にしたくはない。
緊張で口の中はパサパサだし、唇が震えて上手く言葉を出せない。焦る私に三ツ谷くんは「ゆっくりでいいよ」と言ってくれた。
言葉が出てこないから、代わりに勇気を出して彼の手に触れてみる。すると、驚いたように私を見た。心臓がバクバクして破裂しそうだ。
1つ、深呼吸をして、三ツ谷くんの瞳をみつめる。
「キミに恋する私に気付いてますか?」
これが、今の私の精一杯だ。