番外編
誰かを愛することは、その人に幸福になってもらいたいと願うことである。
トマス・アクィナス
「ねー、まじょさん」
「? なにかしら?申し訳ないけどもうお菓子は」
「まじょさんは好きな人にチョコあげないのー?」
帰り支度をしようとしていた私の手がピタリと止まる。服の裾を掴んだ女の子は期待と興味を隠そうとせずに動揺した私の瞳を覗き込んだ。おかげで身動ぎすら出来ない。瞳孔をかなり見開いてしまったせいでその動揺が伝わってしまったらしい。女の子の期待がみるみるうちに萎んでいくのが解る。
「ま、待って。好きな人に……チョコ?な、なんなのその文化。なにそのハードルが高い文化は」
「……まじょさん知らないの?けんじゃさまがいた場所ではねー、女の人が男の人にすき!って気持ちをチョコレートにこめて伝えるんだって!」
少し興奮気味に呂律が満足に回っていない女の子は得意げに胸を張る。……私は今疑問符で頭の中がいっぱいだ。
「賢者……様?え、賢者様?」
今私達北の魔法使い(認めるのは癪)が来ている国境の小さな村。確か賢者様は訪れるのは初めてだったはず。でもそんなことを小さな女の子に訊ねるのもあれで逡巡してしまう。あまりにも堅物。
「あ。まじょさんが考えてるけんじゃさまじゃなくてね、ちょっと前のけんじゃさま!」
「……う………」
この短時間に二度も傷を抉られるとは。漏れてしまった呻き声に女の子は心配そうに私の服の裾を弱めに引っ張る。
「まじょさんだいじょうぶ?おなかいたい?」
「心が……痛い……」
だって、痛くならない筈がない。
あんなに傍にいてくださって導いてくださった賢者様の顔も名前も声も、今ではろくに思い出せないのに。今の賢者様にも『貴方もいつか消えてしまうんですか?』と思わず詰め寄ってしまいそうなのに。
「ごめんね、私、好きな人がいないのよ」
残念そうに口を尖らせた女の子は私にお別れの抱擁をせがむ。魔法使いは嘘は吐かない。きっとそれで諦めてくれたのだろう。………嘘、は吐いてないのだ。多分。
「エイルはもうちょっと気楽に生きるべきだとフィガロ先生思うなぁ」
「……嫌………、だってフィガロみたいな体たらくにはなりたくない……」
「…………」
からからと笑いながら酒をガブ飲みするフィガロ。
そして。
自室に帰ろうと思った所を酔っ払い二人に絡まれて引き止められて何の話をしているか分からないまま、シャイロックに注がれる酒を嗜むオズ。
はたから見たら誰もが縮こまる絵面だ。
そんな中二人の間でめそめそ泣き散らしながら鼻水を情けなくかんでいるのはエイルだった。
普段のエイルなら顔が真っ青を超えて真っ白になってしまう組み合わせ。ただ焼きが回ってしまっているエイルは最強だった。
「……止めるべきでは無いのか」
「うーん、この状態になったエイルは駄目だね。ね、シャイロック」
「ええ」
にっこり嫋やかに笑ったシャイロックは完全に酔い潰れエイルと今の状況を愉しんでいた。普段のバカ真面目エイルしか知らなかったオズは眉を寄せて彼女を見遣る。
「いやぁ、その女の子に申し訳なくなってチョコレートを作ったのはいいものの、肝心のあげる人にあげる勇気がないって」
「フィガロォ!言わないで!」
「……想い人がいるのか」
さも意外そうに呟いたオズにエイルは少し酔いが醒めたのか目をかっぴらいた。数秒後考えた後に勢い良く顔を抑えてよろよろ頭を下げる。
「………すみません、オズ…………!多分フィガロとフィガロが強引に連れてきたんですよね……!ザンシュします……!」
「俺二人いたんだけど」
「ザンシュとは」
「酒の種類ではないかと」
世の中、一番恐ろしい事は場を場を収拾する者がいない事だろうか。
頭痛い………。
二月十四日。重い体を引き摺りながら私はこめかみを抑える。全然記憶が無い……。医者の不養生どころか魔法舎は医者の方が不健康すぎる。いかん。ネロと賢者様が作ってくれたオカユをつつきながら私はまだ酒臭い溜息をつく。
どうしよう。今日バレンタインよ、|私《エイル》。
部屋に置きっ放しのチョコを思い出して思わず頭痛が酷くなる。もういっそ自分で食べてしまえば良かったのに、その時の私はそんな知恵が欠落してしまっていた。
「……いっそミスラに食べてもらおうかしら……。味見してないから味の保証出来ないけど……」
ホタテの殻以外はなんでもかんでも飲む様な男だ。大丈夫だろう。この間の任務で護ってもらっちゃったし。うん、それでいいかな。ちまちま食べていたオカユをかき込んで私は立ち上がる。……この時間まだ寝てるかな。そんなことを考えていた私は足元にいた|そ《﹅》|れ《﹅》に気づけなかった。
「わっ」
「ひぎゃあっ!?」
………情けない。仮にも女なのに。
恥ずかしさ半分何を蹴ってしまったのか分からない恐怖と……なんか妙に柔らかかった気も。悲鳴をあげて数歩後ずさった私が捉えたのは。
「オッ、オッ、オーエン!?」
「…………」
えっ、オーエン。床に蹲ってたの!?いや、それよりも非常にまずい。厄災に殺られるんじゃなくて仮にも、超仮にも仲間に殺られるのは流石に。えっそれよりも全然喋んないし目合わないわよ。あ、だめだこれ。私死ぬんだ、死
「……甘い匂いがする」
「は?」
蹴られたので頭が可笑しくなったのかオーエンは何故か私との距離を詰めて顔を寄せた。あまりの近さに私は思わず口を半開きにしたまま固まる。そんな私を見てオーエンは無邪気に微笑んだ。
「チョコの匂いがする、エイル」
「……………えッ」
これはオーエンではない、と脳が判断し、思わず引き離そうとして思い留まる。これは、もしかしなくても。
傷オーエンだ!?
狼狽えてオロオロする私をよそにオーエンは体を少し折り曲げて私と視線を合わせた。くっそ、端正な顔して!と思わずが鳴りたくなる。背けそうになった私を捉えたオーエンはいつもよりどこかあどけなく、私に強請った。
「エイル、僕エイルからチョコが欲しい」
世界から。
音が消えた。
さっきからギョッとしすぎてもう驚かない。……驚く暇もない。
何。まだ酔ってるのだろうか。それともオーエンが、いや、そもそも何、このオーエン。カインから話はこっそり聞いていたけれど。あまりの変貌に肌が粟立っていた。
「エイル?」
「………待って、オーエン。本当にオーエン?」
「うん。………僕だったらチョコ、くれないの?」
手の甲に手のひらを重ねられ心臓が脈打つ。あまりの異常事態に頭が真っ白になる。呼吸が乱れる。辛うじてこぼれた台詞は。
「………受け取って、くれるの?」
「………なに?」
『まともに取り合ってくれないかもしれないですね。……オーエンは』
魔法使い皆にチョコを作りたくて、と嘘に近い真実を告げてチョコ作りを手伝ってもらった賢者様がぽつりと呟いた一言。それで私は冷水を浴びた気持ちになった。………そうだ、オーエンは………今迄一緒に居続けて少し毒されたのだ。残虐で残忍で、皮肉で。カインの瞳を奪える程狡猾なのに。甘いものは好きな彼だから受け取ってもらえるとは思ってたけど。
気持ちまで、受け取ってくれるのだろうか。
沈黙してしまった私はオーエンがギクリと手のひらを放した事に気づかなかった。……ああ、ダメだ、やっぱり。
「………ごめん、やっぱりなんでもない。帰らせて」
「は?エイルが僕に指図する気?」
「……!」
ミスラに、いや、ちゃんとありがとうを言ってくれる人に渡そうと考えていた私は強く手首を掴まれて目を瞠る。そこには意地の悪そうな瞳を何故か不機嫌そうに歪めていた……オーエンの姿。
その姿は見覚えがある。いつものオーエンだ。
「まだ僕にチョコくれてないよね?ねぇ、エイル。そうやって逃げる気?」
「違うわよ、どうせ貴方は受け取ってくれないでしょ」
「いつ僕がそんなことしたんだよ」
「するのが目に見えてるのよ!甘いものいっぱい食べれてラッキー、終わり、でしょ、!」
「受け取ってるじゃん」
「ばかぁ!」
握られた手首から逃れようと力を込めるものの相当の力をオーエンがかけてるらしくビクともしない。おかげで情けない顔を曝けだす羽目になる。
魔法舎のほぼみんなが知ってるようなものなのに。
私が貴方のことが好きだってことを知ってるのに。
肝心の本人がサラサラその気がなくて嫌になる。やめたいのに。
「そうやって毎回エイルが逃げるんでしょ。誰が受け取らないなんて言ったの。」
「………っ、でも」
「受け取るって言ってんの。まだ分からない?」
強引に顎を掴まれてどこかの骨が軋む。
あまりにも近すぎる距離に理性も軋んでいく。頭にモヤがかかったみたいに微動だに出来ない私を見て漸く満足そうにオーエンは微笑んだ。
「……そう、ずっとその顔しててよ」
……勝てない。また貴方で頭いっぱいにされてしまう。震える声でチョコの場所を告げる。オーエンは瞬きをしてまた笑う。
「僕に翻弄されるエイルが好きなんだからいい加減に僕から逃げるのやめてくれる」
「…………嫌だ…………」
胸焼けしそうで、火傷しそうで。
やはりバレンタインはハードルが高すぎる。
トマス・アクィナス
「ねー、まじょさん」
「? なにかしら?申し訳ないけどもうお菓子は」
「まじょさんは好きな人にチョコあげないのー?」
帰り支度をしようとしていた私の手がピタリと止まる。服の裾を掴んだ女の子は期待と興味を隠そうとせずに動揺した私の瞳を覗き込んだ。おかげで身動ぎすら出来ない。瞳孔をかなり見開いてしまったせいでその動揺が伝わってしまったらしい。女の子の期待がみるみるうちに萎んでいくのが解る。
「ま、待って。好きな人に……チョコ?な、なんなのその文化。なにそのハードルが高い文化は」
「……まじょさん知らないの?けんじゃさまがいた場所ではねー、女の人が男の人にすき!って気持ちをチョコレートにこめて伝えるんだって!」
少し興奮気味に呂律が満足に回っていない女の子は得意げに胸を張る。……私は今疑問符で頭の中がいっぱいだ。
「賢者……様?え、賢者様?」
今私達北の魔法使い(認めるのは癪)が来ている国境の小さな村。確か賢者様は訪れるのは初めてだったはず。でもそんなことを小さな女の子に訊ねるのもあれで逡巡してしまう。あまりにも堅物。
「あ。まじょさんが考えてるけんじゃさまじゃなくてね、ちょっと前のけんじゃさま!」
「……う………」
この短時間に二度も傷を抉られるとは。漏れてしまった呻き声に女の子は心配そうに私の服の裾を弱めに引っ張る。
「まじょさんだいじょうぶ?おなかいたい?」
「心が……痛い……」
だって、痛くならない筈がない。
あんなに傍にいてくださって導いてくださった賢者様の顔も名前も声も、今ではろくに思い出せないのに。今の賢者様にも『貴方もいつか消えてしまうんですか?』と思わず詰め寄ってしまいそうなのに。
「ごめんね、私、好きな人がいないのよ」
残念そうに口を尖らせた女の子は私にお別れの抱擁をせがむ。魔法使いは嘘は吐かない。きっとそれで諦めてくれたのだろう。………嘘、は吐いてないのだ。多分。
「エイルはもうちょっと気楽に生きるべきだとフィガロ先生思うなぁ」
「……嫌………、だってフィガロみたいな体たらくにはなりたくない……」
「…………」
からからと笑いながら酒をガブ飲みするフィガロ。
そして。
自室に帰ろうと思った所を酔っ払い二人に絡まれて引き止められて何の話をしているか分からないまま、シャイロックに注がれる酒を嗜むオズ。
はたから見たら誰もが縮こまる絵面だ。
そんな中二人の間でめそめそ泣き散らしながら鼻水を情けなくかんでいるのはエイルだった。
普段のエイルなら顔が真っ青を超えて真っ白になってしまう組み合わせ。ただ焼きが回ってしまっているエイルは最強だった。
「……止めるべきでは無いのか」
「うーん、この状態になったエイルは駄目だね。ね、シャイロック」
「ええ」
にっこり嫋やかに笑ったシャイロックは完全に酔い潰れエイルと今の状況を愉しんでいた。普段のバカ真面目エイルしか知らなかったオズは眉を寄せて彼女を見遣る。
「いやぁ、その女の子に申し訳なくなってチョコレートを作ったのはいいものの、肝心のあげる人にあげる勇気がないって」
「フィガロォ!言わないで!」
「……想い人がいるのか」
さも意外そうに呟いたオズにエイルは少し酔いが醒めたのか目をかっぴらいた。数秒後考えた後に勢い良く顔を抑えてよろよろ頭を下げる。
「………すみません、オズ…………!多分フィガロとフィガロが強引に連れてきたんですよね……!ザンシュします……!」
「俺二人いたんだけど」
「ザンシュとは」
「酒の種類ではないかと」
世の中、一番恐ろしい事は場を場を収拾する者がいない事だろうか。
頭痛い………。
二月十四日。重い体を引き摺りながら私はこめかみを抑える。全然記憶が無い……。医者の不養生どころか魔法舎は医者の方が不健康すぎる。いかん。ネロと賢者様が作ってくれたオカユをつつきながら私はまだ酒臭い溜息をつく。
どうしよう。今日バレンタインよ、|私《エイル》。
部屋に置きっ放しのチョコを思い出して思わず頭痛が酷くなる。もういっそ自分で食べてしまえば良かったのに、その時の私はそんな知恵が欠落してしまっていた。
「……いっそミスラに食べてもらおうかしら……。味見してないから味の保証出来ないけど……」
ホタテの殻以外はなんでもかんでも飲む様な男だ。大丈夫だろう。この間の任務で護ってもらっちゃったし。うん、それでいいかな。ちまちま食べていたオカユをかき込んで私は立ち上がる。……この時間まだ寝てるかな。そんなことを考えていた私は足元にいた|そ《﹅》|れ《﹅》に気づけなかった。
「わっ」
「ひぎゃあっ!?」
………情けない。仮にも女なのに。
恥ずかしさ半分何を蹴ってしまったのか分からない恐怖と……なんか妙に柔らかかった気も。悲鳴をあげて数歩後ずさった私が捉えたのは。
「オッ、オッ、オーエン!?」
「…………」
えっ、オーエン。床に蹲ってたの!?いや、それよりも非常にまずい。厄災に殺られるんじゃなくて仮にも、超仮にも仲間に殺られるのは流石に。えっそれよりも全然喋んないし目合わないわよ。あ、だめだこれ。私死ぬんだ、死
「……甘い匂いがする」
「は?」
蹴られたので頭が可笑しくなったのかオーエンは何故か私との距離を詰めて顔を寄せた。あまりの近さに私は思わず口を半開きにしたまま固まる。そんな私を見てオーエンは無邪気に微笑んだ。
「チョコの匂いがする、エイル」
「……………えッ」
これはオーエンではない、と脳が判断し、思わず引き離そうとして思い留まる。これは、もしかしなくても。
傷オーエンだ!?
狼狽えてオロオロする私をよそにオーエンは体を少し折り曲げて私と視線を合わせた。くっそ、端正な顔して!と思わずが鳴りたくなる。背けそうになった私を捉えたオーエンはいつもよりどこかあどけなく、私に強請った。
「エイル、僕エイルからチョコが欲しい」
世界から。
音が消えた。
さっきからギョッとしすぎてもう驚かない。……驚く暇もない。
何。まだ酔ってるのだろうか。それともオーエンが、いや、そもそも何、このオーエン。カインから話はこっそり聞いていたけれど。あまりの変貌に肌が粟立っていた。
「エイル?」
「………待って、オーエン。本当にオーエン?」
「うん。………僕だったらチョコ、くれないの?」
手の甲に手のひらを重ねられ心臓が脈打つ。あまりの異常事態に頭が真っ白になる。呼吸が乱れる。辛うじてこぼれた台詞は。
「………受け取って、くれるの?」
「………なに?」
『まともに取り合ってくれないかもしれないですね。……オーエンは』
魔法使い皆にチョコを作りたくて、と嘘に近い真実を告げてチョコ作りを手伝ってもらった賢者様がぽつりと呟いた一言。それで私は冷水を浴びた気持ちになった。………そうだ、オーエンは………今迄一緒に居続けて少し毒されたのだ。残虐で残忍で、皮肉で。カインの瞳を奪える程狡猾なのに。甘いものは好きな彼だから受け取ってもらえるとは思ってたけど。
気持ちまで、受け取ってくれるのだろうか。
沈黙してしまった私はオーエンがギクリと手のひらを放した事に気づかなかった。……ああ、ダメだ、やっぱり。
「………ごめん、やっぱりなんでもない。帰らせて」
「は?エイルが僕に指図する気?」
「……!」
ミスラに、いや、ちゃんとありがとうを言ってくれる人に渡そうと考えていた私は強く手首を掴まれて目を瞠る。そこには意地の悪そうな瞳を何故か不機嫌そうに歪めていた……オーエンの姿。
その姿は見覚えがある。いつものオーエンだ。
「まだ僕にチョコくれてないよね?ねぇ、エイル。そうやって逃げる気?」
「違うわよ、どうせ貴方は受け取ってくれないでしょ」
「いつ僕がそんなことしたんだよ」
「するのが目に見えてるのよ!甘いものいっぱい食べれてラッキー、終わり、でしょ、!」
「受け取ってるじゃん」
「ばかぁ!」
握られた手首から逃れようと力を込めるものの相当の力をオーエンがかけてるらしくビクともしない。おかげで情けない顔を曝けだす羽目になる。
魔法舎のほぼみんなが知ってるようなものなのに。
私が貴方のことが好きだってことを知ってるのに。
肝心の本人がサラサラその気がなくて嫌になる。やめたいのに。
「そうやって毎回エイルが逃げるんでしょ。誰が受け取らないなんて言ったの。」
「………っ、でも」
「受け取るって言ってんの。まだ分からない?」
強引に顎を掴まれてどこかの骨が軋む。
あまりにも近すぎる距離に理性も軋んでいく。頭にモヤがかかったみたいに微動だに出来ない私を見て漸く満足そうにオーエンは微笑んだ。
「……そう、ずっとその顔しててよ」
……勝てない。また貴方で頭いっぱいにされてしまう。震える声でチョコの場所を告げる。オーエンは瞬きをしてまた笑う。
「僕に翻弄されるエイルが好きなんだからいい加減に僕から逃げるのやめてくれる」
「…………嫌だ…………」
胸焼けしそうで、火傷しそうで。
やはりバレンタインはハードルが高すぎる。