勿忘草
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一泊二日の校外学習を終え、バスが学校へと到着した。この二日間、あっという間に過ぎ去った。クラスメイトはもちろん、他のクラスの人達とも沢山関わる機会があって、他のクラスの人達とも仲良くなった。校外学習という名の親睦会は成功と言えるだろう。
ただ、少し心残りと言えば、マイキーとドラケンも居てくれたらな、という事だ。楽しかったから行ってよかったとは思うが、あの二人も居たらもっと楽しかった事だろう。
マイキーと幼馴染という事も学年中に早々にバレて、生徒指導の先生には、どうしてヤツらを連れて来ないと少しだけ怒られた。一年の先生達の間で共有されている、佐野取扱書に何かあったら、幼馴染の藤堂を頼れと書いてあるらしい。そう言われても、場地の事ならともかく、マイキーは無理だ。どちらかと言えば、ドラケンを頼った方が賢明だとは思うが彼もまた参加してないので、必然的に矛先は私に向いてしまうのも致し方ないのかもしれない。
そもそも、彼らは他人に言われたくらいで意志を曲げるほど中途半端な決断をする男達ではない。誰が何と言おうと、二人が来ないのは分かり切っていた。その事を先生に何度も言って、ようやく納得してもらえたのだが、周りの子達には同情の言葉を何人にもかけられたのには、流石に苦笑いを漏らすしかなかった。
そんな事を思い返しているうちに、バスを降りる順番が回って来たので、バスを降りた。先生の解散の言葉を聞き、クラスメイト達と別れの挨拶を済ませてから、昨日、場地と約束した場所へと早足で向かった。
曲がり角を曲がると、そこには既に場地は来ていて、その隣にはもう一人立っていた。私の存在にいち早く気づいたその人物は、ニッコリと笑って右手をあげて左右に振った。
その人物をマジマジと見ると、最後に会った日には無かった物があり、驚く。
「ちょっと、それどうしたの!?」
場地の隣に立っていた人物は一虎なのだが、彼の首を指させば、彼は「カッケェだろ」と輝かしい笑顔を向けた。出会った当初はお坊ちゃんを連想させるような髪型だったのに気付けばパンチパーマになり、今では首に虎のタトゥーまで入れている。どんどん様変わりしていく一虎に驚きが隠せない。
「首に入れるの痛かったでしょ」
「こんくらい余裕だし」
「嘘つけ。涙目になってた癖に」
「なってねーよ!」
二人が胸ぐらを掴んで揉め始めそうになったので、肩に手を置いて「落ち着きなさい」と言えば、二人はパッと手を離した。
二人はいつになく、楽しそうに笑みを浮かべていたので、何があったのかと尋ねると彼らは意気揚々と昨日あった事を話してくれた。
一虎が黒龍と揉めている話を場地がマイキーに相談した所、一虎を助ける為に黒龍とやり合おう事を決めたらしい。黒龍は大きなチームだから、やるからには大義名分が欲しいとマイキーの提案で自分達もチームを立ち上げる事にした。そして、昨日、武蔵神社でチームを結成したらしい。
「って事は、みんなもう暴走族なんだね」
「最初、マイキーがチーム名を東京万次郎會にするって言い出してさぁ」
「ダサっ…」
「だろ?でも、一虎の提案で今日、正式に東京卍會になったんだ」
「まぁ、万次郎會よりは、ね?」
そう言うと、二人は「それはねぇよな」と笑っていた。彼らは凄く楽しそうで浮かれているようだが、私は少し心配になっている。暴走族ともなれば、チーム同士の抗争だとか今以上に危険が伴う事になる。本当に大丈夫なのだろうかと、不安だ。
「明日香、オレらは時代を創る」
「時代?」
「一人一人がみんなの為に命を張れるそんなチームにする」
「…うん、それはカッコイイ。みんなにピッタリ」
「だろ?これが結成記念のお守りなんだ」
一虎は嬉しそうに、ポケットから交通安全と書かれたお守りを取り出して私に見せてきた。
場地の口から語られた、チームの理念を聞いて、さっき胸に抱いた不安は少しだけ薄れた。仲間を守る為に出来たチーム、東京卍會。
仲間想いの彼ららしい理念に嬉しく思う気持ちと、六人が力を合わせればきっと素敵なチームになるという確信が不安を打ち消した。
今度は場地がポケットからお守りを取り出して私に手渡した。
「流石にチームには入れてやれねぇけど、オマエもオレらの仲間だからな」
「場地と一緒に明日香の分のお守りも買ったんだ」
二人の優しさと気持ちが嬉しくて、少し涙が滲む。涙が零れないように堪えようとしたが、どうしても嬉しくて雫は頬を伝ってしまった。
「ありがとう、二人とも。凄く嬉しい」
「相変わらず、泣き虫だな」
場地は右手でゴシゴシと擦るように涙を拭った後に犬を撫でるかのように頭をわしゃわしゃと撫でた。全ての行為が雑なのだが、その優しさに胸が暖かくなる。頬が緩むのを感じると同時に一虎の「あーあー」という、溜息にも似た声が聞こえた。
「イチャイチャすんじゃねーよ、暑苦しいな」
「あぁ?してねぇだろ」
一虎が場地の耳元でヒソヒソと何か言った後に、場地は鋭く一虎を睨んで頭を一発叩いていた。何を言ったのだろうと二人を眺めていると、場地が話を逸らすように手元にある御守りを指さして「明日香のはピンクにした」と言った。
視線を二人から御守りに移し、可愛らしい淡いピンクのお守りを何気なく裏返してみると、そこには衝撃的な文字が刺繍されていて、あまりの驚きに涙は瞬時に引っ込んでしまった。
「これ、安産御守りって書いてあるんだけど」
「はぁ?ンな訳ねぇだろ」
二人は慌てて私の手元を覗き込み、御守りにしっかりと"安産守"と刺繍されているのを確認して「マジかよ!?」と叫んだ。
「オマエちゃんと見ろよ!」
「一虎が先にピンクもあるとか言ったんだろーが!」
「確認もしねぇで、買ったのは場地だろ!」
罪のなすりつけあいのような口喧嘩を始めてしまった、場地と一虎が面白くて堪らず、プッと吹き出して笑えば、二人は言い合いを止めて私を見た。
「あー、悪ぃ」
「買い直すか…?」
「ううん、これがいい。二人らしくて好き」
笑いかけると、二人も安心したかのような笑みを浮かべた。場地が「帰るか」と言ったので、私と一虎は頷いて、歩き始めた。
日も暮れ始め、空は黄金色になっていて梅雨の雨で出来た水溜まりに綺麗な色の夕空を映し出しているのが妙に嬉しく感じる。黄金の夕空が私たちを優しく柔らかく照らしていた。
「そう言えば、チーム名、何で卍したの?」
「神社で創設したから、卍でいいんじゃねぇって一虎が」
「え?神社を表すのは鳥居でしょ?卍はお寺じゃない?」
二人はハッとした表情を浮かべ、お互いに顔を見合わせた後に私の方を向いて恐る恐る指をさして「確かに…」と呟いた。
「ホラ、アレだ。卍ってカッケェじゃん?」
「要は気が付かなかったんだね…」
「ほら、オレらってバカだし」
「そのセリフが許されるのはパーちんだけだよ」
二人の重めの溜め息が重なった。「オレら、カッコつかねぇな」と半笑いで呟いた一虎の肩を叩きながら、場地は「それを言うんじゃねぇ」と言った。
「カッコつかない二人も好きだよ」
「「嬉しくねー」」
二人の悲しそうな声が夕空に木霊していた。
こうして、六人で立ち上げた東京卍會はその後、黒龍とぶつかり、見事勝利。そして、渋谷中に東京卍會という名を轟かせたのだった。
ただ、少し心残りと言えば、マイキーとドラケンも居てくれたらな、という事だ。楽しかったから行ってよかったとは思うが、あの二人も居たらもっと楽しかった事だろう。
マイキーと幼馴染という事も学年中に早々にバレて、生徒指導の先生には、どうしてヤツらを連れて来ないと少しだけ怒られた。一年の先生達の間で共有されている、佐野取扱書に何かあったら、幼馴染の藤堂を頼れと書いてあるらしい。そう言われても、場地の事ならともかく、マイキーは無理だ。どちらかと言えば、ドラケンを頼った方が賢明だとは思うが彼もまた参加してないので、必然的に矛先は私に向いてしまうのも致し方ないのかもしれない。
そもそも、彼らは他人に言われたくらいで意志を曲げるほど中途半端な決断をする男達ではない。誰が何と言おうと、二人が来ないのは分かり切っていた。その事を先生に何度も言って、ようやく納得してもらえたのだが、周りの子達には同情の言葉を何人にもかけられたのには、流石に苦笑いを漏らすしかなかった。
そんな事を思い返しているうちに、バスを降りる順番が回って来たので、バスを降りた。先生の解散の言葉を聞き、クラスメイト達と別れの挨拶を済ませてから、昨日、場地と約束した場所へと早足で向かった。
曲がり角を曲がると、そこには既に場地は来ていて、その隣にはもう一人立っていた。私の存在にいち早く気づいたその人物は、ニッコリと笑って右手をあげて左右に振った。
その人物をマジマジと見ると、最後に会った日には無かった物があり、驚く。
「ちょっと、それどうしたの!?」
場地の隣に立っていた人物は一虎なのだが、彼の首を指させば、彼は「カッケェだろ」と輝かしい笑顔を向けた。出会った当初はお坊ちゃんを連想させるような髪型だったのに気付けばパンチパーマになり、今では首に虎のタトゥーまで入れている。どんどん様変わりしていく一虎に驚きが隠せない。
「首に入れるの痛かったでしょ」
「こんくらい余裕だし」
「嘘つけ。涙目になってた癖に」
「なってねーよ!」
二人が胸ぐらを掴んで揉め始めそうになったので、肩に手を置いて「落ち着きなさい」と言えば、二人はパッと手を離した。
二人はいつになく、楽しそうに笑みを浮かべていたので、何があったのかと尋ねると彼らは意気揚々と昨日あった事を話してくれた。
一虎が黒龍と揉めている話を場地がマイキーに相談した所、一虎を助ける為に黒龍とやり合おう事を決めたらしい。黒龍は大きなチームだから、やるからには大義名分が欲しいとマイキーの提案で自分達もチームを立ち上げる事にした。そして、昨日、武蔵神社でチームを結成したらしい。
「って事は、みんなもう暴走族なんだね」
「最初、マイキーがチーム名を東京万次郎會にするって言い出してさぁ」
「ダサっ…」
「だろ?でも、一虎の提案で今日、正式に東京卍會になったんだ」
「まぁ、万次郎會よりは、ね?」
そう言うと、二人は「それはねぇよな」と笑っていた。彼らは凄く楽しそうで浮かれているようだが、私は少し心配になっている。暴走族ともなれば、チーム同士の抗争だとか今以上に危険が伴う事になる。本当に大丈夫なのだろうかと、不安だ。
「明日香、オレらは時代を創る」
「時代?」
「一人一人がみんなの為に命を張れるそんなチームにする」
「…うん、それはカッコイイ。みんなにピッタリ」
「だろ?これが結成記念のお守りなんだ」
一虎は嬉しそうに、ポケットから交通安全と書かれたお守りを取り出して私に見せてきた。
場地の口から語られた、チームの理念を聞いて、さっき胸に抱いた不安は少しだけ薄れた。仲間を守る為に出来たチーム、東京卍會。
仲間想いの彼ららしい理念に嬉しく思う気持ちと、六人が力を合わせればきっと素敵なチームになるという確信が不安を打ち消した。
今度は場地がポケットからお守りを取り出して私に手渡した。
「流石にチームには入れてやれねぇけど、オマエもオレらの仲間だからな」
「場地と一緒に明日香の分のお守りも買ったんだ」
二人の優しさと気持ちが嬉しくて、少し涙が滲む。涙が零れないように堪えようとしたが、どうしても嬉しくて雫は頬を伝ってしまった。
「ありがとう、二人とも。凄く嬉しい」
「相変わらず、泣き虫だな」
場地は右手でゴシゴシと擦るように涙を拭った後に犬を撫でるかのように頭をわしゃわしゃと撫でた。全ての行為が雑なのだが、その優しさに胸が暖かくなる。頬が緩むのを感じると同時に一虎の「あーあー」という、溜息にも似た声が聞こえた。
「イチャイチャすんじゃねーよ、暑苦しいな」
「あぁ?してねぇだろ」
一虎が場地の耳元でヒソヒソと何か言った後に、場地は鋭く一虎を睨んで頭を一発叩いていた。何を言ったのだろうと二人を眺めていると、場地が話を逸らすように手元にある御守りを指さして「明日香のはピンクにした」と言った。
視線を二人から御守りに移し、可愛らしい淡いピンクのお守りを何気なく裏返してみると、そこには衝撃的な文字が刺繍されていて、あまりの驚きに涙は瞬時に引っ込んでしまった。
「これ、安産御守りって書いてあるんだけど」
「はぁ?ンな訳ねぇだろ」
二人は慌てて私の手元を覗き込み、御守りにしっかりと"安産守"と刺繍されているのを確認して「マジかよ!?」と叫んだ。
「オマエちゃんと見ろよ!」
「一虎が先にピンクもあるとか言ったんだろーが!」
「確認もしねぇで、買ったのは場地だろ!」
罪のなすりつけあいのような口喧嘩を始めてしまった、場地と一虎が面白くて堪らず、プッと吹き出して笑えば、二人は言い合いを止めて私を見た。
「あー、悪ぃ」
「買い直すか…?」
「ううん、これがいい。二人らしくて好き」
笑いかけると、二人も安心したかのような笑みを浮かべた。場地が「帰るか」と言ったので、私と一虎は頷いて、歩き始めた。
日も暮れ始め、空は黄金色になっていて梅雨の雨で出来た水溜まりに綺麗な色の夕空を映し出しているのが妙に嬉しく感じる。黄金の夕空が私たちを優しく柔らかく照らしていた。
「そう言えば、チーム名、何で卍したの?」
「神社で創設したから、卍でいいんじゃねぇって一虎が」
「え?神社を表すのは鳥居でしょ?卍はお寺じゃない?」
二人はハッとした表情を浮かべ、お互いに顔を見合わせた後に私の方を向いて恐る恐る指をさして「確かに…」と呟いた。
「ホラ、アレだ。卍ってカッケェじゃん?」
「要は気が付かなかったんだね…」
「ほら、オレらってバカだし」
「そのセリフが許されるのはパーちんだけだよ」
二人の重めの溜め息が重なった。「オレら、カッコつかねぇな」と半笑いで呟いた一虎の肩を叩きながら、場地は「それを言うんじゃねぇ」と言った。
「カッコつかない二人も好きだよ」
「「嬉しくねー」」
二人の悲しそうな声が夕空に木霊していた。
こうして、六人で立ち上げた東京卍會はその後、黒龍とぶつかり、見事勝利。そして、渋谷中に東京卍會という名を轟かせたのだった。