勿忘草
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マイキーと別れ、私は一人残り、ジャングルジムに座り続け考える。
場地が私を好きという答えに、あまり自分の中でシックリと来ていない。
だけど、それ以上は一人で考えていたって答えなんて分かりはしないし、悩んでいたって仕方ないので、本人に聞きに行こうとした瞬間にポケットの中に入っていたケータイが震えた。
ケータイを取りだして見てみると、ディスプレイに映る"場地"の文字に胸が鳴った。
こんな偶然あるのかと、以心伝心とかそんなくだらない事も頭を過ってしまう程には、のぼせ上がっているようだ。
気持ちを充分に落ち着かせてから、通話ボタンを押してケータイを耳に当てるといつもより少し低い声で「よぉ」と聞こえた。
「もしもし。どうしたの?」
「オマエ、今どこ」
「昔、よくマイキーと一緒に遊んだ公園だよ」
「は?一人で?」
「さっきまでは、マイキーも一緒だったよ」
「ふーん。まぁ、いいや。そこに居ろ」
「はい?」
「今からそっち行く。そこ動くなよ」
「え?あ、ちょっと…!」
耳元から聞こえるのは、プツッと切れた音と通話を終了した事を知らせる、一定の繰り返される機械音のみ。
「本当に自分勝手な男…」
そうは言っても、嫌な気持ちにはなっていないし、今から場地に会えると思うと嬉しくなる。
場地がここへ来る間になんて聞こうか、彼から何を言われるのかを考えていたら、胸がドキドキし始めた。もし、本当に場地が私を好きで告白なんてされたらなんて答えよう。私も好きって言えば良いのだろうか。
今まで告白なんてされた事ないし、どうして良いかまるで分からない。
でも、チャンスだと思った。長年連れ添ったこの感情を告げられるのは、今しかないかもしれない。今日なら、ちゃんと言えるかもしれない。
そんな風に強気でいられるのは、さっきマイキーが「ずっと一緒にいろよ」と背中を押してくれたからかもしれない。
ドキドキしながら待っていると、公園の入口から場地が入ってくるのが見えた。
場地の元へ行こうとジャングルジムを降りていると下から「パンツ見えてんぞ」と聞こえた。
反射的に両手でスカートを押さえてしまった事で、ジャングルジムを掴んでいる物は何も無くなってしまい、そのまま後ろに傾いて行くのを感じた。
落ちると思った時にはもう何も出来ない状況で、次に来る衝撃と痛みに備え、ギュッと目を瞑り、奥歯を噛み締めた。
だけど、想像した衝撃は来ない事に不思議に思い、恐る恐る目を開けてみると目の前には場地の顔があった。
混乱した頭を整え、冷静に今の状況を分析してみると、私の体は場地にしっかりと抱きとめられていた。
「大丈夫か?」
「うん…、大丈夫」
私がそう答えると、場地は安堵の息を吐いてゆっくりと地面に降ろしてくれた。
「パンツ見せてきたり、上から降ってきたり忙しい奴だな」
「あの、パンツは忘れて貰って良いですか…?」
目を合わせると何だか面白くなってきてしまい、二人で笑った。
「受け止めてくれて、ありがとね」
「骨折れるかと思ったわ」
「ほんと、失礼な男!」
いつも通りのやり取りに安心して、さっきまでの緊張は薄れた。場地と居るとドキドキもするけど、安心もする。こんな気持ちになるのは世界中を探したって場地だけ。場地以外にこんな感情を抱く事なんて有り得ないとすら思う。
「そう言えば、何か用事でもあったの?」
私がそう切り出せば、先程まで笑っていた場地は、顔の表情を引き締めた。視線を一瞬だけ横にズラしたが、直ぐに私の目を見た。
「この間の言葉、覚えてるか?」
「コイツはオレのだからってやつ?」
「おー…」
場地は、少しだけ照れくさそうに頬を掻き、口をへの字に曲げたと思ったら、真一文字にしてみたり、変な口の動きを繰り返していた。
「私もどういう意味なのか、ずっと考えてたの。でも、場地の事だから深い意味なんてないのかもって思ったりもしてた」
「深い意味がねぇってなんだよ」
「場地にとっては深い意味で言ってなかったのかもしれないけど、私は凄く嬉しかった。だって、ずっと場地の事…」
そこまで言いかけると、場地は私の口を片手で抑えてその後の言葉を言わせてはくれなかった。
勇気を出して言葉を紡ごうとしたのに、不発に終わってしまった私の告白。一回途切れてしまったら、次は言える自信はない。
場地のバカ。大バカ。空気読め。そんな恨みを込めた悪口を心の中で呟いた。
すると、場地は押さえていた手を退けて真剣な瞳で私を見て「続きはオレが言う」と強い口調で言い切った。その真剣な瞳を見ていたら、むしろ、空気が読めなかったのは、私の方だったのかもしれないと思った。
ただ、黙ってお互いを見つめ合っている間も全身が心臓になってしまったかのように、ドクドクと脈打ち、緊張で足も震えて来てしまう。
場地はぎこちなく手を伸ばして、私の肩を抱き寄せて、耳元へ顔を近付けた。聞こえるか聞こえないかの声で「好きだ」と囁いた。
今まで、聞いた事のないような声に胸が締め付けられ、息が苦しくなった。
「…なんか言えよ」
私の頬を軽く摘んで、掠れた声でそう言ってくる場地を見上げれば、彼の頬は夕焼けのような色に染まっていた。
「私も、場地が好き」
しっかりと摘まれた頬から手を緩め、そのまま頬を包み込むように手を添えられた。お互い、しっかりと瞳を交わした後、距離を縮める彼に合わせ、ソッと目を閉じた。
重なった熱が離され、ゆっくりと目を開けてみれば、今までにないくらい、優しい表情をして笑う場地が居た。そして、二人で微笑み合う。
辺りを見渡せば、今までとは違う景色が広がっていた。見慣れた公園の風景だけれど、空はより青く、花はもっと鮮やかで、いつもよりキラキラしていて、暖かい色をしている気がした。
想いが通じ合うってこんなに素敵な事で、奇跡のような事なんだ。
心の中を占めるこの暖かい感情はきっと、幸せ。
幸せってこういう色をしてたんだね。
場地が私を好きという答えに、あまり自分の中でシックリと来ていない。
だけど、それ以上は一人で考えていたって答えなんて分かりはしないし、悩んでいたって仕方ないので、本人に聞きに行こうとした瞬間にポケットの中に入っていたケータイが震えた。
ケータイを取りだして見てみると、ディスプレイに映る"場地"の文字に胸が鳴った。
こんな偶然あるのかと、以心伝心とかそんなくだらない事も頭を過ってしまう程には、のぼせ上がっているようだ。
気持ちを充分に落ち着かせてから、通話ボタンを押してケータイを耳に当てるといつもより少し低い声で「よぉ」と聞こえた。
「もしもし。どうしたの?」
「オマエ、今どこ」
「昔、よくマイキーと一緒に遊んだ公園だよ」
「は?一人で?」
「さっきまでは、マイキーも一緒だったよ」
「ふーん。まぁ、いいや。そこに居ろ」
「はい?」
「今からそっち行く。そこ動くなよ」
「え?あ、ちょっと…!」
耳元から聞こえるのは、プツッと切れた音と通話を終了した事を知らせる、一定の繰り返される機械音のみ。
「本当に自分勝手な男…」
そうは言っても、嫌な気持ちにはなっていないし、今から場地に会えると思うと嬉しくなる。
場地がここへ来る間になんて聞こうか、彼から何を言われるのかを考えていたら、胸がドキドキし始めた。もし、本当に場地が私を好きで告白なんてされたらなんて答えよう。私も好きって言えば良いのだろうか。
今まで告白なんてされた事ないし、どうして良いかまるで分からない。
でも、チャンスだと思った。長年連れ添ったこの感情を告げられるのは、今しかないかもしれない。今日なら、ちゃんと言えるかもしれない。
そんな風に強気でいられるのは、さっきマイキーが「ずっと一緒にいろよ」と背中を押してくれたからかもしれない。
ドキドキしながら待っていると、公園の入口から場地が入ってくるのが見えた。
場地の元へ行こうとジャングルジムを降りていると下から「パンツ見えてんぞ」と聞こえた。
反射的に両手でスカートを押さえてしまった事で、ジャングルジムを掴んでいる物は何も無くなってしまい、そのまま後ろに傾いて行くのを感じた。
落ちると思った時にはもう何も出来ない状況で、次に来る衝撃と痛みに備え、ギュッと目を瞑り、奥歯を噛み締めた。
だけど、想像した衝撃は来ない事に不思議に思い、恐る恐る目を開けてみると目の前には場地の顔があった。
混乱した頭を整え、冷静に今の状況を分析してみると、私の体は場地にしっかりと抱きとめられていた。
「大丈夫か?」
「うん…、大丈夫」
私がそう答えると、場地は安堵の息を吐いてゆっくりと地面に降ろしてくれた。
「パンツ見せてきたり、上から降ってきたり忙しい奴だな」
「あの、パンツは忘れて貰って良いですか…?」
目を合わせると何だか面白くなってきてしまい、二人で笑った。
「受け止めてくれて、ありがとね」
「骨折れるかと思ったわ」
「ほんと、失礼な男!」
いつも通りのやり取りに安心して、さっきまでの緊張は薄れた。場地と居るとドキドキもするけど、安心もする。こんな気持ちになるのは世界中を探したって場地だけ。場地以外にこんな感情を抱く事なんて有り得ないとすら思う。
「そう言えば、何か用事でもあったの?」
私がそう切り出せば、先程まで笑っていた場地は、顔の表情を引き締めた。視線を一瞬だけ横にズラしたが、直ぐに私の目を見た。
「この間の言葉、覚えてるか?」
「コイツはオレのだからってやつ?」
「おー…」
場地は、少しだけ照れくさそうに頬を掻き、口をへの字に曲げたと思ったら、真一文字にしてみたり、変な口の動きを繰り返していた。
「私もどういう意味なのか、ずっと考えてたの。でも、場地の事だから深い意味なんてないのかもって思ったりもしてた」
「深い意味がねぇってなんだよ」
「場地にとっては深い意味で言ってなかったのかもしれないけど、私は凄く嬉しかった。だって、ずっと場地の事…」
そこまで言いかけると、場地は私の口を片手で抑えてその後の言葉を言わせてはくれなかった。
勇気を出して言葉を紡ごうとしたのに、不発に終わってしまった私の告白。一回途切れてしまったら、次は言える自信はない。
場地のバカ。大バカ。空気読め。そんな恨みを込めた悪口を心の中で呟いた。
すると、場地は押さえていた手を退けて真剣な瞳で私を見て「続きはオレが言う」と強い口調で言い切った。その真剣な瞳を見ていたら、むしろ、空気が読めなかったのは、私の方だったのかもしれないと思った。
ただ、黙ってお互いを見つめ合っている間も全身が心臓になってしまったかのように、ドクドクと脈打ち、緊張で足も震えて来てしまう。
場地はぎこちなく手を伸ばして、私の肩を抱き寄せて、耳元へ顔を近付けた。聞こえるか聞こえないかの声で「好きだ」と囁いた。
今まで、聞いた事のないような声に胸が締め付けられ、息が苦しくなった。
「…なんか言えよ」
私の頬を軽く摘んで、掠れた声でそう言ってくる場地を見上げれば、彼の頬は夕焼けのような色に染まっていた。
「私も、場地が好き」
しっかりと摘まれた頬から手を緩め、そのまま頬を包み込むように手を添えられた。お互い、しっかりと瞳を交わした後、距離を縮める彼に合わせ、ソッと目を閉じた。
重なった熱が離され、ゆっくりと目を開けてみれば、今までにないくらい、優しい表情をして笑う場地が居た。そして、二人で微笑み合う。
辺りを見渡せば、今までとは違う景色が広がっていた。見慣れた公園の風景だけれど、空はより青く、花はもっと鮮やかで、いつもよりキラキラしていて、暖かい色をしている気がした。
想いが通じ合うってこんなに素敵な事で、奇跡のような事なんだ。
心の中を占めるこの暖かい感情はきっと、幸せ。
幸せってこういう色をしてたんだね。