真4・真4F
いつも肌にぴったりと張り付く手袋で覆われているから、こんなにまじまじと彼女の手を見たことが無かった。
小さな掌が汗ばんで、細い指が震えている。
片手で辿々しくツナギのファスナーを下ろしながら、もう片手には蒼くなるほど硬く鉈を握りしめ、こちらの眼前に突き立てて示す。
晒された肌に外気と、流れ落ちた少女の髪が触れるのがむず痒い。ソファに投げ出していた手を、覆い被さる少女の腰に添わすと、微かな身動ぎが伝わってきた。
「トキ、これどけてよ。首が痛え。」
「主様…ナナシ、私に…」
頭上で、ソファを抉る音が聞こえる。「全部じゃなくていいから、少しでいいから、頂戴?」
片手を鉈から離し、冷たい指を頬に沿わせながら、少女は浮かされた眼でナナシを見つめた。
ナナシはしばし凪いだ瞳をトキに向けていたが、ふと穏やかな笑みを浮かべて、神経が死んだように動かし辛い腕を持ち上げて少女を抱き寄せた。乱れた髪を整えるように頭を撫でる。
「…トキ、ありがとう。ごめんね、おれは仲間として、きみが好き。」
そうして幼い子をあやすような甘やかな声で、トキの罪悪感ばかりを引き出す言葉を囁いた。
小さな掌が汗ばんで、細い指が震えている。
片手で辿々しくツナギのファスナーを下ろしながら、もう片手には蒼くなるほど硬く鉈を握りしめ、こちらの眼前に突き立てて示す。
晒された肌に外気と、流れ落ちた少女の髪が触れるのがむず痒い。ソファに投げ出していた手を、覆い被さる少女の腰に添わすと、微かな身動ぎが伝わってきた。
「トキ、これどけてよ。首が痛え。」
「主様…ナナシ、私に…」
頭上で、ソファを抉る音が聞こえる。「全部じゃなくていいから、少しでいいから、頂戴?」
片手を鉈から離し、冷たい指を頬に沿わせながら、少女は浮かされた眼でナナシを見つめた。
ナナシはしばし凪いだ瞳をトキに向けていたが、ふと穏やかな笑みを浮かべて、神経が死んだように動かし辛い腕を持ち上げて少女を抱き寄せた。乱れた髪を整えるように頭を撫でる。
「…トキ、ありがとう。ごめんね、おれは仲間として、きみが好き。」
そうして幼い子をあやすような甘やかな声で、トキの罪悪感ばかりを引き出す言葉を囁いた。