勿忘草
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マイキーと三ツ谷に散々弄られ、キレて大暴れした場地は喫茶店の椅子やらテーブルを壊してしまい、店主のおじいさんに静かに追い出された。普段、どんなに騒いでも追い出されなかったのに、流石に破損は許されなかったようだ。
追い出されてしまった私達は、強制的に帰る事となり、途中まで五人で帰っていたが、それぞれの家の方向へ分かれていき、今では場地と二人になった。
「みんな、喜んでくれたね」
「アレはバカにしてるだけだろーが」
「マイキー達なりのお祝いの仕方なんじゃない?」
「はぁ?そんな祝い方、オレは嫌だね」
場地は嫌そうな顔をして、舌を出し「あんなん、生き地獄」と言葉を続けた。心底嫌そうに顔を歪めた場地は、ああいう類の揶揄われ方は、本当に苦手らしい。
「そういやぁ、明日、暇か?」
「うん、特に用事はないよ」
「じゃあ、どっか行こーぜ」
「うん、行きたい!初デートだね」
「はぁ?今までだって散々、出掛けてんじゃねぇか。今更、何を言ってんだぁ?」
「今までのはデートじゃないもん」
場地は興味なさげに欠伸をしながら、適当に相槌を打った。場地は基本、当日に「今から行く」という誘い方をする事が多いので、初デートだから前日に誘って来てくれたのではないのかと思っていたのだが、そうではなかったらしい。
「いつもは当日なのに、今日は前日からなの珍しいね」
「まぁ、なんだその、アレだ」
「やっぱり、初デートだから?」
「初デートはキモイからやめろ」
「キモいって失礼な!」
まさかのキモイという言葉が飛び出して来るとは思いもしていなかった為、思わず大きな声が出てしまった。その声に場地は顔を顰めて「うるせぇ」と私の額を指で弾いた。手加減はしているのだろうけど、馬鹿力の場地のデコピンは毎回地味に痛い。
昔、彼の本気の力のデコピンを食らった事がある三ツ谷は頭蓋骨が割れて脳が揺れたような感覚がすると言っていた。そんなゴリラのような力の場地が多少手加減したって痛い。
ヒリヒリと痛む額を摩っていると、場地は何食わぬ顔で「どっか行きたい所考えておけよ」と言った。
その言葉に驚いて場地の顔を凝視していると、居心地が悪そうに目を細めて私を見た。
「ンだよ」
「私の行きたい所でいいの?」
「何でそこに驚いてんだよ」
「だって、今まで急に家に来て、自分の行きたい場所に連れ回してたじゃない」
「そーだっけかぁ?」
「うん、そうだったよ」
当日に家に乗り込んで来て、小さい頃はマイキーに喧嘩を売りに行ったり、佐野家や佐野道場に行ったり、公園に連れ回された。中学に入ってからは、ツーリングやバイクを見に連れて行かれたりしていた。
突然の誘いが嫌という訳ではなかったし、場地の行きたい所に連れ回されるのも退屈では無かった。バイク見に行ったりだとかは、マイキー達と行った方が楽しいハズなのに、私を誘ってくれる事が嬉しかった。場地が自分の好きな物を共有してくれている事が何よりも嬉しかった。
「場地の行きたい所が良いな」
「それじゃあ、いつもと変わんねぇだろ。オマエは行きたい所ねぇの?」
「場地が行きたい場所が私の行きたい場所」
「はぁ?なんだそりゃ」
すると、場地は少し黙った後に、小さな声で「遊園地とか?」と呟いた。
「え?遊園地?場地が?行きたいの?」
「オレじゃねーよ!明日香が行きたそうな場所、考えたんだよ!バーカ!」
場地は顔を真っ赤にしてそう叫んだ。
そういう理由で遊園地を選んだのかと、少し安堵の溜息を漏らした。
私の脳内では、メリーゴーランドの白馬に乗って長い黒髪を揺らしている姿や観覧車に乗って夕焼けを見ながら「綺麗だな」とか言っている場地が浮かんでしまって、鳥肌が立っていた。
これも全部、前に遊びに行った時に千冬の部屋にあった少女漫画のせいだ。場地が千冬に勧められて1巻くらい読んでいたので、その影響でそんな事を言い出したのかと思ってしまった。
「オレだって、オマエの行きたい所に行きてぇっつーの」
「え、あ、うん。そっか…」
「おー…」
場地の言葉に恥ずかしくなり、そんなセリフを言った場地も恥ずかしくなったのか、お互い俯いた。この甘ったるい雰囲気に慣れていないから、擽ったいようなむず痒いようなそんな感覚が身体中を巡り、落ち着かない。それと同時好きの感情が溢れて来て、胸が苦しくなる。
「動物園、行きたいな」
「えっ、動物園!?」
今日一の目の輝きを見せた場地にフッと笑いが零れる。将来の夢はペットショップと語るくらいに動物が大好きな場地は、絶対に動物園が行きたいだろうと思った。私自身も動物は好きだし、少年のような汚れの知らない純粋な瞳で動物を愛でる場地を見るのも好きだ。
「前にお母さんたちに連れて行って貰った所ってどこだっけ?」
「あー、埼玉のどっかだったよなぁ」
「あっ!東武動物公園だった気がする!」
「それだ。そこ行くか?」
「うん!そこがいい。場地の好きな遊園地もあるしね」
「それは違ぇっつーの」
いつもの調子に戻って、軽口を叩きあっているといつの間にか家の前に着いていて、場地は歩みをピタリと止めた。
「明日、九時にら迎えに来るわ」
「うん。分かった」
あっという間に家に着いてしまった事に少しだけ寂しさを覚えた。明日も会える約束だってしたのに、まだ離れたくないと思ってしまう。
幼馴染でいた時は、また明日も会えるとなると嬉しさが勝っていて寂しいなんて思わなかった。いきなりの感情の変化に戸惑ってしまう。
「オイ、入んねぇの?」
「うん、入るけど、もう少しだけ」
場地の服の袖をキュッと掴むと、彼は私の頬に手を添えて、上を向かせた。茶色の瞳と視線が絡まり、胸がトクンと優しく鳴った。
少しずつ近づく距離にゆっくりと目を閉じると、そっと触れるように静かに唇が重なった。
顔を離してから場地は頭に手を置いて、優しく撫でてくれた。いつもの乱暴な撫で方とは違い、戸惑うものの、暖かくて大きな手は変わらなくて、すぐに安堵へと変わった。
「また、明日ね」
「おう、またな」
場地はニッと笑って、今来た道を引き返して行った。遠ざかる後ろ姿を見るだけで、ドキドキと胸が鳴る。この感覚に慣れる日は訪れるのだろうか。
追い出されてしまった私達は、強制的に帰る事となり、途中まで五人で帰っていたが、それぞれの家の方向へ分かれていき、今では場地と二人になった。
「みんな、喜んでくれたね」
「アレはバカにしてるだけだろーが」
「マイキー達なりのお祝いの仕方なんじゃない?」
「はぁ?そんな祝い方、オレは嫌だね」
場地は嫌そうな顔をして、舌を出し「あんなん、生き地獄」と言葉を続けた。心底嫌そうに顔を歪めた場地は、ああいう類の揶揄われ方は、本当に苦手らしい。
「そういやぁ、明日、暇か?」
「うん、特に用事はないよ」
「じゃあ、どっか行こーぜ」
「うん、行きたい!初デートだね」
「はぁ?今までだって散々、出掛けてんじゃねぇか。今更、何を言ってんだぁ?」
「今までのはデートじゃないもん」
場地は興味なさげに欠伸をしながら、適当に相槌を打った。場地は基本、当日に「今から行く」という誘い方をする事が多いので、初デートだから前日に誘って来てくれたのではないのかと思っていたのだが、そうではなかったらしい。
「いつもは当日なのに、今日は前日からなの珍しいね」
「まぁ、なんだその、アレだ」
「やっぱり、初デートだから?」
「初デートはキモイからやめろ」
「キモいって失礼な!」
まさかのキモイという言葉が飛び出して来るとは思いもしていなかった為、思わず大きな声が出てしまった。その声に場地は顔を顰めて「うるせぇ」と私の額を指で弾いた。手加減はしているのだろうけど、馬鹿力の場地のデコピンは毎回地味に痛い。
昔、彼の本気の力のデコピンを食らった事がある三ツ谷は頭蓋骨が割れて脳が揺れたような感覚がすると言っていた。そんなゴリラのような力の場地が多少手加減したって痛い。
ヒリヒリと痛む額を摩っていると、場地は何食わぬ顔で「どっか行きたい所考えておけよ」と言った。
その言葉に驚いて場地の顔を凝視していると、居心地が悪そうに目を細めて私を見た。
「ンだよ」
「私の行きたい所でいいの?」
「何でそこに驚いてんだよ」
「だって、今まで急に家に来て、自分の行きたい場所に連れ回してたじゃない」
「そーだっけかぁ?」
「うん、そうだったよ」
当日に家に乗り込んで来て、小さい頃はマイキーに喧嘩を売りに行ったり、佐野家や佐野道場に行ったり、公園に連れ回された。中学に入ってからは、ツーリングやバイクを見に連れて行かれたりしていた。
突然の誘いが嫌という訳ではなかったし、場地の行きたい所に連れ回されるのも退屈では無かった。バイク見に行ったりだとかは、マイキー達と行った方が楽しいハズなのに、私を誘ってくれる事が嬉しかった。場地が自分の好きな物を共有してくれている事が何よりも嬉しかった。
「場地の行きたい所が良いな」
「それじゃあ、いつもと変わんねぇだろ。オマエは行きたい所ねぇの?」
「場地が行きたい場所が私の行きたい場所」
「はぁ?なんだそりゃ」
すると、場地は少し黙った後に、小さな声で「遊園地とか?」と呟いた。
「え?遊園地?場地が?行きたいの?」
「オレじゃねーよ!明日香が行きたそうな場所、考えたんだよ!バーカ!」
場地は顔を真っ赤にしてそう叫んだ。
そういう理由で遊園地を選んだのかと、少し安堵の溜息を漏らした。
私の脳内では、メリーゴーランドの白馬に乗って長い黒髪を揺らしている姿や観覧車に乗って夕焼けを見ながら「綺麗だな」とか言っている場地が浮かんでしまって、鳥肌が立っていた。
これも全部、前に遊びに行った時に千冬の部屋にあった少女漫画のせいだ。場地が千冬に勧められて1巻くらい読んでいたので、その影響でそんな事を言い出したのかと思ってしまった。
「オレだって、オマエの行きたい所に行きてぇっつーの」
「え、あ、うん。そっか…」
「おー…」
場地の言葉に恥ずかしくなり、そんなセリフを言った場地も恥ずかしくなったのか、お互い俯いた。この甘ったるい雰囲気に慣れていないから、擽ったいようなむず痒いようなそんな感覚が身体中を巡り、落ち着かない。それと同時好きの感情が溢れて来て、胸が苦しくなる。
「動物園、行きたいな」
「えっ、動物園!?」
今日一の目の輝きを見せた場地にフッと笑いが零れる。将来の夢はペットショップと語るくらいに動物が大好きな場地は、絶対に動物園が行きたいだろうと思った。私自身も動物は好きだし、少年のような汚れの知らない純粋な瞳で動物を愛でる場地を見るのも好きだ。
「前にお母さんたちに連れて行って貰った所ってどこだっけ?」
「あー、埼玉のどっかだったよなぁ」
「あっ!東武動物公園だった気がする!」
「それだ。そこ行くか?」
「うん!そこがいい。場地の好きな遊園地もあるしね」
「それは違ぇっつーの」
いつもの調子に戻って、軽口を叩きあっているといつの間にか家の前に着いていて、場地は歩みをピタリと止めた。
「明日、九時にら迎えに来るわ」
「うん。分かった」
あっという間に家に着いてしまった事に少しだけ寂しさを覚えた。明日も会える約束だってしたのに、まだ離れたくないと思ってしまう。
幼馴染でいた時は、また明日も会えるとなると嬉しさが勝っていて寂しいなんて思わなかった。いきなりの感情の変化に戸惑ってしまう。
「オイ、入んねぇの?」
「うん、入るけど、もう少しだけ」
場地の服の袖をキュッと掴むと、彼は私の頬に手を添えて、上を向かせた。茶色の瞳と視線が絡まり、胸がトクンと優しく鳴った。
少しずつ近づく距離にゆっくりと目を閉じると、そっと触れるように静かに唇が重なった。
顔を離してから場地は頭に手を置いて、優しく撫でてくれた。いつもの乱暴な撫で方とは違い、戸惑うものの、暖かくて大きな手は変わらなくて、すぐに安堵へと変わった。
「また、明日ね」
「おう、またな」
場地はニッと笑って、今来た道を引き返して行った。遠ざかる後ろ姿を見るだけで、ドキドキと胸が鳴る。この感覚に慣れる日は訪れるのだろうか。