真4・真4F
男が自分に覆いかぶさっている。覆いかぶさって、身体を揺さぶっている。息を吐いて繋がった箇所の痛みに鈍麻になりながら、ブレる天井を見つめる。男が身体を揺さぶる速度を上げて、達し、吐精する。
「救世主様がこんなことしていいの?」
ナナシに覆い被さる前に男たちは言う。だめなの?そう思うんなら金だけ恵んで帰らせてくれよ。そう言うとバツが悪そうに服を脱ぎ出す音が滑稽だった。
昔は「子供がこんなことしていいの?」だった。昔は言い返さないで黙っていた。しつこく聞いてくる大人も黙り続けていればその内関心を失って目の前に据えられた快楽に身を寄せる。だから言い返さなかった。
男が事後の余韻に浸っている間に、ナナシはシーツから這い出て金をひっ掴みその場を後にする。人気のない地下道は肌寒く、空気が淀んでいる。
誰も来ないトイレの一角で服を脱ぎ、スマホから水の精を呼んで身体を漱ぐ。自室に帰れば東京のインフラでも上等な部類に入る、温度調節の怪しいシャワーがあったが、シャワーを浴びるまでに幼馴染に出くわしたくなかった。
冷え切った身体で自室に戻ると、部屋のドアを背にして男が蹲っていた。邪魔だから退かさなきゃな、と片脚を蹴り上げる為に擡げると男が身動いだ。
「蹴らないでくれよ。君を待ってたんだ。中に入れてもらってもいいかな」
ナナシは手でドアの前から退くようジェスチャーした。施錠を外して部屋に入る。ドアは開いたままだ。それが上がれという合図だった。
あいにく茶もコーヒーの類いも切らしていた。商会に行けばなにがしろあるだろうが今は行きたくなかった。部屋を漁って缶コーヒーを見つけ、それを2つ持っていった。
フリンが興味深そうにナナシの私物を眺めている。主に銃火器の類いを。
「やらないぞ」
「タダで貰おうなんて思わないよ」
「金を貰ってもやらない」
「無理に持っていくつもりはないって」
どうだか、とナナシは鼻を鳴らした。相手は平然とした顔で死体を漁って物資を調達していく男だ。仮にナナシがこの場で死んだとしたらこの男は部屋から目ぼしい物は全て持っていくのではないか。
適当にフリンにブラックコーヒーを当てがってプルタブを開ける。天井の上から来た救世主様が缶の使用方法を知ったのは最近のことだ。最初はナナシが渡した缶コーヒーをニコニコしながら黙って眺めていた。
「ナナシはいつもああいうことするの?」
冷えていないコーヒーを飲みながらフリンが尋ねた。
「どういうこと」
しらばっくれて自分も缶コーヒーを開けた。あの場には他に誰もいなかったはずだ。誰も。
「こういうこと」
フリンの顔が近づく。口の中にブラックコーヒーの香味が広がる。不味い。
いつもはキスはしてない、と言いたかったが、舌を食まれていて言えなかった。
フリンがベッドの上に寝そべってナナシを抱き込んでいる。ナナシはフリンの上で喘ぐ。
「ねえナナシ」
「なあに」
「足、冷たいんだけど」
お前のせいだろ、と抗議する代わりにフリンの背に脚を回した。
「あっためて」
フリンがナナシの腰を掴んで、ゴムを付けてやった性器を打ち据えた。
喘ぐ声が酷くなる。自分じゃないようだった。眉を顰めて低く息を吐くフリンの顔を見つめる。頭が白くなる。
フリンから手渡されたマッカを呆然と見ていた。
「これが欲しかったんじゃないの」
髪を結いながらフリンは笑う。
「救世主なのにご苦労様だね」
その薄汚れた救世主に突っ込んで楽しんでたのは誰だよ、と言う代わりに目が潤んだ。
足が冷たい。
「救世主様がこんなことしていいの?」
ナナシに覆い被さる前に男たちは言う。だめなの?そう思うんなら金だけ恵んで帰らせてくれよ。そう言うとバツが悪そうに服を脱ぎ出す音が滑稽だった。
昔は「子供がこんなことしていいの?」だった。昔は言い返さないで黙っていた。しつこく聞いてくる大人も黙り続けていればその内関心を失って目の前に据えられた快楽に身を寄せる。だから言い返さなかった。
男が事後の余韻に浸っている間に、ナナシはシーツから這い出て金をひっ掴みその場を後にする。人気のない地下道は肌寒く、空気が淀んでいる。
誰も来ないトイレの一角で服を脱ぎ、スマホから水の精を呼んで身体を漱ぐ。自室に帰れば東京のインフラでも上等な部類に入る、温度調節の怪しいシャワーがあったが、シャワーを浴びるまでに幼馴染に出くわしたくなかった。
冷え切った身体で自室に戻ると、部屋のドアを背にして男が蹲っていた。邪魔だから退かさなきゃな、と片脚を蹴り上げる為に擡げると男が身動いだ。
「蹴らないでくれよ。君を待ってたんだ。中に入れてもらってもいいかな」
ナナシは手でドアの前から退くようジェスチャーした。施錠を外して部屋に入る。ドアは開いたままだ。それが上がれという合図だった。
あいにく茶もコーヒーの類いも切らしていた。商会に行けばなにがしろあるだろうが今は行きたくなかった。部屋を漁って缶コーヒーを見つけ、それを2つ持っていった。
フリンが興味深そうにナナシの私物を眺めている。主に銃火器の類いを。
「やらないぞ」
「タダで貰おうなんて思わないよ」
「金を貰ってもやらない」
「無理に持っていくつもりはないって」
どうだか、とナナシは鼻を鳴らした。相手は平然とした顔で死体を漁って物資を調達していく男だ。仮にナナシがこの場で死んだとしたらこの男は部屋から目ぼしい物は全て持っていくのではないか。
適当にフリンにブラックコーヒーを当てがってプルタブを開ける。天井の上から来た救世主様が缶の使用方法を知ったのは最近のことだ。最初はナナシが渡した缶コーヒーをニコニコしながら黙って眺めていた。
「ナナシはいつもああいうことするの?」
冷えていないコーヒーを飲みながらフリンが尋ねた。
「どういうこと」
しらばっくれて自分も缶コーヒーを開けた。あの場には他に誰もいなかったはずだ。誰も。
「こういうこと」
フリンの顔が近づく。口の中にブラックコーヒーの香味が広がる。不味い。
いつもはキスはしてない、と言いたかったが、舌を食まれていて言えなかった。
フリンがベッドの上に寝そべってナナシを抱き込んでいる。ナナシはフリンの上で喘ぐ。
「ねえナナシ」
「なあに」
「足、冷たいんだけど」
お前のせいだろ、と抗議する代わりにフリンの背に脚を回した。
「あっためて」
フリンがナナシの腰を掴んで、ゴムを付けてやった性器を打ち据えた。
喘ぐ声が酷くなる。自分じゃないようだった。眉を顰めて低く息を吐くフリンの顔を見つめる。頭が白くなる。
フリンから手渡されたマッカを呆然と見ていた。
「これが欲しかったんじゃないの」
髪を結いながらフリンは笑う。
「救世主なのにご苦労様だね」
その薄汚れた救世主に突っ込んで楽しんでたのは誰だよ、と言う代わりに目が潤んだ。
足が冷たい。