勿忘草
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場地に千冬を紹介して貰ってから、一ヶ月程が経過した。その間も三人でよく会っていて、色んな話を三人でした。基本、二人の住む団地の階段の踊り場でよく話すのだけれど、先週なんて、私が帰った後もずっと二人で話し込んでいたらしく、それは朝まで続いたらしい。
二人は相当、意気投合しているようで日に日に仲が深まっているように見えた。
場地ほどではないけれど、私も千冬との仲は最初の頃よりも深まったとは思う。
千冬から、すぐ暴走してしまう場地の止め方の相談をされる事が常だ。相談の為にと連絡先を交換したのだが、それ以外の用件でも千冬とは連絡を取ったりもする。
今で言えば、「場地さん、屋上で爆睡中」の文面と共に屋上で大の字になって、涎を垂らしながら、ダラしない顔で寝ている場地の写メが送られて来ている。こういった、場地絡みのメールがよく届いていた。
送られて来た写真を眺めて、フと笑みが零れた。
「なに笑ってんの?」
「ほら、これ見て」
マイキーがひょいっとケータイを覗き込んで来たので、彼に見えやすいように画面をマイキーの方へ傾ける。
給食を食べにお昼になるとやって来るマイキーとドラケンに給食を食べ終わった後、屋上行くから来いよと誘われたので、一緒に屋上に来ている。食後のデザートで持参した、たい焼きを頬張りながら隣に座っているマイキーがケータイをまじまじと見て、その隣からドラケンも覗き込んで来た。
「だらしねぇ寝顔だなー」
「オマエは人の事、言えねぇぞ」
「確かに。マイキー、この間なんて白目剥いて寝てたよ」
「は?マジ?」
「「マジ」」
ドラケンと声を揃えて頷けば、マイキーはガックリと肩を落とした。
あのマイキーの寝顔は傑作だったので、こっそりと写真を撮って、後で場地に見せて二人で笑った。この事がマイキーにバレたら拗ねちゃいそうだから黙っておくけど。
「これ送って来たのって千冬か?」
「うん、そう。なんで千冬を知ってるの?」
「あ?だって、場地ンとこのヤツだろ?」
「場地の所の?」
「聞いてねぇの?場地が連れて来て、壱番隊に入れてたぞ」
「何それ、聞いてないよ!いつの間に千冬も東卍に入ってたの?」
「最近だよなぁ?」
ドラケンとマイキーは顔を見合わせて頷いていた。私の知らぬ間に千冬は東卍入りをしていたらしい。最近は、よく三人でいる事が多いのだから、一言くらい言ってくれたって良かったじゃないと、少し寂しくなる。
ムッとした表情をしていたらしく、ドラケンに「拗ねんなよ」と苦笑いで慰められてしまった。
「別に拗ねてないです〜」
「言い方が拗ねてんじゃん」
マイキーに頬をツンっと人差し指でつつかれて、なんとなく一気に毒気を抜かれたような気がした。
今日もどうせ、団地の階段の踊り場で屯しているだろうから、一言文句でも言ってやろうと決めて、放課後、団地へと向かうと千冬に返信をした。
*
放課後になり、団地へと足を進めていれば、前から見知った顔が二つ現れた。場地と千冬だった。二人は私の顔を見るなり、歩みを止めて場地は片手を上げて「よぉ」と声をかけて来た。
千冬は礼儀正しく頭を下げて挨拶をしてくれた。
「今、団地に向かってる途中だったの」
「オレらも今からオマエん家行く途中だったんだわ」
「え?千冬に団地に行くってメール返したけど」
「ヤベっ、ケータイ見てねぇ…!」
千冬は慌ててポケットからケータイを取り出して、確認するとちゃんとメールは届いていたようで「すみません、確認してませんでした」と頭を下げた。
「ちゃんと会えたし、気にしないで」
「すみません…」
シュンとしてしまった千冬に元気出してと肩を叩くと小さく頷いた。
すると、場地は「オマエに千冬から話あるってよ」と親指で千冬を指さした。
千冬はすぐに顔を引き締めて、姿勢を正して真っ直ぐに私の顔を見た。
「オレ、東京卍會壱番隊の特攻に就任しました」
「あ、そう!今日、マイキーとドラケンから聞いたの!」
「なんだ。アイツら、言っちまったのか」
「何で言ってくれなかったの?」
「千冬が特服出来てから、それ着てオマエに報告してぇって言うからよぉ」
「はい。ちゃんと着てからじゃないと報告するのにも格好が付かないかなって」
黒に金の刺繍の東卍の特服を着こなして、ピシッと立つ姿は様になっていて、カッコよく見えた。
「千冬が何も言ってくれないから、今から、乗り込みに行こうとしてたんだよね」
場地は驚いたように目を見開き、口まで開けて私を凝視した。何故、そんなに驚いた顔をしているのだろうと首を傾げると、場地はとんでもないセリフを口にした。
「オマエ、千冬とタイマン張る気だったのか?」
「はい?」
「千冬ぅ、負けんなよ?」
「え、あの、場地さん…?」
「コイツ、一発であの三ツ谷を沈める女だからな。油断すんなよ」
「えっ!明日香さん、喧嘩強いんですか!?スゲェ!!」
私の乗り込みに行くは文句を言いに行くの意味だったのだが、場地には、乗り込みに行くはタイマンという風に捉えたらしい。
その思考回路は場地らしいとは思うけれど、タイマン張るワケがない。しかも、千冬に喧嘩を売るほど自分の実力を過信してはいない。
戸惑い気味だった千冬も場地の言葉に尊敬の眼差しを送って来てしまっている。
「違う!嘘を言わないでよ」
「嘘じゃねーだろ。顔面に懇親の一撃喰らって三ツ谷は太刀打ちすら出来なかっただろ」
「あの三ツ谷くんをぶっ飛ばすなんてカッケェ!」
「千冬、この人に騙されないで」
別にぶっ飛ばしてもないし、海でドッチボールしてただけだ。
だけれど、千冬の耳には私の声は届いていないようだで、ずっと、「スゲェ!」「カッケェ」「場地さんの幼馴染は強い人ばっかりですね!」と大はしゃぎだ。
すると、千冬は急に真顔になって私を見て、眉を下げた。
「でも、オレ、明日香さんを殴れねぇッス!だから、タイマンはちょっと…」
「アホ!」
千冬の頭にチョップを落とせば、頭を抑えて顔を顰めていた。場地は「頭割れてねぇ?」と千冬の頭を心配そうに見てから、引いたような視線を私に寄越した。
失礼極まりない場地と場地の言うことは絶対の千冬にため息を零した。
でも、なんだかこういうやり取りがどこか懐かしくて、少し笑みを零す。
一虎と三人で冗談を言い合って、くだらない事で笑い合っていた事を思い出して、一虎も戻って来たら、今度は四人で笑い合えたらいいなと思う。
今まで通りの元の関係に戻れるか、不安は過ぎるが、その不安を打ち消すかのように頭を横に振った。
「千冬、東卍入り、おめでとう」
「はい!ありがとうございます」
今は、目の前のおめでたい出来事を純粋にお祝いしたい。
千冬は太陽のようなキラキラの笑顔を浮かべると、場地も嬉しそうに笑っていた。
二人は相当、意気投合しているようで日に日に仲が深まっているように見えた。
場地ほどではないけれど、私も千冬との仲は最初の頃よりも深まったとは思う。
千冬から、すぐ暴走してしまう場地の止め方の相談をされる事が常だ。相談の為にと連絡先を交換したのだが、それ以外の用件でも千冬とは連絡を取ったりもする。
今で言えば、「場地さん、屋上で爆睡中」の文面と共に屋上で大の字になって、涎を垂らしながら、ダラしない顔で寝ている場地の写メが送られて来ている。こういった、場地絡みのメールがよく届いていた。
送られて来た写真を眺めて、フと笑みが零れた。
「なに笑ってんの?」
「ほら、これ見て」
マイキーがひょいっとケータイを覗き込んで来たので、彼に見えやすいように画面をマイキーの方へ傾ける。
給食を食べにお昼になるとやって来るマイキーとドラケンに給食を食べ終わった後、屋上行くから来いよと誘われたので、一緒に屋上に来ている。食後のデザートで持参した、たい焼きを頬張りながら隣に座っているマイキーがケータイをまじまじと見て、その隣からドラケンも覗き込んで来た。
「だらしねぇ寝顔だなー」
「オマエは人の事、言えねぇぞ」
「確かに。マイキー、この間なんて白目剥いて寝てたよ」
「は?マジ?」
「「マジ」」
ドラケンと声を揃えて頷けば、マイキーはガックリと肩を落とした。
あのマイキーの寝顔は傑作だったので、こっそりと写真を撮って、後で場地に見せて二人で笑った。この事がマイキーにバレたら拗ねちゃいそうだから黙っておくけど。
「これ送って来たのって千冬か?」
「うん、そう。なんで千冬を知ってるの?」
「あ?だって、場地ンとこのヤツだろ?」
「場地の所の?」
「聞いてねぇの?場地が連れて来て、壱番隊に入れてたぞ」
「何それ、聞いてないよ!いつの間に千冬も東卍に入ってたの?」
「最近だよなぁ?」
ドラケンとマイキーは顔を見合わせて頷いていた。私の知らぬ間に千冬は東卍入りをしていたらしい。最近は、よく三人でいる事が多いのだから、一言くらい言ってくれたって良かったじゃないと、少し寂しくなる。
ムッとした表情をしていたらしく、ドラケンに「拗ねんなよ」と苦笑いで慰められてしまった。
「別に拗ねてないです〜」
「言い方が拗ねてんじゃん」
マイキーに頬をツンっと人差し指でつつかれて、なんとなく一気に毒気を抜かれたような気がした。
今日もどうせ、団地の階段の踊り場で屯しているだろうから、一言文句でも言ってやろうと決めて、放課後、団地へと向かうと千冬に返信をした。
*
放課後になり、団地へと足を進めていれば、前から見知った顔が二つ現れた。場地と千冬だった。二人は私の顔を見るなり、歩みを止めて場地は片手を上げて「よぉ」と声をかけて来た。
千冬は礼儀正しく頭を下げて挨拶をしてくれた。
「今、団地に向かってる途中だったの」
「オレらも今からオマエん家行く途中だったんだわ」
「え?千冬に団地に行くってメール返したけど」
「ヤベっ、ケータイ見てねぇ…!」
千冬は慌ててポケットからケータイを取り出して、確認するとちゃんとメールは届いていたようで「すみません、確認してませんでした」と頭を下げた。
「ちゃんと会えたし、気にしないで」
「すみません…」
シュンとしてしまった千冬に元気出してと肩を叩くと小さく頷いた。
すると、場地は「オマエに千冬から話あるってよ」と親指で千冬を指さした。
千冬はすぐに顔を引き締めて、姿勢を正して真っ直ぐに私の顔を見た。
「オレ、東京卍會壱番隊の特攻に就任しました」
「あ、そう!今日、マイキーとドラケンから聞いたの!」
「なんだ。アイツら、言っちまったのか」
「何で言ってくれなかったの?」
「千冬が特服出来てから、それ着てオマエに報告してぇって言うからよぉ」
「はい。ちゃんと着てからじゃないと報告するのにも格好が付かないかなって」
黒に金の刺繍の東卍の特服を着こなして、ピシッと立つ姿は様になっていて、カッコよく見えた。
「千冬が何も言ってくれないから、今から、乗り込みに行こうとしてたんだよね」
場地は驚いたように目を見開き、口まで開けて私を凝視した。何故、そんなに驚いた顔をしているのだろうと首を傾げると、場地はとんでもないセリフを口にした。
「オマエ、千冬とタイマン張る気だったのか?」
「はい?」
「千冬ぅ、負けんなよ?」
「え、あの、場地さん…?」
「コイツ、一発であの三ツ谷を沈める女だからな。油断すんなよ」
「えっ!明日香さん、喧嘩強いんですか!?スゲェ!!」
私の乗り込みに行くは文句を言いに行くの意味だったのだが、場地には、乗り込みに行くはタイマンという風に捉えたらしい。
その思考回路は場地らしいとは思うけれど、タイマン張るワケがない。しかも、千冬に喧嘩を売るほど自分の実力を過信してはいない。
戸惑い気味だった千冬も場地の言葉に尊敬の眼差しを送って来てしまっている。
「違う!嘘を言わないでよ」
「嘘じゃねーだろ。顔面に懇親の一撃喰らって三ツ谷は太刀打ちすら出来なかっただろ」
「あの三ツ谷くんをぶっ飛ばすなんてカッケェ!」
「千冬、この人に騙されないで」
別にぶっ飛ばしてもないし、海でドッチボールしてただけだ。
だけれど、千冬の耳には私の声は届いていないようだで、ずっと、「スゲェ!」「カッケェ」「場地さんの幼馴染は強い人ばっかりですね!」と大はしゃぎだ。
すると、千冬は急に真顔になって私を見て、眉を下げた。
「でも、オレ、明日香さんを殴れねぇッス!だから、タイマンはちょっと…」
「アホ!」
千冬の頭にチョップを落とせば、頭を抑えて顔を顰めていた。場地は「頭割れてねぇ?」と千冬の頭を心配そうに見てから、引いたような視線を私に寄越した。
失礼極まりない場地と場地の言うことは絶対の千冬にため息を零した。
でも、なんだかこういうやり取りがどこか懐かしくて、少し笑みを零す。
一虎と三人で冗談を言い合って、くだらない事で笑い合っていた事を思い出して、一虎も戻って来たら、今度は四人で笑い合えたらいいなと思う。
今まで通りの元の関係に戻れるか、不安は過ぎるが、その不安を打ち消すかのように頭を横に振った。
「千冬、東卍入り、おめでとう」
「はい!ありがとうございます」
今は、目の前のおめでたい出来事を純粋にお祝いしたい。
千冬は太陽のようなキラキラの笑顔を浮かべると、場地も嬉しそうに笑っていた。