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澄んだ空は遠く、高く、輝く星たちはどこまでも明るくその存在を証明し続ける。冬島が近い気候に鼻の奥をひりつかせながら、隣でココアに舌鼓を打つ毛玉に抱きつくと「こぼれるだろ!」と愛らしい表情で怒りながらも少し照れくさそうに笑った。
「チョッパーはいいね。寒くても鼻が赤くならなくて。」
「……オレの鼻はあおいからな!」
皮肉ったつもりなのに得意気に言う姿につられて吹き出すと、頭部に振ってきた固いジョッキから鈍痛と聞きなれた声がした。
「ソレ褒めてねえだろ」
「え、そうなのか?!」
「……いってぇ……混ざってくんなし」
酒を片手に呟き、許可も得ていないくせに堂々と隣に腰掛けてくるゾロに舌打ちをしながら、あたたかい毛玉を手放し、代わりにのしかかり攻撃を仕掛けた。
わりと力を込めて肩を当てたはずなのに、びくともしない体幹の強さが憎らしくて、ちょっとだけ愛らしかったりして。まあこれは、言ってやんないけど。
明日の朝にはもう次の島に着く。それまでの小休止が心地良い。
瞬く星があまりにも綺麗で、なんだかロマンチックで。寄りかかったままの肩から離れるタイミングを失っていれば、「おれココアのおかわりもらってくる!」とチョッパーは立ち上がる。
空気を読まなくてもいいのに。はたまた、本当にココアが欲しかっただけなのか……。
ふたりきりになった途端続く沈黙、喉を鳴らして酒を飲む振動が伝わって、夜風で冷えたはずの頬がじわりと熱くなった。
「……ダイヤモンドみたいじゃない?」
気まずさから発した言葉はあまりに陳腐で、明日ロビンに頭が悪くても読みやすい本をオススメしてもらおうと考える。
「フン」と鼻で笑ってもう一度酒を飲むゾロ。余計に恥ずかしくなり、声でも粗げようかと寄りかかった頭を上げると、その横顔は穏やかに私と同じ景色に見惚れているように見えた。
「宝石が好きなのかよ」
「……そういうわけじゃないけど」
「嫌いな海賊はいねえ、ってか」
喉奥を鳴らして笑う姿に、今度はつい私が見惚れてしまう。「好きだから、指輪でも用意しろよ」なんて、強がって吐き出そうとした言葉を飲み込めば、そのまま明るい声が近付いてくる。
「おーい!やっぱり寒い場所で飲むほかほかのココアはさいこうだな!」
湯気のたったマグカップを持ちながら、ペタペタと甲板を歩く小さな姿。深読みするほどでもなく、やはりココアが欲しかっただけなのか。
「なまえも冷えちゃっただろ、もらってきてやったぞ!」
笑顔で元いた場所に座り込むと、小さな手に持っていたもうひとつのマグカップを私に差し出す。
律儀にクリームでハートマークを描かれたそれにサンジくんらしさを感じながら、「ありがとう」と甘さに目尻を垂らす毛玉にお礼を言った。
あたたかいうちにいただこうかと身に寄せたカップをすかさず盗み見て舌打ちするマリモは、空になったジョッキを補充すべく入れ替わり立ち上がる。
「早めに入れよ、これからもっと冷え込むからな」
「はいはい」
「風邪でもひかれちゃたまんねぇからな」
くるりと向けた背中で面倒くさそうに話すのを、私もまた背中で返事する。
しばらくして靴音が聞こえなくなると、「ゾロはなまえのことになるとしんぱいしょうだよな、俺がいるから大丈夫だぞ」と、屈託のない表情でチョッパーは言った。
少しだけ照れくさくなったのは、この小さな生き物の優しさのせいだろうか。ぐりぐりと無遠慮に頬を撫で回せば、またさっきと同じように、「こぼれるだろ!」と怒りながら彼は嬉しそうに笑った。