真4・真4F
地下街の一室、天井の剥き出しになった部屋に足の踏み場もないほどに割れた空き瓶や紙屑がが散乱している。その中央でナナシが死んだように眠っていた。アルコールの匂いが漂ってくる。足音を消しつつ部屋の中央に歩み寄っていくと、割れたガラスとこびりついた液体が靴底を汚していく。死んだように蒼い顔をしたナナシが目を開いた。
「依頼が済んだのか」
瓶に埋もれながらナナシが身体を起こしてフリンに声をかける。頭痛がするのかこめかみを押さえている。
「今日は大した依頼が無かったから、色々見て回ってたよ。池袋は本当に復興が目覚ましいね」
転がった瓶を拾い上げながらフリンは微笑む。
首に巻いたスカーフを解いて、何らかの液体に塗れたナナシの口元を拭った。
「汚れる」
嫌そうに顔を背ける。
「汚してる」
フリンは至極楽しそうに告げながらスカーフを汚していく。
「吐いた?」
「まだ」
ナナシがみず、と掠れた声で告げる。水の持ち合わせなど持っていなかった。
「ソーマの雫なら」
「酒じゃないか…でも気分は良くなると思う」
フリンに渡された小瓶を煽って、足元に放る。小瓶は存外に頑丈らしく、砕けることはなかった。
「まだ吐きそう?」
「だいぶマシ」
「まだ死にたくなってる?」
散乱した部屋に座り込んだまま、ナナシがフリンを睨みつける。
「だいぶマシ…もう少しこっちに来て」
言われるがままにナナシの目の前に屈み込む。スカーフを解いて剥き出しの首に、ナナシが噛み付く。歯を突き立てて、ひと舐めして離れていく。
「しょっぱい」
「甘いとでも思ったの?」
フリンは喉元に手をやった。唾液が指に付く。血は滲んでいなかったが、赤く歯型がついているだろう。
「食い破れば良かったのに」
大して残念でもなさそうな口調でフリンは告げて、汚れたスカーフを巻いた。
「吐きそうだから、いい」
ナナシはそう言って立ち上がり、部屋から出て行った。
「依頼が済んだのか」
瓶に埋もれながらナナシが身体を起こしてフリンに声をかける。頭痛がするのかこめかみを押さえている。
「今日は大した依頼が無かったから、色々見て回ってたよ。池袋は本当に復興が目覚ましいね」
転がった瓶を拾い上げながらフリンは微笑む。
首に巻いたスカーフを解いて、何らかの液体に塗れたナナシの口元を拭った。
「汚れる」
嫌そうに顔を背ける。
「汚してる」
フリンは至極楽しそうに告げながらスカーフを汚していく。
「吐いた?」
「まだ」
ナナシがみず、と掠れた声で告げる。水の持ち合わせなど持っていなかった。
「ソーマの雫なら」
「酒じゃないか…でも気分は良くなると思う」
フリンに渡された小瓶を煽って、足元に放る。小瓶は存外に頑丈らしく、砕けることはなかった。
「まだ吐きそう?」
「だいぶマシ」
「まだ死にたくなってる?」
散乱した部屋に座り込んだまま、ナナシがフリンを睨みつける。
「だいぶマシ…もう少しこっちに来て」
言われるがままにナナシの目の前に屈み込む。スカーフを解いて剥き出しの首に、ナナシが噛み付く。歯を突き立てて、ひと舐めして離れていく。
「しょっぱい」
「甘いとでも思ったの?」
フリンは喉元に手をやった。唾液が指に付く。血は滲んでいなかったが、赤く歯型がついているだろう。
「食い破れば良かったのに」
大して残念でもなさそうな口調でフリンは告げて、汚れたスカーフを巻いた。
「吐きそうだから、いい」
ナナシはそう言って立ち上がり、部屋から出て行った。