勿忘草
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
場地に引き摺られながら、街へと出た。彼の足取りはどこか軽快で楽しそうに見えた。その姿を見たら、私もなんだか楽しくなって来て、自然と口元は緩んだ。
行く場所を予め決めてあるのか歩みには迷いはなく、渋谷の繁華街をどんどん進んで行く。場地が一軒のお店の前で足をぴたりと止めて「ここだ」と呟いた。
そこは、視力も測ってくれるような本格的なメガネ屋さんだった。
「そんなちゃんとしたの買うの?」
「メガネにちゃんとしたのもそうじゃねぇのもねぇだろ」
「だって、視力が悪いワケじゃないでしょ?度が入ってるのなんていらないじゃない」
「…確かに」
「伊達メガネでいいんじゃないの?」
「何だそれ」
「知らないの?伊達メガネ」
「知らねぇ」
「着いてきて良かった…」
下調べとかせずに思い付きで全て行動するのはどうにかならないだろうか。度入りのメガネを買ったら数万はするだろうし、そんな大金なんて持っている気もしない。
一人で買いに行かせていたら、大変な事になっていたかもしれないと思うと乾いた笑いが漏れた。三ツ谷の言う通り、そのうち禿げるかもしれないとすら思う。
今度は私が場地の手を引いて、メガネ屋を離れて伊達メガネが売ってそうな雑貨屋へと目的地を変更した。頭が良さそうに見える見掛け倒しならば、雑貨屋にある安いメガネで充分だろう。ファッション雑貨を多数揃えてあるお店を見つけ、中に入ると、端の方にメガネコーナーがあるのを発見した。普通のフレームのメガネやカラフルな物、派手なフレームの物や子供が遊ぶ用の髭が付いたおもちゃのメガネだったり、沢山の種類のメガネやサングラスが置いてあった。場地は感嘆の声を漏らし、メガネを眺めていた。一つ一つ手に取り、似合いそうなメガネを探していく。
「なぁ、これ良くねぇ?」
場地の声に振り向き、顔を見ると彼がかけていたのは黒縁の丸いメガネだった。嬉しそうにキュッと口角を上げて、感想を求めて来た。
その姿をジッと見つめる。どこかで見た事あるような気がするのは気の所為だろうか。絶対に一回は見た事があると思考を巡らせていると、一人の人物が脳内に浮かんだ。
「くいだおれ人形に似てる!」
「オイ」
「あ、ウォーリーを探せにも似てるかも」
「ふざけんな」
地を這うような声を出しながら、鋭い目付きでガン飛ばされた。場地なりに真剣に選んだようだ。だけど、笑っていると余計にソレに見えてしまうから仕方ない。
場地はすぐに切り替えて、黒縁メガネを外して次のメガネを探し始めた。
「コレは?」
今度は謎にデカイ、顔からはみ出す程の丸メガネだった。それを見た瞬間に思い浮かぶモノが一つ。迷う事なく私は首を横に振った。
「トンボにしか見えないからやめた方がいいよ」
さっきのくいだおれ人形とウォーリーより、余程トンボは嫌だったのか無言で外して、元あった場所へと戻していた。
少し落ち込んだオーラを纏っているように見えて、可哀想になってしまう。気を使ってカッコいいと言ってあげるべきだったのかもしれないと少し反省。でも、それでコレに決めたとか言われても困るので、もう少しオブラートに包んで「場地には似合わないかも」くらいに留めておきべきか。悩んだ末に私はこのセリフを口にした。
「とてもよくお似合いでしたよ、ハイ」
「棒読みで言ってんじゃねーよ。つーか、オマエが瓶底メガネって言うから、丸メガネ選んでんのによぉ」
「え?本気にしてたの?」
思わず引いた顔で見てしまった。どう考えても皮肉で言ったのは分かる筈なのに。ブツブツと文句を言いながら次のメガネを探す場地に心の中で謝罪をして、私も真剣に彼に似合うメガネを探す事にした。
端から順に見て行き、あるメガネが目に止まった。分厚いレンズに形は四角のブロータイプのメガネだ。これなら場地に似合いそうだし、真面目にも見える筈だ。メガネを手に取り「これは?」と見せて聞いてみると、私の手から受け取り、スっとメガネをかけて鏡を覗いている。そして、フッと口元を緩めた。
「いいな、コレ」
「でしょ?あと、髪をこうして…っと」
メガネだけでは物足りないような気もして髪の毛も真面目風にしてみようと思い、自分の腕に付いていた黒のシンプルなヘアゴムで肩まで伸びた場地の漆黒の髪に指を通して一つに括る。
ジッと正面から見てみるが、何か物足りないような気がする。
「あ、七三分けにしてみる?」
「やって」
一度髪の毛を解いて、センター分けの場地の前髪を七三に分けて、前髪も一緒に後ろに結ぶ。ピッチリと整えられたヘアスタイルは、仕事がバリバリ出来るサラリーマンのようにも見える。見た目だけは完璧な優等生の場地が誕生した。マイキーの言っていた、メガネをかけると頭良くなるよのアドバイスはあながち間違っていないように思えて来るから不思議だ。
「うん。これは、優等生だわ」
「よし、このメガネ買うわ。あと、この髪縛るやつもか」
「そのヘアゴムあげる。場地が使って」
「いいのか?」
「あ、そっちのウサギが付いた可愛いヘアゴムにする?買ってあげようか?」
「あぁ?」
「クマさんが良い?」
「調子に乗ってんじゃねーぞ、テメェ」
馬鹿にされた事がイラついたのか場地は私にヘッドロックをキメてきた。軽くやってくれているのでさほど痛くはないが、大袈裟に騒いでしまった。いつものノリで言い合いをしながら騒いでしまったせいで、周りからの視線が私たちに集中している事に気が付いて恥ずかしくなる。ジロジロと怪訝そうな視線や微笑ましい眼差しを送って来る人など、様々で居た堪れなくなり、騒ぐのを止めて俯いた。
「なに、急に大人しくなってんだぁ?」
「周りをよく見て…」
「あ?見てんじゃねーぞ、コラ」
場地は周りを見渡して、ようやく多数の視線に気が付いたようで舌打ちをしてから首に巻き付けていた腕を離して、周囲を睨みつけ始めてしまった。見ていた人たちは、慌てたように視線を逸らしてその場から立ち去った。場地の頭を軽く叩いて睨むのを止めさせた。
「っ痛ぇな。叩くと馬鹿になんだろーが」
「もう手遅れじゃない?」
「ウッセェ!てか、コレ買って来るから、オマエは外で待ってろ」
先程のやり取りを見ていた人たちもまだ店内にいるので、外で待っていていいのは正直有り難かったので、お言葉に甘えて外で待つ事にした。五分くらい経つと、場地は小さな紙袋を手に持ってお店から出て来た。
「ちゃんと買えた?」
「当たり前だろ」
バカにすんなと額を小突いてくる場地に笑いながらごめんと謝ると、目の前に袋を差し出してきた。小馬鹿にした罰で荷物持ちでもさせられるのかと思ったが、場地がそんな小さな男の筈がないので小首を傾げていると「やる」と言って、袋を私に押し付けた。袋を受け取り、中を覗くと黒い物が入っていて、取り出して見てみると黒の生地に金が縁取られているシュシュだった。
「どうしたの?これ」
「コレの礼。後、オマエに似合うと思ったからよ」
コレと言って指さすのは、場地の髪を結ってあるヘアゴム。そんな安いゴムの代わりにこんなちゃんとした物を貰うのは少し申し訳ないと思ったが、私に似合うと思って買ってくれたのが嬉しくて、シュシュをギュッと握り締めて嬉しさを噛み締めた。
「ありがとう。嬉しい」
「おー」
「黒に金って東卍の特服みたいだね」
「…無意識だったわ」
「東卍の事、大好きなんだね」
頬を緩めて小さく頷く場地を見て、本当に心から東卍を、マイキー達が大好きで大切なのだと感じた。
貰ったシュシュを早速、自分の髪の毛に括り付けて、場地と同じように後ろで一つに結ぶ。
クルッと後ろを向けて場地に「似合う?」と聞くと、マジマジと見つめた後に「いーんじゃねぇ?」と答えた。
「場地とお揃いだね」
東卍の特服と場地の一つに結ってある髪をお揃いだと言ってみると、黙り込んでしまった。
何か変な事を言ってしまったのかと不安になる。
「あ、嫌だった?お揃いは流石にキモイ?」
「別に。いーんじゃね」
「本当にそう思ってる?」
ぶっきらぼうに答える場地の顔を覗き込むが、プイッと顔を逸らされてしまった。だけど、ほんのりピンク色に薄く色付いた頬が見えてしまった。
「案外、可愛い所あるじゃん」
「うっせぇ!」
照れ隠しなのか、叫ぶ場地が可愛く見えた。
あの事件以来、妙に大人ぶっているというか、そんな感じがしていた事もあって、中学生らしい心が覗けてホッとする。昔と同じ彼を垣間見れた事が泣きたくなるくらいに嬉しい事だとは思わなかった。
照れた横顔を見つめていると、チラッと視線を寄越して来た場地と目が合ったので微笑めば、彼も小さくはにかんだ。
行く場所を予め決めてあるのか歩みには迷いはなく、渋谷の繁華街をどんどん進んで行く。場地が一軒のお店の前で足をぴたりと止めて「ここだ」と呟いた。
そこは、視力も測ってくれるような本格的なメガネ屋さんだった。
「そんなちゃんとしたの買うの?」
「メガネにちゃんとしたのもそうじゃねぇのもねぇだろ」
「だって、視力が悪いワケじゃないでしょ?度が入ってるのなんていらないじゃない」
「…確かに」
「伊達メガネでいいんじゃないの?」
「何だそれ」
「知らないの?伊達メガネ」
「知らねぇ」
「着いてきて良かった…」
下調べとかせずに思い付きで全て行動するのはどうにかならないだろうか。度入りのメガネを買ったら数万はするだろうし、そんな大金なんて持っている気もしない。
一人で買いに行かせていたら、大変な事になっていたかもしれないと思うと乾いた笑いが漏れた。三ツ谷の言う通り、そのうち禿げるかもしれないとすら思う。
今度は私が場地の手を引いて、メガネ屋を離れて伊達メガネが売ってそうな雑貨屋へと目的地を変更した。頭が良さそうに見える見掛け倒しならば、雑貨屋にある安いメガネで充分だろう。ファッション雑貨を多数揃えてあるお店を見つけ、中に入ると、端の方にメガネコーナーがあるのを発見した。普通のフレームのメガネやカラフルな物、派手なフレームの物や子供が遊ぶ用の髭が付いたおもちゃのメガネだったり、沢山の種類のメガネやサングラスが置いてあった。場地は感嘆の声を漏らし、メガネを眺めていた。一つ一つ手に取り、似合いそうなメガネを探していく。
「なぁ、これ良くねぇ?」
場地の声に振り向き、顔を見ると彼がかけていたのは黒縁の丸いメガネだった。嬉しそうにキュッと口角を上げて、感想を求めて来た。
その姿をジッと見つめる。どこかで見た事あるような気がするのは気の所為だろうか。絶対に一回は見た事があると思考を巡らせていると、一人の人物が脳内に浮かんだ。
「くいだおれ人形に似てる!」
「オイ」
「あ、ウォーリーを探せにも似てるかも」
「ふざけんな」
地を這うような声を出しながら、鋭い目付きでガン飛ばされた。場地なりに真剣に選んだようだ。だけど、笑っていると余計にソレに見えてしまうから仕方ない。
場地はすぐに切り替えて、黒縁メガネを外して次のメガネを探し始めた。
「コレは?」
今度は謎にデカイ、顔からはみ出す程の丸メガネだった。それを見た瞬間に思い浮かぶモノが一つ。迷う事なく私は首を横に振った。
「トンボにしか見えないからやめた方がいいよ」
さっきのくいだおれ人形とウォーリーより、余程トンボは嫌だったのか無言で外して、元あった場所へと戻していた。
少し落ち込んだオーラを纏っているように見えて、可哀想になってしまう。気を使ってカッコいいと言ってあげるべきだったのかもしれないと少し反省。でも、それでコレに決めたとか言われても困るので、もう少しオブラートに包んで「場地には似合わないかも」くらいに留めておきべきか。悩んだ末に私はこのセリフを口にした。
「とてもよくお似合いでしたよ、ハイ」
「棒読みで言ってんじゃねーよ。つーか、オマエが瓶底メガネって言うから、丸メガネ選んでんのによぉ」
「え?本気にしてたの?」
思わず引いた顔で見てしまった。どう考えても皮肉で言ったのは分かる筈なのに。ブツブツと文句を言いながら次のメガネを探す場地に心の中で謝罪をして、私も真剣に彼に似合うメガネを探す事にした。
端から順に見て行き、あるメガネが目に止まった。分厚いレンズに形は四角のブロータイプのメガネだ。これなら場地に似合いそうだし、真面目にも見える筈だ。メガネを手に取り「これは?」と見せて聞いてみると、私の手から受け取り、スっとメガネをかけて鏡を覗いている。そして、フッと口元を緩めた。
「いいな、コレ」
「でしょ?あと、髪をこうして…っと」
メガネだけでは物足りないような気もして髪の毛も真面目風にしてみようと思い、自分の腕に付いていた黒のシンプルなヘアゴムで肩まで伸びた場地の漆黒の髪に指を通して一つに括る。
ジッと正面から見てみるが、何か物足りないような気がする。
「あ、七三分けにしてみる?」
「やって」
一度髪の毛を解いて、センター分けの場地の前髪を七三に分けて、前髪も一緒に後ろに結ぶ。ピッチリと整えられたヘアスタイルは、仕事がバリバリ出来るサラリーマンのようにも見える。見た目だけは完璧な優等生の場地が誕生した。マイキーの言っていた、メガネをかけると頭良くなるよのアドバイスはあながち間違っていないように思えて来るから不思議だ。
「うん。これは、優等生だわ」
「よし、このメガネ買うわ。あと、この髪縛るやつもか」
「そのヘアゴムあげる。場地が使って」
「いいのか?」
「あ、そっちのウサギが付いた可愛いヘアゴムにする?買ってあげようか?」
「あぁ?」
「クマさんが良い?」
「調子に乗ってんじゃねーぞ、テメェ」
馬鹿にされた事がイラついたのか場地は私にヘッドロックをキメてきた。軽くやってくれているのでさほど痛くはないが、大袈裟に騒いでしまった。いつものノリで言い合いをしながら騒いでしまったせいで、周りからの視線が私たちに集中している事に気が付いて恥ずかしくなる。ジロジロと怪訝そうな視線や微笑ましい眼差しを送って来る人など、様々で居た堪れなくなり、騒ぐのを止めて俯いた。
「なに、急に大人しくなってんだぁ?」
「周りをよく見て…」
「あ?見てんじゃねーぞ、コラ」
場地は周りを見渡して、ようやく多数の視線に気が付いたようで舌打ちをしてから首に巻き付けていた腕を離して、周囲を睨みつけ始めてしまった。見ていた人たちは、慌てたように視線を逸らしてその場から立ち去った。場地の頭を軽く叩いて睨むのを止めさせた。
「っ痛ぇな。叩くと馬鹿になんだろーが」
「もう手遅れじゃない?」
「ウッセェ!てか、コレ買って来るから、オマエは外で待ってろ」
先程のやり取りを見ていた人たちもまだ店内にいるので、外で待っていていいのは正直有り難かったので、お言葉に甘えて外で待つ事にした。五分くらい経つと、場地は小さな紙袋を手に持ってお店から出て来た。
「ちゃんと買えた?」
「当たり前だろ」
バカにすんなと額を小突いてくる場地に笑いながらごめんと謝ると、目の前に袋を差し出してきた。小馬鹿にした罰で荷物持ちでもさせられるのかと思ったが、場地がそんな小さな男の筈がないので小首を傾げていると「やる」と言って、袋を私に押し付けた。袋を受け取り、中を覗くと黒い物が入っていて、取り出して見てみると黒の生地に金が縁取られているシュシュだった。
「どうしたの?これ」
「コレの礼。後、オマエに似合うと思ったからよ」
コレと言って指さすのは、場地の髪を結ってあるヘアゴム。そんな安いゴムの代わりにこんなちゃんとした物を貰うのは少し申し訳ないと思ったが、私に似合うと思って買ってくれたのが嬉しくて、シュシュをギュッと握り締めて嬉しさを噛み締めた。
「ありがとう。嬉しい」
「おー」
「黒に金って東卍の特服みたいだね」
「…無意識だったわ」
「東卍の事、大好きなんだね」
頬を緩めて小さく頷く場地を見て、本当に心から東卍を、マイキー達が大好きで大切なのだと感じた。
貰ったシュシュを早速、自分の髪の毛に括り付けて、場地と同じように後ろで一つに結ぶ。
クルッと後ろを向けて場地に「似合う?」と聞くと、マジマジと見つめた後に「いーんじゃねぇ?」と答えた。
「場地とお揃いだね」
東卍の特服と場地の一つに結ってある髪をお揃いだと言ってみると、黙り込んでしまった。
何か変な事を言ってしまったのかと不安になる。
「あ、嫌だった?お揃いは流石にキモイ?」
「別に。いーんじゃね」
「本当にそう思ってる?」
ぶっきらぼうに答える場地の顔を覗き込むが、プイッと顔を逸らされてしまった。だけど、ほんのりピンク色に薄く色付いた頬が見えてしまった。
「案外、可愛い所あるじゃん」
「うっせぇ!」
照れ隠しなのか、叫ぶ場地が可愛く見えた。
あの事件以来、妙に大人ぶっているというか、そんな感じがしていた事もあって、中学生らしい心が覗けてホッとする。昔と同じ彼を垣間見れた事が泣きたくなるくらいに嬉しい事だとは思わなかった。
照れた横顔を見つめていると、チラッと視線を寄越して来た場地と目が合ったので微笑めば、彼も小さくはにかんだ。