勿忘草
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放課後になった途端に帰ると言ってさっさと帰ろうとしていた、場地の腕を引っ張って職員室まで連れて行く。途中で離せとキレられたが、そんな簡単には離さない。だって、それで更に怒られるのは私なのだから。
「誰のせいで放課後呼び出されたと思ってるの?」
「明日香が授業中立ち歩くからだろぉ?」
「違うよ!場地が寝てるせいだよ!」
「オマエ、三大欲求って知ってるか?」
「それは知ってますけど」
「つまりそういう事だ」
「は?」
「睡眠欲には逆らえねぇ」
「…バッカだなぁ」
「バカはオマエだ」
場地は鼻で笑って、ドヤ顔でそう言う。最近、三大欲求という言葉を覚えたのか子供のように早速使ってみたくなったようだ。
場地の腕を掴んで引き摺るように職員室へと入り、担任の先生の元へ連れて行く。
「先生、場地を連れて来ました」
「藤堂、ご苦労だったな。じゃあ、二人にはこれを頼む」
先生に手渡されたのは、膨大な量のプリントとホチキス。一番上にある紙を見て見ると、校外学習のしおりと書かれていた。
「六月にある、親睦会を含んだ校外学習の資料だ。人数分、作ってくれ」
「はぁ?テメェでやれよ…っ痛ぇ!!」
「なんでもないです!私たちでやります!」
テメェでやれだなんて言い出した場地の足を思いっきり踏みつけ、愛想笑いで誤魔化して、場地の腕を掴んで行きと同じように引き摺るように職員室から逃げ出した。
「あまり余計な事言わないでよ」
「楽しようとしたアイツが悪ぃだろ」
「これでまた新たな雑用増やされたら場地だって嫌でしょ?」
「そん時はぶん殴る」
「ダメに決まってるでしょ」
ヤレヤレと頭を振れば、気に食わなかったのか頭を軽く叩かれた。地味に痛くて、頭を抑えていると「モタモタすんなよ」と先を歩いて行ってしまう場地の後を追いかけた。
教室へと戻り、場地が自分の席に座ったので私は場地の前の席の椅子を後ろに向けて座り、一つの机を囲んで作業を始める。
教室には誰も居なくて、私たちが鳴らすホチキスを留める音と紙を捲る音だけが響いていた。
「ねぇ、雑過ぎない?」
「留まってれば、なんだっていーだろ」
場地は大雑把な性格なので、昔からこういう作業は全く向いていない。前に大雑把だと指摘したら、「オレは思い切りが良いだけだ」と返された事がある。かなりのポジティブシンキングの持ち主だ。
彼の言葉を借りれば、思い切りの良い場地の代わりに私が細かい事はやって来た。例えば、小学校の夏休みの宿題の図工だとかは私が担当して、場地は自由研究を担当していた。場地が大好きな動物のことを詳しく調べたのを写させてもらっていた。一度だけ、一字一句変えずに丸写しして提出したら、先生に怒られた。普段の行いの所為で、私ではなく場地が。だけど、その時、場地は一言も写したのは私だとは言わずに黙って怒られていた。後で謝れば、「気にすんな」と笑ってくれた。
そうやって、小さい頃からお互いの足りない部分を補って来た。
文句は言ってみるが本当は、場地のせいで怒られたり、連帯責任を課せられても嫌ではない。前に庇って貰ったというのもあるが、場地と一緒なら怒られても罰でもなんでも受けたって良いとすら思える。
「校外学習楽しみだね」
「オレは行かねーぞ」
「え、なんで!?」
「団体行動なんてめんどくせぇ。サボる」
「えぇ、一緒に行こうよ」
「やだ」
場地と一緒なら云々と心の中で語っていた矢先のこの発言には、地味にショックだ。親睦も兼ねた校外学習でクラスの子達と仲良くなる機会なのだから楽しみだが、場地も一緒の方が更に楽しめるハズだ。
「どうしても行かないの?」
「オマエもサボれよ。アイツらもサボるってよ」
「あなた達と違って不良じゃないので」
「優等生は大変なこった」
別に優等生ではないが、校外学習で仲良しグループが形成されるだろうし、入りそびれると今後の学校生活に影響が出るので、サボるという選択肢は視野にない。
一度、サボると決めてしまったら揺らぐ事はないので、仕方ないかとため息をついた。
雑談をしながら作業を進め、最後の一部をホチキスで留めてようやく全てまとめ終わった。二つある資料の山を持ち上げて職員室に持って行こうと席を立つと、横からスっと資料を取り上げられた。
足で閉まったドアを開けて、スタスタと廊下を歩いて行く場地を慌てて追いかける。
「職員室そっちじゃない!逆!」
「先言えよ!」
恥ずかしそうに小走りで引き返して来た場地の隣に並んで一緒に廊下を歩く。
「持ってくれて、ありがとね」
「おー」
一人で歩く時は歩幅も大きくて早いけれど、私が隣に並ぶと同じペースに合わせて歩いてくれる。普段は無頓着のクセに、さりげなく優しい所が無性に好きだ。
いつもは一定の距離があるけれど、今日は一歩、場地との距離を詰めてみる。腕が触れるか触れないかくらいまで近づいて歩いてみると、なんだかちょっとだけ、いつもと景色が違って見えるような気がした。
「誰のせいで放課後呼び出されたと思ってるの?」
「明日香が授業中立ち歩くからだろぉ?」
「違うよ!場地が寝てるせいだよ!」
「オマエ、三大欲求って知ってるか?」
「それは知ってますけど」
「つまりそういう事だ」
「は?」
「睡眠欲には逆らえねぇ」
「…バッカだなぁ」
「バカはオマエだ」
場地は鼻で笑って、ドヤ顔でそう言う。最近、三大欲求という言葉を覚えたのか子供のように早速使ってみたくなったようだ。
場地の腕を掴んで引き摺るように職員室へと入り、担任の先生の元へ連れて行く。
「先生、場地を連れて来ました」
「藤堂、ご苦労だったな。じゃあ、二人にはこれを頼む」
先生に手渡されたのは、膨大な量のプリントとホチキス。一番上にある紙を見て見ると、校外学習のしおりと書かれていた。
「六月にある、親睦会を含んだ校外学習の資料だ。人数分、作ってくれ」
「はぁ?テメェでやれよ…っ痛ぇ!!」
「なんでもないです!私たちでやります!」
テメェでやれだなんて言い出した場地の足を思いっきり踏みつけ、愛想笑いで誤魔化して、場地の腕を掴んで行きと同じように引き摺るように職員室から逃げ出した。
「あまり余計な事言わないでよ」
「楽しようとしたアイツが悪ぃだろ」
「これでまた新たな雑用増やされたら場地だって嫌でしょ?」
「そん時はぶん殴る」
「ダメに決まってるでしょ」
ヤレヤレと頭を振れば、気に食わなかったのか頭を軽く叩かれた。地味に痛くて、頭を抑えていると「モタモタすんなよ」と先を歩いて行ってしまう場地の後を追いかけた。
教室へと戻り、場地が自分の席に座ったので私は場地の前の席の椅子を後ろに向けて座り、一つの机を囲んで作業を始める。
教室には誰も居なくて、私たちが鳴らすホチキスを留める音と紙を捲る音だけが響いていた。
「ねぇ、雑過ぎない?」
「留まってれば、なんだっていーだろ」
場地は大雑把な性格なので、昔からこういう作業は全く向いていない。前に大雑把だと指摘したら、「オレは思い切りが良いだけだ」と返された事がある。かなりのポジティブシンキングの持ち主だ。
彼の言葉を借りれば、思い切りの良い場地の代わりに私が細かい事はやって来た。例えば、小学校の夏休みの宿題の図工だとかは私が担当して、場地は自由研究を担当していた。場地が大好きな動物のことを詳しく調べたのを写させてもらっていた。一度だけ、一字一句変えずに丸写しして提出したら、先生に怒られた。普段の行いの所為で、私ではなく場地が。だけど、その時、場地は一言も写したのは私だとは言わずに黙って怒られていた。後で謝れば、「気にすんな」と笑ってくれた。
そうやって、小さい頃からお互いの足りない部分を補って来た。
文句は言ってみるが本当は、場地のせいで怒られたり、連帯責任を課せられても嫌ではない。前に庇って貰ったというのもあるが、場地と一緒なら怒られても罰でもなんでも受けたって良いとすら思える。
「校外学習楽しみだね」
「オレは行かねーぞ」
「え、なんで!?」
「団体行動なんてめんどくせぇ。サボる」
「えぇ、一緒に行こうよ」
「やだ」
場地と一緒なら云々と心の中で語っていた矢先のこの発言には、地味にショックだ。親睦も兼ねた校外学習でクラスの子達と仲良くなる機会なのだから楽しみだが、場地も一緒の方が更に楽しめるハズだ。
「どうしても行かないの?」
「オマエもサボれよ。アイツらもサボるってよ」
「あなた達と違って不良じゃないので」
「優等生は大変なこった」
別に優等生ではないが、校外学習で仲良しグループが形成されるだろうし、入りそびれると今後の学校生活に影響が出るので、サボるという選択肢は視野にない。
一度、サボると決めてしまったら揺らぐ事はないので、仕方ないかとため息をついた。
雑談をしながら作業を進め、最後の一部をホチキスで留めてようやく全てまとめ終わった。二つある資料の山を持ち上げて職員室に持って行こうと席を立つと、横からスっと資料を取り上げられた。
足で閉まったドアを開けて、スタスタと廊下を歩いて行く場地を慌てて追いかける。
「職員室そっちじゃない!逆!」
「先言えよ!」
恥ずかしそうに小走りで引き返して来た場地の隣に並んで一緒に廊下を歩く。
「持ってくれて、ありがとね」
「おー」
一人で歩く時は歩幅も大きくて早いけれど、私が隣に並ぶと同じペースに合わせて歩いてくれる。普段は無頓着のクセに、さりげなく優しい所が無性に好きだ。
いつもは一定の距離があるけれど、今日は一歩、場地との距離を詰めてみる。腕が触れるか触れないかくらいまで近づいて歩いてみると、なんだかちょっとだけ、いつもと景色が違って見えるような気がした。