サンセットビーチ
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「場地君、今から海に行きましょう!」
学校からの帰り道、突然そう言い始める名前にため息をつきたくなる。コイツは毎回毎回、頭に浮かんだ事をすぐ口走るから厄介だ。
「海つっても、まだ春先だぞ?早ぇだろ」
「いいの!ただ場地君と浜辺を歩きたいだけだから」
「アァ?歩きてぇんだったら公園でも散歩すりゃあいいだろ」
「1番大事な部分抜かさないでよ。浜辺でって言ったじゃない」
「めんどくせぇ」
名前は残念そうに眉を下げてオレの目をじっと見つめる。その視線にグッと押し黙る。
ったくよぉ。この顔されて行かねぇってオレが言えなくなるの分かっててやってんのか?
まぁ、狙って出来るような女じゃないとは思うが。
「めんどくせぇなぁ。家、行くぞ」
「え、なんで?」
「単車持ってくんだよ。海まで歩いて行けるわけねぇだろ」
名前目をキラキラと輝かせ、口角をキュッと上げて嬉しそうに笑って「わーい!場地君は何だかんだ優しいよねぇ〜」とオレの腕に抱きついて来た。こうやって腕に抱き着かれるのは悪い気もせず、笑っている顔を見ると、コイツの言う事聞くのも悪くないと思ってしまう辺り、大分コイツに甘いなと思う。
家に着き、愛車の後ろに名前を乗せて走り出す。颯爽と走り抜ける瞬間が好きだ。風に揺られ、周りの景色が速いスピードで流れて行くのを見るのも好きだ。そして、腰辺りに強く抱き着いて来られるのもちょっとだけ好きだったりする。
暫く走ると風に乗って潮の香りが鼻腔を突いた。左側を見れば、夕日に照らされてオレンジに染まる海が見えた。
「キラキラしてるねぇ」
「反射してるからな」
「反射とか色気なーい!」
「色気ねぇのはテメェだ」
「私は色気ムンムンでしょ?」
「ハッ!寝言は寝て言え」
背中を軽くバシッと叩いてキーキー騒いでいるが、いつも通りなので軽くスルーをしておく。そんなくだらないやり取りをしているうちに浜辺付近へと着き、単車を止める。海に着いた頃にはもう、日が沈み始めていて、海と夕日が重なって見えた。
浜辺に着くなり、名前はガキのようにハシャいで駆け出した。ローファーと靴下を脱いで、海の中に足を浸して1人で楽しんでいるアイツを眺める。
「場地君もおいで!」
名前に手を引かれ、ローファーと靴下を脱いで制服のズボンの裾を捲り、海へと足を浸けて、波打ち際をゆっくりと2人で並んで歩く。
すると、名前は途中で立ち止まりオレのブレザーの裾を掴み止めた。
「今日はわがまま聞いてくれてありがとう」
夕日を背負って無邪気に笑う名前が何だかとても眩しく見えたのと同時に愛おしく感じた。彼女の耳をそっと塞ぎ「好きだ」と囁いた。
「え?なに?聞こえなかったよ」
「大した事じゃねぇ」
「でも、なんか顔赤くない?」
「夕日のせいだろ」
柄にも無いことを口走ってしまって、なんだか気恥ずかしくなった。夕日のせいにして名前を誤魔化せたが、本当の事は夕焼けに染まった海だけは知っていた。