幸せのあり方
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場地が亡くなって三年が経った。中学も卒業して高校生になり、新しい環境にも慣れた。少しずつ前を向けるようになったけれど、たった一日だけはどうしても、気分は沈む。そう、10月31日、場地の命日。いつもは、マイキーや千冬と一緒に場地に会いに行くのだけど、命日だけは一人で場地に会いに行く。二人でゆっくり話をする為に。これからの東卍の事やマイキーたちの事だったり、色々話すのだけど、毎年泣いてしまう。自分の思い描く未来に場地が居ない事が悲しくて辛くなってしまう。
最近、高校の同級生に好きな人は居ないのか、彼氏は作らないのか。なんて聞かれて、毎回胸を痛めている。場地以上に好き人なんて出来ないし、彼以外考えられない。今はそう言うのはいいかなと誤魔化すが、友人たちには「彼氏いた方が楽しいし、幸せだよ」と何度も言われた。場地の事を知らないのだから仕方の無い事だけれど、なに気ないその言葉は私の心を抉るには十分すぎた。無理矢理にも好きな人を作らなくてはいけないのか、場地を忘れなくては幸せにはなれないのか。場地が居ない私は幸せにはなれないのか。そう思うと、苦しかった。叶わない願いなのは分かっているけど、出来るなら場地と幸せになりたかった。
場地の前で一人で涙を零していると、足音が二つ聞こえて顔を上げる。すると、そこには花束を持ったドラケンと三ツ谷が立っていた。私の顔を見るなり、少しだけ気まずそうな表情を浮かべた。この日だけは、私が一人で来ている事を皆、知っているので時間をずらしたりと気を使ってくれていたのだが、今年は長居をし過ぎてしまった為に鉢合わせをしてしまった。
「悪りぃ。出直すわ」
「ううん。もう帰るから、大丈夫」
帰ろうと立ち上がると、ドラケンは「この後、少し付き合えよ」と言った。何に付き合えば良いのか分からないが、特にこの後の用事はなかったので付き合う事にした。先に外に行っててと言われたのでお寺の敷地の外で二人を待つ事になった。男同士で話す事もきっと沢山あるよね。あの三人でどんな話をしているのだろうか。そんな事を考えていると、ほんの十分くらいで二人は戻って来た。
「早かったね」
「まぁ、あんまり居座ると早く帰れとか言われそうだし」
「確かに。私が長く話した後に更にってなるともうほとんど話聞いてないんじゃない?」
「アイツ、マジで人の話を聞かねぇもんな」
呆れたように言う三ツ谷に私とドラケンは深く頷いて同意した。創設メンバーの中でこの二人は比較的大人で後の四人によく手を焼いていた。苦労話を三人で始めてしまった日には、日が暮れるまで話し込んでしまった事もある。二人にはよく、場地とマイキーが幼馴染で苦労しただろうと言われる。まだ、ドラケン達と会う前はそれそれは修行かのような過酷さだった。私とエマの二人でも面倒なんて見切れなかった。
「あの二人の暴れようは、もはや台風でしょ」
「「間違いねぇ」」
声を揃えて言うドラケンと三ツ谷に笑ってしまうと、そんな私を見た彼らも笑った。
歩きながらそんな話をしていると、ドラケンがここで少し話そうぜと足を止めた。そこは、六人が東卍を結成した場所、武蔵神社だった。ドラケンと三ツ谷に続いて石段を登って、一番上の段まで来ると二人は腰を下ろした。ドラケンは右端に三ツ谷は左端に座ったので、空いているのは真ん中しかない。そこに座れと言う事だろうか。真ん中に腰を下ろすと、三ツ谷は私の頭に手を置いて子供もあやす様にポンポンと撫でた。突然の行動に呆気に取られていると、今度はドラケンも頭に手を置いた。
「え、二人とも何…?」
「たまには息抜きしろよ」
「話なら聞くし、あまり一人で溜め込むなよ」
二人は優しく微笑んでくれていた。さっき一人で泣いていた事を言っているのだろう。本当に二人のこう言うところがズルイ。鼻がツンとして目頭が熱くなって来てしまった。溢れないようにと上を向いて、必死で堪えた。
「幸せの基準って何だろうね」
ポツリと言葉を零せば、二人は「幸せかぁ」と呟いて、考え始めた。
幸せって何だろう。毎日、笑える事?好きな人と一緒にいられる事?それとも、大金持ちで裕福な生活をしている事?人によって幸せの基準って違うよね。私の幸せはね、場地と一緒に大人になる事だったんだよ。ただ、本当にそれだけだった。それすら叶わない私は幸せじゃないのだろうか。
「オレも昔は妹達の面倒や家の事ばっかりで、周りと同じように遊べなかったりしてオレばっかりって思った事もあったよ。でも、ドラケンに言われて気づいた事があったんだ」
三ツ谷はドラケンを見て、ニッと笑った。そして、昔を懐かしむように遠くを見つめてフッと笑みを溢して「今は、ルナとマナとテーブルを囲んで飯食えるのはスゲェ幸せだって思う」と言った。三ツ谷は凄く柔らかい表情をしていて本当に幸せそうだ。
「オレも両親はいねぇけど、自分が不幸だなんて思わねぇ」
「人と比べて何で自分ばっかりとか思う時もあるかもしれねぇけど、人と同じである事だけが良い人生の答えじゃないんじゃないかな」
真剣に考えて答えてくれた二人の優しさが嬉しかった。誰にも話した事なんてなかったけれど、友人に言われた事や今、自分が思っている事を全て吐き出した。二人は最後まで黙って頷いて話を聞いてくれた。話が終わる頃には、顔は涙でグシャグシャで石段は無数の染みを作っていた。
「生きる事はそう悪くねぇって思えたら、それって幸せなんじゃねぇの?」
「明日香は頑張り過ぎ。もっと肩の力抜こうぜ」
子供のように声を上げて泣く私に二人は、ガキみてぇと言いながら笑っていた。
「もう!これ以上泣かせないでよ、双龍のバカ!」
「双龍って…」
「ははっ!懐かしいな、それ」
昔の話に花を咲かせながら、私たちは三人で笑った。こうやって笑い合える事は、きっと幸せ。生きる事はそう悪くないって思えるのは、傍にいてくれる人達が居るからだね。
「ドラケン、三ツ谷。ありがとう、大好き!」
夕暮れの茜空に私たちの幸せそうな笑い声が響き渡った。
最近、高校の同級生に好きな人は居ないのか、彼氏は作らないのか。なんて聞かれて、毎回胸を痛めている。場地以上に好き人なんて出来ないし、彼以外考えられない。今はそう言うのはいいかなと誤魔化すが、友人たちには「彼氏いた方が楽しいし、幸せだよ」と何度も言われた。場地の事を知らないのだから仕方の無い事だけれど、なに気ないその言葉は私の心を抉るには十分すぎた。無理矢理にも好きな人を作らなくてはいけないのか、場地を忘れなくては幸せにはなれないのか。場地が居ない私は幸せにはなれないのか。そう思うと、苦しかった。叶わない願いなのは分かっているけど、出来るなら場地と幸せになりたかった。
場地の前で一人で涙を零していると、足音が二つ聞こえて顔を上げる。すると、そこには花束を持ったドラケンと三ツ谷が立っていた。私の顔を見るなり、少しだけ気まずそうな表情を浮かべた。この日だけは、私が一人で来ている事を皆、知っているので時間をずらしたりと気を使ってくれていたのだが、今年は長居をし過ぎてしまった為に鉢合わせをしてしまった。
「悪りぃ。出直すわ」
「ううん。もう帰るから、大丈夫」
帰ろうと立ち上がると、ドラケンは「この後、少し付き合えよ」と言った。何に付き合えば良いのか分からないが、特にこの後の用事はなかったので付き合う事にした。先に外に行っててと言われたのでお寺の敷地の外で二人を待つ事になった。男同士で話す事もきっと沢山あるよね。あの三人でどんな話をしているのだろうか。そんな事を考えていると、ほんの十分くらいで二人は戻って来た。
「早かったね」
「まぁ、あんまり居座ると早く帰れとか言われそうだし」
「確かに。私が長く話した後に更にってなるともうほとんど話聞いてないんじゃない?」
「アイツ、マジで人の話を聞かねぇもんな」
呆れたように言う三ツ谷に私とドラケンは深く頷いて同意した。創設メンバーの中でこの二人は比較的大人で後の四人によく手を焼いていた。苦労話を三人で始めてしまった日には、日が暮れるまで話し込んでしまった事もある。二人にはよく、場地とマイキーが幼馴染で苦労しただろうと言われる。まだ、ドラケン達と会う前はそれそれは修行かのような過酷さだった。私とエマの二人でも面倒なんて見切れなかった。
「あの二人の暴れようは、もはや台風でしょ」
「「間違いねぇ」」
声を揃えて言うドラケンと三ツ谷に笑ってしまうと、そんな私を見た彼らも笑った。
歩きながらそんな話をしていると、ドラケンがここで少し話そうぜと足を止めた。そこは、六人が東卍を結成した場所、武蔵神社だった。ドラケンと三ツ谷に続いて石段を登って、一番上の段まで来ると二人は腰を下ろした。ドラケンは右端に三ツ谷は左端に座ったので、空いているのは真ん中しかない。そこに座れと言う事だろうか。真ん中に腰を下ろすと、三ツ谷は私の頭に手を置いて子供もあやす様にポンポンと撫でた。突然の行動に呆気に取られていると、今度はドラケンも頭に手を置いた。
「え、二人とも何…?」
「たまには息抜きしろよ」
「話なら聞くし、あまり一人で溜め込むなよ」
二人は優しく微笑んでくれていた。さっき一人で泣いていた事を言っているのだろう。本当に二人のこう言うところがズルイ。鼻がツンとして目頭が熱くなって来てしまった。溢れないようにと上を向いて、必死で堪えた。
「幸せの基準って何だろうね」
ポツリと言葉を零せば、二人は「幸せかぁ」と呟いて、考え始めた。
幸せって何だろう。毎日、笑える事?好きな人と一緒にいられる事?それとも、大金持ちで裕福な生活をしている事?人によって幸せの基準って違うよね。私の幸せはね、場地と一緒に大人になる事だったんだよ。ただ、本当にそれだけだった。それすら叶わない私は幸せじゃないのだろうか。
「オレも昔は妹達の面倒や家の事ばっかりで、周りと同じように遊べなかったりしてオレばっかりって思った事もあったよ。でも、ドラケンに言われて気づいた事があったんだ」
三ツ谷はドラケンを見て、ニッと笑った。そして、昔を懐かしむように遠くを見つめてフッと笑みを溢して「今は、ルナとマナとテーブルを囲んで飯食えるのはスゲェ幸せだって思う」と言った。三ツ谷は凄く柔らかい表情をしていて本当に幸せそうだ。
「オレも両親はいねぇけど、自分が不幸だなんて思わねぇ」
「人と比べて何で自分ばっかりとか思う時もあるかもしれねぇけど、人と同じである事だけが良い人生の答えじゃないんじゃないかな」
真剣に考えて答えてくれた二人の優しさが嬉しかった。誰にも話した事なんてなかったけれど、友人に言われた事や今、自分が思っている事を全て吐き出した。二人は最後まで黙って頷いて話を聞いてくれた。話が終わる頃には、顔は涙でグシャグシャで石段は無数の染みを作っていた。
「生きる事はそう悪くねぇって思えたら、それって幸せなんじゃねぇの?」
「明日香は頑張り過ぎ。もっと肩の力抜こうぜ」
子供のように声を上げて泣く私に二人は、ガキみてぇと言いながら笑っていた。
「もう!これ以上泣かせないでよ、双龍のバカ!」
「双龍って…」
「ははっ!懐かしいな、それ」
昔の話に花を咲かせながら、私たちは三人で笑った。こうやって笑い合える事は、きっと幸せ。生きる事はそう悪くないって思えるのは、傍にいてくれる人達が居るからだね。
「ドラケン、三ツ谷。ありがとう、大好き!」
夕暮れの茜空に私たちの幸せそうな笑い声が響き渡った。