このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

真4・真4F

スカイタワーの上に、天使が治める国がある。
幼い頃、ハンターたちの間でそんな話がまことしやかに囁かれていた。
殺戮の天使達は、訪れた地下の人間達を容赦無く襲い、殺す。
御伽噺めいた与太ではあったが、どのみち大昔の発掘作業で目ぼしい物は持ち去られ、周辺を阿修羅の人間が闊歩するスカイタワーに近づく旨味もなかった。

ある日、天使達がタワーからやって来た、という噂が東京に広がった。
数日で天使とは自らを「サムライ」と名乗る「岩盤の上」の人間で、悪魔使いの集団だと判明した。
錦糸町に訪れたサムライはいなかったが、ハンター協会の情報としてその概要が伝えられていた。

「フリンも天使とか、言われたの」
端座した青年を見下ろして問いながら、乾いた唇を指の腹でなぞり、薄く開かせる。
欲に飽かした手付きとは裏腹に、真摯な瞳を向けてナナシは問うた。
「そういえば、そうだね。柄じゃないけど」
気の無いように答えて、指の腹に甘く歯を立てる。
「清廉潔白じゃないから?」
「…それはナナシの所為だと思うよ」
ひどい言いがかりをつけてフリンは眼を伏せた。
青い外套を脱がせて、結い上げた髪を解く。
天使の羽をもぎ取るような陶酔感があった。
「生きたいと思う…生きてるって実感したいんだ。」
そう言っておずおずとナナシの手を取った。
「おれもそう思うよ」
フリンと触れ合って生きていると実感することは、これ以上に無く充たされた気持ちになれることだった。
だけどそれ以上に、自分がフリンに生への執着を抱かせたことに、脳が焼き切れそうな恍惚を感じた。
19/37ページ