このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

真4・真4F

天井が崩れて久しいが、未だ東京とミカド国では時間の流れにズレがあるようだ。非常識な時間に受信したメッセージを知らせるバロウズの声を聞くとはなしに聞きながら、フリンは降りそうになる瞼を必死で堪えた。「フロリダに来い。奢る。」

時間すら書いていない、要件だけの愛想のないメッセージだ。差出人を見て合点が行く。泥が詰まった様に頭が働かないが、身体は淀みなく身支度を整える。護身用の武器を携行して、ターミナルから新宿へと向かった。こちらの都合など御構い無しの友人にかける嫌味を考えながら。

東京も夜明け前、以前より増えつつある街灯によって明るく感じるが、人気は疎らだ。時々現れる有象無象の悪魔達を切りつ避けつ奥へと足を向ける。人外ハンター本部としての機能を霞ヶ関に移したフロリダにはもはや見張りはいない。扉を開けると、コーヒーの匂いが漂っていた。

爪先が床に届かないカウンター席の真ん中を陣取って突っ伏している少年以外に人影はない。「一人かい?随分急な呼び出しだね。」苦笑混じりに歳下の友人に声をかけると、視線だけをこちらに向けて答えた。「何時間待たせんだダボ」

少年はそのままスッと身を起こし、危なげなく椅子を下りると乱暴に扉を開けて駆け出していく。頬にうたた寝をした跡を付けたまま。「…何時間待ってたんだ…」
カウンターには空のカップ1客と冷めたコーヒー一杯が置かれている。
8/37ページ