番外編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「センパイって、なんでそんなに家事能力無いの」
………蜚蠊を一撃で絶命あそばせた水月君は、まるで穢らわしい物でもみるかのように私の部屋を一瞥する。私は下着類どこに放置したっけ、と漠然とした不安に駆られ始めた。
そろり、と見渡してめぼしきものは見当たらなかったのに安堵の息を吐く。
「いや、その、……何も言えない……」
汚部屋と称するに相応わしい自室にちらり、と目を向けて思い切り叛ける。
か、片付けるつもりでいたんだよ、そ、そしたらあのご…蜚蠊さんが降臨なさって
「で、どうすんのこいつ。鑑賞用に取っておく?」
「水月君、そんなに殺虫剤吹っ掛けられたい?」
「冗談ぐらい巧く躱せっつーの」
……水月君、真で言ってるのかジョークなのか時折ほんとに境目が解らないからなぁ……
そう思いながらティッシュとポリ袋を殆ど投げつける様に水月君に手渡す。
『処理お願い致します、水月君様』と意を込めて。
一瞬、視界の端に動かない蜚蠊さんを映してしまい思わず仰け反ってしまった。
胡散げに水月君に睥睨されて益々居た堪れない。
「むっ、むり、腰抜けそう……」
「処理まで俺にさせるとかセンパイ図太いねー」
「出来る範囲でお礼しますぅ!!」
弱気を握られた様な展開に意識が遠のきかける。なんでだ……なんで……
慣れた手つきで颯爽と処理を済ませた水月君は、縛ったポリ袋の結び目を指の関節に引っ掛けながら立ち上がった。159センチとそんなに小さくは無いと思うのだけど、172センチの水月君と並ぶと見上げるような形になってしまう。
自堕落な生活を送っているのに長身痩躯でイケメンって。神様、贔屓してませんか。
「てか、北海道に蜚蠊出ないってマジなんだ、確かに吹雪さん出ない言ってたかも」
ザ・都会人はそう言って軽く頬を掻いた。意外そうな面持ちだったので私は一応頷く。
「多分気候じゃないかな。やっぱり冬は道産子でも辛いし。肌が裂かれるかってくらい」
「ふーん。まー、でも、昨今温暖化急激に進んでるからね。近々蜚蠊、津軽海峡泳いでくるかもよ」
「う゛く゛っ゛」
……不覚にも海を大群で横断してくる蜚蠊を連想してしまい胃液が逆流しかけた。
如何にもカエルが踏み潰されたかの様な醜い叫声を上げてしまう。
「あ、もしかしたら青函トンネル潜り抜けてくるかもよ」
「おーけーおーけー、理解した、この話はやめにしよう」
逞しい私の想像力が働いてしまう前に、口元を抑えながら強制的に話題を切り捨てる。
このままだとショック死してしまう。
「……センパイ、吐くつもりじゃないよね」
「食道辺りで堪えてる……いや、水月君が本州から襲来してくるとか言うから……」
一応、事の発端へと言ってみるものの立派な肩透かしを食う。ぜったい話聞いてない、あれ。
廊下にある共用塵箱にポリ袋共々蜚蠊さんを、いとも簡単に投げ捨てた水月君は何故か再び私の部屋に戻ってきた。
……なんか、目、据わってない??
そこはかとなく嫌な予感がして思わず目の前で腕をクロスする。別に特に意味はない。
「あのさ、これを機に学習して欲しいんだけど」
「は、はい」
我が物顔で床に胡座をかく水月君。自然の流れか、私も床にお尻をつける。
水月君からの有無さえ言わせてくれない威圧感に気圧されて背筋がビヨンと伸びていた。
「……こんな汚部屋に蜚蠊が出没しない方がおかしいから」
_____________ お、汚部屋公言された。い、いや否定出来ないけど……
悲しきかな、私は何も言い返すことが出来ない。
毎朝彼を起こす為に彼の部屋にお邪魔しているからこそ、だった。
ほとんど物がないっていうのもあるけども、目を疑いたくなるほど彼の部屋は綺麗なのだ。
「特に人家に住み着くタイプの輩は得体の知れない病原体やらなんやらの媒介するんだよ。そしたらセンパイ1発アウトだからな」
「は、はい、……す、すいません……」
まさか水月君に説教されるとは夢にも思いませんでした……しかも蜚蠊の事で……
思わず肩を縮めながら歯切れ悪く答えればあからさまに溜息をつかれてしまう。
「めんどくさい通り越して情けなくなってきた……センパイ生まれてくる性別間違ったんじゃない」
「憐憫の目で見るの辞めてくれない!!?」
それはつまり男だったら許された事なのか、と思ってしまいながらも今回ばかりは彼の言う通りだ。
ちゃんと片付けようと覚悟を決めながら、亡者の如く阿鼻叫喚して片付けを遂行する未来が容易く描けて項垂れる。
鏡花が大河に縋り付いて、互いのオフ日を潰して片付けをする羽目になるのはまた別の話。
………蜚蠊を一撃で絶命あそばせた水月君は、まるで穢らわしい物でもみるかのように私の部屋を一瞥する。私は下着類どこに放置したっけ、と漠然とした不安に駆られ始めた。
そろり、と見渡してめぼしきものは見当たらなかったのに安堵の息を吐く。
「いや、その、……何も言えない……」
汚部屋と称するに相応わしい自室にちらり、と目を向けて思い切り叛ける。
か、片付けるつもりでいたんだよ、そ、そしたらあのご…蜚蠊さんが降臨なさって
「で、どうすんのこいつ。鑑賞用に取っておく?」
「水月君、そんなに殺虫剤吹っ掛けられたい?」
「冗談ぐらい巧く躱せっつーの」
……水月君、真で言ってるのかジョークなのか時折ほんとに境目が解らないからなぁ……
そう思いながらティッシュとポリ袋を殆ど投げつける様に水月君に手渡す。
『処理お願い致します、水月君様』と意を込めて。
一瞬、視界の端に動かない蜚蠊さんを映してしまい思わず仰け反ってしまった。
胡散げに水月君に睥睨されて益々居た堪れない。
「むっ、むり、腰抜けそう……」
「処理まで俺にさせるとかセンパイ図太いねー」
「出来る範囲でお礼しますぅ!!」
弱気を握られた様な展開に意識が遠のきかける。なんでだ……なんで……
慣れた手つきで颯爽と処理を済ませた水月君は、縛ったポリ袋の結び目を指の関節に引っ掛けながら立ち上がった。159センチとそんなに小さくは無いと思うのだけど、172センチの水月君と並ぶと見上げるような形になってしまう。
自堕落な生活を送っているのに長身痩躯でイケメンって。神様、贔屓してませんか。
「てか、北海道に蜚蠊出ないってマジなんだ、確かに吹雪さん出ない言ってたかも」
ザ・都会人はそう言って軽く頬を掻いた。意外そうな面持ちだったので私は一応頷く。
「多分気候じゃないかな。やっぱり冬は道産子でも辛いし。肌が裂かれるかってくらい」
「ふーん。まー、でも、昨今温暖化急激に進んでるからね。近々蜚蠊、津軽海峡泳いでくるかもよ」
「う゛く゛っ゛」
……不覚にも海を大群で横断してくる蜚蠊を連想してしまい胃液が逆流しかけた。
如何にもカエルが踏み潰されたかの様な醜い叫声を上げてしまう。
「あ、もしかしたら青函トンネル潜り抜けてくるかもよ」
「おーけーおーけー、理解した、この話はやめにしよう」
逞しい私の想像力が働いてしまう前に、口元を抑えながら強制的に話題を切り捨てる。
このままだとショック死してしまう。
「……センパイ、吐くつもりじゃないよね」
「食道辺りで堪えてる……いや、水月君が本州から襲来してくるとか言うから……」
一応、事の発端へと言ってみるものの立派な肩透かしを食う。ぜったい話聞いてない、あれ。
廊下にある共用塵箱にポリ袋共々蜚蠊さんを、いとも簡単に投げ捨てた水月君は何故か再び私の部屋に戻ってきた。
……なんか、目、据わってない??
そこはかとなく嫌な予感がして思わず目の前で腕をクロスする。別に特に意味はない。
「あのさ、これを機に学習して欲しいんだけど」
「は、はい」
我が物顔で床に胡座をかく水月君。自然の流れか、私も床にお尻をつける。
水月君からの有無さえ言わせてくれない威圧感に気圧されて背筋がビヨンと伸びていた。
「……こんな汚部屋に蜚蠊が出没しない方がおかしいから」
_____________ お、汚部屋公言された。い、いや否定出来ないけど……
悲しきかな、私は何も言い返すことが出来ない。
毎朝彼を起こす為に彼の部屋にお邪魔しているからこそ、だった。
ほとんど物がないっていうのもあるけども、目を疑いたくなるほど彼の部屋は綺麗なのだ。
「特に人家に住み着くタイプの輩は得体の知れない病原体やらなんやらの媒介するんだよ。そしたらセンパイ1発アウトだからな」
「は、はい、……す、すいません……」
まさか水月君に説教されるとは夢にも思いませんでした……しかも蜚蠊の事で……
思わず肩を縮めながら歯切れ悪く答えればあからさまに溜息をつかれてしまう。
「めんどくさい通り越して情けなくなってきた……センパイ生まれてくる性別間違ったんじゃない」
「憐憫の目で見るの辞めてくれない!!?」
それはつまり男だったら許された事なのか、と思ってしまいながらも今回ばかりは彼の言う通りだ。
ちゃんと片付けようと覚悟を決めながら、亡者の如く阿鼻叫喚して片付けを遂行する未来が容易く描けて項垂れる。
鏡花が大河に縋り付いて、互いのオフ日を潰して片付けをする羽目になるのはまた別の話。