勿忘草
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春休みも明けて二年生へと進級し、初日は始業式とHRを行って午前中で学校は下校となる。
クラス替えが行われ、嬉しい事にマイキーとドラケンと同じクラスになる事が出来た。
かと言って、ほぼ学校には来ていないので同じクラスでも一緒に行動出来るワケでもないが、気持ち的には嬉しかった。
珍しく、二人が朝からちゃんと学校に来ていたので真面目に始業式に参加すると思えば、マイキーは「今日、給食ねぇの?」と不機嫌そうに顔を顰めてから、机に顔を突っ伏してふて寝を始めてしまった。ドラケンは「こうなったら、当分起きねーよ」と言って、彼も一緒に机に突っ伏して寝てしまった。
二人が教室でスヤスヤと眠る中、始業式とHRは終わり下校となった。そのタイミングでドラケンは目を覚まし、マイキーを叩き起していた。
目を覚ましたマイキーは垂らしながら爆睡していたようで、口元を拭いながら起き上がった。
「帰んぞ」
「腹減った」
マイキーの呟いた一言で二人はこの後、ご飯を食べに行く事に決まったようだ。ドラケンが誘ってくれたが、今日は場地の家に寄ろうと思っていたので、残念だが断った。
門の外まで二人と一緒に帰り、校門の前で別れた。
自分の家とは真逆の方向に歩みを進め、場地の優等生キャラは上手くいっているかどうか考えながら彼の家へと向かう。
場地と約束しているワケではないので、果たして家に居るのだろうかとフと思う。連絡してからにしようかと迷ったが、後、五分くらいで着く所まで来てしまっていたのでそのまま歩みを進めた。
四月の空は薄い水色の爽やかな色が広がり、風光る中、ピンクの花びらが宙を舞っている。水色とピンクに彩られた視界に春を感じてほっこりとした気分になった。
気温と吹く風も暖かいので、場地の住む部屋の五階まで階段で上り切った頃にはじんわりと、額に汗が滲んでいた。
玄関の前で「場地が家に居ますように」と心の中で願ってから、インターフォンを押して反応が返ってくるのを待つ。
いつもなら、お母さんの声がスピーカーから直ぐに聞こえるのだが今日はなかなか聞こえない。留守なのかと思っていると、いきなりガチャっと勢いよく音を立てて、物凄い速さで扉が開いた。扉は私の顔面スレスレを通り抜け、風で髪が揺れた。
驚いて固まっていると、ドアから顔を覗かしたのは場地だった。
「おー、明日香か。どうしたぁ?そんな変な顔して」
「いきなり開いたドアに顔打ち付ける所でびっくりした…」
「だから、鳩が豆鉄砲を食らったみてぇな顔してんのか」
「えっ、場地がそんな言葉を使うなんて初めてじゃない?」
「まぁ、オレは優等生だからな」
今はメガネを掛けてはいないが、メガネをクイッと上げる仕草をして、ニヤリと笑った。
覚えたての言葉を使えて満足気にしている彼が可愛くて、笑ってしまった。
「つーか、いいトコに来た。オレも呼ぼうとしてたんだわ」
「え?何で?」
「今、中に会わせたいヤツがいんだよ」
「会わせたい人?」
「いーから、中入れよ」
背中に手を回して軽く押されて中に入るように促されたので玄関の中に入る。靴を脱いで「お邪魔します」と挨拶をしてから、場地の後に続いて彼の部屋の中に入った。
「待たせたな」
「いえ、全然大丈夫です」
場地の背中から顔を覗かして声のする方を見ると、そこには場地と同じ制服に身を包み、緊張した面持ちの金髪の男の子が一人、正座をしていた。
「コイツがさっき話したヤツ」
場地が私の背中を押したので、一歩前に出ると彼と目が合った。猫のようにキュッとつり上がった目が大きく見開かれ、慌てて立ち上がってペコっと丁寧に頭を下げて来たので、何がなんだが分かっていないが、私も同じようにペコリと頭を下げた。
「松野千冬です」
「 藤堂 明日香です」
名乗ってくれたので私も名乗り返す。場地が会わせたい人が居ると言っていたのは、この人の事だろうかと場地に視線を送ると「コイツ、千冬」とさっき本人から聞いた情報をもう一度言った。
「それは今、聞いたってば」
「コイツ、いい奴なんだわ」
松野君は一年生で違うクラスだが、場地のクラスに来て話し掛けてくれたらしい。そこで松野君に漢字を教えて貰った事、国語辞典で探しても分からなかった事を教えて貰った事を話してくれた。さっきの鳩が豆鉄砲を食らうって言葉は国語辞典で読んだんだと腑に落ちた。
場地の話を聞いていると、松野君からの視線を痛いくらいに感じたので「どうしたの?」と聞けば、慌てたように「いや…!」と手を横に振っていた。
「場地さんの話とはイメージが違うなと思って…」
「場地の話って?」
「怒ると怖い猛獣みたいな女って言ってたんで」
「はぁ?」
場地を思いっきり睨み付け、背中をバシンと叩くとわざとらしく顔を顰めて「ほらな?」と松野君に言っていた。松野君は戸惑ったように場地と私を交互に見つめた。
「猛獣は場地でしょ?」
「じゃあ、藤堂さんは猛獣使いって感じですか?」
「「はぁ?」」
「あ、いえ、何でもありません」
私と場地の両方に睨まれた松野君は申し訳なさそうに眉を下げた。その姿が素直で場地の言う通り、いい人なんだろうなと思った。
場地は「ペヤング作ってくるわ」と言って部屋を出て行ってしまったので松野君と二人になった。とりあえず、座ろうと思い「座ろうか」と言えば、松野君はこくりと頷いたので畳の上に向かい合うように座った。
正面から顔を見ると、スグに目に付くのは顔の痣や怪我だった。
「怪我、凄いけど大丈夫?」
「なんて事ないっス」
「手当するから、こっち来て」
手招きをすると一瞬、戸惑ったような表情を見せたが、すぐに素直に私の元まで来る姿はなんだか忠実な犬のように見えて、愛着が湧いてしまう。
怪我ばかりする場地の手当をすぐ出来るようにと部屋に常備させてある救急箱を取り出して、松野君の顔の傷の手当を始める。
「喧嘩したの?」
「はい。さっき、ちょっと絡まれて」
バツが悪そうに頬を人差し指で掻きながら頷く、松野君に思わず笑ってしまう。笑われた意味が分からないのか、首を傾げる彼に「場地みたいだね」と言えば、更に首を傾げた。
「今日、入学式でしょ?」
「はい」
「入学早々喧嘩するなんて、一年前の場地と一緒」
「えっ!場地さんも入学早々に喧嘩してたんですか?」
「うん。センパイが気に食わねぇとか言って喧嘩してたよ」
松野君に話を聞けば、入学式の前に先輩に売られた喧嘩でボコしたが、さっき帰り道にその先輩が二十人の暴走族を引連れて、仕返しに奇襲かけて来そう。そこに丁度、場地が通り掛かりさっきのお礼で付き合うと言って、一人で二十人を倒してしまったらしい。
場地の話をする松野君の顔は嬉しそうで、目がキラキラと輝いていた。
そんな松野君に最近、メガネを買いに行った途中でヤンキーに絡まれて一対四十を楽しんだ話やその後、結局メガネ買い忘れた話をすると、彼は興味津々で「スゲェ」「カッケェ」と連呼していた。
「松野君は場地の事、大好きなんだね」
「はい!カッケェと思った人も付いて行こうと思った人も全部、場地さんが初めてです」
「そっか。私も場地が大好きなんだ」
場地の良さを分かってくれる仲間が増えたように思えて、嬉しかった。正直に場地が大好きだと言えば、松野君は目をぱちぱちと瞬きさせてから、口角をキュッと上げた。
「やっぱり、場地さんと付き合ってるんですね!」
「ううん、付き合ってないよ」
「え、そうなんですか?二人、似合ってるのに」
「私たちには、色々あるから」
今、言った大好きは人としての意味だったのだが、松野君は恋愛としての意味で受け取った様だった。
松野君に小さく笑いかければ、彼は少しだけ悲しそうに顔を歪めた。
「もし、松野君が本当の事を知る時が来ても、場地の傍にいてくれると嬉しいな」
「…大丈夫です。絶対に」
真っ直ぐな眼差しで迷う事なく、そう言い切ってくれて嬉しくなった。光り輝く真っ直ぐさと意志の強さを宿した瞳が頼もしくて、何があっても絶対に最後まで場地を信じてくれると思わせるような光を灯していた。
「場地の事、一緒に守ろうね」
「守る…?」
「あの人、ちゃんと見てないと何処か遠くに行っちゃいそうだから…。場地の事、お願いね」
「分かりました」
最初は強い場地を守るなんてと怪訝そうな顔をしていたが、すぐに頷いてくれた。
スっと手を差し出すと、松野君は躊躇う事なくその手を取った。ギュッと握り合った手は暖かくて優しいけれど、力強かった。
松野君が場地の傍にいてくれるのなら、絶対に大丈夫だと確信した。
クラス替えが行われ、嬉しい事にマイキーとドラケンと同じクラスになる事が出来た。
かと言って、ほぼ学校には来ていないので同じクラスでも一緒に行動出来るワケでもないが、気持ち的には嬉しかった。
珍しく、二人が朝からちゃんと学校に来ていたので真面目に始業式に参加すると思えば、マイキーは「今日、給食ねぇの?」と不機嫌そうに顔を顰めてから、机に顔を突っ伏してふて寝を始めてしまった。ドラケンは「こうなったら、当分起きねーよ」と言って、彼も一緒に机に突っ伏して寝てしまった。
二人が教室でスヤスヤと眠る中、始業式とHRは終わり下校となった。そのタイミングでドラケンは目を覚まし、マイキーを叩き起していた。
目を覚ましたマイキーは垂らしながら爆睡していたようで、口元を拭いながら起き上がった。
「帰んぞ」
「腹減った」
マイキーの呟いた一言で二人はこの後、ご飯を食べに行く事に決まったようだ。ドラケンが誘ってくれたが、今日は場地の家に寄ろうと思っていたので、残念だが断った。
門の外まで二人と一緒に帰り、校門の前で別れた。
自分の家とは真逆の方向に歩みを進め、場地の優等生キャラは上手くいっているかどうか考えながら彼の家へと向かう。
場地と約束しているワケではないので、果たして家に居るのだろうかとフと思う。連絡してからにしようかと迷ったが、後、五分くらいで着く所まで来てしまっていたのでそのまま歩みを進めた。
四月の空は薄い水色の爽やかな色が広がり、風光る中、ピンクの花びらが宙を舞っている。水色とピンクに彩られた視界に春を感じてほっこりとした気分になった。
気温と吹く風も暖かいので、場地の住む部屋の五階まで階段で上り切った頃にはじんわりと、額に汗が滲んでいた。
玄関の前で「場地が家に居ますように」と心の中で願ってから、インターフォンを押して反応が返ってくるのを待つ。
いつもなら、お母さんの声がスピーカーから直ぐに聞こえるのだが今日はなかなか聞こえない。留守なのかと思っていると、いきなりガチャっと勢いよく音を立てて、物凄い速さで扉が開いた。扉は私の顔面スレスレを通り抜け、風で髪が揺れた。
驚いて固まっていると、ドアから顔を覗かしたのは場地だった。
「おー、明日香か。どうしたぁ?そんな変な顔して」
「いきなり開いたドアに顔打ち付ける所でびっくりした…」
「だから、鳩が豆鉄砲を食らったみてぇな顔してんのか」
「えっ、場地がそんな言葉を使うなんて初めてじゃない?」
「まぁ、オレは優等生だからな」
今はメガネを掛けてはいないが、メガネをクイッと上げる仕草をして、ニヤリと笑った。
覚えたての言葉を使えて満足気にしている彼が可愛くて、笑ってしまった。
「つーか、いいトコに来た。オレも呼ぼうとしてたんだわ」
「え?何で?」
「今、中に会わせたいヤツがいんだよ」
「会わせたい人?」
「いーから、中入れよ」
背中に手を回して軽く押されて中に入るように促されたので玄関の中に入る。靴を脱いで「お邪魔します」と挨拶をしてから、場地の後に続いて彼の部屋の中に入った。
「待たせたな」
「いえ、全然大丈夫です」
場地の背中から顔を覗かして声のする方を見ると、そこには場地と同じ制服に身を包み、緊張した面持ちの金髪の男の子が一人、正座をしていた。
「コイツがさっき話したヤツ」
場地が私の背中を押したので、一歩前に出ると彼と目が合った。猫のようにキュッとつり上がった目が大きく見開かれ、慌てて立ち上がってペコっと丁寧に頭を下げて来たので、何がなんだが分かっていないが、私も同じようにペコリと頭を下げた。
「松野千冬です」
「 藤堂 明日香です」
名乗ってくれたので私も名乗り返す。場地が会わせたい人が居ると言っていたのは、この人の事だろうかと場地に視線を送ると「コイツ、千冬」とさっき本人から聞いた情報をもう一度言った。
「それは今、聞いたってば」
「コイツ、いい奴なんだわ」
松野君は一年生で違うクラスだが、場地のクラスに来て話し掛けてくれたらしい。そこで松野君に漢字を教えて貰った事、国語辞典で探しても分からなかった事を教えて貰った事を話してくれた。さっきの鳩が豆鉄砲を食らうって言葉は国語辞典で読んだんだと腑に落ちた。
場地の話を聞いていると、松野君からの視線を痛いくらいに感じたので「どうしたの?」と聞けば、慌てたように「いや…!」と手を横に振っていた。
「場地さんの話とはイメージが違うなと思って…」
「場地の話って?」
「怒ると怖い猛獣みたいな女って言ってたんで」
「はぁ?」
場地を思いっきり睨み付け、背中をバシンと叩くとわざとらしく顔を顰めて「ほらな?」と松野君に言っていた。松野君は戸惑ったように場地と私を交互に見つめた。
「猛獣は場地でしょ?」
「じゃあ、藤堂さんは猛獣使いって感じですか?」
「「はぁ?」」
「あ、いえ、何でもありません」
私と場地の両方に睨まれた松野君は申し訳なさそうに眉を下げた。その姿が素直で場地の言う通り、いい人なんだろうなと思った。
場地は「ペヤング作ってくるわ」と言って部屋を出て行ってしまったので松野君と二人になった。とりあえず、座ろうと思い「座ろうか」と言えば、松野君はこくりと頷いたので畳の上に向かい合うように座った。
正面から顔を見ると、スグに目に付くのは顔の痣や怪我だった。
「怪我、凄いけど大丈夫?」
「なんて事ないっス」
「手当するから、こっち来て」
手招きをすると一瞬、戸惑ったような表情を見せたが、すぐに素直に私の元まで来る姿はなんだか忠実な犬のように見えて、愛着が湧いてしまう。
怪我ばかりする場地の手当をすぐ出来るようにと部屋に常備させてある救急箱を取り出して、松野君の顔の傷の手当を始める。
「喧嘩したの?」
「はい。さっき、ちょっと絡まれて」
バツが悪そうに頬を人差し指で掻きながら頷く、松野君に思わず笑ってしまう。笑われた意味が分からないのか、首を傾げる彼に「場地みたいだね」と言えば、更に首を傾げた。
「今日、入学式でしょ?」
「はい」
「入学早々喧嘩するなんて、一年前の場地と一緒」
「えっ!場地さんも入学早々に喧嘩してたんですか?」
「うん。センパイが気に食わねぇとか言って喧嘩してたよ」
松野君に話を聞けば、入学式の前に先輩に売られた喧嘩でボコしたが、さっき帰り道にその先輩が二十人の暴走族を引連れて、仕返しに奇襲かけて来そう。そこに丁度、場地が通り掛かりさっきのお礼で付き合うと言って、一人で二十人を倒してしまったらしい。
場地の話をする松野君の顔は嬉しそうで、目がキラキラと輝いていた。
そんな松野君に最近、メガネを買いに行った途中でヤンキーに絡まれて一対四十を楽しんだ話やその後、結局メガネ買い忘れた話をすると、彼は興味津々で「スゲェ」「カッケェ」と連呼していた。
「松野君は場地の事、大好きなんだね」
「はい!カッケェと思った人も付いて行こうと思った人も全部、場地さんが初めてです」
「そっか。私も場地が大好きなんだ」
場地の良さを分かってくれる仲間が増えたように思えて、嬉しかった。正直に場地が大好きだと言えば、松野君は目をぱちぱちと瞬きさせてから、口角をキュッと上げた。
「やっぱり、場地さんと付き合ってるんですね!」
「ううん、付き合ってないよ」
「え、そうなんですか?二人、似合ってるのに」
「私たちには、色々あるから」
今、言った大好きは人としての意味だったのだが、松野君は恋愛としての意味で受け取った様だった。
松野君に小さく笑いかければ、彼は少しだけ悲しそうに顔を歪めた。
「もし、松野君が本当の事を知る時が来ても、場地の傍にいてくれると嬉しいな」
「…大丈夫です。絶対に」
真っ直ぐな眼差しで迷う事なく、そう言い切ってくれて嬉しくなった。光り輝く真っ直ぐさと意志の強さを宿した瞳が頼もしくて、何があっても絶対に最後まで場地を信じてくれると思わせるような光を灯していた。
「場地の事、一緒に守ろうね」
「守る…?」
「あの人、ちゃんと見てないと何処か遠くに行っちゃいそうだから…。場地の事、お願いね」
「分かりました」
最初は強い場地を守るなんてと怪訝そうな顔をしていたが、すぐに頷いてくれた。
スっと手を差し出すと、松野君は躊躇う事なくその手を取った。ギュッと握り合った手は暖かくて優しいけれど、力強かった。
松野君が場地の傍にいてくれるのなら、絶対に大丈夫だと確信した。