1章
夢小説設定
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『ぎゃああああああああああああっ!!!!!』
まるでトラックか何かに轢かれた小動物の様な断末魔が廊下一帯に反響した。
完全に気を抜いていた大河は、思わず瞬きを嫌というほどバチバチ繰り返す。
呆気にとられた顔は中々見せないレア顔であった事は誰も知る由もない。
(……この声、どう考えてもセンパイだよな)
それにしても色気もへったくれもない。その酷さは口元に憫笑が浮かんでしまう程。
婀娜めいた奴でも困るけれども、もうちょっと異性として認識させていただきたい。
絶叫に声帯を潰したかの様なセンパイの声は途切れ、ガタガタ何かを床に落とした音が木霊する。あれ、もしかして廊下に飛び出てくるんじゃ、と身構えると同時にスライドドアが物凄い勢いで開け放たれた。ガコンッ、とドアが跳ね返って来るほどまでに。
息急き切って飛び出してきたセンパイは、既に着替え終わっていたのかジャージ姿だった。
横縛りしていた髪は降ろされ、三つ編みになっている。珍しいな、なんて愚考していた直後。
センパイが悲壮めいた表情で此方に視線を向けた。
「………騒がしいんだけど、どーかしました」
「あ、あの、た、た、すけ、て」
今日の昼に一星に吹き込まれたせいで、慣れない丁寧語が飛び出した。
しかし、センパイはそれどころじゃないらしく、口をパクパクさせながら只管自分の部屋を指差す。……嘘だろ、入ろって事か。それに助けてって、え、何、何の話。
逡巡な表情を浮かべていたらしく中々動こうとしない大河に、彼女はその狼狽ぶりを深めながら思い切った様に口を開いた。
「みっ、みずっ、水月く、助けて、お願い、ごっ……蜚蠊が」
________ ひとまず先に、その戦慄しきってガチガチな般若顔をやめて欲しい。
そしてそのワードを聞いて眉を釣り上げた俺を涙目で見上げるのもやめて欲しい。
✿
「たかが蜚蠊であんなこの世の終わりみたいな絶叫出せるって」
「だって生まれてこの方、蜚蠊を見たことが無くてですね……あ、ちょっ、まっ、!?」
そう言いながら心底怠そうにゴミ箱に投げ捨てようとする後輩に、私は5メートル離れた場所で“待って”をかける。
やっ、やめて。絶命してるんだろうけど、絶命してるんだろうけど。
随週にゴミの回収指示が掛かるまでずっと同じ部屋で、ご、蜚蠊さんと生活できるほど私のメンタルはヤワじゃない。
北海道は唯一蜚蠊が生息してるとかしていないとか言われるけれど、生まれて初めて気候に感謝した。そして同時に同じ緯度にある筈のカザニにはなんで出没したのか。取り敢えず切に感じたのは彼がいなければ私はずっとカサカサ音とグロテスクな見た目の彼とずっと共同生活を過ごす事になっていた事だ。
殺虫剤を片手に一撃で絶命させた彼は、本当に何かの英雄記に出てきたヒーローさながら。
哀れな笑みを浮かべながら瞬殺したあたりパスみすら感じたけれどそれは黙っておく。
「……ありがとう、水月君。今、最盛期かもしれないこんなに水月君の株が上昇してるの」
「それを口にしたセンパイの株、今急降下してるからな」
意味の分からない株価の上下 に暫しお互い黙り込む。
「_____ 水月君、明日だけは寝起き悪態ついても免除してあげよっか」
「_____ 蜚蠊って蘇生術施せるらしいよ、やってみよっか」
「水月君ごと殺虫剤吹っかけるから」
✿
因みに作者は(蜚蠊が出たら)新聞紙(を)振り下ろし(て殺す)タイプ。
まるでトラックか何かに轢かれた小動物の様な断末魔が廊下一帯に反響した。
完全に気を抜いていた大河は、思わず瞬きを嫌というほどバチバチ繰り返す。
呆気にとられた顔は中々見せないレア顔であった事は誰も知る由もない。
(……この声、どう考えてもセンパイだよな)
それにしても色気もへったくれもない。その酷さは口元に憫笑が浮かんでしまう程。
婀娜めいた奴でも困るけれども、もうちょっと異性として認識させていただきたい。
絶叫に声帯を潰したかの様なセンパイの声は途切れ、ガタガタ何かを床に落とした音が木霊する。あれ、もしかして廊下に飛び出てくるんじゃ、と身構えると同時にスライドドアが物凄い勢いで開け放たれた。ガコンッ、とドアが跳ね返って来るほどまでに。
息急き切って飛び出してきたセンパイは、既に着替え終わっていたのかジャージ姿だった。
横縛りしていた髪は降ろされ、三つ編みになっている。珍しいな、なんて愚考していた直後。
センパイが悲壮めいた表情で此方に視線を向けた。
「………騒がしいんだけど、どーかしました」
「あ、あの、た、た、すけ、て」
今日の昼に一星に吹き込まれたせいで、慣れない丁寧語が飛び出した。
しかし、センパイはそれどころじゃないらしく、口をパクパクさせながら只管自分の部屋を指差す。……嘘だろ、入ろって事か。それに助けてって、え、何、何の話。
逡巡な表情を浮かべていたらしく中々動こうとしない大河に、彼女はその狼狽ぶりを深めながら思い切った様に口を開いた。
「みっ、みずっ、水月く、助けて、お願い、ごっ……蜚蠊が」
________ ひとまず先に、その戦慄しきってガチガチな般若顔をやめて欲しい。
そしてそのワードを聞いて眉を釣り上げた俺を涙目で見上げるのもやめて欲しい。
✿
「たかが蜚蠊であんなこの世の終わりみたいな絶叫出せるって」
「だって生まれてこの方、蜚蠊を見たことが無くてですね……あ、ちょっ、まっ、!?」
そう言いながら心底怠そうにゴミ箱に投げ捨てようとする後輩に、私は5メートル離れた場所で“待って”をかける。
やっ、やめて。絶命してるんだろうけど、絶命してるんだろうけど。
随週にゴミの回収指示が掛かるまでずっと同じ部屋で、ご、蜚蠊さんと生活できるほど私のメンタルはヤワじゃない。
北海道は唯一蜚蠊が生息してるとかしていないとか言われるけれど、生まれて初めて気候に感謝した。そして同時に同じ緯度にある筈のカザニにはなんで出没したのか。取り敢えず切に感じたのは彼がいなければ私はずっとカサカサ音とグロテスクな見た目の彼とずっと共同生活を過ごす事になっていた事だ。
殺虫剤を片手に一撃で絶命させた彼は、本当に何かの英雄記に出てきたヒーローさながら。
哀れな笑みを浮かべながら瞬殺したあたりパスみすら感じたけれどそれは黙っておく。
「……ありがとう、水月君。今、最盛期かもしれないこんなに水月君の株が上昇してるの」
「それを口にしたセンパイの株、今急降下してるからな」
意味の分からない株価の
「_____ 水月君、明日だけは寝起き悪態ついても免除してあげよっか」
「_____ 蜚蠊って蘇生術施せるらしいよ、やってみよっか」
「水月君ごと殺虫剤吹っかけるから」
✿
因みに作者は(蜚蠊が出たら)新聞紙(を)振り下ろし(て殺す)タイプ。