1st anniversary
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目が覚めると、昨晩の色事のせいか、いつもより重たい腰に現実へと引き戻される。ゆっくりと寝返りをうちながら、冷えた肩を暖めようと毛布を手繰り寄せる。
窓から差す光がもう朝を連れてきていて、眠る時までは隣に寝ていたはずなのに、いつの間にか抜け殻になっているジェイドの方へと腕を伸ばした。
いつもは行為が終わればさっさと自室へと戻るのに、昨日は何故だか名残惜しさを感じてその傍に身を寄せてしまった。
朝ジェイドの部屋から起きようものならフロイドにからかわれるに決まっているのに、つい冬の寒さが人肌を求めてしまったと少しだけ後悔する。
現実逃避にもう一度眠ってしまおうか。ゆっくりと瞼を閉じた時だった。
控えめにカチャリ、と音を立てると、静かに開く扉。視線を向けるより先に、空腹をくすぐる優しい香りがふわりと部屋に立ち込めた。
「……起きていたんですね。おはようございます。」
「おはよ。」
誰にもらったものなのか、当たり前のように似合わないピンクのエプロンを身に付けるジェイドは、お盆を片手に微笑むと、それをデスクの上におろす。
目線だけでそれを確認すると、お盆の上には小さなカップに湯気だったスープと小さなバケットが2枚ほど添えられていて、さすがモストロラウンジで働いているだけのことはあるというか、ホテルのモーニングの様なそれに彼らしさを感じる。
「お腹が空いたでしょう。」と続けて彼はベッドの近くへそれを手際よく配置すると、隣に持ってきた椅子に腰掛けてもう一度微笑んだ。
「至れり尽くせりね。」
「フフ、そうですか?冷めないうちにどうぞ。」
その言葉に甘えて空腹を満たすべく身を起こそうとすると、すかさず手を掴んで彼は優しくそれを手助ける。
こんなにもジェイドは甲斐甲斐しい男だったろうか、と顔色を伺えば、表情一つ変えずに小さなマグカップを差し出して、変わらずジェイドは笑っていた。
「……毒でも入ってるの?」
「まさか!」
さすがに何か裏があるのでは、と疑い声をかけると、白々しくジェイドは目を丸くして声を上げる。
これは悪巧みをする時彼がよくする仕草で、そう付き合いの長くない私でもそんなことは直ぐにわかるくらいよく見た表情だった。
じとりとその顔を見つめていれば、負けたというように眉尻を垂らしてにたりと彼は口角をあげる。
「……こうして甲斐甲斐しくお世話をすれば、またあなたが気の間違いを起こして僕の部屋で寝てくれるのではないか……と思いまして。」
なんとも意地らしいことを言うじゃないか。思わず小さく吹き出すと、「今度こそ冷める前にどうぞ」とジェイドはまた優しく言った。
暖かいスープは気だるい身体を軽くしてくれるようで、小さく刻まれたキノコは口の中で解けていく。これはなんと言うキノコなのか、と彼に聞けばきっと嬉々として説明をしてくれるのだろうかと想像しただけで、無意識に頬が緩んだ。
「ありがとう。おいしいわ。」
愛してるだなんて伝えるにはまだ早すぎる私たちだから、代わりにお礼を伝えると、ジェイドは満足そうに「フフ」とはにかんだ。
気の間違いだなんて私をなんだと思っているのか知らないけれど、こんなに嬉しそうにする彼と朝の挨拶を交わせるのなら、また近いうちに彼の隣で眠ってみるのもいいかもしれない。
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