勿忘草
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「私と一緒に場地の所に行って欲しいの」
千冬は目を見開き、慌てた様子で私の肩を掴んで「ダメです!」と叫んだ。どうしてダメなんだろうと不思議に思い、首を傾げていれば、彼は見当違いの頓珍漢な事を言い始めた。
「そんな事したら、場地さん怒りますよ!」
「え…何で?」
「そりゃ、明日香さんが死ぬなんて事…」
「違う違う!そっちの逝くじゃなくて、場地のお墓」
「あ…」
「まだ、一人で行くのは怖いから、千冬に着いて来て貰いたかったの」
「な、何だ…ビックリした」
「紛らわしい言い方して、ごめん」
千冬は肩の力を抜いて、安心したように笑った。そして、すぐ様に肩に触れていた手をバッと離して「馴れ馴れしく、すみません」と顔を赤くしていた。
最近、よく触れていたでしょと思ったけれど、きっと、千冬も必死でそれどころじゃなかったのだろう。いつもの千冬を見た気がして、少し安心した。
「じゃあ、明日行きますか?」
「うん。ありがとう」
今日はもう遅いので日を改めてという事になり、今日はそれぞれ家に帰った。
*
次の日、千冬と渋谷駅で待ち合わせをして途中でお花とペヤングを買って、場地の眠る場所へと向かった。
お墓が見えて来た途端に、やっぱり怖くなって、足も重りをつけたかのように重くなってしまう。冷や汗も出て来て、胃のあたりがキリキリと痛み出す。
ずっと怖くて来れなかった場所。でも、もう逃げてばかりではいられない。ちゃんと向き合うって決めた。無理矢理にも足を動かして、場地のお墓の前に立った。
お墓には、綺麗なお花や場地の好きな物が溢れんばかりに置かれていて、彼は沢山の人に愛されていたんだなと実感した。
お線香を上げ、目を閉じて手を合わせた。隣で手を合わせる千冬は微かに震えていて、千冬もまだ完全には、乗り越えられてはいなくて、乗り越える途中なのを知る。
こんなにも、周りから大切に想われているのに全部置いて行っちゃって。本当にズルいよね、場地は。
たくさんの人が場地を愛してくれたのは、場地自身が周りを大切にして来たからだ。
そんな姿を隣で見て来たから、場地を好きになった。
「やっと、現実を見据えられたよ」
場地にそう語りかければ、千冬も合わせていた手を静かに下ろして、ゆっくりと目を開けた。
「本当にバカだよね、場地は。いつも自分勝手で、一人でさっさと何処かに行っちゃう」
想い出の中の場地を思い返すと、いつも先を歩いて行ってしまう。でも、そんな所も好きだった。大きな背中を追い掛けて、その隣に並ぶ瞬間が好きだった。隣に並ぶと嬉しそうに笑ってくれる瞬間が大好きだった。
一緒に笑い合った事。一緒に泣いた事。よく喧嘩もしたけど、直ぐに仲直りして、またいつもの様に一緒に居た事。楽しかった事も辛かった事もその全てが私の愛おしい宝物。
「私の思い出の中には、いつも隣に場地がいた。でもこれからは、いないんだね」
言葉にすると胸が苦しくて、痛くて、切なくて息が詰まる。
本当はね、沢山の時間を場地と過ごして、良い所も悪い所も今よりも知って、それでも一緒に居たいって思えて、何度も場地に恋をして、そうやって生きて行くんだと思っていた。
まだまだ一緒にやりたい事、行きたい所、場地の夢が叶う瞬間、その全てを共にしたかった。一緒に大人になりたかった。
「寂しく想う日は沢山あるだろうけど、きっと二人の想い出が暖めてくれるよね」
私はそっと、空を見上げた。眩しい太陽が私達を照らす。まるで、私たちの未来を照らすかのように。
「千冬は場地に言う事ないの?」
「オレは…」
千冬は場地に向かって、手を後ろで組み、深々と頭を下げた。
「貴方に出逢えた事、そして、壱番隊隊長のもとに付けた事を誇りに思います。ありがとうございました」
千冬の声が空に届いたのか、優しい風が私たちを包んだ。その風は暖かくて、悲しいくらいに優しかった。場地がここに居る様な気がした。
風で揺れる髪を押さえ「場地、大好きだよ」と呟き、私はもう一度空を見上げた。
*
「本当に付いて行かなくて大丈夫ですか?」
「うん。一人で大丈夫だよ、ありがとう」
場地のお墓を後にして、私はもう一つ行くべき場所があった為、そこに行くと言うと、心配だから一緒について行くとずっと言っていた千冬を宥め、一人でその場所へと向かった。
私が向かった場所は東京少年鑑別所だ。
どうしても、会いに行って確認しなければならない事があった。私が面会に来るとは思わなかったのか、ガラス越しに彼は驚いた表情を見せた。
「久しぶりだね、一虎」
「明日香…」
「思ったより元気そうで良かったよ」
「どうして、オマエがここに…?」
「私がここに来た理由、分かるよね?」
私の問いかけに言いづらそうに口篭ってしまった。少し間が空いてから一虎はゆっくりと口を開いた。
「…オレは自分の弱さにちゃんと向き合わねぇといけねぇ。アイツが教えてくれたから…」
その言葉を聞いて、私は「良かった」と彼に笑いかければ、俯きがちだった顔をあげた。今にも泣き出しそうな顔で私を見た。
「なんで、良かったって言えるんだよ。場地を殺したのはオレだぞ!オマエ、憎くねぇのかよ!?」
「一虎がまだ変わってなかったら怒るつもりで来た。でも、ちゃんと場地の気持ちが届いてたから」
「オマエはオレの事、許せるのか…?」
その問に私はなんて答えるべきか少し迷ってしまう。許す、許さないのそんな簡単な事ではない。正直に言えば、一虎を恨みたい気持ちが全くないワケでは無い。だけど、場地は一虎を救いたかった。その想いを無視して恨むことは私には出来ない。
「私ね、あの日の事は、場地のリベンジだったんじゃないかって思うの」
「リベンジ…?」
「うん。一度壊れてしまった、自分の人生のリベンジ。その為に場地は命を掛けたんだって思う」
一虎は必死に唇を噛んで、泣くのを堪えているようだった。
「だから、一虎は死んじゃダメだよ」
「…え?」
「一虎がちゃんと生きないと場地のリベンジは失敗になっちゃうでしょ?だから、場地の為に生きて」
一虎は涙を零しながら「本当にごめん」と小さな声で謝罪を口にした。一虎の謝罪に胸が苦しくなった。本当はその言葉は、場地と一緒に帰って来た時に聞きたかった。そして、笑顔で迎えてあげたかった。涙が目の縁に溜まっていくのを感じるが、必死に堪える。まだ言いたいことが残っている。後で、幾らでも涙は流せるから、もう少しだけ耐えてと言い聞かせた。
「私だって本当は死にたいって思った。今だってその気持ちが0な訳じゃない」
その言葉に一虎は俯いてしまったので「顔を上げて、ちゃんと私の目を見て」と言えば、叱られる子供のように怯えたような表情をしながらも、ゆっくりと私を見た。
「場地の命を無駄にするなんて事、しちゃダメだなんだよ。償いたいという気持ちがあるのなら、場地の守りたかったモノの為に戦って」
一虎はその言葉に何度も何度も頷いた。
場地の分まで生きないと、彼が報われない。
「一虎にとって生きる事は辛い事かもしれない。でも、逃げないで。大丈夫、一虎は一人じゃないよ。私が最後まで一緒に居るから」
きっと、場地ならそう言うだろう。一虎は一人じゃないと。これは私の憶測でしかないし、言わないかもしれない。そんな事、もう誰にもわからない。でも、私の知っている場地はそう言うはず。
「ねぇ、一虎、コレ見て」
私はポケットの中から、カピバラのキーホルダーを取り出して一虎に見せた。すると、一虎は驚いたように目を見開き、彼もポケットの中から二つのキーホルダーを取り出した。
一虎の虎と場地のオオカミだった。
「何でオオカミを一虎が?」
「あの日、場地のポケットに入ってた」
「…持っててくれたんだ」
場地の不器用な優しさとその想いが嬉しくて、目頭が熱くなる。
ガラス越しに三つのキーホルダーを合わせて、小さく微笑む。
「その二つは一虎が持ってて。それで、一虎がここから出て来たら、この子達を会わせてあげようね」
「…うん、明日香…ありがとう」
彼がそう言うと、面会終了の時間が来てしまった。一虎に「また、会おうね」と声をかけて、部屋を出た。
外に出てからすぐに、我慢していた涙が一気に溢れ出した。一虎に言った言葉を思い返す。
その言葉達は自分に言い聞かせていたのかもしれないと思った。場地の元へ逝きたい、私も連れていってと何度思った事だろう。死んだ方が楽になれるって、場地のいない世界を生きる方が辛いと。でも、こんな所で終わりにしたら、きっと、怒るに違いない。こんな私を好きで居てくれるわけが無い。
場地が好きになってくれた自分を見失わずに、真っ直ぐ生きていかなければならない。
前に場地が言っていた。たまに振り返ってやるから、オマエが追い付いて来いと。
不器用で言葉足らずで横暴で自分勝手でどうしようもないけど、誰よりも優しい。
どんな時も人の為にと生きた彼のような人間になりたい。
場地の分も生きて、色々なモノを見て感じて、彼の宝を誰よりも愛す。それが私の生きる理由。もう、場地は振り返ってはくれないけれど、頑張って追い付こう。
私だけじゃない。千冬も一虎もマイキーもそうやって、負けそうになりながらも、懸命に自分と戦って生きて行かなければならない。
「今の私たちには、生きる事が戦いだね」
私は空を見上げながら、そう呟いた。大地を強く踏みしめて、場地の想いを心に宿しながら強く生きて行く。彼がそう生きたように。
そうやって生きれた時、もう一度、キミに会えるような気がするんだ。
千冬は目を見開き、慌てた様子で私の肩を掴んで「ダメです!」と叫んだ。どうしてダメなんだろうと不思議に思い、首を傾げていれば、彼は見当違いの頓珍漢な事を言い始めた。
「そんな事したら、場地さん怒りますよ!」
「え…何で?」
「そりゃ、明日香さんが死ぬなんて事…」
「違う違う!そっちの逝くじゃなくて、場地のお墓」
「あ…」
「まだ、一人で行くのは怖いから、千冬に着いて来て貰いたかったの」
「な、何だ…ビックリした」
「紛らわしい言い方して、ごめん」
千冬は肩の力を抜いて、安心したように笑った。そして、すぐ様に肩に触れていた手をバッと離して「馴れ馴れしく、すみません」と顔を赤くしていた。
最近、よく触れていたでしょと思ったけれど、きっと、千冬も必死でそれどころじゃなかったのだろう。いつもの千冬を見た気がして、少し安心した。
「じゃあ、明日行きますか?」
「うん。ありがとう」
今日はもう遅いので日を改めてという事になり、今日はそれぞれ家に帰った。
*
次の日、千冬と渋谷駅で待ち合わせをして途中でお花とペヤングを買って、場地の眠る場所へと向かった。
お墓が見えて来た途端に、やっぱり怖くなって、足も重りをつけたかのように重くなってしまう。冷や汗も出て来て、胃のあたりがキリキリと痛み出す。
ずっと怖くて来れなかった場所。でも、もう逃げてばかりではいられない。ちゃんと向き合うって決めた。無理矢理にも足を動かして、場地のお墓の前に立った。
お墓には、綺麗なお花や場地の好きな物が溢れんばかりに置かれていて、彼は沢山の人に愛されていたんだなと実感した。
お線香を上げ、目を閉じて手を合わせた。隣で手を合わせる千冬は微かに震えていて、千冬もまだ完全には、乗り越えられてはいなくて、乗り越える途中なのを知る。
こんなにも、周りから大切に想われているのに全部置いて行っちゃって。本当にズルいよね、場地は。
たくさんの人が場地を愛してくれたのは、場地自身が周りを大切にして来たからだ。
そんな姿を隣で見て来たから、場地を好きになった。
「やっと、現実を見据えられたよ」
場地にそう語りかければ、千冬も合わせていた手を静かに下ろして、ゆっくりと目を開けた。
「本当にバカだよね、場地は。いつも自分勝手で、一人でさっさと何処かに行っちゃう」
想い出の中の場地を思い返すと、いつも先を歩いて行ってしまう。でも、そんな所も好きだった。大きな背中を追い掛けて、その隣に並ぶ瞬間が好きだった。隣に並ぶと嬉しそうに笑ってくれる瞬間が大好きだった。
一緒に笑い合った事。一緒に泣いた事。よく喧嘩もしたけど、直ぐに仲直りして、またいつもの様に一緒に居た事。楽しかった事も辛かった事もその全てが私の愛おしい宝物。
「私の思い出の中には、いつも隣に場地がいた。でもこれからは、いないんだね」
言葉にすると胸が苦しくて、痛くて、切なくて息が詰まる。
本当はね、沢山の時間を場地と過ごして、良い所も悪い所も今よりも知って、それでも一緒に居たいって思えて、何度も場地に恋をして、そうやって生きて行くんだと思っていた。
まだまだ一緒にやりたい事、行きたい所、場地の夢が叶う瞬間、その全てを共にしたかった。一緒に大人になりたかった。
「寂しく想う日は沢山あるだろうけど、きっと二人の想い出が暖めてくれるよね」
私はそっと、空を見上げた。眩しい太陽が私達を照らす。まるで、私たちの未来を照らすかのように。
「千冬は場地に言う事ないの?」
「オレは…」
千冬は場地に向かって、手を後ろで組み、深々と頭を下げた。
「貴方に出逢えた事、そして、壱番隊隊長のもとに付けた事を誇りに思います。ありがとうございました」
千冬の声が空に届いたのか、優しい風が私たちを包んだ。その風は暖かくて、悲しいくらいに優しかった。場地がここに居る様な気がした。
風で揺れる髪を押さえ「場地、大好きだよ」と呟き、私はもう一度空を見上げた。
*
「本当に付いて行かなくて大丈夫ですか?」
「うん。一人で大丈夫だよ、ありがとう」
場地のお墓を後にして、私はもう一つ行くべき場所があった為、そこに行くと言うと、心配だから一緒について行くとずっと言っていた千冬を宥め、一人でその場所へと向かった。
私が向かった場所は東京少年鑑別所だ。
どうしても、会いに行って確認しなければならない事があった。私が面会に来るとは思わなかったのか、ガラス越しに彼は驚いた表情を見せた。
「久しぶりだね、一虎」
「明日香…」
「思ったより元気そうで良かったよ」
「どうして、オマエがここに…?」
「私がここに来た理由、分かるよね?」
私の問いかけに言いづらそうに口篭ってしまった。少し間が空いてから一虎はゆっくりと口を開いた。
「…オレは自分の弱さにちゃんと向き合わねぇといけねぇ。アイツが教えてくれたから…」
その言葉を聞いて、私は「良かった」と彼に笑いかければ、俯きがちだった顔をあげた。今にも泣き出しそうな顔で私を見た。
「なんで、良かったって言えるんだよ。場地を殺したのはオレだぞ!オマエ、憎くねぇのかよ!?」
「一虎がまだ変わってなかったら怒るつもりで来た。でも、ちゃんと場地の気持ちが届いてたから」
「オマエはオレの事、許せるのか…?」
その問に私はなんて答えるべきか少し迷ってしまう。許す、許さないのそんな簡単な事ではない。正直に言えば、一虎を恨みたい気持ちが全くないワケでは無い。だけど、場地は一虎を救いたかった。その想いを無視して恨むことは私には出来ない。
「私ね、あの日の事は、場地のリベンジだったんじゃないかって思うの」
「リベンジ…?」
「うん。一度壊れてしまった、自分の人生のリベンジ。その為に場地は命を掛けたんだって思う」
一虎は必死に唇を噛んで、泣くのを堪えているようだった。
「だから、一虎は死んじゃダメだよ」
「…え?」
「一虎がちゃんと生きないと場地のリベンジは失敗になっちゃうでしょ?だから、場地の為に生きて」
一虎は涙を零しながら「本当にごめん」と小さな声で謝罪を口にした。一虎の謝罪に胸が苦しくなった。本当はその言葉は、場地と一緒に帰って来た時に聞きたかった。そして、笑顔で迎えてあげたかった。涙が目の縁に溜まっていくのを感じるが、必死に堪える。まだ言いたいことが残っている。後で、幾らでも涙は流せるから、もう少しだけ耐えてと言い聞かせた。
「私だって本当は死にたいって思った。今だってその気持ちが0な訳じゃない」
その言葉に一虎は俯いてしまったので「顔を上げて、ちゃんと私の目を見て」と言えば、叱られる子供のように怯えたような表情をしながらも、ゆっくりと私を見た。
「場地の命を無駄にするなんて事、しちゃダメだなんだよ。償いたいという気持ちがあるのなら、場地の守りたかったモノの為に戦って」
一虎はその言葉に何度も何度も頷いた。
場地の分まで生きないと、彼が報われない。
「一虎にとって生きる事は辛い事かもしれない。でも、逃げないで。大丈夫、一虎は一人じゃないよ。私が最後まで一緒に居るから」
きっと、場地ならそう言うだろう。一虎は一人じゃないと。これは私の憶測でしかないし、言わないかもしれない。そんな事、もう誰にもわからない。でも、私の知っている場地はそう言うはず。
「ねぇ、一虎、コレ見て」
私はポケットの中から、カピバラのキーホルダーを取り出して一虎に見せた。すると、一虎は驚いたように目を見開き、彼もポケットの中から二つのキーホルダーを取り出した。
一虎の虎と場地のオオカミだった。
「何でオオカミを一虎が?」
「あの日、場地のポケットに入ってた」
「…持っててくれたんだ」
場地の不器用な優しさとその想いが嬉しくて、目頭が熱くなる。
ガラス越しに三つのキーホルダーを合わせて、小さく微笑む。
「その二つは一虎が持ってて。それで、一虎がここから出て来たら、この子達を会わせてあげようね」
「…うん、明日香…ありがとう」
彼がそう言うと、面会終了の時間が来てしまった。一虎に「また、会おうね」と声をかけて、部屋を出た。
外に出てからすぐに、我慢していた涙が一気に溢れ出した。一虎に言った言葉を思い返す。
その言葉達は自分に言い聞かせていたのかもしれないと思った。場地の元へ逝きたい、私も連れていってと何度思った事だろう。死んだ方が楽になれるって、場地のいない世界を生きる方が辛いと。でも、こんな所で終わりにしたら、きっと、怒るに違いない。こんな私を好きで居てくれるわけが無い。
場地が好きになってくれた自分を見失わずに、真っ直ぐ生きていかなければならない。
前に場地が言っていた。たまに振り返ってやるから、オマエが追い付いて来いと。
不器用で言葉足らずで横暴で自分勝手でどうしようもないけど、誰よりも優しい。
どんな時も人の為にと生きた彼のような人間になりたい。
場地の分も生きて、色々なモノを見て感じて、彼の宝を誰よりも愛す。それが私の生きる理由。もう、場地は振り返ってはくれないけれど、頑張って追い付こう。
私だけじゃない。千冬も一虎もマイキーもそうやって、負けそうになりながらも、懸命に自分と戦って生きて行かなければならない。
「今の私たちには、生きる事が戦いだね」
私は空を見上げながら、そう呟いた。大地を強く踏みしめて、場地の想いを心に宿しながら強く生きて行く。彼がそう生きたように。
そうやって生きれた時、もう一度、キミに会えるような気がするんだ。