少年擬心換装
再起動する。シータはすでにスリープモードに移行していた。部屋の扉をノックする音が聞こえる。シータのチップを取り出して首から下げる。
「はい」
ドアを開けると眼鏡をかけた知らない少年が立っていた。大きめの手提げ袋を所持している。危険物ではないと判断し、受け取る。
「あ、ごめんなさい、寝てましたか?」
「構わない、今起きた」
「起こしちゃいましたか、すみません。あの、同室のロイドです。ロイド・プレストン。これ、ご挨拶に」
ロイドと名乗る少年に袋を手渡される。
「これは?」
「手土産です。母にたくさん持たされてて……あの、味はその、あまり良くないのですが、栄養があります」
食べ物であるらしい。
「そうか」
自分より頭一つ分身長の少ない少年が軽く頭を下げる。
「これからよろしくお願いします」
「……ああ、頼む」
ロイド・プレストン。シータを通じて外部記憶リソースにアクセスする。特定の惑星間流通商社との関連が示唆される。イリヤス総合流通商社、名誉会長オーティス・プレストン、実子……
「あの、もうすぐセレモニーになると思うので、良ければ一緒に行きませんか?僕この学園に知り合いとかいないので、ちょっと心細くて」
エルダットからは目立つ行為はくれぐれも避けるように言われているが、他者との交流は積極的に試行するように言われている。シータの感情処理ユニットとしての精度があがり、より他者に溶け込むコミュニケーションを可能にするからだ。
「よろしく頼む」
ロイドの表情に好意的な変化が見られる。
「こちらこそよろしく。あの……名前はジーンでいいのかな」
「ああ、名乗っていなかった。すまない。ジーン・カルフォだ」
「ジーン、よろしく。ところで君、片付けとか得意?」
「なぜ」
「実は僕、荷解きが全然終わってなくて……セレモニーの案内放送があるまで手伝ってくれないかな?」
「俺に出来る範囲であれば構わない」
「ほんと?助かるよ。ちょっと僕の部屋に来てくれ」
自室を出るとロイドの私物らしきコンテナがいまだロイドの部屋に収まらず共有ユニット部を一部占領していた。全てのコンテナに几帳面に品目がメモしてある。
ロイドの居室のコンテナは天井近くまで積まれていた。思っていたよりは床が見える。
「まずはベッド周囲を整えた方がいいんじゃないか。次にクローゼット。余裕があれば共有部のキッチンに私物を置くといい」
「じゃあまずベッド周りを最低限整えようかな……。セレモニーまでにクローゼットには辿り着けなさそうだ。ジーン、悪いんだけどキッチン周囲の私物を適当に出して置いてくれないかな」
「適当」
「あ、適当ってのも困るよね……。ジーンが困らない範囲で調理器具を並べて置いてくれるか?」
「俺は困らない。調理はしない」
「お湯沸かすくらいはするだろ。使う時は適当に……いや勝手によけてくれていいから」
「わかった」
鍋やフライパンの類をならべナイフを収納し、カトラリーを積んでいると10分ほどが経過した。ロイドの居室ではロイドが圧縮袋から取り出した寝具と悪戦苦闘している。そこからさらに寝具とロイドの戦いを眺めていると、放送が流れた。
「本日の入学セレモニーを行います。A棟、B棟、C棟、D棟の入学者は第二多目的エリアへお越しください」
「ロイド、行けそうか」
「はぁっ……まあ多分今晩はベッドで寝れそうだ……ありがとうジーン、助かった。セレモニーに行こう」
息切れしながらロイドが出てきた。ともにセレモニー会場を目指す。
「はい」
ドアを開けると眼鏡をかけた知らない少年が立っていた。大きめの手提げ袋を所持している。危険物ではないと判断し、受け取る。
「あ、ごめんなさい、寝てましたか?」
「構わない、今起きた」
「起こしちゃいましたか、すみません。あの、同室のロイドです。ロイド・プレストン。これ、ご挨拶に」
ロイドと名乗る少年に袋を手渡される。
「これは?」
「手土産です。母にたくさん持たされてて……あの、味はその、あまり良くないのですが、栄養があります」
食べ物であるらしい。
「そうか」
自分より頭一つ分身長の少ない少年が軽く頭を下げる。
「これからよろしくお願いします」
「……ああ、頼む」
ロイド・プレストン。シータを通じて外部記憶リソースにアクセスする。特定の惑星間流通商社との関連が示唆される。イリヤス総合流通商社、名誉会長オーティス・プレストン、実子……
「あの、もうすぐセレモニーになると思うので、良ければ一緒に行きませんか?僕この学園に知り合いとかいないので、ちょっと心細くて」
エルダットからは目立つ行為はくれぐれも避けるように言われているが、他者との交流は積極的に試行するように言われている。シータの感情処理ユニットとしての精度があがり、より他者に溶け込むコミュニケーションを可能にするからだ。
「よろしく頼む」
ロイドの表情に好意的な変化が見られる。
「こちらこそよろしく。あの……名前はジーンでいいのかな」
「ああ、名乗っていなかった。すまない。ジーン・カルフォだ」
「ジーン、よろしく。ところで君、片付けとか得意?」
「なぜ」
「実は僕、荷解きが全然終わってなくて……セレモニーの案内放送があるまで手伝ってくれないかな?」
「俺に出来る範囲であれば構わない」
「ほんと?助かるよ。ちょっと僕の部屋に来てくれ」
自室を出るとロイドの私物らしきコンテナがいまだロイドの部屋に収まらず共有ユニット部を一部占領していた。全てのコンテナに几帳面に品目がメモしてある。
ロイドの居室のコンテナは天井近くまで積まれていた。思っていたよりは床が見える。
「まずはベッド周囲を整えた方がいいんじゃないか。次にクローゼット。余裕があれば共有部のキッチンに私物を置くといい」
「じゃあまずベッド周りを最低限整えようかな……。セレモニーまでにクローゼットには辿り着けなさそうだ。ジーン、悪いんだけどキッチン周囲の私物を適当に出して置いてくれないかな」
「適当」
「あ、適当ってのも困るよね……。ジーンが困らない範囲で調理器具を並べて置いてくれるか?」
「俺は困らない。調理はしない」
「お湯沸かすくらいはするだろ。使う時は適当に……いや勝手によけてくれていいから」
「わかった」
鍋やフライパンの類をならべナイフを収納し、カトラリーを積んでいると10分ほどが経過した。ロイドの居室ではロイドが圧縮袋から取り出した寝具と悪戦苦闘している。そこからさらに寝具とロイドの戦いを眺めていると、放送が流れた。
「本日の入学セレモニーを行います。A棟、B棟、C棟、D棟の入学者は第二多目的エリアへお越しください」
「ロイド、行けそうか」
「はぁっ……まあ多分今晩はベッドで寝れそうだ……ありがとうジーン、助かった。セレモニーに行こう」
息切れしながらロイドが出てきた。ともにセレモニー会場を目指す。