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黒鉄のモブマリン

ATTENTION



黒鉄の魚影ガッツリ目のネタバレというか展開に添います。まだ見てない人は映画を見て下さい。

映画のネタバレがあります。

名前固定主。


※※※


なんでも許せる人だけ進んでください
夢小説の投稿は初めての為界隈の事全然わからないしpixiv夢もほぼ読まないけど今回の映画見てウォッカ夢全然増えてなくてなんで????????????になりヤケになって書いた深夜テンションの産物の供養です。動機の割には全然ウォッカ夢じゃなくなって草…

乱雑作文注意。


※※※



















「シロウ、仕事だぜ」
そう言いながらウォッカは分厚いマニュアルと資料を男に渡した。表紙を見れば潜水艦のマニュアルらしい、そして魚雷などの説明や今度の作戦に関連するであろう資料であろうことが伺える。几帳面なことに資料からはカラフルな付箋が顔を覗かせていた。

「確か潜水士免許や小型船舶操縦士免許も持ってたろお前。今度アニキが乗る大型の潜水艦が完成するから頭に叩き込んでおけよ」
「一応一級ですが、乗った事があるのは潜水調査船だけです。これかなり大きいですね、いつ頃です?」
「1ヶ月はある。お前になら余裕だろ?」
「ポイントまで押さえてもらってますからね、勿論」

ヨシ、と言いウォッカはその場を後にする。その後しばらくしてポルシェの独特なエンジン音が聞こえたのでジンと一緒にこの場を離れたのだろう。
人気の完全に消えた廃ビルの中で今受け取った資料一式をトランクに詰め、ウォッカが出た方向と真逆の裏口からその場をそっと後にした。









俺の名前は[[rb:八木田士郎 > やぎたしろう]]。生まれは本土だが高校の頃親の都合で沖縄に移住し、親父が乗り物大好きなところに影響され、成人後は車の免許を取ったり大型二輪や大型特殊、
更には沖縄というのもあり、潜水系はここにしか教習所がないというものあって海に関する免許を取りまくったりなどしていた。

両親は母も父も乗り物趣味の普通の会社員で、それでいて何故か普通の家よりお金を持っていたように思う。自分が色んな免許をとるのを後押しするどころかお前も乗り物趣味か!と大喜びで講習料を払ってくれた。両親が持ってない免許も取らせてくれた。
しかし、学業を終えて自分で働くようになってからは「バイク本体も大型二輪免許も欲しいけど、う〜ん」とローン回数で悩む同僚を見て、それがおかしい事だと気づいてそれ以降は自分で払うようにしたかったが、親が子供にしてあげられる事なのよ、そうだぞ、払わせてくれることが親孝行だぞ、と言いくるめられてしまった。親孝行と言われてしまったらどうしようもない。



そして3年前、
両親が亡くなった。海での事故だということで、俺も流石に海相手に人間は無力と言うことを痛い程に知っていたので仕方ないと思った。
過去に両親から聞いたが、結婚の時には実家とは絶縁しているようで、だからこそ俺に甘いんだ、唯一の血の繋がりだから可愛くて仕方ないとのこと。もしかしたら両親の親は毒親と言うものかも知れなかったので、詳しくは聞かなかった。
だからこんなにお金をかけてくれるのだと思った事があり、実家頼りでもないのによくあんなに俺がやりたいことを全部やらせて好きなものを買い与えていたなあ、と想像を膨らませていたが、遺産の金額が明らかに桁がおかしくて五度見した。

普通の会社員が株などをやってたとして、宝くじを当てたとして、こんなに持っているわけがないのだ。
その訳を聞こうにも両親はすでに亡く、莫大な金を遺されて不安に思っていたが、それも両親の葬式を上げる前に判明した。

何故ならジンとウォッカが直接家に乗り込んできたからだ。



「テメェの両親を出しな」
「すいません、昨日2人とも海で亡くなりました、あの、もしかしなくても、コレですか」

周りからは見えないように、俺にだけ銃が見えるようにこちらに向けて言うものだから、あまりにも恐ろしくて昨日から肌身離さず持っていた両親の通帳を即手渡した。

「ほォ、理解しているのか?」
「いえ、詳しいことは何も、ただ状況からはそうとしか…、あの、宜しければ中で…、今の時間帯から結構人通り多くなりますし…」

まぁいいだろうという態度でズカズカと上がってくる。お茶を用意しようと思ったが要らんと言われた。まあ信用されてないしな…。
それから黒ずくめの2人が一応自分の話を聞いてくれる姿勢を示したことに驚いたが、いつでも発砲できるぞと、いつでも殺せるのだぞと既に示した後だからか普通に話を聞いてくれた。
急に高校の頃引っ越した事、なぜか金に困らないどころか裕福になり、両親に聞いたら株をやってると言われてたこと、両親の死により両親の遺産を確認したが、明らかに今までの生活で株をやっていようがこんな大金を手にすることはなかったから何かあったであろう事、そしておそらくあなたがたがそれを回収しに来たとさっき思ったこと。

「まぁほぼ正解だ。そしてテメェには死んでもらう……予定だったが身元を確認した時に気付いた、利用価値がありそうだとよ」
「殺されたくなかったら…って事ですね、わかりました」
「随分聞き分けがいいんだな」
「おそらく利用価値って俺の持つ免許ですよね、そして免許をとるには金がいる、その金は恐らくあなたがたから私の両親が盗み出したものです、両親が本当に稼いだ方のお金だったのかもしれないけど、今となってはもう…何もわからないので………」

沖縄に来てからやたら俺に大型二輪だの、更には船とか、買い与えてくれたのは嬉しかったし、やりたいことをやらせてくれたのは両親だ。
でも、あんなに息子には善悪の話をしておきながら、可愛い息子のためなら利益を独占したり、金を盗んでいいはずもない。そう言うふうに教えてくれたはずなのに、
それに初対面で銃をチラつかせてくるなんて絶対にまともな組織じゃない、その時はうまく盗み出せたとしてもこうして結局見つかってる、見つかるかもとかそう言う懸念などもあったろうに、そこまで金を使うことが愛だと…、ぐるぐるぐるぐると思考がまとまらず、両親が亡くなったのは確かにショックで、でも悲しいけれど自然に人間は勝てないから仕方なくて、突然出てきた莫大な金は愛情かもしれなくて、悪い事をしたからバチが当たって死んだのかもしれなくて、でもこうして何も知らなかった俺が殺されるかも知れなくて………。

急な情報量にこめかみを抑えることしかできない。ただ、忙殺してくれるならそれでもいい気がした。

死にたくない、せっかく色んなものを動かして、色んな場所に行けるようになったのに、まだ触ってない乗物だってある、まだ勉強したい事もある。

「フン…ウォッカ、連れて帰るぞ。この家は適当に処理する」
「へい、アニキ」

さっさと必要なもんは詰めとけとウォッカが空のトランクを開いた。どうやら必要なものは持っていっていいらしい。ちなみに通帳はすでに没収されている。
免許類、パスポート、最低限の服、それくらいしか思いつかず逆にウォッカにもういいのか?と聞かれた。こんな時だがなんだ?この人いい人か?と思った。

その後ポルシェに乗せられ港に来たと思ったら車ごと船に乗って日本からさよならバイバイしてたので驚いた。どうやら睡眠薬で眠らされたらしく、気付いたら別の聞いた事もない国にいた。
もしかしてやべー組織とはいえ超でかいやべー組織か?後悔先に立たず。プライドや親不孝や色々をかなぐり捨て、自分の命優先の選択をしたのだ。
結局自分も我が身が可愛い、人に善悪など説ける人間ではない事をその日、思い知った。






その後は組織が用意した職場で、ウォッカの用意した人生の筋書きを背負って生きている。
偽名を名乗る事もなく、八木田士郎の名前を許されているが、後日ニュースで日本の沖縄の自分の家が爆発、両親の海難事故で心を痛めて自殺…?みたいなのが流れていたのを見てパスタを床にぶちまけた。
おいおい適当に処理って本当に適当に処理かよ……。

どうやら用意された職場の人間は、聞くところによると全員組織の関係者らしく、どうも全員何かしらの運転ができる者だった。
おそらくそう言う構成員を一箇所に集めておいた方が組織的に楽なんだろう。因みにこう言う《職場》は全国各地に点在しており、ここではない国にも何個も組織の足となる構成員がいる。
それから、職場と大層な仕事をしてるように言ってるが、実際簡単な書類作って提出、情報まとめて提出、くらいのことしかせず、基本楽だ。
きたばっかりの頃は日本と違って海外はゆるゆる仕事をやっているとテレビで見た事があると思っていたが違うらしく、組織の動きによってタンカーを運転しろやら飛行機を運転しろやらの指示にすぐ対応出来るかどうからしい、そりゃ運転させる人間にゴリゴリに仕事させらんないか…。いわばカモフラージュの為の組織の用意した職場という訳だ。

中には命を落として帰らぬ人もいるが、初日に銃を向けられたからか「そりゃそう使われるよな…」と思っていたので精神を病んだりすることも無く、どちらかと言えば気を病む同僚を慰める側にまわっている。
実際自分も「ブツと乗物があるから運転してここまで届けろ」という指示しか送られて来ないので、少し気になり内容物を確認した事があるが、銃火器とか火薬とか、爆発するよねぇそりゃ、事故ったら、みたいなものがまぁ多く、よくこの3年間生きてこれたと思っている。

更に組織は特殊な免許持ってない者にも操縦マニュアルだけ渡して、ある程度練習させたり、場合によりさせないまま免許がなくても運転を強要してくる事もある。
俺は色々触らせてもらったり、飛行機関係も親の趣味でパスポートを取って、アメリカ旅行をした際に、母親から物凄く丁寧な飛行機説明を受けた挙句、カリキュラムを組まない?免許取らない?と迫られたが、今回は旅行で来てるじゃん、と正論で断った所、あまりにも悲しそうにするから日本に帰ってきてから飛行機関連の勉強だけは母親に見せつけるようにしていたからまだマシだ。
明らかに使い捨ての任務の際は、そいつに出来ないだろ…という運転すら任せるから良くない、まぁ事故っておじゃんにする事が作戦だからある意味効率はいいんだろうけど、俺の番が回って来ないことを祈るばかりである。


────なぜ自分が即「あのジン」に殺されずに引き抜かれたのかがよくわかる。使い捨てすぎなのだ、ドライバーを。
常に人手不足のような状態だ。
自分も何度か無茶振りをされたが経験と憶測と、毎回渡される最低限のマニュアルと、ガンガン免許取ってた過去が幸いし、記憶や実践等、自信があった故にまだ生きてる。

「それにしても潜水艦か…」
「ヤギタさんも潜水艦任務すか?」
「あぁ、参加名簿もらったけどホラ」
「あらほんと。まぁ今回の潜水艦デッカいですしねえ、魚雷撃つにも人がいるしそりゃそうか」

ここの職場に集められたヤツらでも、選りすぐりとまでは言わないが、長い事いる奴だけが今度の潜水艦に乗る。名簿を見るに他の職場からもキャリアのある奴ばかりだ。
それだけ今度の潜水艦はデカい。個人で持つサイズではない。マジで戦争でもする気か?と思う。

「今回は流石に人数多いのもあって担当振り分けとかも幹部かあ、ウォッカさん本当どんだけ仕事できるんだ」
「それは思うな…、ジンさん乗る時なんてホラ、付箋だらけ」

先程直接受け取った資料の付箋を見せると、同僚はぱちり、と瞬きをした後笑い出した。それからめちゃくちゃわかる!というように両腕を組んで頷く。

「ジンへの愛が伺えますなぁ〜!まぁメイン操縦やるヤギタさんには色々覚えててもらわないとまずいでしょうしね〜、頑張ってください!」
「割と新人なのにな〜俺」

構成員同士で仲良ししてる場合ではない、ウォッカさんの顔に泥を塗らないためにもしっかりせねば。
ジンさんも個人的には嫌いじゃないと言うか、頭いいしネズミは逃さないし、まぁ人使いは荒いけど自分はそれより良い案を考えついた事はないし、やはりジンさんの頭は最適解を導き出すのが常人より余程早いのだ。
流石組織の上位幹部だと思ってるし、そのジンさんとずっと一緒にいるウォッカさんに関してはマジでいい人だと思っている。
初日の時点で、組織にとっちゃ大損の、盗人の息子の俺にさえちょっと気遣ってくれたのはやはり幻ではなく、現に自分が持ってる資料にも、我々の様な末端でもしくじったりしないよう細かな指示がある。

正直なところ、理想の上司だ。マジで要求はすごいこと言うじゃん…と思う事もあるが、基本運転すること自体が好きなのと、勉強も好きなので全然苦ではない。ただ締め切り早いね?と思う事はまぁまぁある。でも組織はやはり謎が多く、謎を悟らせないからこそ早めの行動、素早い対応が必要になってくるのだ。

と、考えると結構早めに振ってくれてると思う。上司のウォッカさんがこんなにも有能。
なんならジンさんが絡めばウォッカさん自身もこちらに丸投げせず勉強するのだ。
なんて素晴らしい事だろうか、前職の嫌な上司は自分ができもしないくせにやれて当然、なぜ納期を早められない?しか言わなかったので本当〜〜〜に助かってる。

なんならここの職場のやつは結構ウォッカさんの事は好きだ。ジンさんにはまぁ友達使い捨てにされたり諸々されてる方々がいるからそっちの好感度はまちまちだが、でもウォッカさんが慕ってるアニキなんだよなぁ〜で丸く収まってる。
ウォッカさん自身もジンさんの足みたいなところあるのと、ジンさんに迷惑かけたらタダじゃおかねぇ、みたいなところが教育に出ておりこちらも思わずにっこり。でも、ちゃんとジンさんが乗る時完璧にこなすと褒めてくれるからモチベーションは高い。


職場の書類整理も終わらせたので、組織の準備してくれた、今や住み慣れた自宅へと向かう。さて、勉強するぞ。














「よォ!今度の作戦、お前も参加するんだろ?」
「ピンガさん、お久しぶりです。見ての通りですよ」
「しっかり頼むぜ〜、今回で俺は更なる功績を立てるんだからよ」

自宅に帰ってきたら自分のベッドの上に腰掛けるピンガがいた。
ピンガの手元を見れば、先日自分が貰ったマニュアルがあった。また勝手に人のものを物色したらしい。
外部からのセキュリティは強いはずの、何より組織の用意した家なのだが、組織幹部からはプライバシーなんて構成員に不必要と言わんばかりの勝手在宅っぷりである、これも最初3ヶ月くらいは慣れなかったが慣れさせられた。
ここの近くで幹部たちの任務がある時には勝手に潜り込まれている頻度が多い。こうして普通にいる分にはいいが、稀に真っ青な顔して腕だったり腹だったり足だったりから血流したまま寝てるのはやめてほしい。此方はやべーもん運んでるドライバーだけどパンピーなのだ。

田舎すぎてちょどいい感じの落合場所もなければ、ここらの地域一帯に幹部たちのセーフハウスが存在しないのも理解してるし、まぁ更に言うなら自分に関しては要監視、と言うところだろう。そりゃあ盗人の息子だ、組織が疑うのも当然である。そんなに疑わなくても組織の金で趣味やらせてもらってた身なので裏切る気等はないのだが、言って信用するならジンは要らねえ。それが組織ってもんだ。

「ちなみに今回は何用で?」
「あぁ、コレ見てくれよ」

マニュアルを置いた後、じゃん、と言いながらウィッグを被りメガネをかけるピンガ。その姿はさっきの姿とは似ても似つかない、おっとりとした可愛げのある女性にしか見えなくなった。
残念な事に衣装は可愛らしいものではなく、黒いスーツのままではあるが、やはりピンガの変装も一流だと思い知らされる。座り方も今は女性そのものだ。

「めっちゃカワイイですね、え?眉毛隠すだけでそんなに印象変わる?えっカワイイ……」
「…ちゃぁんとそれらしい声も出せるのよ」
「!?…変声機なし!?凄!すごいですねピンガさん!元のあのめちゃ男らしい姿からは全く結びつかないし声もそんな簡単に変えられるなんて…俺から見てみたら魔法みたいですよ」
「ハッハッハ!そこまで好評なら問題ねえか」

ピンガの笑い方と声してるかわいい女だぁ、と脳が混乱する。この男幹部、女装がめちゃくちゃうまいのだ。ベルモットの本当に別人?って変装も凄いけど、ピンガの変装はなんというか、全く違うという訳ではないが全く違う印象を植え付けられて元の顔と結びつかない所だ。
コーンロウなんて目立つ髪型にしてるのも印象操作なんだろうな、とは思うがやはり幹部たちの考える事はアッシー構成員になどは理解できない。ただ今回はこの姿を見せに来てくれたんだろう、初めてピンガの変装を見た時に感動して凄い凄い!と騒いだ際、殺されるかもと冷静になったが、その後律儀に新しい姿を見せに来てくれるあたり自分の技術は評価されたいタイプなんだろう。
こちらもわざと褒めようとかではなく、心から毎回驚かされるのでとてもありがたい。それにちょっと嬉しい。

「今度の任務、頑張ってください。私も頑張ります…いや、運転くらいですけどやれる事」
「動く為の足がねえと話にならねえからお前らアッシーはそれでいーんだよ……っと、そろそろ行くか」
「ご多忙ですね。お気をつけて」

最後にbye!と女の人のふりして帰ってった。黒スーツでその顔のまま出てって良かったのだろうかと思ったが、彼なりのサービスなのだろう。知らんけど。

噂を聞くにピンガはジンを蹴落としたいらしい最近のラムの側近…との事だが、あんまりそこら辺の話はよくわかってない。
正直初めて会った時から、幹部なのにやたら構成員と距離近いなあって印象とジンの話さえ出さなければ普通の話せる人という印象しかない。
まぁ、俺は組織幹部たちの足なので権力争いに関与する必要はないし、少しでも誰かに肩入れしたなら即死しそうな感じがある。主にジンに殺されそうだ。
組織は従順でさえいれば免許取れずとも勉強させてくれるし色々運転させてくれたり、今までの生活では触る事がなかったであろうモノも触る事がある。まぁ世間的には良くない事だが日本では爆死したことになっているし、開き直っていっそ楽しむようにしている。

「ん…、魚雷発射のとこからの出入りから復習すっか」

先程までピンガが座ってたのでちょっと温いベッドに腰掛け、マニュアルを開いた。














「シロウ、アニキの移動は頼んだぞ」
「誠心誠意きっちりやらせて頂きます」

仕事しながら潜水艦の操作を頭に叩き込みながらも、勿論ドライバーの依頼は日々舞い込んでくる。一昨日は銃火器、昨日は重要書類、今日は重要幹部の送り届けである。
まぁジンとコルンと、ジンの愛車であるポルシェ356Aと機器諸々を船で他国に送るって所だ。普通にバレないように不法入国するなら全員パスポート持ってんだからリスク冒さずそっちで行こうよ…とも思うが、どうやら船の方が都合が良いとか、なるべく早くという事でこの方法になったらしい。

「ウォッカさんが一緒じゃないのメチャクチャ久々に見た気がします」
「今回はどうしても俺はこっちで、アニキはあっちでやる事があるからな」
「幹部様はお忙しい…、ウォッカさんもお気をつけて」
「俺のことはいいからアニキをだな…」

ウォッカは自分の事よりジンが優先で当たり前という言動を繰り返すが、八木田にとっては理想の上司であるウォッカの身を案じるのは当然であった。
ウォッカが本当はめちゃくちゃ怖い事も、脅しが強すぎる事も、人の心を壊す術を持っていることを、八木田は知っている。
取引などの際の足になるときに、車の中で声だけは聞いているからだ。現場を見た事はまだないが、トランクにさっきまで喋っていたであろう相手の死体を積む事だって一度や二度では済まない。
それでもジンと比べればちょっと優しい彼のことを八木田は気にかけていた。

「これが終わったらすぐ潜水艦だ。しっかりしろよ、向こうでキールも合流予定だ」
「畏まりました」

兎に角今はしっかり目の前の届け物をしなければ、本人達もだが、未だ運転させてくれた事のないポルシェを傷つけようものなら俺の脳天がいくつあっても足りない。
八木田は気を引き締めた。









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八木田 士郎 (ヤギタ シロウ)
組織の構成員で主にウォッカの管轄で動く運転・操縦担当。
末端構成員だが、ありとあらゆる乗り物の免許もしくは知識を持ち、ドライバーの中でも重宝されているが本人はあまり自覚がない。
親の事が嫌いになった訳ではないが、答えを求めても答えの出ない問題だと割り切り、この環境でしか今後は自分は生きられないことを悟り開き直った。
自宅は組織が用意した場所だし、まぁ幹部様に使われるのも末端構成員だから仕方ないだろうと思ってるがそんなことはない。各幹部からは使い勝手のいいドライバーで任務を承ればしっかりこなし、運転に安定感もあるし、根掘り葉掘り聞いてきたり、野心も全く見えない為「便利」と思われている。
自宅の使用についてもそこにあって便利だったから使った、という理由が殆どだがウォッカは一応自分とアニキの拾い物というのもあって様子を見に来てくれるし、ピンガは素直にイライラしない奴だしいい反応するしマニュアル関係もこいつの家に行けばいち早く読めるだろの気分と計算で来ている。
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