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私の彼氏は冷たい。物凄く冷たい。
何がそんなに冷たいかって、沢山エピソードはある。メールしても全然返って来ないし、電話も声が聞きたいからと掛けても返ってくる言葉は「用がないなら切る」と一言。そして、本当に切る。これはまだ序の口だ。上げ出したらキリがないくらいある。冷たい彼も大好きだけど、もう少し優しくしてくれたっていいじゃないとは思うわけで。
でも、彼がベタベタして「大好きだ」と言ってきたら、それはそれで気持ちが悪いのかもしれない。
私の気持ちが大きい方が調和を取れているのかもしれないが、たまには逆転してみたい。私だって、好きだとか言われたいもん!という訳で、目の前にいる彼に向き合った。
「場地くん、好きって言って」
「嫌だ」
ほらね?即答。なんなら、食い気味の返答でしたよ。でも、こんなの想定内です。私はここでめげたりはしません。なんたって、慣れてますから。
「私は場地くん大好き!」
「知ってる」
「場地くんは?」
「別に」
全然、折れてくれない彼に少しムッとする。スタスタと歩いて行ってしまう彼の制服の袖を掴んで引き止めると若干、顔を顰めてコチラを見た。
「たまには言って欲しいな〜なんて思うのですが」
「ンな事、言う必要あるかぁ?」
「あります。大アリです。好きだよ、大好きだよ、愛してるよ、くらい言ってくれてもいいと思うんだ!」
「キメェな」
「キメェは普通にショックですけど!?」
「ギャーギャーうっせぇな」
場地くんはイラッとしたのか、睨み付けながら私の頭をガッと掴んで上を向かせた。
あ、コレはデコピンの刑かもしれない。それとも、こめかみグリグリの刑の方か?どっちにしろ、めちゃくちゃ痛い。ギュッと目を閉じてその衝撃に耐えれるように身を構える。
しかし、私が感じたのは痛みでもなんでもなくて、一瞬、フワリと唇に触れた優しい感覚。想像とは違った事に驚いて目を開くと、先程と変わらない顰め面の彼の顔が視界に入った。
「場地くん?」
「ンだよ」
「足りない。もう一回」
「絶対ぇ、やだ」
「ケチ!」
「勝手に言っとけ」
また、サッサと歩き始めてしまう彼の背中を追いかけて隣に並ぶ。ソッと手に触れてみれば、チラッとコチラを見た後、ギュッと握り返してくれた。
そう、こういう所なんだよね。言葉にはしてくれないけど、態度で示してくれる。ズルいよね、冷たいように見えて優しいなんてさ。
前に回り込んで、向かい合うように立つ。
私のアンコールには簡単には答えてくれない彼に背伸びをして、自ら唇を重ねた。
「場地くん、大好き!」
「あっそ」
そんな事言いながら、そっぽを向く彼の口元が緩んでいるのを私は見逃さなかった。
「場地くん、可愛いね」
「あ?コロスぞ」
「彼女に向けて言うセリフじゃないよねぇ」
照れ隠しの暴言も可愛く思えて、ニコニコしてしまう。笑っていると、グイッと腰を引き寄せられて場地くんの方へ倒れ込む。顔をあげれば、ニヤッと笑った彼と目が合った。その表情にドキッとして、顔が熱くなる。ゆっくりと近づく顔に私も目を閉じた。
しかし、一向に何も来る気配がない。ソロリと目を開けて見れば、盛大にニヤニヤとしている場地くんがいた。
「騙されてやんの」
「ひっどい!期待したのに!」
腕をペシペシ叩いて怒ってみるが、彼は舌をベッと出して「バーカ」と笑った。
「…ずるい」
「あン?なんか言ったか?」
「別に!!」
本当に冷たいし意地悪だけど、トキメいてしまう私は、そんな彼が大好きなようだ。