少年擬心換装
セレモニー自体は簡素なものだった。
新入生の紹介と教職員の挨拶、各学内施設長からの挨拶。ユーリズの来歴としてラデュクスの発生と迫害の歴史。ポリフォニアの設立過程の説明。ラデュクスの保護および研究、育成による地位向上の目的。およそ公に喧伝されているものと相違ない。
しかし学内プログラムの「独自実習」についての説明からその目的は色を変える。
敵性生命体との交戦を仮定した、学園生活を送るラデュクスの神経を媒介した心的外殻に感応する人型の擬体兵器、「グロウ」による戦闘。惑星内の研究機関と軍部の癒着をわずかに匂わせる。ジーンは人知れずメモリにその情報を刻み込む。
補足説明として生徒会によるグロウ実機のデモンストレーションが行われた。隊列を組んだグロウたちが威容を示す。その中でも一際動きの鮮やかな2機が模擬戦闘を行う。幾何学の威容をもつフラクタルを展開する漆黒の機体と、優美な有機的フラクタルを展開する紺碧の機体が距離をとって旋回する。誘導パルス変調波を撃ち合い、交わし合いながらぶつかる。削れてはまた展開する鮮やかなフラクタルのフィールド。漆黒の機体が圧しているようだ。
ふと隣を見るとロイドが真っ青な顔をしながら戦闘を見つめている。グロウ戦闘が苦手らしい。競り合っていた2機から漆黒の機体が離れ上昇し、そのフラクタルの威容の城を更に展開しながら紺碧の期待に向け下降する。
衝撃を受け止めた紺碧の機体は勢いを殺しながら着地するが、もうシールドを展開してはいない。決着があったようだ。
喝采が響く。生徒たちの頬が上気している。生徒たちは概ねこの模擬戦闘を好ましいものとして観戦していたようだ。
「大丈夫か?」
顔色の悪いロイドに尋ねる。
「大丈夫…僕入学試験のグロウ搭乗試験の判定がD-で…」
「そうか」
眼鏡のリムを押さえながらロイドが呻いている。
「これで第516回編入学セレモニーを終了とします。A棟の生徒から順に帰棟してください。学内委員会および部活動への参加希望者はホールに残り…」
アナウンスが響く。一度自室に帰ったほうが良さそうだ。
「帰るか?」
「そうしようかな。委員会は後日の申請でもいいみたいだし」
やっと顔色が戻ったロイドが頷いた。
新入生の紹介と教職員の挨拶、各学内施設長からの挨拶。ユーリズの来歴としてラデュクスの発生と迫害の歴史。ポリフォニアの設立過程の説明。ラデュクスの保護および研究、育成による地位向上の目的。およそ公に喧伝されているものと相違ない。
しかし学内プログラムの「独自実習」についての説明からその目的は色を変える。
敵性生命体との交戦を仮定した、学園生活を送るラデュクスの神経を媒介した心的外殻に感応する人型の擬体兵器、「グロウ」による戦闘。惑星内の研究機関と軍部の癒着をわずかに匂わせる。ジーンは人知れずメモリにその情報を刻み込む。
補足説明として生徒会によるグロウ実機のデモンストレーションが行われた。隊列を組んだグロウたちが威容を示す。その中でも一際動きの鮮やかな2機が模擬戦闘を行う。幾何学の威容をもつフラクタルを展開する漆黒の機体と、優美な有機的フラクタルを展開する紺碧の機体が距離をとって旋回する。誘導パルス変調波を撃ち合い、交わし合いながらぶつかる。削れてはまた展開する鮮やかなフラクタルのフィールド。漆黒の機体が圧しているようだ。
ふと隣を見るとロイドが真っ青な顔をしながら戦闘を見つめている。グロウ戦闘が苦手らしい。競り合っていた2機から漆黒の機体が離れ上昇し、そのフラクタルの威容の城を更に展開しながら紺碧の期待に向け下降する。
衝撃を受け止めた紺碧の機体は勢いを殺しながら着地するが、もうシールドを展開してはいない。決着があったようだ。
喝采が響く。生徒たちの頬が上気している。生徒たちは概ねこの模擬戦闘を好ましいものとして観戦していたようだ。
「大丈夫か?」
顔色の悪いロイドに尋ねる。
「大丈夫…僕入学試験のグロウ搭乗試験の判定がD-で…」
「そうか」
眼鏡のリムを押さえながらロイドが呻いている。
「これで第516回編入学セレモニーを終了とします。A棟の生徒から順に帰棟してください。学内委員会および部活動への参加希望者はホールに残り…」
アナウンスが響く。一度自室に帰ったほうが良さそうだ。
「帰るか?」
「そうしようかな。委員会は後日の申請でもいいみたいだし」
やっと顔色が戻ったロイドが頷いた。
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