少年擬心換装
諸惑星が挙って研究していたナノマシンによる人体実験ーー人型兵器の開発ーーが未曾有の暴走事故により全宇宙で禁忌とされて50年
大渦状腕歴5140年 複数の惑星で思念による精神干渉を行う者の報告がなされた。
彼ら「ラデュクス」と呼称された者達は、武器廃止運動が盛んな宇宙間において相手を肉体的に傷つけずに自己崩壊に追い込む軍事利用目的で各勢力の欲する所となった。
宇宙政府は各惑星がラデュクスを利用し、純精神上星間紛争が勃発することを危惧 。
その公益性から中立の姿勢を示していた研究機関の集まる惑星「ポリフォニア」に各惑星で発現したラデュクスを集約し、保護と同時に発展的研究を行う声明を出した。
ラデュクス発現者に未成年が多かったこと、そして保護機関の置かれた惑星に研究機関が集まり学問を修めるのに適していたことから、保護施設は学園としての運営を開始した。
それがポリフォニアに設立されたこの学園「ユーリズ」の起こりである。
大渦状腕歴5162年 学園は知力、体力、健康状態、そして「心的外殻」と呼ばれるラデュクスの能力発現をテストし、適合者を入学させていた。今年もまた各惑星から適合者と思われる少年達が集められていた。
ジーンは、心的外殻テストをごく平凡な成績でクリアした、なんの変哲もないユーリズ学園入学者であった。
彼が学園の内部を探るため、ある惑星の資産家が私財を投じて心的外殻テストをクリアする高度AIを搭載して造られたアンドロイドであるということ以外は。
エルダットが惜しみなく私財を投じて作らせた、反重力機構を含む外部擬似装甲は問題なく稼働してジーンの身体検査を終わらせた。
いざとなれば関係者に感覚マスキングを適用させてその場を凌ぐプロセスを候補にしていたジーンは、手荒なことをせずに済んで良かったと思考した。
「身体検査の済んだ方から呼び出します。C、D
ホールの方は第三開放エリアにて待機してください」
開放エリアではちらほらと合格者らしき者と同伴者らしき者が喜びあっている。ジーンはわざわざ合格発表を屋外で行う意味を、同伴者に即時に伝えるためと理解した。ユーリズ学園内では親元を離れ少年少女達が寮生活を送る。年少者もいる中で彼等の同伴者──一般的には「親」──が子の晴れ姿を目に収めたいと思うのだろう。この学園惑星ポリフォニアでは気候はある程度過ごしやすいように調整されている。常人ほどの体力がないラデュクスでも屋外で過ごしていてもさほど問題はない。と言ってもそれほど多くの少年少女がたむろしているわけでもなかった。実際、ジーンもすぐに受験番号を呼び出された。
ユーリズでは表向きは通常の学習に加えてラデュクスとしての力の行使と抑制、社会適応について学ぶことになっている。しかし外部ではまことしやかに学園と研究機関、そして私設軍部の癒着が噂されていた。実態を調査するため、超渦状腕権利機構がある一大企業の出資を受けて作り出した内部偵察機が、ジーン・カルフォだった。
大渦状腕歴5140年 複数の惑星で思念による精神干渉を行う者の報告がなされた。
彼ら「ラデュクス」と呼称された者達は、武器廃止運動が盛んな宇宙間において相手を肉体的に傷つけずに自己崩壊に追い込む軍事利用目的で各勢力の欲する所となった。
宇宙政府は各惑星がラデュクスを利用し、純精神上星間紛争が勃発することを危惧 。
その公益性から中立の姿勢を示していた研究機関の集まる惑星「ポリフォニア」に各惑星で発現したラデュクスを集約し、保護と同時に発展的研究を行う声明を出した。
ラデュクス発現者に未成年が多かったこと、そして保護機関の置かれた惑星に研究機関が集まり学問を修めるのに適していたことから、保護施設は学園としての運営を開始した。
それがポリフォニアに設立されたこの学園「ユーリズ」の起こりである。
大渦状腕歴5162年 学園は知力、体力、健康状態、そして「心的外殻」と呼ばれるラデュクスの能力発現をテストし、適合者を入学させていた。今年もまた各惑星から適合者と思われる少年達が集められていた。
ジーンは、心的外殻テストをごく平凡な成績でクリアした、なんの変哲もないユーリズ学園入学者であった。
彼が学園の内部を探るため、ある惑星の資産家が私財を投じて心的外殻テストをクリアする高度AIを搭載して造られたアンドロイドであるということ以外は。
エルダットが惜しみなく私財を投じて作らせた、反重力機構を含む外部擬似装甲は問題なく稼働してジーンの身体検査を終わらせた。
いざとなれば関係者に感覚マスキングを適用させてその場を凌ぐプロセスを候補にしていたジーンは、手荒なことをせずに済んで良かったと思考した。
「身体検査の済んだ方から呼び出します。C、D
ホールの方は第三開放エリアにて待機してください」
開放エリアではちらほらと合格者らしき者と同伴者らしき者が喜びあっている。ジーンはわざわざ合格発表を屋外で行う意味を、同伴者に即時に伝えるためと理解した。ユーリズ学園内では親元を離れ少年少女達が寮生活を送る。年少者もいる中で彼等の同伴者──一般的には「親」──が子の晴れ姿を目に収めたいと思うのだろう。この学園惑星ポリフォニアでは気候はある程度過ごしやすいように調整されている。常人ほどの体力がないラデュクスでも屋外で過ごしていてもさほど問題はない。と言ってもそれほど多くの少年少女がたむろしているわけでもなかった。実際、ジーンもすぐに受験番号を呼び出された。
ユーリズでは表向きは通常の学習に加えてラデュクスとしての力の行使と抑制、社会適応について学ぶことになっている。しかし外部ではまことしやかに学園と研究機関、そして私設軍部の癒着が噂されていた。実態を調査するため、超渦状腕権利機構がある一大企業の出資を受けて作り出した内部偵察機が、ジーン・カルフォだった。