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愛しのグレース

ATTENTION

過去に投稿したものの続きなのでそれで大丈夫そうな人だけが読みましょう。
夢小説です。
黒鉄の魚影のネタバレを含みます。














ピンガ、もといグレースは大量に溜まった領収書の山と対峙していた。机の上にごっそりと乗っているそれは、組織の経費、パシフィック・ブイの経費、そして奴の口座から使用したもの、の3つがごちゃごちゃに混ざってしまったモノだ。
監視カメラもないのでそれらを机の上に広げ、ため息をつきながら1人用の小さなソファに座る。

最初から別々に分けていれば良かったのだろうが、最初は分けてたはずだが気づいたらこうなっていた。いつもならこんなヘマはやらねえ。
ただ今回は、寝不足と悪天候による気温の低下や、パシフィック・ブイ内で軽く流行ってる風邪が感染うつったせいに他ならない。

スカートを履くようになってしばらく経ったが、下半身の風通りの良さにはまだ慣れない。両腿を擦り合わせ、暖を取ろうとするがあまり意味がないので大人しく膝掛けを使う。

…けして、組織から領収書ある?とメッセージが来てからまとめてないことに気づいたわけではない。
奴のカードで買ったレシートはそのまま捨てていいのだが、何かの証拠になると困るしで無意識に取っておいてたらしい。

「クソ…、誰だよクソほど多忙なのに風邪なんざ持ち込んだ馬鹿野郎は…」

コホコホ、と軽い咳をしながら、自室ではあるが小声で愚痴る。さっさと仕分けてこんな状態だし早めに寝ようと、まず仕分け始める。
5分もせず仕分け終わったものの、パシフィック・ブイのものは本当に簡単な事務用品程度のもので5枚程度、組織のものは細かいものを含めても10枚、奴のカードで購入したものがほとんどを占めており20枚超えたあたりで数えるのをやめた。嘘だろ。
自分で稼いだ分の金もあるのでそれからも使っているはずでは?と思うが、グレース用のスマホに常備している奴のカードの使い易さが悪い。なんなら使いやすくするために電子マネーと連携しておくね、と勝手に⚪︎イ⚪︎イをインストールされそのカードの連携もされていた。おかげで非常に快適に使用できすぎており、グレースの時でもピンガの時でもコンビニに寄ればバーコード・タッチ決済しかしてない。ポイントも貯まるし…。

とりあえず、パシフィック・ブイ用の領収書は封筒に纏め、組織用の領収書はくるくると巻いて空の小瓶に収める。
残りの領収書は別に要らないからこのまま捨ててもいいが、もしかしてコレ、アイツ見たら喜ぶか?と思いつく。いや、そんなモノで喜ぶ様な人間は経理くらいなもんだが、カードを渡してきた奴の言葉を思い出す。貢ぎたいんだと。
…………まぁ、捨てるのは今じゃなくても出来るしな…と思い、纏めて手帳に挟んだ。
まぁ変な反応されても風邪引いたという事実による判断力の低下と言えばいいだろう。




風邪気味ではあるが、2日後のデート、どこがいい?と来ていたので断るか迷ったが別に熱が出ているわけでもないので、メッセージで「肉食べたい」と送った。
今回は奴のおすすめらしい完全個室の肉バルに来ている。高めの肉が食べたかったから仕方ない。パシフィック・ブイではいい肉は出ないのでこういう時に食べておくに限る。

「あれ、マスク」
「ちょっと風邪気味なのよ、感染うつしたくないだけ。…あぁそんな顔しないで、ほんとに軽い咳程度だから」
「ん、…お大事にしてね」

眉をハの字にして心配する奴の顔は、ポーカーフェイスとか出来るんだろうか?と思うほど顔にデカデカと心配ですと書いてる。この程度の風邪でそんなに心配される事、人生において経験する事あるか?子供の時ならあり得たかもしれないが、組織に染まりきってる俺がそんな親がいて穏やかな子供時代を過ごしていた訳もないので、リアリティに欠ける想像に過ぎないが。

しかし、この男は俺が男だと分かってからもグレースと変わらずに同じくらいの心配してくる。
そんなに頼りないか?お前ほどの体格は持っちゃいねぇがこれでも裏社会の人間だぜとナイフや薬をチラつかせた事もあるが「なんで?性別とか体格とか関係ないじゃん。大事にしたい気持ちってそんな事じゃ変わらないよ……アッ!?もしかして不快だった!?ほっとけってやつ!?」ときょとんとしたのち騒ぎ出したので嫌とは言ってねーだろと黙らせた。変に誤解されると変な方向に突っ走る気しかしないので事実はちゃんと伝えねばなるまい。
加護欲というか、もはや母性的なものすらあるんじゃないだろうか。
子供の頃に得れれなかったものを埋めてくれるから、コイツのことを好きになったというのは、あるかもしれない。
組織はやはり結果と忠誠心が全ての判断になる、個人の生存は優秀さにかかっている。

だが、コイツは一目惚れだと言い、勿論優秀な所も真面目なところも所作が美しいところも勿論外見も全てが好きだが、存在そのものが愛しくてたまらない、陳腐な言葉だが運命を感じたとまで言っていた。告白としては普通にお断りされる部類な気がするし、どうかと思うが、俺にとっては周りの評価なんてものは全てグレース脳みそ処理能力に向けれれたものでしかなかったから、逆に曖昧で漠然とした言葉が嬉しかったのかもしれない。

「あ、そういえば…アレ、見たい?」
「何?」
「貴方のカード使った時の領収書」

ガチャン!突然の大きな音に驚くと、奴が持っていたグラスが落ち、皿の上の料理を酒浸しにしていた。あぁ、Aランクの肉が、勿体無いと思うが、そんなことより奴の反応を見るにやはり嬉しいみたいだ。
お客様!?と店員が現れ、すぐに料理を下げ、すぐ新しいものをお持ちしますというのにストップをかけ、こちらでだめにしてしまったので大丈夫ですと断りを入れていた。お腹いっぱいなので…とも言っていたが、多分本当にいっぱいなのは胸の方だろう。
一応、彼は普段小食なんだけど私に見栄を張ってるのと言えば、店員はじゃあ…と料理を下げるだけだった。

「まさかそこまで動揺するとは思わなかったわ」
「いや…本当にゴメン…。会えなかった頃残高の減りの確認を楽しみに日々過ごしてたから………」
「やだ、嘘でしょ?……本当なのね…」

想像してたものが目の前に現実にと思うと…ありがたい…と言いながら顔を覆ってしまった奴を見て、マジで病的だなと思った。
別に隠したい情報でもないし元はお前の金だし、と領収書は帰り際に渡したが、両手でしっかりと持ってたあたり、多分会社の書類より領収書の方が優先度高いらしい。










その日の夜、部屋で1人で不気味に笑い続ける男が1人。
先程グレースから受け取った領収書の束をひとつひとつ見ては、商品名がよくわからないモノに関しては検索をかけたりしていた。コンビニでサラダ買ったりサンドイッチ買ったりしてるの容易にイメージが出来る。
女性のブランド化粧品って本当にキラキラしてるなぁ、あ、ウィッグも買ってる。等と、残高の減りだけで幸せを感じていたのに、具体的に何使って何買って、という「現実」を見れてしまい、レシート達に対してコレは実質宝くじ一等券みたいなもんじゃん!?とテンション爆上げである。
次は何かな、と次の領収書を手に取り、二度見した。

「グレース、スカート履くようになったんだ…!」

スーツ一式の領収書を見て、表記がパンツではなくスカートということを五回ほど確認して空を仰いだ。
デートにはスカートを履いて来る事はなかったし、大学時代も鉄壁も鉄壁で、あんな噂すら流してた時点でお察しだがスカート姿なんて一度も見た事なかった。
それほど、パシフィック・ブイでは逆に隙が無く女性を演じてるという事だ。確かにスカート一切履かないとそれはそれで突っ込まれそうな気もするし、あの施設で正体がバレたりなどしたら逃げ場がないのはそれはそうだ。
逆に脚の様子で気づかれたりするのではないか?とも思うが、まぁピンガの全裸何度か見たことがある身としては、脚だけじゃ疑う事ないんじゃないか?と言える。
程よく肉付きもあり、あまりにも綺麗な脚なので、思わず脚すご…と声が漏れてたらしく、それを聞いたピンガが「脱毛して保湿もちゃんとやってるからな」と言い、脚ばっかに構うなとその綺麗な脚でホールドされ…いや、その先は今は関係ないのでとりあえずいい。
どうやら肌色のストッキングも買っているらしいし、素足でないなら、より判断が難しいだろう。

というか、そんな、スーツスカート姿のグレースを見ながら仕事が出来るパシフィック・ブイの職員が羨ましすぎる。
いや、ピンガの姿でもグレースの姿でも、何を着てようが、なんなら布一枚でも、一糸纏わなくても、最高なことに変わりはない。まぁピンガもグレースも最高故に、服も上等なものを着ていて然りなので何でもいいわけではないが。
しかし自分は見たことがないけど、他人は見たことがある姿という点で、見たいと思うのは仕方の無い事である。
俺とのデートにスカートを履いてこないのも、俺を欺く必要がないからという信頼故だろうから、逆に嬉しいまであるが。

「は〜、領収書、最高………」

わざわざデートの時に持ってきたあたり、経費的なところでは無く喜ばそうとしてくれたんだろうな、と思うとより嬉しい、動悸が凄い。

「というか、スカートで冷えて風邪引いたんでは…?」










後日




「グレース、領収書ありがとう。本当によかった、ところでスカート解禁したのであれば是非童貞を殺す服着てくれない?」
「童貞じゃなくても貴方なら死ぬ気がするけど大丈夫?」

「………やってみなくちゃ、わからねぇ!」
「そういう時に使うセリフじゃないわよソレ、いいけど……う〜ん…あんまり似合わないと思うわよ」
「似合う似合わないじゃないんだよ〜、男心の問題…」

「それ日本の文化なの?服の方じゃ無くてセーターの方が似合う気がするわ」
「セーターはエロすぎでは?」
「男心的にエロい方がよくないの?」











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潜入任務の疲れなのか、近頃食べる量が減ったと思う。ちょっと前まではあんなに食べても食べても足りない、食べ放題の元は取れる、頭使うから余計に糖分が欲しくなる、などとあんなに食欲旺盛だったのに。
しかし本当に食べたい!と思っても食べたい!と思った量が入らなくなってきた。

女のフリしてた弊害だろうか…、それと無く奴に相談してみると「普通では…?俺も一昨年くらいまではめちゃくちゃ食ってたけど、今はもう無理だなぁ、歳とったな〜って思う」と返ってきて、老化の線を全く考えてなかったことに気づく。それに奴は病気っぽいとすぐに全身全霊で心配してくるのでこの反応であれば本当に問題のないことなんだろう。一応がん検診とか行く?と言われたがお前もそうならそうだろうとやめておいた。

「ピンガはほんと、気持ちが若いなあ」
「うるせー」






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「彼とはどうなの?」
「任務に関係ねぇ事を聞くんじゃねえベルモット」
「アラ、酷いわ。きっかけ作りしてあげたじゃない」
「〜ッ!…順調通り越して俺に都合が良すぎまである。問題ねーよ」

フッ、と笑ったベルモットはさっさとそう言えばいいのよ、いう態度である。ムカつく。
しかし、一般人とどうのこうのしてるのに、何故この女は始末するどころかアレ以降手も出してこないんだ。他の奴に報告した様子も見れれねえ。

「黙ってる理由は何だ?」
「アラ、報告した方がよかったかしら?」
「……それはやめろ。だが、それをネタに俺をゆする訳でもねぇのはなんだ?」
「心配性ね、ま、仕方の無い事だけど………、じゃあ…コレ貰うわね」

ベルモットがピンガの持ち込んだバッグの取っ手部分にリボン結びにしていた、最近自分で買ったフサエブランドのスカーフを取った。
別に愛着もなく、グレースに使えるかと思ったが首に巻くには派手すぎて、だからと言って使わないのもな…と思い飾り気のないバックにちょうどいいと結んでいたのだった。

「対価として?」
「そう、これで対等でしょ」
「…そうだな」

ベルモットは秘密主義だ、ちょっと探ったくらいじゃどうせわからないし、多分、俺にそこまで探らせもしないだろう。
しかしフサエブランドを好んでるらしいというのはなんとなく…過去に若い女性に化けている際に身につけるブランド品に多く見られたので、説得力はある。
下手に探ってボスのお気に入りであるベルモットの機嫌を損ねるのも恐ろしい。今回はこれで納得するとしよう。













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あとがき的なやつ

生きてるうちの日常編みたいなやつです。
そういえばグレースのスカートの話するの忘れてたのと
ベルモットが放置するか?感を感じたので補足。
あと25歳は結構もう食えね〜のターニングポイント過ぎてるだろ!という気持ちがある蛇足です

(二次元キャラはいつまでもいっぱい胃もたれ気にしないでご飯食べて欲しいとは思ってる)(作者は20過ぎくらいでもう食欲死んだ故にこんな事を言ってるが個人差はあると思います、鵜呑みにしないでね!)


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