勿忘草
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夏が終わり秋がやって来て、そんな秋も終わりに向けて肌寒さを増していっている頃。
渋谷の繁華街を唸りながら練り歩く。毎年、十一月になると頭を悩ませている。何故なら、十一月三日と言えば、場地の誕生日。毎年、プレゼントを渡すのは恒例になっている。
私の記憶が正しければ、小学三年生くらいから、渡しているような気がする。小学生、中学生ではお金もそんなに持っていないので高価なものはあげれないので、毎年誕生日ケーキやお菓子を作ってプレゼントをしていた。場地は嬉しそうに受け取ってくれるし、美味しそうに食べてくれるので、毎年張り切ってしまう。
今年はお菓子ではなく、形に残るモノをプレゼントしたいと思ったのだが、未だに何をあげたら良いのか決まらず、街をフラフラしている。
「あれ、明日香さん?」
聞き慣れた声に振り返れば、千冬が立っていた。千冬は私と分かった瞬間に「やっぱり!」と人懐っこい笑顔を浮かべた。
「こんにちは。今日は場地さんは一緒じゃないんですか?」
「うん。私は、場地の誕生日プレゼント買いに来たの」
「えっ、場地さんの誕生日近いんですか!?」
「うん。十一月三日だよ」
千冬は知らなかったのか、目を見開いて慌て出し「どうしよう」と呟いていた。場地は自分から誕生日だと言うタイプではないので知らなかったのだろう。誕生日が明後日に迫っている事に千冬はソワソワし始めていた。
「そうだ。今年は、二人で一緒にプレゼント渡そうよ」
「オレも一緒にいいんですか?」
「うん。千冬も一緒なら場地も喜ぶと思うんだ」
「是非、ご一緒させて下さい!」
今年は千冬と一緒に渡す事にして、何を買おうかと相談しながらお店をショーウィンドウ越しに眺めながら街中を歩く。
「去年は何をあげたんですか?」
「去年はあげてないの」
「え、どうしてですか?」
「去年はケーキ作ったんだけど、連絡も取れなかったし、どこ探しても見つからなくて会えなかったから」
「場地さん、どうしちゃったんですかね」
去年の事もあるから、今年は食べ物ではなく形に残る物をあげようとしていた。そうすれば、当日会えなくても次の日でも渡せる。本当は当日に渡せるのが一番いいのだけど。
二人のお小遣いを合わせればそれなりの物が買えるし、場地にも喜んで貰えるような物が買えるだろう。身に付けられる物がいいよねと話がまとまり、千冬がピアスを買ったという行き付けのお店へと足を運んだ。
場地はピアスホールはないので、それ以外で身に付けられる物を探そうと店内をじっくり見て回っていると、視界にキラッと光るものが映った。
それは、お店のライトに照らされて光を放ったシルバーのシンプルなバングルだった。手に取って場地に似合いそうだなと見ていると、他の場所を見に行っていた千冬が戻って来て、私の手元を覗き込んで来た。
「それ、場地さんに似合いそうですね」
「私もそう思ってたの」
「場地さんがコレ付けたら、カッケェだろうな…」
「シルバーって月のエネルギーが宿ってるの知ってる?」
「月のエネルギー?」
「うん。心を落ち着かせたり、悩みで出口が見つからない時に身に付けると良いらしいよ」
「へぇ。そんな効果があるんですね」
千冬は自分の付けているシルバーのピアスにそっと触れた。
「あと、身に付けると幸せになれるって言い伝えもあるみたい」
「これにしましょうよ!これ付けてる場地さんを見てぇし、良い言い伝えもあるみたいだし!」
「そうだね。これにしよっか!」
意見がバッチリ合ったので、ほぼ即決でシルバーのバングルを購入する事にし、二人でお金を出しあって無事に購入する事が出来た。
お店を出て、改めて千冬に向き合ってお礼を言う。
「いえ、オレこそ場地さんの誕生日知れて良かったっス」
「当日は素敵な誕生日にしようね」
「はい!」
目的は達成する事が出来たのでここで解散する事にして、千冬に別れを告げて踵を返すと「ちょっと待って下さい!」と千冬に腕を掴まれ、引き止められた。
振り返って「どうしたの?」と問いかけるが、彼は視線を泳がして言いづらそうに口ごもっていた。
「…オレの勘違いかもしれないっスけど、何かありました?」
「えっ?何が?」
「明日香さん、たまに場地さんの話をする時、悲しい顔してるの自分で気が付いてますか?今日は特に気になるんスけど」
思わず、目を見開いて固まってしまった。表には出さないように気を付けているつもりだったのだが、千冬にはバレていたらしい。
特に場地の前ではそんな雰囲気を感じさせないよう振る舞っていたが、場地が居ないとどうも緩んでしまうらしい。千冬の真剣な瞳を見たら、話してしまおうかと思ってしまう。
千冬ならきっと受けて止めてくれるだろうし、必ず場地の味方になってくれるだろう。でも、私が勝手に話していい事ではない。場地の事だけでなく、マイキーの事も全部話してしまう事になってしまう。
第三者の私が軽々しく言っていい内容ではなかった為、千冬には何も言えず言葉を濁すしかなかった。
「そんな事ないよ。千冬の気のせいじゃないかな」
「…そうですか。すみません」
千冬は少しだけ悲しそうに笑った。嘘ついてしまって、ごめんねと心の中で謝罪の言葉を述べて、視線を地面に落とした。千冬の傷ついたような表情を見ているのに耐えられそうになかった。
視線は合わせないように少しだけ顔を上げて、心苦しい気持ちを抑えながら薄ら作り笑いを浮かべた。
「当日はよろしくね」
「はい、こちらこそ」
お互いぎこちなく笑って、その場で千冬と別れた。千冬の遠くなる背中を見えなくなるまで見送ってから、歩き出す。
本当は去年、場地に会えなかった理由は何となく分かっている。これから先、彼が自分の生まれたを素直に喜べる日は来るのだろうか。
渋谷の繁華街を唸りながら練り歩く。毎年、十一月になると頭を悩ませている。何故なら、十一月三日と言えば、場地の誕生日。毎年、プレゼントを渡すのは恒例になっている。
私の記憶が正しければ、小学三年生くらいから、渡しているような気がする。小学生、中学生ではお金もそんなに持っていないので高価なものはあげれないので、毎年誕生日ケーキやお菓子を作ってプレゼントをしていた。場地は嬉しそうに受け取ってくれるし、美味しそうに食べてくれるので、毎年張り切ってしまう。
今年はお菓子ではなく、形に残るモノをプレゼントしたいと思ったのだが、未だに何をあげたら良いのか決まらず、街をフラフラしている。
「あれ、明日香さん?」
聞き慣れた声に振り返れば、千冬が立っていた。千冬は私と分かった瞬間に「やっぱり!」と人懐っこい笑顔を浮かべた。
「こんにちは。今日は場地さんは一緒じゃないんですか?」
「うん。私は、場地の誕生日プレゼント買いに来たの」
「えっ、場地さんの誕生日近いんですか!?」
「うん。十一月三日だよ」
千冬は知らなかったのか、目を見開いて慌て出し「どうしよう」と呟いていた。場地は自分から誕生日だと言うタイプではないので知らなかったのだろう。誕生日が明後日に迫っている事に千冬はソワソワし始めていた。
「そうだ。今年は、二人で一緒にプレゼント渡そうよ」
「オレも一緒にいいんですか?」
「うん。千冬も一緒なら場地も喜ぶと思うんだ」
「是非、ご一緒させて下さい!」
今年は千冬と一緒に渡す事にして、何を買おうかと相談しながらお店をショーウィンドウ越しに眺めながら街中を歩く。
「去年は何をあげたんですか?」
「去年はあげてないの」
「え、どうしてですか?」
「去年はケーキ作ったんだけど、連絡も取れなかったし、どこ探しても見つからなくて会えなかったから」
「場地さん、どうしちゃったんですかね」
去年の事もあるから、今年は食べ物ではなく形に残る物をあげようとしていた。そうすれば、当日会えなくても次の日でも渡せる。本当は当日に渡せるのが一番いいのだけど。
二人のお小遣いを合わせればそれなりの物が買えるし、場地にも喜んで貰えるような物が買えるだろう。身に付けられる物がいいよねと話がまとまり、千冬がピアスを買ったという行き付けのお店へと足を運んだ。
場地はピアスホールはないので、それ以外で身に付けられる物を探そうと店内をじっくり見て回っていると、視界にキラッと光るものが映った。
それは、お店のライトに照らされて光を放ったシルバーのシンプルなバングルだった。手に取って場地に似合いそうだなと見ていると、他の場所を見に行っていた千冬が戻って来て、私の手元を覗き込んで来た。
「それ、場地さんに似合いそうですね」
「私もそう思ってたの」
「場地さんがコレ付けたら、カッケェだろうな…」
「シルバーって月のエネルギーが宿ってるの知ってる?」
「月のエネルギー?」
「うん。心を落ち着かせたり、悩みで出口が見つからない時に身に付けると良いらしいよ」
「へぇ。そんな効果があるんですね」
千冬は自分の付けているシルバーのピアスにそっと触れた。
「あと、身に付けると幸せになれるって言い伝えもあるみたい」
「これにしましょうよ!これ付けてる場地さんを見てぇし、良い言い伝えもあるみたいだし!」
「そうだね。これにしよっか!」
意見がバッチリ合ったので、ほぼ即決でシルバーのバングルを購入する事にし、二人でお金を出しあって無事に購入する事が出来た。
お店を出て、改めて千冬に向き合ってお礼を言う。
「いえ、オレこそ場地さんの誕生日知れて良かったっス」
「当日は素敵な誕生日にしようね」
「はい!」
目的は達成する事が出来たのでここで解散する事にして、千冬に別れを告げて踵を返すと「ちょっと待って下さい!」と千冬に腕を掴まれ、引き止められた。
振り返って「どうしたの?」と問いかけるが、彼は視線を泳がして言いづらそうに口ごもっていた。
「…オレの勘違いかもしれないっスけど、何かありました?」
「えっ?何が?」
「明日香さん、たまに場地さんの話をする時、悲しい顔してるの自分で気が付いてますか?今日は特に気になるんスけど」
思わず、目を見開いて固まってしまった。表には出さないように気を付けているつもりだったのだが、千冬にはバレていたらしい。
特に場地の前ではそんな雰囲気を感じさせないよう振る舞っていたが、場地が居ないとどうも緩んでしまうらしい。千冬の真剣な瞳を見たら、話してしまおうかと思ってしまう。
千冬ならきっと受けて止めてくれるだろうし、必ず場地の味方になってくれるだろう。でも、私が勝手に話していい事ではない。場地の事だけでなく、マイキーの事も全部話してしまう事になってしまう。
第三者の私が軽々しく言っていい内容ではなかった為、千冬には何も言えず言葉を濁すしかなかった。
「そんな事ないよ。千冬の気のせいじゃないかな」
「…そうですか。すみません」
千冬は少しだけ悲しそうに笑った。嘘ついてしまって、ごめんねと心の中で謝罪の言葉を述べて、視線を地面に落とした。千冬の傷ついたような表情を見ているのに耐えられそうになかった。
視線は合わせないように少しだけ顔を上げて、心苦しい気持ちを抑えながら薄ら作り笑いを浮かべた。
「当日はよろしくね」
「はい、こちらこそ」
お互いぎこちなく笑って、その場で千冬と別れた。千冬の遠くなる背中を見えなくなるまで見送ってから、歩き出す。
本当は去年、場地に会えなかった理由は何となく分かっている。これから先、彼が自分の生まれたを素直に喜べる日は来るのだろうか。