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「宴だァーーー!!!!」
高らかに響く声。何かと理由をつけて宴を開催したがる船長は、楽しそうに歯を見せて笑う。その叫びを合図に、踊り出したり、歌い出すクルーたち。
海賊ってほんと気ままなのね。
たくさんの料理に舌鼓をうちながらお酒を嗜み、いつの間にかこの席に馴染んでいる私も、もうすっかり海賊なのだということを改めて思わされる。
ナミとの飲み比べはいつも負けてしまうので、途中で逃げ出したままロビンとカクテルを舌先で舐めていれば、「顔が赤いわよ」と、涼しい顔で指摘された。
「……のみすぎちゃったかなぁ」
「フフ、いつもよりは少ないんじゃない?」
「いつも通りなら今頃寝てるよ」
飲みすぎると眠たくなってしまうのは昔からで、今日は自分の足で布団に戻るぞ、という強い意志で酒を抑えて飲んでいた。
結果的にそのせいでナミとの勝負は逃避による棄権となってしまったが、今回は賭けをしなかったことだし問題はない。
それでもふわりとブレる視界が心地よくて、目を瞑ると暗闇がゆっくりと頭の中で回転した。
「酔い覚まししてこよっかなーあ」
「いってらっしゃい」
優しい声に送り出されながら席を立つと、にぎやかなクルーから少し離れた後部デッキへと歩を進める。揺れる船に足をとられながら、転ばないように、慎重に。
「……ふー……」
頬を撫でる海風に髪を抑え、ゆっくりと息を吐く。鼻からぬけるアルコールの臭いでまた酔いそうになりながら、水を持ってこなかったことを少し後悔した。
暗闇のなか水面を切り分ける船のうしろで、また波が切れ目を縫いこんでいく。この海で今明るいのは私たちの船だけ。見渡す暗闇を星空の照らす明かりでぼうっと眺めた。
「ビンクス、のさけを……」
「ひとりで何してんだよ、つれねーな」
無意識に鼻歌を口ずさむと、寄りかかるハンドレールがぎし、と隣で音を立てた。突然の人の気配に驚き音の方へと目を向けると、いつの間にそこにいたのか、ゾロが酒を片手に持ちながら背中をハンドレールに持たれて私と視線を交える。
「びっっ……くりしたぁ……、脅かさないでよ」
「勝手に驚いたんだろ」
少し面倒くさそうに言い返すと、豪快に喉を鳴らして酒を流していく。なんだかな。その姿をぼけっと眺めていれば、それだけでまた酔いがまわりそうだ、と視線を逸らして遠くの波に目をやった。
いつだって美味そうに酒を食らうこの男は、酔うということを知っているのだろうか。
「船長さんたちと飲んでればいーでしょ」
「お前が寂しいかと思ってきてやったんだよ」
口を衝いて出てきた言葉に、食いかかるように文句が上がる。それでも可愛くないことはとうに自覚しながらも「さみしくないもーん」と、そっぽを向いたまま子供っぽく答えてしまうのは、酔ってるせいだからか。それとも、ゾロを相手にするとどうも素直になれないせいなのか。
瞬間、気配など感じ取る隙もなく顎を掴まれるとそのまま引き寄せられる。強引すぎる動きにバランスを崩して、もつれた足を立て直そうと咄嗟にゾロの服の裾を引っ張った。
目を開いたまま重なる唇に理解が追いつかず驚きながら、至近距離で睨みつけられる表情とは裏腹に、重なった唇をねっとりと舌が犯してくる。
気に入らなさそうに瞳の奥を揺らしながら、熱の篭った唇は、言葉にしないはずの私の本音をいとも簡単に掻き出していく。
執拗にうねる舌先はいつもよりしつこくて、せっかく酔い覚ましをしていたというのに、台無しになるほど強いアルコールが唾液と混ざって溶けていく。
「……ぅ、ん……っ」
啄まれるたびに体温が上昇して、荒い鼻息がゾロの興奮の度合いを示しているようだった。なかなか途切れない口付けに、酸素を求めてもがくと鼻にかかった吐息がわずかに漏れた。
掻き消されそうな理性を指先で引き戻そうと、裾を掴んだ手に力を込めれば、強引に始まった口付けは同じように強引に終わる。
やっと離れていく視界と掴まれた顎を解放され、力の加減もわからねーのか、と少しだけ痛むそこをさすった。
「酒くさすぎ」
「うるせえ」
満足したのか、空になったジョッキ樽にまた酒を求めてゾロは宴の続くデッキへと戻っていく。
一人残されたまま脱力すれば、来た時と同じように波の音が静かに響いていた。
余計に酔ったじゃないか。火照りを沈めるまで、みんなの元へはまだ戻れそうもない。
見上げた夜空、途方もないくらい遠い星を見つめながら、深くため息をついた。