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愛しのグレース

愛しのグレース番外編


その後のことの細かいネタ走り書きなので時系列を問わない、そもそもの時空が歪んでるので今更だ!サザ○さん時空に飛び乗れッッッッッッッ!!!くらいの気持ちで見てください。


番外編なのでちゃんと小説を書く気がないので文章ボロボロです。会話文みたいな感じです。


(モブ女がスッゲー雑に出て来てスッゲー雑に始末されたり、男主の家庭環境はいい方だけど特殊みたいな表記がされてたりと人によってはど地雷ど真ん中だと思うのでいつも以上に我こそは完全地雷耐性を備えた人間!と言う方だけ進んでください…)






















その後、グレース改めピンガとお付き合いを始め直した我々だが、心から嬉しく踊り出してしまいそうになるほど幸いな事に、何と会える頻度が増えました。忙しいのはそれはそうだし、ピンガ側が細かいことは教えてくれなかったけど、明らかに二重生活をしているのは分かったのでそれを考えると無理しないで…と会う頻度増やさなくても連絡くれるだけで嬉しいよと言ったが、ピンガが頻度を増やすのが良いというのだ。それ「が」良いんだって。ふふふ。嬉しくて目尻が輪郭から出てしまったのでは?と思うほど下がってしまう。ピンガみたいに垂れ目になるんじゃないか?流石にそれはない。

基本的に社長とは言え、もう既に両親が組み上げたモノの歯車回すだけみたいな立場なのと、事業安泰しており今からいろんなコネ作るぞ!みたいなあっちこっち行ったりという忙しさもほぼないし、顔見せはグレースとほんとに会えなかった最初の頃に終わっているので、オフというオフをピンガに合わせてあげられるので両親には本当に感謝だ。


孫の顔は見せてあげられないがそれも人生である。懐が海より深い両親の事だ、あと両親の馴れ初めを聞くに
「実家のゴタゴタ!?知らん!俺には私にはこの人しかいないの!絶縁だー!」
…と、出るわ出るわお互いの事が第一過ぎるエピソードが。
流石にあぁ、その血か…と思ったもんだ。片方じゃなくて2人ともそうならもう間違いない。

俺の事ももちろん愛してくれたし、現にこんなに不自由なく、生まれながらのスペックのおかげで好きな子と付き合える条件を手に入れた為、親には感謝しかない。

でも普通の家庭でありがちな「両親の1番は子供」に、俺はなれなかった。

明らかに両親がお互いのことを愛し過ぎており、話を聞くに子供を作ったのも、子供が欲しいと言うよりは、お互いの事大好き過ぎてお互いの遺伝子残したいね、お互いの独占の時間が減るのは嫌だけど、私たちの混ざった遺伝子で一緒に作った作品が自分たちの死後も残るのって最高では?それに子育てするお互いも見れるしお得みたいな感じが滲み出ている。
俺がピンガを見る気持ちが、両親のお互いを見る気持ちなのであれば、今となっては理解できた。

まぁ両親の親が毒親だったのは話を聞いてて間違いないので、それ故の歪みなのかもしれないが、憶測にしかならないのでこのくらいで過去話はやめておこう。





今日はドライブデートをしている。今度仕事で通る場所の下見もしたいとのピンガのお願いだったので、そのルートを遠目から見るような進路だ。通る道そのまま走った方がいいかとも聞いたが「死にたいンならドーゾ」と不機嫌に言うもんだからそれはやめた。
グレースは助手席から景色を楽しむように笑ったり「アレ!綺麗ね!」とはしゃぐ様子を見せているが、視線が明らかにチェックの動きをしていて相槌を打ちつつ、忙しいなぁ…と見守る。そんな仕事熱心でデートに下見とかぶち込んじゃう真面目なところが好きだ。


過去経歴全部嘘だから変な気遣いやめろって言われた時に、本当はマトモに他人と恋愛する暇もなく、適当に女引っ掛けて性処理程度のことしかしてないと聞いたので
恐らく今までのデートも言ってなかっただけで色んなものの下見のついでだったりしたんだろうな。

デートに仕事持ち込むなんてフツーに考えておかしいと同僚は言ってた、どうやら世間は自分より仕事を取られると嫌らしい。
自分としては仕事を頑張ってる恋人も自分に構ってくれる恋人にも差がないと考える。だって存在そのものが愛しいから。仕事持ち込んでまで、忙しいのに会ってくれて顔見せてくれて一緒にいてくれるだけで胸がいっぱいになる。

「お昼この先の個室ある店でいい?」
「いいわよ、毎回運転してもらっちゃって悪いわね」
「せっかくグレースを口説き落とす為だけに見栄で買った車だからね、むしろ使わせてもらってありがたいまであるよ」
「ンッふ、…本当おかしいの」

マジウケしてしまったらしく口元を覆って肩を震わせて笑ってる。暫くして、はー、とため息をつきながら落ち着こうとする様子を見て、心許してもらえてるなぁとまた幸せになった。




━━━━━━━━━━━








「そういや、お前いつもどうしてんだ」
「え?何の話?」
「どうやって抜いてんのかって、女呼んだりしてんの?」
「浮気じゃんそれ、するわけないでしょ。勿論1人でやってるよ……」

フーン、と言いながらピンガは勝手に俺の部屋に設置したワインセラーから酒を取り出してグラスも持ってきた。

ピンガの家に置きなよ、一応家財じゃん。と言ったが「家は家でも家じゃないからな」と言われて、よくわからないながらも危険な仕事してるっぽいのは察しているのでまぁ、そう言うことなんだろうと思いつつ放置していたところ、最近部屋がピンガに魔改造されてきている。
空き部屋があったが、そこも気づいたらグレース用の服が入ってるクローゼットとかドレッサーとか置いてあって笑った。前まで、家にモノが増えるのは好きではなかったが、ピンガやグレースの物が増えるのはこんなにも嬉しい。

「ふーん、AVとか何見てんの」
「えっ、グレースの想像してに決まっ……待って、今めちゃくちゃ恥ずかしいこと聞かれてないもしかして」
「胸とかどんなもんだと思ってたんだ?」
「本人からこんな尋問されることある?」

普通に男同士の会話で流されそうになったが、ちょっと待てと停止をかけるがまぁまぁ参考にするからと俺の分の酒を注いで目の前ローテーブルに置かれる。
まぁ、グレースの役作りに必要なら、と思うが、他人がグレースでそんな想像することがあると思うと嫌過ぎる、いや、グレースは最高なので逆にグレースに魅力を感じない人間など存在しないとは思うが、それはそうとしてモヤモヤする。
しかしここまでお膳立てしてやったろという顔をして横に座って、こちらを見上げるピンガを見ると仕方ないな〜!も〜!の気持ちが勝ってしまった。

「グレースが女の子だと思ってた頃は……、うぅん、説明しづらいな、ちょっといい?」
「あ?」

ピンガの肩を掴んでそのままソファにゆっくり押し倒す。ピンガは驚いたみたいで、目を見開いてぽかんとしている。正直、女の人の胸のサイズがどれくらいで何カップとか無知なので、口頭では説明が難しい。

「胸は、まぁ、見た感じ大きくないのは知ってたけど、そうだな、……男だからそりゃないよな。……コレくらい?」
「ッ、」

両手でピンガの胸に触れてみるが、まぁ当たり前に想像より無い。ので、触れた後にこのくらい、の空間をピンガの胸と、自分の浮かせた手の間に作る。空間を撫でるようにこんな感じの丸みで、とピンガの胸には触れず、イメージの膨らみを撫でる動きをする。

「で、あばら…しっかりしてるね、フフ、くびれは…もっとあって」

胸から肋骨周りを確かめるように触る、胴の両脇を撫でるように両手を滑らせ、女性であればくびれが有るであろうあたりでぐ、と圧をかけ、これくらいの細さ、というのを体感的に伝える。
そのまま両手でイメージの線を、なぞるように腰まで両手で滑り下ろし、骨盤の盛り上がりに親指で触れる。健康的な肉付きの下に骨があって、それすら嬉しくて何度か撫でてしまった。
それから両手を離し、片手でピンガの腹を撫でる。

「おなか、腹筋ある、鍛えてんだ…。グレースに腹筋があると思ってなかったけど、まぁぺたんこ、ってイメージ?へそ周りとか、下の方とか、撫でて…………で、ここに」

下腹部を中心に、ゆっくり、圧をかけながら数回撫でたのち、女性であればそこに子宮があるだろう場所を親指を何度か滑らせた後、ぐり、と押し込む。


「って想像しながらオナホとか使っ…」


パッと顔を上げてピンガの顔を見れば、顔を真っ赤にして、片腕で口元を隠し、もう片方の腕で置きっぱなしにしてたブランケットをぎりりと握っていた。
瞳は潤み、眉間に皺を刻んでいる。何かに耐えているような様子に、少し荒そうな息を隠す様子に、先ほどまで好き放題に触ってた腹の下に視線を滑らせたところで、ピンガに顔を殴られた。


「ッバーカ!!!!!!」
「いってぇ!」
「なんで実践すんだよ!バカ!」



ゲシゲシッ!と容赦無くピンガに蹴りを寄越される。
あまりの猛攻にソファから転がり落ちてしまった。幸いテーブルには当たったものの、酒はひっくり返ってなかったみたいで安心した。あ、頬殴られた時に口内歯で擦れて切ったな。血の味がする。

「セクハラだ、訴えてやる」
「ご、ごめんて…」

グズ、と鼻を啜りながらブランケットに顔を埋めて膝を抱え込むように丸まってしまったピンガにごめんよ〜と言いながら、でもピンガも俺相手で反応するんだぁと嬉しい気持ちになる。まぁ生理現象側かもしれないがそれはそうとして、深めのキッスやじゃれつき程度しかまだしてないので、想定外のガチセクハラにはなってしまったが、意外な収穫だ。

「…ていうか、……お前は男相手でいいのか?」

蹲ったまま、か細い声で聞かれた。どうやら女の体想定での自慰の話を聞いて自分の身体との差を感じているらしかった。
自分で聞いておいてそれに答えたら不機嫌になったりする事はコレが初めてではないが、俺がピンガを愛してやまないのはもう揺るがないので心配しないでほしいし、前にも言ったはずだ。
しかし、人間はテレパシーがあるわけでも、言わずとも理解するなどと言う機能は搭載されてないので、何度でも何度でも、言ってやるのだ。お前がいいのだと。


「勿論。グレースでも、ピンガでもお前はお前だし、今のオカズはもっぱらグレースの身体は男想定、もしくはピンガの想像だ。男の体想像しても何も変わらなかったから、自信持って!」
「………………」


顔をゆっくり上げてくれたが、ジト目で、呆れるような視線をこちらに寄越すばかりだ。これは、まだ微妙に信用してない顔な気がする。


「明るく言うことかよ、変態野郎」
「ピンガ以外に興奮しないって言ってんの、信用ないなあ…」
















side:pinga



くっそ恥ずかしい思いをした。マジであの野郎、殺してやろうかと思った。でも初めてあいつから意識して俺の腕とか顔以外の部分積極的に触ってきたし…いやでもあいつが触ってたのは想像のグレースなんだよな、腹立つ。
うっかり想像してちょっと反応しちまった、クソ。

とは思いつつ、ピンガ自身、もう男相手とか…という期間はとっくに過ぎ去り、なんなら深めのキッスを自らお見舞いしてやった時点でもう覚悟をしてたのかもしれない。男同士のやり方もネット検索でわかる世の中で良かったと思う。

しかし、奴が一向に手を出してこないのでヤッてないと言うところだ。
…いや、手を出してこないは違うか、明らかにピンガの姿見せてからはスキンシップは増えた。それはもうびっくりするほど増えた。グレースの姿で外に出る時は、まぁ手を繋いだり腕組んだり程度だが、部屋で誰にも見られてないところではすごい。

こないだ不覚にもちょっと勃ってしまった時もだが、普段のスキンシップも、普通のいちゃつきにしちゃあ触り方が確認するような、それでいて、手つきがいやらしい、奴の目を見れば本当にピンガしか目に入ってない、と言う様子で少し怖いが、何故かめちゃくちゃ求めるように触ってくるくせに、そう言う行為に発展しないのだ。おかしいだろ。あいつマジで脳みその構造どうなってんだ。

手繋いでる時もやたら落ち着きないな…と思っていたが、触られ方を考えていたら完全に指の皺とか、骨の動きとか、爪の形とか確かめてるな?と思ってからは「今日も確かめられてるなぁ…」と思って好きにさせているが、前までやらなかったくせに、やたら髪の匂いを嗅いできたりとか、腕の肌の滑りを確かめられたりとか、キスする前とかも酷い、眉毛とか髪の生え際とか、耳とか、まつ毛とか、マジで意識すればわかるが一個一個のカタチを確認している。
喉仏とか首周りはマジでビビるし条件反射でぶっ飛ばしそうになるからやめてほしいものだ。

正直何考えてんのか全く分からなかった。一回その触り方やめろって言ったら理解できなかったらしく、一切のスキンシップを断たれたので撤回した。無意識なのか?
それはそうとして、だ


「ま、ここまでしてやりゃわかるだろ」


ほんとに一度も女を使ってないなんて俄かに信じがたいので、今回は奴の私物に盗聴器を何個か忍ばせ、グレースに似た雰囲気で、顔も悪くない、おそらく奴好みの女を金で雇って差し向けた。
これでハッキリするだろ。
女にもそう言う挙動を取るのかどうか、じっくり見せてもらうぜ。


指示を出した女は順調に奴に接近し、飲み、介抱を求めて奴をホテルに連れ込むところまでやった。女に対してよくやった!と思う反面、男に対してホイホイ付いてってんじゃねーよ!!!の気持ちが大きい。
別のホテルの一室で、ノートパソコンを開き、奴らの入ったホテルの監視カメラをハッキングして、画面に映し出される奴と女の様子を観察しつつ、盗聴器から送られてくる音をイヤホンで聞く。

『じゃ、俺はここで、お大事にしてください』
『え、ちょっと、待ってよォ!……どう?アタシ、結構自信あるんだけど…』
『えぇ…?恋人いるんで無理です』
『じゃあいなかったら相手してくれるの?』
『なんで?しないけど』

開始直後に終わろうとするな。
女も驚いた様で、さっさと帰ろうとする奴に服をはだけさせながら縋りついた。
胸元からは豊満な胸がまろび出そうになりながら、ギリギリポロリしないくらいの揺らし方をし、存在を主張してしている。
胸をぎゅうぎゅう押し付けて奴の腕を拘束する。俺でもそんなにアピールされりゃ余程機嫌が悪かったり暇じゃなけりゃちょうど良いと使ってやりそうなもんだ。
しかし奴は一度も赤面したりする様子はなく、ずっと困惑の顔をしている。

『えぇ…?俺を誘惑する様にってお仕事なのかな?ごめんね、応えられないし嫌。恋人以外でほんとに勃たないし。AV見ても何見てもほんとにダメになっちゃったんだよな……、でもほんと自分の身体大事にしなよ、魅力的な身体で稼ぐしかないのかもしれないけど、うわっ、脱がないでよ、怖い怖い、いやだから無理だって、現にほら、全然勃ってないでしょ』

女が哀れになる程、奴の前にはナイスバディな女体は無力であった。え?EDだったりすんの?
こんな事は過去になかったのか、やけになって裸を見せつけた女はショックでへたり込んでしまったようで、奴は奴で脱いだ服を肩にかけてやりながら、コレで美味しいもの食べなよと、どうやらお食事券を渡してる様だった。
そのまま奴は何もなかったかの様な顔してホテルを後にした。

「怖いのはオメーだよ…」

ほんとに男か?とすら思ったが、今回の事で女が奴に今後ちょっかいかける可能性が出て来ると困るし、適当に始末して帰るか。とノートパソコンを閉じてホテルからチェックアウトし、女を呼び出す。お食事券であろうと奴から貰ったもんをそのままやるつもりもない。
それが終わったら奴の家に行くか…。









「あれ、ピンガ今日来てくれたんだ!」
作っておいた合鍵で先に奴の部屋にいれば、俺をみるなりニコニコと笑う。それを見て先ほど女がしたように帰ってきた奴の腕に絡みつき、ない胸を押し当てる様な動きをしてみる。そうするとビックリした顔をしながら、顔をみるみる赤くするが、すぐに剥がされてしまった。

「……あ〜ちょっと先にシャワー浴びて来る」
「あ?なんでだよ、帰ってきて早々」
「ゴメン、マジで汚いから、後でな」
「ア゛!?おいコラ待て」

驚きの速さでシャワーに向かってしまった。シャワー室の部屋を叩くも鍵を閉められそのまま普通にシャワーの音が聞こえてきたので諦めた。しかし、三分もしないうちに鍵が開く音がして、すぐに扉が開いた。部屋の前で座って待ってたものだから驚く。

「お待たせ」
「お、おう…」

髪も濡れたままで、フェイスタオルを肩にかけている姿だが、先程着てた服は洗濯機の中のようで、部屋着に着替えていた。
2人でいつものリビングのソファにかける、奴はいつもより少し疲れた様子だった。

「なんかあったのか?」
「んー、尋常じゃない感じの女の人を介抱しちゃって、気分悪かったってだけ、さっき汚いって言ったのはその女の人にすげぇ触られてさ……、そう言う人の気?みたいなのがついたままなのがなんか嫌で、ごめん」
「そりゃ災難だったな」

と、言いつつ奴に寄りかかれば珍しく硬い雰囲気を放ってた奴の態度が目に見えて柔らかくなった。それから軽いスキンシップをしているが、やはり何も変わらないので、もういっそ直接聞いてやるかとため息をついた。

「お前さぁ、前にも言ったけどその触り方怖えーって」
「え!?こ、こわかった!?ゴメン…!」
「テキトーに謝んのやめろ、なんつーの、めちゃくちゃ肉付きとか検査するみたいに触るじゃねーか、なんか、もっと自然に触れねーの?こっちも身構えるわ」

検査…?と呟き、頭の上にハテナを浮かべている様だった。マジで無意識だったのか、と思っていれば、触り方が検査じみてた事を理解したのかハッとし、滝の様な汗を流し始めた。

「おうおう、理由があるっぽいな?吐けや」

「ゔっ、言わないと…だめですねはいすいません怖い思いさせて。記録の話なんだけど、グレースとの写真はちょっとだけ許してくれるけど、ピンガとの写真は絶対許してくれないから
まぁバレない様に?だから仕方ないし、俺もそれが原因でピンガに危険が及ぶ可能性があるなら写真位は我慢できるんだけど、
多分、ピンガのこと覚えてたいなって、記録に残せないなら…俺が覚えてれば良いやって思ったから、多分そのせい」

小さめの声で早口で言うから聞き取りづらくはあったが、なんともむず痒い理由である。確かに組織所属は隠しているが、ピンガの姿でお前といるとバレると不利益、かつお前も場合によって殺されるからダメだとざっくり禁止したなぁと正体を明かした日のことを思い出す。
そんな理由だったのなら、まあ、許してやってもいいかと思ってしまうので、随分と俺もコイツに対しては感情で動いてしまうな…と思うからこそ、やっぱりバレるわけにはいかねえとも思う。

「ふ〜〜〜ん」
「俺ばっか恥ずかしいこと言わされてる気がする…最近…!」

ニヤニヤしながら奴を見上げれば不公平を訴える様に顔に手を当て顔を上に向けた。顔そらすとは良い度胸だ。

「じゃあ俺も恥ずかしい事教えてやろうか」
「えっ」

言わないと分からないなら、言えば良い事だ。正直、察してほしかったが女々しい事この上ないのは事実なので、まぁ良いだろう。

「抱かれても良いぜ、お前になら」
「エッッッッッ」

ボン!と音がしそうな程赤くなり、こっちを向く。人間ってこんな反応出来るんだなぁと関心すら覚える反応をするのが面白い。
完全にフリーズしたかと思えばおろおろとし始めた。なんだ?まさか抱かれる側がいいとかだったりするのだろうか。でも抱く前提みたいなセクハラして来たろ。

「アノデスネ…、俺、デカすぎて元カノに振られたことがあり…それ以来イチモツを人に使うことが憚られて…」
「ガキの頃の話だろソレ、しかも女だろ?女が初めてチンコみたらビビるのは仕方ないだろ」
「いやー、どうだろうな、体格に見合うくらいはあるから本当に覚悟しといてほしい、無理はさせたくないからマジで、でも言質取ったから今度抱くわ」
「ムードもクソもねぇなお前」

と、言いつつ本当にやっと過ぎて少し楽しみと思ってしまう。しかし本当に洒落にならんデカさで悲鳴を上げるハメになるのだが、それは次回会う時の話。








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「ア゛ッ!あ!〜〜ッ、む゛り!だめになる!ホントに!ダメになるからッ」
「ピンガなら大丈夫だよ」
「テキトーな信頼ヤめろッ!……〜ッ!!ああっ!」

「そっか、じゃあ…ホントにだめにしてあげるね」
「エ゛」






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「そういえば私と会えない時って何してるの?趣味らしい趣味、見た事ないけど」
「あー、サブスクでおすすめされた映画見たり、誘われれば飲みに行ったり…」

「キャアアーーーー!!!!」

米花町のカフェのテラス席でのんびり過ごしていたところ、ナイフを振り回しながら走って来る怪しげな男がこちらに向かっているらしく、今の悲鳴はそれを見た女性のものらしかった。
グレースは小さく舌打ちをする、人目は多いが、こちらに向かってくるなら迎え打つしか…、と先を立とうとしたところで、向かいの席に座っていたはずの奴が走って来る犯人に立ち向かって行った。
おい待て!お前の運動経歴なんて、バスケ部くらいなもんだろ!刺されでもしたら──!
手を伸ばすがワンテンポ遅れたせいで引き戻せない、どうする、と焦り歯噛みするが、奴は今まで見せたことのないキレッキレの動きで犯人のナイフを避けた。

「グレースとのデートを邪魔してんじゃ…ねぇッ!!」

今までに見たことがない形相で、振り回すナイフを2、3回、軽々と避けたかと思えば、不審者の腕をがしりと掴んだあと強引に背に回す。その後容赦無く肩の関節を外した様だった。
あまりにも手際が良くポカンとしてると、それに気付いたのか奴は不審者を組み伏せながらへらりと笑った。

「こう言う時のために、最近いろんな格闘技?とか習いに行ってるよ」

先程の話の続きをこんな状況でするか、と呆れつていると、周りの誰かが通報したらしく警察がやって来た。犯人は警察に引き渡され、軽い事情聴取を受けた後、肩を外したことに関しては周りからの証言もあり正当防衛だと判断された。後日来た連絡によると誰でもいいから刺したかった、特に相手は誰でも良かった、という内容だったらしく、特に警察からは被害者程度にしか見られずに済んで良かった。
米花町、犯罪率が異常に高いとは思ってたが遊びに行っただけで巻き込まれると思うと任務以外では2度と近づかないに限る、と頭に今日のことを叩き込む。

「前まではスポーツ爽やか青年って感じだったのに、いつの間にか戦えるようになってるなんてね」
「いや、戦えるって言っていいのかな…。今迄は後ろ盾とかお金で何とかなるかなって思ってたけど、そうじゃない事もあるみたいだし、この方がグレースも心配しないでしょ」
「それは…そうね」

どうやらピンガの正体を明かしてから、普通じゃないのでやたら殺される死ぬぞと言われるもんだから鍛えておくかあ、と思ったらしい。
予定帳を見せてもらったが、グレース、ピンガと合わない日はほぼジムやら格闘技やらの習い事だ。中には射撃場の文字まであり驚いてしまった。

「ふふ、何になるつもりなのよ」
「グレースのスーパーダーリン」
「ぷっ…、あははは!キメ顔で言わないでよ」
「本気なんだけどなあ」

元々のスペックでも十分だっただろうに、これ以上個人で力を持つと軋轢を生む危険性とか目をつけられたりとか、そんな心配をしたのが馬鹿馬鹿しくなるほど真っ直ぐに目を見て言われて、本当にバカと天才は紙一重だと思う。
ちぇ、そんな笑わなくても、と本当にいじけているのが余計に味わい深さを出している。
ヒヤリとしたデートだったが、まぁ意外なところが見れて良かったと思った。







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「ピンガ、これ」
「何コレ」

いつもの貢物だろうな、とは思いつつ差し出された小さめの紙袋を開ける。今回は何処のブランドのどんな限定品か、グレースとピンガどっちにだと思いつつ綺麗な包装をひらけば、シンプルなシルバーのリングが入っていた。

「こないだ飲み会の時に周りの結婚話聞いて、結婚いいなー!となって、ベロンベロンになった時にプロポーズリングを1人で舞い上がって買ってしまったんだけど、どう考えてもグレースがつけるわけにもピンガがつけるわけにもいかないなぁと思ったんだよなぁ」
「…確かにグレースが付けてても結婚式には呼べとかなんとか面倒な事になりそうだし、ピンガの方でも、指輪はなぁ…、ていうかコレがプロポーズリングのつりもりかお前、どー見ても結婚指輪だぞ」

グレースの方で結婚となるとまた戸籍当たりで改竄が必要になるだろうし、身辺調査のリスクもある。更には組織に所属してる俺に結婚式を挙げてる暇はねえ。しかも指輪は銃を撃つ時諸々で普通に邪魔になる。
しかしこのデザイン、明らかにプロポーズ演出の派手さがなく、石も付いてないタイプで普段使いに配慮されてる。どう見ても結婚指輪だし、値段も張るはずだ。
購入した店のカタログをネットで検索すれば案の定である。

「えっあっ、ホントだ」
「大方、店員への説明が悪かったんだろうな。つーか、酔っ払いがそんな所行くんじゃねーよ」

ホラよ、と左手の甲を差し出す。そうすれば、目を丸くしたのち、男は微笑んで指輪をケースから外し、俺の薬指へと納めた。

「結婚とか、多分出来ないしピンガもする気もないと思うけど、出来る限り俺と一緒にいてほしいな、愛してる」
「……ま、この家では付けてやるよ」
「マジ?じゃあ俺もそうしよ…へへへ」
「つけてやるからお前の分貸せ、お前は……初めてグレースにした告白しかムード作り成功してなくてマジで終わってんな、仕方ねーから俺がセンスねーお前と一緒にいてやるよ」
「ウッ、はい………」

俺にした様に、俺も相手の指に指輪を嵌めてやる。ニコニコ通り越してデレデレのだらしない顔の男を見て仕方ねえなあと眉を下げて笑った。

その夜は久々に抱かれたが過去一で優しくされて本当に溶けるかと思った。知らない感覚すぎて死ぬほど涙が出たが、気をやった後に男が完璧に綺麗にしてくれた挙句スキンケア用品まで塗ってくれたらしく肌が生き生きとしていた。
こういう謎の気遣いはできるのにムード作りド下手なのは何故なんだろうか。









━━━━━━━━







グレースとして潜入し、老若認証を使いRAMの側近としてジンを蹴落とす時が来た。ジンの無駄なガキを攫えという命令のせいで多少予定外のことが起こったが、もう潜水艦に戻りさえすればそれでしまいだ。

艦首の魚雷発射管前部扉が開かない、メッセージは既読になっているはずなのに、チッ、ジンの野郎…。
仕方がないので潮に逆らいながら、艦尾方向に泳いで、愕然とする。脱出用の小型潜水艇が無くなっていた。
状況から考えるに、確実にジンの陰謀である。

(そういう事かよ、ジン…………!)

全てを悟ったピンガは口の端を歪めて笑う、同時に、やはり自分はそういう人間なんだとも悟る。
どう足掻いても表で幸せだけを享受して生きることは、絶対にない人間なのだと。
しかし、まぁ、少しは情をやってもいいかもしれないと思い、防水ケースに入ったスマホに短く文字を打ち込んだ。

次の瞬間、潜水艦は閃光を放ち、爆発した。閃光に呑まれる瞬間、ピンガはニヤリと笑い、爆流の中へ消えていった。











━━━━━━━━





パシフィック・ブイの事故の日に届いたピンガからのメッセージを見た男は、そうか。とだけ呟いた。

家宅捜索をされると困るな、と思いピンガやグレースの痕跡らしきものは全て誰にもバレない様に、ドレッサーやクローゼットも処分した。空き部屋は元の有様で、ワインセラーは趣味で飲んでるといえば罷り通るだろう。
その他で残っているものといえば、あの2人分の指輪くらいなものだ。これは常に肌身離さず持ち歩いている。

予想通り数日後、警察が事情聴取をしに来た。一応軽く家宅捜索されたが、俺はグレースのことは完全に女だと思ってたの一点張りで貫き通し、部屋も完璧に掃除しており、髪の毛一本も落ちてない様にしたので、ピンガの痕跡が何かしらの検査にかけられることもないだろう。

結婚もしておらず、お互い忙しい身の上でほぼ会えないから騙せたのだろう、むしろ、貢がせるためのいいコマ扱いだったのだろう、という判断を下され、思ったより早く解放されて「普通」に生きてる。
世間にはグレースが事故死したと報道された。公にできないほどの組織にピンガは所属してたんだなぁと改めて思う。
警察からは正体を偽られて金を使わされた詐欺被害を受けた男みたいに扱われてるが、同僚たちには最愛の彼女を失った男として扱われている。
女性から言い寄られることが増えたが、本当に俺を好きならそういう事をしないでくれ、と一蹴した。

暫くして警察からも全く目を向けられなくなったことを確認すると、ダイビングの免許を取った。
会社は有能な社員に引き継いで、社長も別の人間を据えてうまく回る様だったので、やめた。

今は八丈島に小ぢんまりとした家を借り、毎日潜っている。



潜る、この程度の深さじゃまだ素人だ。

潜る、更に免許を取り、前よりかなり深いところに潜れる様になった。

潜る、これ以上は潜ってはいけないと言われた深度まで潜った。

潜る、酸素中毒を起こしかけた。

潜る、あまりにも暗くて心細い場所だと、涙が出た。


まだ、まだ潜る。

最後のピンガのメッセージは
「探すな」
それだけだった。

グレースやピンガに言われた事はなんでも受け入れてきたし、場合によっては顔を見て判断してたけど、今回ばかりはいいよとは言えない。最後まで、一緒にいてくれと言ったし、最後まで一緒にいてやるとも言われたのだ。一緒にいてくれとお願いした立場で、俺のできる限りをやっているだけだ。文句は言わせない。


俺の人生の最後まで、お前に何度も会いに行くし、探してやる。
流れた月日のことを思えば生死は明らかでも、遺体だけでも、もうないかもしれないけど、この暗い海の中で1人にしてしまうのは、あまりにも可哀想だった。

ある日、天気も海の様子も問題がない故に深く潜った。突然様子が急変し、潮の流れが激しくなり、思った通りに泳げず流されるまま暗礁に身体を強く叩きつけられた。八丈島からは体感的にかなり流され、辛うじて意識は保っていたが失神と覚醒を繰り返す危険な状態で、叩きつけられた際に出血もしており、意識が戻った時には激痛が走る、脚が折れていた。
そうして潮に流されるまま、このまま死ぬんだろうな、とぼんやりと思ったところで、目を見開いた。

見つけた。

海底にうつ伏せになっている、黒い岩がいくつかあり、そこに引っかかっている。
時間の経過の残酷さを思い知らせる、頭蓋骨の露出と、辛うじて張り付いていたこだわって編み上げていた、コーンロウの残骸、そしてスーツはところどころ破け、水苔が繁殖している。そしてやはり手足の皮膚はぶよぶよに腐敗し、同じように腐敗した顔も蚕食されており、目も当てられない状態になっていた。

それでも、そんな状態でも、間違いなくピンガだと思った。
変わり果ててしまった、水死体の酷い有様を一目見ただけで、ここ数ヶ月の死んだ様に生きてた日々がなんだったのか、と思うくらい心臓が脈打った。

最後の力を振り絞って、ピンガの亡骸へと泳ぐ、脚が激痛で訴えるこれ以上は動かせないと、体のあちこちが熱く、出血が止まらない。それでも、潮の流れに逆らう。

痛みではなく、喜びで涙が止まらない。

やっとの思いで目の前にたどり着いた。亡骸を優しく、軽く抱いたつもりだが、水圧でぐちゃぐちゃになってしまったピンガの身体は簡単に崩れる、俺の行先も、この状態ということはわかっているが。不思議と恐ろしさは感じなかった。

「一緒にいてくれてありがとう、ピンガ」

血も吐きながら、痛みで変な発音になってしまったが、最後にどうしても言いたかったのだ。
言えてよかった、と満足した途端に眠気が襲ってきたので、おやすみ、とほとんどなくなってしまったピンガの頬を撫で、そのまま眠りについた。

海底に、クジラの子守歌が響いた。









































後書き的なやつ




ピンガの救済はしません。主人公も死にます。
つまり、有言実行ハッピーエンドです。やったね。
1番状態終わってんの水死体ってよく言うから、それを見たって全然引かないどころか愛しさが溢れ出ちゃう夢主くんは本当に好きな人と最後まで一緒にいられてよかったね!
前回ので終わっても良かったんですけどやっぱ死ぬとこ書きたいよなぁ!?!?!?になったので番外編として処理しました。
ちなみにクジラの歌声は人間の耳の鼓膜を破裂させるらしいです。死んでるので子守歌でもオッケーやろ!というアレなので許してください。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
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