勿忘草
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海の家の有料シャワーを使って、ベタつく身体を洗い流してから服に着替えて更衣室から出ると、場地、一虎、マイキー、パーちん、三ツ谷は既に外で待っていた。
遅せぇと文句を言う場地に三ツ谷が「女なんだから、時間かかるのは仕方ないだろ」と言ってくれた。
東卍のオカンでもある三ツ谷は、よく出来た人間だと思う。中学生男子で女は時間がかかるからとフォローしてくれる人なんて、そうそう居ないだろう。
三ツ谷にピッタリな四字熟語は良妻賢母だと思っている。前にそれを本人に伝えたら、「性別を変えるな」と額を小突かれた。女子より家庭的な三ツ谷にピッタリだと思ったのに残念だ。
三ツ谷の顔を見ると、私が打ったボールが当たった痕が真っ赤にクッキリ残っていた。ごめんねと思う反面、鼻に当たったボールも尋常じゃないくらい痛かったのでお互い様だ。
「顔、赤いの取れてねぇな。女の子なのに、ごめんな」
「三ツ谷も赤くなってるね。私こそ、ごめんね」
申し訳なさそうに眉を下げ、心配そうにしている三ツ谷の優しさに触れて、瞬時に反省した。お互い様だなんて思って、ごめん。キミはこんなにも優しいのに。と心の中で謝罪の言葉を述べる。場地なら赤くなった顔を見て、猿みてぇと笑うに違いない。
今までこの場に居なかったドラケンがバイクに乗ってコチラに向かって来ているのが見えた。バイクを停めて、大きなビニール袋を片手に持ってこっちにやって来た。その袋をマイキーに手渡すと彼は袋の中を覗いて嬉しそうに笑った。
「よーし、オマエら、やるぞ!」
もう帰ると思っていたので、マイキーの言葉の意味が分からず首を傾げていると、場地が「花火やるんだとよ」と教えてくれた。
「明日香を待ってる間、マイキーが花火やりてぇって騒いで、ジャンケンに負けたドラケンが買いに行ってた」
「そうだったんだ。夏って言ったら花火だもんね」
マイキーが待ちきれないと言わんばかりに雑に花火の袋を破り開け、砂浜に投げ出した。マイキーは一目散に一番大きい花火を手に取り、ドラケンに火を付けてと強請っていた。ドラケンは自分でやれと言いながらも、コンビニで一緒に買って来たライターで花火の先端に火を付け、暫くすると、綺麗なオレンジの火花が散った。
それを皮切りに、みんなも花火を手に取り、ライターで火を付けて色とりどりの花を咲かせていた。
花火を一本手に取ると、場地が持っていた花火の火を向けてくれたのでその火をもらって、私の花火も勢いよくパチパチと音を立てて燃えた。
最初は、穏やかな気持ちで花火の光を眺めていたが、穏やかに済まないのが彼らだ。マイキーが「魔法使いだ!」と言って両手に二本ずつ持って、花火をクルクル回して火の粉をそこら辺に飛ばして遊び始めてしまい、降りかかる火の粉にみんなは、全力で逃げ回っている。私と場地は小さい頃からマイキーのソレに振り回されているので、最初からマイキーから離れて遠巻きにその光景を見ていた。
「アイツら、バカだな」
「いつもは、あの中にいるじゃない」
「オマエもだろ」
「傍から見ればこんなに騒がしいんだね」
珍しくあの輪の中に入って行かない場地とそんな話をしていると「オイ!マイキーやめろ!」と三ツ谷の焦ったような声が聞こえて何事かと思いマイキーたちの方を見ると、こっちに向かってマイキーがロケット花火を発射していて、花火が物凄い速さで向かって来ていた。
避けようと思っても、突然の出来事に体は動かず棒立ちになってしまう。
すると、目の前が急に真っ暗になった途端、体を暖かい物が包んだ。次々に起こる事に脳が追いつかず、何が起こっているのか理解出来ない。頭の上で「あっぶねぇ…」と安堵のため息と声が聞こえて、今の状況を理解する。今、私は場地の腕の中にいるという事を。
ドクンと大きく心臓が跳ねてから、ドクドクと鼓動は加速していく。ロケット花火が向かって来ていた恐怖が今更やって来たのか、抱きすくめられている事への緊張なのか分からないが、一気に汗が吹き出してきた。
「マイキー!危ねぇ事すんじゃねぇよ!」
「悪ぃ!明日香!場地を狙ったんだけどさ」
「オレでもやめろっつーの!」
頭の上で聞こえる場地の声と遠くから聞こえるマイキーの声が自分の鼓動の音であまりよく聞こえない。微かに場地の鼓動も早く感じるのは気の所為だろうか。
「明日香。大丈夫か?」
「ん、大丈夫」
「あ?オマエ、どうしたぁ?」
「な、なにが?」
「顔赤ぇけど」
顔を覗き込んで来る場地と至近距離で視線が絡まり、余計に顔に熱が集中する。目を逸らしても、顔は熱いままだ。
「熱っっついな〜!いつまで、くっ付いてんだよ」
一虎の声で抱き締められたままの事に気が付いて羞恥が一気に湧き上がり、叫び声を上げながら場地の腕の中から抜け出した。
ドラケンと三ツ谷に助けを求めるように二人の方を見たが、一虎と同じように意地の悪そうな笑みを浮かべていた。
三ツ谷は口では「からかってやるなよ」と言っているが、その顔では説得力は皆無だ。
あのパーちんでさえ、ニヤニヤとしていた。
「パーちんまで…」
「青春だな」
「パーちんの口から青春って、似合わない」
「それは悪口か?」
「そんな事ないよ」
あまり納得いってなさそうな表情を浮かべていたが、最終的には「オレは馬鹿だからよくわかんねぇや」と言って、納得したようだった。
一人でそっと輪の中から離れて、顔の熱を冷ます。夏といえど、海の夜風は冷たくて心地良かった。
頬の熱が落ち着いた頃には、手持ち花火は全て使い切ってしまったようで、ゴミを集めて帰る事になった。
バイクを停めてる所まで戻り、いつものように場地のバイクの元に来てから、フと気がついた。場地の後ろに乗って帰るという事は、場地に抱き着かなければならないという事。さっきの事もあったせいで今更ながら恥ずかしくなって来てしまった。
「ドラケン、後ろ乗せて」
「なんで、ドラケンなんだよ」
「一虎でもいい!」
「コイツが一番ダメだろ」
「あ?どういう意味だよ」
「それはテメェが一番、分かってんだろ」
「じゃあ、マイキー!」
「だから、ひっくり返るだろ!」
「大丈夫だって!」
「いーから、後ろ乗れ!」
駄々を捏ねる私の頭に無理矢理半コルクを被せて、これ以上有無を言わさずという程の鋭い目付きで睨まれた。その視線に何も言えなくなり、素直に場地の後ろで帰ろうと思い、バイクに跨ろうとすると、妙に周りが静かな事に気付いて辺りを見渡すと全員が同じ顔で私達を見ていた。
「なんなの、みんな同じ顔して」
「別に?」
「オレら、かっ飛ばして帰りてぇからよ」
「場地は明日香乗せてるし、ゆっくり帰って来いよ」
「安全運転しろよ」
「じゃ、オツカレ」
みんな、一言ずつ言い残して走り去ってしまった。最後に残ったマイキーに「ゆっくり、三人で帰ろうか」と言ったが、ドラケンに「マイキー!早く来い!」と言われ、私たちに手をヒラヒラと振って走り出してしまった。
取り残された私は、みんなのあからさまな行動に小さくため息を零した。
遅せぇと文句を言う場地に三ツ谷が「女なんだから、時間かかるのは仕方ないだろ」と言ってくれた。
東卍のオカンでもある三ツ谷は、よく出来た人間だと思う。中学生男子で女は時間がかかるからとフォローしてくれる人なんて、そうそう居ないだろう。
三ツ谷にピッタリな四字熟語は良妻賢母だと思っている。前にそれを本人に伝えたら、「性別を変えるな」と額を小突かれた。女子より家庭的な三ツ谷にピッタリだと思ったのに残念だ。
三ツ谷の顔を見ると、私が打ったボールが当たった痕が真っ赤にクッキリ残っていた。ごめんねと思う反面、鼻に当たったボールも尋常じゃないくらい痛かったのでお互い様だ。
「顔、赤いの取れてねぇな。女の子なのに、ごめんな」
「三ツ谷も赤くなってるね。私こそ、ごめんね」
申し訳なさそうに眉を下げ、心配そうにしている三ツ谷の優しさに触れて、瞬時に反省した。お互い様だなんて思って、ごめん。キミはこんなにも優しいのに。と心の中で謝罪の言葉を述べる。場地なら赤くなった顔を見て、猿みてぇと笑うに違いない。
今までこの場に居なかったドラケンがバイクに乗ってコチラに向かって来ているのが見えた。バイクを停めて、大きなビニール袋を片手に持ってこっちにやって来た。その袋をマイキーに手渡すと彼は袋の中を覗いて嬉しそうに笑った。
「よーし、オマエら、やるぞ!」
もう帰ると思っていたので、マイキーの言葉の意味が分からず首を傾げていると、場地が「花火やるんだとよ」と教えてくれた。
「明日香を待ってる間、マイキーが花火やりてぇって騒いで、ジャンケンに負けたドラケンが買いに行ってた」
「そうだったんだ。夏って言ったら花火だもんね」
マイキーが待ちきれないと言わんばかりに雑に花火の袋を破り開け、砂浜に投げ出した。マイキーは一目散に一番大きい花火を手に取り、ドラケンに火を付けてと強請っていた。ドラケンは自分でやれと言いながらも、コンビニで一緒に買って来たライターで花火の先端に火を付け、暫くすると、綺麗なオレンジの火花が散った。
それを皮切りに、みんなも花火を手に取り、ライターで火を付けて色とりどりの花を咲かせていた。
花火を一本手に取ると、場地が持っていた花火の火を向けてくれたのでその火をもらって、私の花火も勢いよくパチパチと音を立てて燃えた。
最初は、穏やかな気持ちで花火の光を眺めていたが、穏やかに済まないのが彼らだ。マイキーが「魔法使いだ!」と言って両手に二本ずつ持って、花火をクルクル回して火の粉をそこら辺に飛ばして遊び始めてしまい、降りかかる火の粉にみんなは、全力で逃げ回っている。私と場地は小さい頃からマイキーのソレに振り回されているので、最初からマイキーから離れて遠巻きにその光景を見ていた。
「アイツら、バカだな」
「いつもは、あの中にいるじゃない」
「オマエもだろ」
「傍から見ればこんなに騒がしいんだね」
珍しくあの輪の中に入って行かない場地とそんな話をしていると「オイ!マイキーやめろ!」と三ツ谷の焦ったような声が聞こえて何事かと思いマイキーたちの方を見ると、こっちに向かってマイキーがロケット花火を発射していて、花火が物凄い速さで向かって来ていた。
避けようと思っても、突然の出来事に体は動かず棒立ちになってしまう。
すると、目の前が急に真っ暗になった途端、体を暖かい物が包んだ。次々に起こる事に脳が追いつかず、何が起こっているのか理解出来ない。頭の上で「あっぶねぇ…」と安堵のため息と声が聞こえて、今の状況を理解する。今、私は場地の腕の中にいるという事を。
ドクンと大きく心臓が跳ねてから、ドクドクと鼓動は加速していく。ロケット花火が向かって来ていた恐怖が今更やって来たのか、抱きすくめられている事への緊張なのか分からないが、一気に汗が吹き出してきた。
「マイキー!危ねぇ事すんじゃねぇよ!」
「悪ぃ!明日香!場地を狙ったんだけどさ」
「オレでもやめろっつーの!」
頭の上で聞こえる場地の声と遠くから聞こえるマイキーの声が自分の鼓動の音であまりよく聞こえない。微かに場地の鼓動も早く感じるのは気の所為だろうか。
「明日香。大丈夫か?」
「ん、大丈夫」
「あ?オマエ、どうしたぁ?」
「な、なにが?」
「顔赤ぇけど」
顔を覗き込んで来る場地と至近距離で視線が絡まり、余計に顔に熱が集中する。目を逸らしても、顔は熱いままだ。
「熱っっついな〜!いつまで、くっ付いてんだよ」
一虎の声で抱き締められたままの事に気が付いて羞恥が一気に湧き上がり、叫び声を上げながら場地の腕の中から抜け出した。
ドラケンと三ツ谷に助けを求めるように二人の方を見たが、一虎と同じように意地の悪そうな笑みを浮かべていた。
三ツ谷は口では「からかってやるなよ」と言っているが、その顔では説得力は皆無だ。
あのパーちんでさえ、ニヤニヤとしていた。
「パーちんまで…」
「青春だな」
「パーちんの口から青春って、似合わない」
「それは悪口か?」
「そんな事ないよ」
あまり納得いってなさそうな表情を浮かべていたが、最終的には「オレは馬鹿だからよくわかんねぇや」と言って、納得したようだった。
一人でそっと輪の中から離れて、顔の熱を冷ます。夏といえど、海の夜風は冷たくて心地良かった。
頬の熱が落ち着いた頃には、手持ち花火は全て使い切ってしまったようで、ゴミを集めて帰る事になった。
バイクを停めてる所まで戻り、いつものように場地のバイクの元に来てから、フと気がついた。場地の後ろに乗って帰るという事は、場地に抱き着かなければならないという事。さっきの事もあったせいで今更ながら恥ずかしくなって来てしまった。
「ドラケン、後ろ乗せて」
「なんで、ドラケンなんだよ」
「一虎でもいい!」
「コイツが一番ダメだろ」
「あ?どういう意味だよ」
「それはテメェが一番、分かってんだろ」
「じゃあ、マイキー!」
「だから、ひっくり返るだろ!」
「大丈夫だって!」
「いーから、後ろ乗れ!」
駄々を捏ねる私の頭に無理矢理半コルクを被せて、これ以上有無を言わさずという程の鋭い目付きで睨まれた。その視線に何も言えなくなり、素直に場地の後ろで帰ろうと思い、バイクに跨ろうとすると、妙に周りが静かな事に気付いて辺りを見渡すと全員が同じ顔で私達を見ていた。
「なんなの、みんな同じ顔して」
「別に?」
「オレら、かっ飛ばして帰りてぇからよ」
「場地は明日香乗せてるし、ゆっくり帰って来いよ」
「安全運転しろよ」
「じゃ、オツカレ」
みんな、一言ずつ言い残して走り去ってしまった。最後に残ったマイキーに「ゆっくり、三人で帰ろうか」と言ったが、ドラケンに「マイキー!早く来い!」と言われ、私たちに手をヒラヒラと振って走り出してしまった。
取り残された私は、みんなのあからさまな行動に小さくため息を零した。