番外編
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「……きょん?誰それ」
「誰もこれも。鏡花ちゃんのファンの中での愛称」
「愛称」とは。
本名以外の、親しみを込めて呼ぶ呼び名。所謂ニックネーム。
何処ぞの誰かさんが立ち上げてくださったらしい非公式ファンサイトページを、野坂君が物色しているのを横目で見つめながら隣に腰掛ける。イヤホンを解きながら思わず首を捻れば、「知らないの?」と逆に驚かれた。
……いきなり野坂君が“きょんちゃん”だなんて言い出した時は流石に精神を疑った。
能面の様な表情でそんな砕けた呼び名で呼ばれてもちっとも嬉しくない。
というよりも“きょんちゃん”の由来は何処??
「鏡花さん、エゴサーチとかしてないんですか?俺ら、日本代表とかの」
「え、逆にしてるの!?光君してるの?」
「はい、ちょくちょく」
……いや、私がネット上でどのように扱われているのか気にならないと言えば嘘には、なるけど。
きっとエゴサーチを躊躇う理由は“自分の悪口なり批判が見たくない”というだけで。
直接面と向かって言われたら傷付かない訳じゃないけれど、やっぱりネット上の言葉程刺さるモノはない。
下手に刺激されて精神を抉られるよりは見ない方が良いかな、と言うくだらない自己防衛だ。
「結構鏡花ちゃんの“きょんちゃん”は参戦早期から定着してたよね?ファンの子みんな“きょんちゃん”じゃない?」
本人なんにも知らないんだけど。幾度か瞳を瞬かせ引き攣った笑みを浮かべる。
すっごい愛称が可愛くて申し訳無い。ただ少しサッカーが出来るだけなのに愛称まで付けられてしまうと浮かれてしまう。
✿
如何やら私は現金な性 らしい。
ただ知らずにいた愛称を教えてもらっただけだが完全に気分は登り坂。
午後から始まるポジション別練習がバリバリ捗りそうだな、と1人微笑んでいた時。
……彼は化け物のように出没する。
「センパイ……なに気味悪い顔してんの」
「……速攻で坂を降らせないでくれませんかね、水月君。」
彼ほど私の調子を崩すのが上手い人間は見た事ない気がする。破壊的な相性の悪さ。
周りからは“漫才コンビ”だの何処から引っ張ってきたのか“色相環”だの『鏡花』、水月 を『水月 』繋げて“鏡花水月”なんて気付けば水月君と組む羽目になっているの本当にどうにかして欲しい。
「……真顔に戻るタイミングはやすぎかよ」
「水月君に笑顔見せたら幸せが半年分逃げる」
「溜息じゃねーの」
それでもなんとか軽口を叩き合う程の仲までには進展したのでよしと、しよう。
……相変わらず、朝起きないけど。
「ところでさっきまで笑ってたのはなんだったの」
「あー、愛称のことで。ファンの人達がこそばゆくなる名前で呼んでくれてたのが嬉しくて」
ペラペラと喋っちゃう辺り私はつくづく嘘がつけないなぁ、と頭を抱える。
水月君からしたら『完全にちょろいセンパイ』なんだろうけど。
そして“そんなんで浮かれるとか遂に頭カビ生えた?”とか言うんだろうけど!!
「……“きょんちゃん”だっ、け」
「……らっ、らしいね…?」
思わず驚いて頭1個分違う彼を見上げてしまう。……水月君も知ってたのか……
彼の口から彼の声を通して聞くと、何故か心臓が跳ね上がる。顔に微かに熱が集まった気もして思わず頬に手を添えた。……あれ、熱い。
「センパイ、あんま“きょんちゃん”ってイメージ無いけどね」
「……可愛すぎるよね、きょんちゃん。私は大門だけで充分なのに」
手足が無駄に長い水月君に小走りで歩幅を合わせながら私は高揚した頬を隠し、会話を紡ぐ。
「可愛いって」と彼が薄く笑みを浮かべた。不覚にもその笑みに心臓がギュンッと再び跳ね上がる。え、な、なに私の体おかしくなってない。
「_______ んじゃね」
1人動転していたせいで水月君の呟きを拾い損ねた。
「え、ごっごめん、もう1回!」
「……や、だ」
途端にドス低い声に戻られる。……あ、機嫌良いスイッチがオフになった……
たまたま廊下を通り掛かったタツヤ君にポイっ、と押し付けられ水月君は何処かへ。
私もなんだけどタツヤ君、何処かのスペキャになってたんだけど……??
「……鏡花ちゃん、何かやらかした?」
「ごめんこればっかりはわからない」
✿
「______ やっぱり名前呼び、無理……」
ズルズル扉に背を下ろしながら垂れ下がった前髪をかき揚げた。
『………みんな“鏡花”ってサラッと言えないんじゃね』
つい数分前に迸ったあられもない台詞に死にたくすらなる。いや、今ので確信した。
名前で呼んだ暁には自分が返り討ちになる事を。
「誰もこれも。鏡花ちゃんのファンの中での愛称」
「愛称」とは。
本名以外の、親しみを込めて呼ぶ呼び名。所謂ニックネーム。
何処ぞの誰かさんが立ち上げてくださったらしい非公式ファンサイトページを、野坂君が物色しているのを横目で見つめながら隣に腰掛ける。イヤホンを解きながら思わず首を捻れば、「知らないの?」と逆に驚かれた。
……いきなり野坂君が“きょんちゃん”だなんて言い出した時は流石に精神を疑った。
能面の様な表情でそんな砕けた呼び名で呼ばれてもちっとも嬉しくない。
というよりも“きょんちゃん”の由来は何処??
「鏡花さん、エゴサーチとかしてないんですか?俺ら、日本代表とかの」
「え、逆にしてるの!?光君してるの?」
「はい、ちょくちょく」
……いや、私がネット上でどのように扱われているのか気にならないと言えば嘘には、なるけど。
きっとエゴサーチを躊躇う理由は“自分の悪口なり批判が見たくない”というだけで。
直接面と向かって言われたら傷付かない訳じゃないけれど、やっぱりネット上の言葉程刺さるモノはない。
下手に刺激されて精神を抉られるよりは見ない方が良いかな、と言うくだらない自己防衛だ。
「結構鏡花ちゃんの“きょんちゃん”は参戦早期から定着してたよね?ファンの子みんな“きょんちゃん”じゃない?」
本人なんにも知らないんだけど。幾度か瞳を瞬かせ引き攣った笑みを浮かべる。
すっごい愛称が可愛くて申し訳無い。ただ少しサッカーが出来るだけなのに愛称まで付けられてしまうと浮かれてしまう。
✿
如何やら私は現金な
ただ知らずにいた愛称を教えてもらっただけだが完全に気分は登り坂。
午後から始まるポジション別練習がバリバリ捗りそうだな、と1人微笑んでいた時。
……彼は化け物のように出没する。
「センパイ……なに気味悪い顔してんの」
「……速攻で坂を降らせないでくれませんかね、水月君。」
彼ほど私の調子を崩すのが上手い人間は見た事ない気がする。破壊的な相性の悪さ。
周りからは“漫才コンビ”だの何処から引っ張ってきたのか“色相環”だの『鏡花』、
「……真顔に戻るタイミングはやすぎかよ」
「水月君に笑顔見せたら幸せが半年分逃げる」
「溜息じゃねーの」
それでもなんとか軽口を叩き合う程の仲までには進展したのでよしと、しよう。
……相変わらず、朝起きないけど。
「ところでさっきまで笑ってたのはなんだったの」
「あー、愛称のことで。ファンの人達がこそばゆくなる名前で呼んでくれてたのが嬉しくて」
ペラペラと喋っちゃう辺り私はつくづく嘘がつけないなぁ、と頭を抱える。
水月君からしたら『完全にちょろいセンパイ』なんだろうけど。
そして“そんなんで浮かれるとか遂に頭カビ生えた?”とか言うんだろうけど!!
「……“きょんちゃん”だっ、け」
「……らっ、らしいね…?」
思わず驚いて頭1個分違う彼を見上げてしまう。……水月君も知ってたのか……
彼の口から彼の声を通して聞くと、何故か心臓が跳ね上がる。顔に微かに熱が集まった気もして思わず頬に手を添えた。……あれ、熱い。
「センパイ、あんま“きょんちゃん”ってイメージ無いけどね」
「……可愛すぎるよね、きょんちゃん。私は大門だけで充分なのに」
手足が無駄に長い水月君に小走りで歩幅を合わせながら私は高揚した頬を隠し、会話を紡ぐ。
「可愛いって」と彼が薄く笑みを浮かべた。不覚にもその笑みに心臓がギュンッと再び跳ね上がる。え、な、なに私の体おかしくなってない。
「_______ んじゃね」
1人動転していたせいで水月君の呟きを拾い損ねた。
「え、ごっごめん、もう1回!」
「……や、だ」
途端にドス低い声に戻られる。……あ、機嫌良いスイッチがオフになった……
たまたま廊下を通り掛かったタツヤ君にポイっ、と押し付けられ水月君は何処かへ。
私もなんだけどタツヤ君、何処かのスペキャになってたんだけど……??
「……鏡花ちゃん、何かやらかした?」
「ごめんこればっかりはわからない」
✿
「______ やっぱり名前呼び、無理……」
ズルズル扉に背を下ろしながら垂れ下がった前髪をかき揚げた。
『………みんな“鏡花”ってサラッと言えないんじゃね』
つい数分前に迸ったあられもない台詞に死にたくすらなる。いや、今ので確信した。
名前で呼んだ暁には自分が返り討ちになる事を。