勿忘草
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いつもの喫茶店でマイキー達と集まった帰り、夕闇の中を明日香と二人で並んで歩く。
オレが誘った時には学校でマイキーとドラケンに誘われていたらしく、三人で向かっているとの返事が返って来た。
行きも一緒に行こうと思っていたが、アイツらに先越されてしまったらしい。帰りだけは譲らねぇと無駄に焦ってしまい、解散と同時に腕を掴んで外へ連れ出してしまった。ニヤニヤとしたクソムカつく顔をしたマイキーと三ツ谷の顔を見た時、自分の行動に心底後悔した。
なんとなく、視線を地面に落とすと、アスファルトに伸びた薄暗い影がピッタリとくっ付いていて、距離が近い事に気付く。
「寒いね」
「そりゃ、冬だからな」
「そうだけどさ。雪とか降りそう」
11月も超え、12月中盤。真冬に相応しい寒さが肌を刺す。吐く息が白くて、更に寒さを感じさせた。
手を口元に持って行き、息で暖めようとしている彼女の手に触れれば、氷のように冷たかった。
「場地の手、暖かいね」
「そうか?オマエが冷てぇだけじゃねぇ?」
「昔から場地の手は暖かいよ。この手、大好き」
ふわりと笑う彼女を見て、心がじんわりと暖かくなるのを感じた。
その感覚が不思議でむず痒くなって、抑えるように胸元の服をギュッと握り締めた。
不思議そうに見つめる明日香とオレの間に白い粒がはらはらと降りて来た。
「あ、雪だ。綺麗だね」
「そうだな」
「思ってなさそうな返事!」
舞い降りてきた雪が花びらのように辺りを舞い、それを掌に雪を乗せて無邪気に笑う明日香の横顔を見つめる。
ガキの頃からこうやって、雪が降る度にバカみてぇにはしゃいでいた事を思い返す。
昔は、よくマイキーに呼び出されて、エマと真一郎君の五人で雪合戦をしたりしていた。
懐かしい記憶を辿っていると、昔と同じように二人寄り添って、雪をまた一緒に見れた事が奇跡のような気もして来るから不思議だ。
この何気ない事が幸せだと感じられる事に自然と頬が緩む。柄にも無いことを考えてしまっている自覚はあるが、無意識にそう思ってしまう。
彼女と同じように掌に雪を乗せて見れば、泡のようにすぐに溶けて消えて行く。儚ぇなとつくづく思う。脆くてすぐに消えてしまう、人の命と一緒だ。
「私、雪って綺麗で好きなんだよね」
「すぐ消えちまうじゃねーか」
「儚いからこそ、綺麗なのが際立つんだよ」
「あっそ」
コイツに儚いって言葉は似合わねぇなと心の中で思った。彼女は強くて、しっかりと確かにここに存在していると思えるから、すぐに消えてしまう気がしない。
もし、明日香が自分の傍から消えてしまったら、どうなってしまうのだろうか。
なんて、考えてしまう自分はいつからこんなにも弱くなったのだろうかと自嘲する。
「肩に雪のってるよ」
肩に乗っている雪を手で払ってくれたのを見て、明日香の頭にも雪が微量だが積もっている事に気付き、手を伸ばして雪を払う。
お礼を言った彼女の頭に乗せていた手を滑らせ、頬に添えれば驚いたように目を見開いた。
「どうしたの…?」
「明日香」
「ん?」
「…何でもねぇ」
スっと手を下ろして、ポケットに手を突っ込んで歩き出す。後ろから「何なの?」と聞こえるが歩くのを止めずにそのまま進み続ける。
「言えねぇよなぁ。好きだなんて」
ボソッと呟いた声は、未だに後ろで「何だったの?」と言っている彼女には届いて無さそうだ。
いつでも、明日香には笑っていて欲しい。
本当なら悲しい思いも、辛い思いもさせたくはないと思う。
こんな風になってしまったオレとじゃなく、真っ当に生きている別の誰かと幸せになる事が一番良いんじゃないかと考えたりもした。
だけど、突き放す事も手放す事も出来なくて、傍にいて欲しいと心は言っている事には気付いている。ただ、素直に一緒に居たいと思ってしまう。
振り返って「うっせぇ」と言えば、彼女は「はぁ?」と怒りの声をあげて、更にうるさくなった。
「変な場地!」
「変とかオマエに言われたくねぇな」
「マイキーに変わったヤツって言われてる場地に言われたくありません」
「オレのどこが変わってんだよ!?」
「自覚なしはもうお手上げですね」
わざとらしく、ヤレヤレとため息をつく明日香の頭を軽く叩いてやると彼女は腕を軽く叩き返して来た。
「こんな変なヤツの面倒をみれるの私くらいだよね」
「オレが変なオマエの面倒見てやってんだろーが」
「それだけは世界がひっくり返っても有り得ない」
ムスッとしていた表情から笑顔に変わり、コロコロと表情を変える彼女の顔を見つめる。
柔らかい顔で笑う顔が好きだ。それを自分に向けてくれる瞬間が好きだ。そう思うと、どうしても失いたくなくて胸が苦しくなる。
「雪、積もるかなぁ。みんなで雪合戦したいね」
明日の事を想像して楽しそに微笑む明日香の顔を見つめる。いつでも思い出せるようにと、一番好きな彼女の表情を目に焼き付けるように眺め続けた。
オレが誘った時には学校でマイキーとドラケンに誘われていたらしく、三人で向かっているとの返事が返って来た。
行きも一緒に行こうと思っていたが、アイツらに先越されてしまったらしい。帰りだけは譲らねぇと無駄に焦ってしまい、解散と同時に腕を掴んで外へ連れ出してしまった。ニヤニヤとしたクソムカつく顔をしたマイキーと三ツ谷の顔を見た時、自分の行動に心底後悔した。
なんとなく、視線を地面に落とすと、アスファルトに伸びた薄暗い影がピッタリとくっ付いていて、距離が近い事に気付く。
「寒いね」
「そりゃ、冬だからな」
「そうだけどさ。雪とか降りそう」
11月も超え、12月中盤。真冬に相応しい寒さが肌を刺す。吐く息が白くて、更に寒さを感じさせた。
手を口元に持って行き、息で暖めようとしている彼女の手に触れれば、氷のように冷たかった。
「場地の手、暖かいね」
「そうか?オマエが冷てぇだけじゃねぇ?」
「昔から場地の手は暖かいよ。この手、大好き」
ふわりと笑う彼女を見て、心がじんわりと暖かくなるのを感じた。
その感覚が不思議でむず痒くなって、抑えるように胸元の服をギュッと握り締めた。
不思議そうに見つめる明日香とオレの間に白い粒がはらはらと降りて来た。
「あ、雪だ。綺麗だね」
「そうだな」
「思ってなさそうな返事!」
舞い降りてきた雪が花びらのように辺りを舞い、それを掌に雪を乗せて無邪気に笑う明日香の横顔を見つめる。
ガキの頃からこうやって、雪が降る度にバカみてぇにはしゃいでいた事を思い返す。
昔は、よくマイキーに呼び出されて、エマと真一郎君の五人で雪合戦をしたりしていた。
懐かしい記憶を辿っていると、昔と同じように二人寄り添って、雪をまた一緒に見れた事が奇跡のような気もして来るから不思議だ。
この何気ない事が幸せだと感じられる事に自然と頬が緩む。柄にも無いことを考えてしまっている自覚はあるが、無意識にそう思ってしまう。
彼女と同じように掌に雪を乗せて見れば、泡のようにすぐに溶けて消えて行く。儚ぇなとつくづく思う。脆くてすぐに消えてしまう、人の命と一緒だ。
「私、雪って綺麗で好きなんだよね」
「すぐ消えちまうじゃねーか」
「儚いからこそ、綺麗なのが際立つんだよ」
「あっそ」
コイツに儚いって言葉は似合わねぇなと心の中で思った。彼女は強くて、しっかりと確かにここに存在していると思えるから、すぐに消えてしまう気がしない。
もし、明日香が自分の傍から消えてしまったら、どうなってしまうのだろうか。
なんて、考えてしまう自分はいつからこんなにも弱くなったのだろうかと自嘲する。
「肩に雪のってるよ」
肩に乗っている雪を手で払ってくれたのを見て、明日香の頭にも雪が微量だが積もっている事に気付き、手を伸ばして雪を払う。
お礼を言った彼女の頭に乗せていた手を滑らせ、頬に添えれば驚いたように目を見開いた。
「どうしたの…?」
「明日香」
「ん?」
「…何でもねぇ」
スっと手を下ろして、ポケットに手を突っ込んで歩き出す。後ろから「何なの?」と聞こえるが歩くのを止めずにそのまま進み続ける。
「言えねぇよなぁ。好きだなんて」
ボソッと呟いた声は、未だに後ろで「何だったの?」と言っている彼女には届いて無さそうだ。
いつでも、明日香には笑っていて欲しい。
本当なら悲しい思いも、辛い思いもさせたくはないと思う。
こんな風になってしまったオレとじゃなく、真っ当に生きている別の誰かと幸せになる事が一番良いんじゃないかと考えたりもした。
だけど、突き放す事も手放す事も出来なくて、傍にいて欲しいと心は言っている事には気付いている。ただ、素直に一緒に居たいと思ってしまう。
振り返って「うっせぇ」と言えば、彼女は「はぁ?」と怒りの声をあげて、更にうるさくなった。
「変な場地!」
「変とかオマエに言われたくねぇな」
「マイキーに変わったヤツって言われてる場地に言われたくありません」
「オレのどこが変わってんだよ!?」
「自覚なしはもうお手上げですね」
わざとらしく、ヤレヤレとため息をつく明日香の頭を軽く叩いてやると彼女は腕を軽く叩き返して来た。
「こんな変なヤツの面倒をみれるの私くらいだよね」
「オレが変なオマエの面倒見てやってんだろーが」
「それだけは世界がひっくり返っても有り得ない」
ムスッとしていた表情から笑顔に変わり、コロコロと表情を変える彼女の顔を見つめる。
柔らかい顔で笑う顔が好きだ。それを自分に向けてくれる瞬間が好きだ。そう思うと、どうしても失いたくなくて胸が苦しくなる。
「雪、積もるかなぁ。みんなで雪合戦したいね」
明日の事を想像して楽しそに微笑む明日香の顔を見つめる。いつでも思い出せるようにと、一番好きな彼女の表情を目に焼き付けるように眺め続けた。