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番外編

「………ッ!」

ふざけんな、と思わず振り上げた手はオーエンに頭上で縫いとめられる。左右オッドアイの目は心底愉しそうに歪んでいた。

「厄災の傷が出てる時だけだったら素直になれるんでしょうエイル。僕は優等生面したお前が衝動で牙を剥くとこが見たいんだよね」
「いい加減にしなさいってば、私は、自分の意志でなってるんじゃない!」

オーエンに同情と理解を求めたって無駄。そう分かってるのに詰られ、思わず言い返してしまう。

「------ 約束、できる?」
「でき、…………………!!!!」

ハッとして私は一気に頭に昇っていた血が急に降下していくのを感じた。………怖々と彼を見ると残念そうに嗤いながら覗き込んできた彼がいた。今、此奴は………………………私を『約束』させ、ようとした?

「あーぁ、残念。まだ理性残ってたんだ」

まるで使い慣らした玩具に関心を捨てるように。オーエンは呆気なく私の腕を解放する。そして医学書を少し乱雑に私へと放り返した。

「ま、…………待ちなさいよ、オーエン…………」
「そうだ、賢者が言ってたんだよね。賢者の世界には月の光を浴びる月光浴だなんてのが流行ってたんだって」

何食わぬ顔してオーエンは言いたいことだけ言い切って私から距離を取ると、最後にとびきり悪い笑みを浮かべて姿を消す。

後に残された私はふらふらと脱力してしまった体を縮こまらせて窓から浮かぶ月を見上げた。







僕らが浴びたら、この世界はどうなるんだろうね。興味無い?
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