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真4・真4F

地面に転がる焼死体を一瞥し、「ハンターだ」と無感動に告げる。
機械的な動作でスマートフォンから行方不明者のアーカイブを探り、アップロードした写真と位置情報を紐付けして行く。あとは商会側の仕事だ。
スマホをロックしたナナシは、屈み込んだまま合掌して瞑目した。

その間フリンは傍らで棒立ちしていた。周囲を警戒していたと言えば聞こえはいいが、其の実少年が澱みなく死者を死者として扱い弔ったことに困惑していた。
「知らない人なのかい」
「知らない人。所属…池袋だ」
わざわざスマホを再起動して確かめる。
その画像欄を埋め尽くす死体に言葉を無くした。五体満足な人間を探す方が難しい。
「君は…写真を消さないのか」
「えっ…ああ、消そうとも思わなかった。数が数だしめんどくさいな」
ナナシは淡々と画像を選択しては消していたが、あまりの数に早々に音をあげて再びスマホの画面を落とした。
15の少年が腕に据え付けて持ち運ぶにはあまりに醜悪に思えた。

「アンタの写真のが趣味悪いよ」
突っ立っていると、歩み寄って来たナナシが笑っている。
「過去の亡霊ばっかり撮って回ってる。葬い方も知らないのに」
ノゾミから与えられたカメラに収まっている、構図もピントもない写真に写る。かつての人の営みの残滓。
フリンにとっては理解しようもない情景だった。
だからこそ、死体を写す写真より余程酷な。東京に生きる人の心を掻き乱すような写真が撮れる。
「消した方がいいかい?」
フリンがカメラのデータを見て難しい顔で唸っている。
「いや、死ぬまで大事に取っておいた方がいいよ」
ナナシは神妙な面持ちで適当なことを言って、死体の懐を漁るフリンから目を逸らした。
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