真4・真4F
ケンジは自室で、明日担当する地域に出没する悪魔の情報を流し見ていた。
その殆どが2人の少年によって記述されている。
悪魔の出自と性質、使用する魔法やスキルについて綿密に書かれているものはキヨハルが。
悪魔の性格と好む物、有効な攻撃について殆ど単語で纏めて、終わりに『うまい』『かたい』『後味が悪い』『腹を下す』などと書かれているのが、十中八九アイツ。
不意にケンジの部屋を控えめにノックする音が聞こえてきた。キヨハルなら自分がいることが分かっていれば「失礼するよ」と言いながら入って来るし、アイツならノックした端からずけずけと入って来るだろう。
「開いてるぜ」
視線も向けずに声を張る。おずおずと誰かが入って来る気配がして、ドアが閉まる音がした。
「エロ本はこないだフジワラ…さんに全部捨てられた」
「違います。…あの、ケンジさん、鎮痛剤を分けてもらえませんか?」
アキラが遠慮がちに口を開く。
「は?」
「鎮痛剤をください」
聞き返されたアキラが、今度ははっきりと告げる。
「キヨハルんとこ行けよ」
スマホから目を離さず、ケンジは手を払う仕草をした。
「キヨハルさんは…治してくれるから…」
「だからキヨハルのとこに行けって。それか、」
「■■■■さんは嫌です」
アイツ嫌われてんな、とケンジは内心思ったが口にはしない。
代わりに、
「なんでキヨハルが治すのが気に食わないんだ?」と尋ねる。
「だってあの人、みんなのことを治そうとするから」
「好きでやってんだろ」
「キヨハルさんだって前線で戦って、
傷ついてるのに…消耗させられませんよ」
これくらいの傷で、と呟くアキラにちらりと視線を投げる。
まだ新しい裂傷と、擦過傷がいくつか。見える範囲に打撲はない。
「右の棚」
「えっ」
「2度言わせんな。入って右の棚、3段目、右奥から5番目と真ん中のとそのすぐ手前の奴だ。塗布剤は洗面所のどっかにある」
アキラは一瞬面食らって、すぐに言われた場所を探しだした。
「汚な…」
「失礼だな。別にゴミは入れてねえぞ」
「雑然としすぎなんじゃ…」
ブツブツと呟きながら薬瓶とヒートを取り出す。青色の蓋の薬の上で彼は手を止めた。
「あの、これ…」
「超短時間作用型、依存性も極めて低い。らしい。俺も聞いただけだけどな。飲んでとっとと寝ろ」
そう言ってケンジは初めてアキラに視線を合わせた。
「明日の編成聞いてないのか?」
「まだ確認してません」
「俺とだぞ?」
アキラが豆鉄砲を食らったような顔をしているのを見て、ケンジはニヤリと笑った。
「足引っ張んなよ」
そうして再び、アキラに退室を促すジェスチャーをした。
必要な薬を持って、アキラが自室へと駆けていく。
その後もケンジは自室で、スマホを眺めていた。
その殆どが2人の少年によって記述されている。
悪魔の出自と性質、使用する魔法やスキルについて綿密に書かれているものはキヨハルが。
悪魔の性格と好む物、有効な攻撃について殆ど単語で纏めて、終わりに『うまい』『かたい』『後味が悪い』『腹を下す』などと書かれているのが、十中八九アイツ。
不意にケンジの部屋を控えめにノックする音が聞こえてきた。キヨハルなら自分がいることが分かっていれば「失礼するよ」と言いながら入って来るし、アイツならノックした端からずけずけと入って来るだろう。
「開いてるぜ」
視線も向けずに声を張る。おずおずと誰かが入って来る気配がして、ドアが閉まる音がした。
「エロ本はこないだフジワラ…さんに全部捨てられた」
「違います。…あの、ケンジさん、鎮痛剤を分けてもらえませんか?」
アキラが遠慮がちに口を開く。
「は?」
「鎮痛剤をください」
聞き返されたアキラが、今度ははっきりと告げる。
「キヨハルんとこ行けよ」
スマホから目を離さず、ケンジは手を払う仕草をした。
「キヨハルさんは…治してくれるから…」
「だからキヨハルのとこに行けって。それか、」
「■■■■さんは嫌です」
アイツ嫌われてんな、とケンジは内心思ったが口にはしない。
代わりに、
「なんでキヨハルが治すのが気に食わないんだ?」と尋ねる。
「だってあの人、みんなのことを治そうとするから」
「好きでやってんだろ」
「キヨハルさんだって前線で戦って、
傷ついてるのに…消耗させられませんよ」
これくらいの傷で、と呟くアキラにちらりと視線を投げる。
まだ新しい裂傷と、擦過傷がいくつか。見える範囲に打撲はない。
「右の棚」
「えっ」
「2度言わせんな。入って右の棚、3段目、右奥から5番目と真ん中のとそのすぐ手前の奴だ。塗布剤は洗面所のどっかにある」
アキラは一瞬面食らって、すぐに言われた場所を探しだした。
「汚な…」
「失礼だな。別にゴミは入れてねえぞ」
「雑然としすぎなんじゃ…」
ブツブツと呟きながら薬瓶とヒートを取り出す。青色の蓋の薬の上で彼は手を止めた。
「あの、これ…」
「超短時間作用型、依存性も極めて低い。らしい。俺も聞いただけだけどな。飲んでとっとと寝ろ」
そう言ってケンジは初めてアキラに視線を合わせた。
「明日の編成聞いてないのか?」
「まだ確認してません」
「俺とだぞ?」
アキラが豆鉄砲を食らったような顔をしているのを見て、ケンジはニヤリと笑った。
「足引っ張んなよ」
そうして再び、アキラに退室を促すジェスチャーをした。
必要な薬を持って、アキラが自室へと駆けていく。
その後もケンジは自室で、スマホを眺めていた。