その他CP
「なんか新しいとこ増えた?」
「よりどりみどりですね」
美味しいケーキが食べたいねという話になってやって来たデパ地下。
色んなケーキ屋さんやら和菓子屋さんやらが集まっているこの場所は、優柔不断になるという贅沢が味わえる。
ケーキとは言ったけど、焼き菓子の匂いやカステラの試食販売の店員さんを見るとあれもいいなこれもいいな、と思えてきた。
人の波に飲まれそうになりながら、二人してちまちまと歩く。
「最近は背の高い人が多いから、キキさんでもはぐれたら見つけられなくなっちゃいますかね」
私達の前を通り過ぎて行ったとても背の高い女の人を見ながら、私はぼそっと呟いた。
するとキキさんはそ〜お?と言いながらこちらを振り向いて私の手を握った。
「じゃあ、握っとこか。離さんとってや?ずんちゃん」
「……えっ、あ、はい!」
突然の事でびっくりしたけど、キキさんから私の手を握ってくれたのが嬉しくて、ぎゅうっと握り返した。
あっちの方見てみよ、なんて言ってキキさんが私の手を握りながら歩くのが可愛くて、ケーキ選びに集中出来ない。
「ねぇ、ここの、美味しそうじゃない?」
ふと尋ねられてうわの空から帰ってきた私は、キキさんが指さしたショーケースを見た。
「タルトだ!すごい綺麗ですね、美味しそう」
いちごやマスカット、ブルーベリーなどのタルトがずらっと並び、ナパージュでコーティングされた果物がきらきらと輝いて、とても美味しそうだ。
果物系以外にも、チョコレートや抹茶、色んな種類があるし、シュークリームやプリンもある。
私達はすっかりその菓子たちに一目惚れしてしまい、どれにしようか?と頭を悩ませていた。
「ずんちゃん、どれにする?」
「迷います……オレンジとか桃とか色々ありますけど、チョコタルトもこってりな感じで食べ応えありそうですよね」
「せっかくなら4つぐらい買って食べ比べしよか」
「え〜!そんな贅沢な、良いんですか!」
流石に食べすぎかなとか遠慮した方がいいかなと思ったけど結局、キキさんのお言葉に甘えて4つケーキを買ってもらい、わけっこして食べ比べする事にした。
そして、そのケーキたちが入った箱をまるで爆弾が入っている鞄かのように慎重に抱えてキキさんの家に無事帰り着いたのだった。
「お茶入ったよ〜」
「ありがとうございます〜!」
アールグレイだろうか、良い香りが立ち上るティーカップが机に置かれてゆく。
ミルクをとぽとぽと注がれて、茶葉の匂いが少しマイルドになった。
ケーキの入った箱を開けて、お皿に移す。まずはいちごのタルトと、アップルパイ。甘い匂いが漂って、美味しそう。
「ずんちゃん」
席に着いたキキさんが私の方を見る。
「誕生日おめでと」
「ありがとうございます」
キキさんに微笑まれて、顔が熱くなった気がした。
「じゃ食べよっかぁ」
「いただきまーす」
フォークをパイに入れた瞬間、ぱりぱりとパイ生地のいい音がした。
口を開けて、舌に触れる瞬間にもう美味しいなと思ってしまう。りんごの甘酸っぱい味、クリームのなめらかさ、サクサクの生地。
「美味しい〜」
そう言ってキキさんの方を見るとキキさんはスマホを構えていた。
「えっ、ちょ」
「もぐもぐずんちゃん可愛い〜!良かったねぇ、美味しかったんやねぇ」
ふふふと笑いながらでれでれと言う姿はまさしく彼女の愛犬キャンディちゃんと触れ合っている時のキキさんだ。
「なんかわんこ扱いされてません?あと無闇に撮らないでください!」
「だぁって可愛いんやもんしゃーない。無闇に撮ってるわけちゃうから撮らして」
しばらくこちらにスマホが向けられたまま、恥ずかしいと思いつつ食べていると、やがてピコンと音がしてキキさんはスマホを下ろした。動画だったんですか、それ。
「キキさん、あーん」
「ん」
キキさんの口元にパイを持っていくと、可愛らしく口を開けて食べてくれた。
あ、今の動画にすれば良かった。
「うま!」
「美味しいですよね〜」
もぐもぐキキさん可愛いな、と思っているとキキさんがいちごタルトを切り分けたフォークをずい、と私の口元に差し出してきた。
「ずんちゃんも、はい、あーん」
「あー……ん……美味し〜!」
あーんされるのはちょっと恥ずかしかったけど、やっぱり美味しい。いちごがとびきり甘くて、タルトのざくざく生地も食感が楽しい。
こっちを見ているキキさんと目が合って、思わず笑みがこぼれる。
「急に笑ってどないしたん」
「いえ、その……幸せだなぁって思って。キキさんと一緒にケーキ買いに行って、分けっこして食べて……」
自分で言って小っ恥ずかしくなって、下を向く。するとキキさんがすっと手を伸ばして私の体を引き寄せたかと思うと、次の瞬間私たちは唇を重ね合わせていた。
「ん……っう、ふ……」
舌が入り込んでくる。りんごの甘酸っぱい味がまだうっすら残っていた。
「私も今すっごい幸せ」
唇を離したキキさんはそう言って、目を細めて笑った。
ああやっぱりキキさんは綺麗だなと思って、思わず手を伸ばす。
「なに、もっかいしとく?」
「……キスだけですか」
「そ〜言われたらキスだけでは済まされへんなぁ」
キキさんがそう言って、またキスをした。ケーキも美味しいけど、今はキキさんが欲しい。
誕生日だからこれぐらいわがままでもいいよね。
「よりどりみどりですね」
美味しいケーキが食べたいねという話になってやって来たデパ地下。
色んなケーキ屋さんやら和菓子屋さんやらが集まっているこの場所は、優柔不断になるという贅沢が味わえる。
ケーキとは言ったけど、焼き菓子の匂いやカステラの試食販売の店員さんを見るとあれもいいなこれもいいな、と思えてきた。
人の波に飲まれそうになりながら、二人してちまちまと歩く。
「最近は背の高い人が多いから、キキさんでもはぐれたら見つけられなくなっちゃいますかね」
私達の前を通り過ぎて行ったとても背の高い女の人を見ながら、私はぼそっと呟いた。
するとキキさんはそ〜お?と言いながらこちらを振り向いて私の手を握った。
「じゃあ、握っとこか。離さんとってや?ずんちゃん」
「……えっ、あ、はい!」
突然の事でびっくりしたけど、キキさんから私の手を握ってくれたのが嬉しくて、ぎゅうっと握り返した。
あっちの方見てみよ、なんて言ってキキさんが私の手を握りながら歩くのが可愛くて、ケーキ選びに集中出来ない。
「ねぇ、ここの、美味しそうじゃない?」
ふと尋ねられてうわの空から帰ってきた私は、キキさんが指さしたショーケースを見た。
「タルトだ!すごい綺麗ですね、美味しそう」
いちごやマスカット、ブルーベリーなどのタルトがずらっと並び、ナパージュでコーティングされた果物がきらきらと輝いて、とても美味しそうだ。
果物系以外にも、チョコレートや抹茶、色んな種類があるし、シュークリームやプリンもある。
私達はすっかりその菓子たちに一目惚れしてしまい、どれにしようか?と頭を悩ませていた。
「ずんちゃん、どれにする?」
「迷います……オレンジとか桃とか色々ありますけど、チョコタルトもこってりな感じで食べ応えありそうですよね」
「せっかくなら4つぐらい買って食べ比べしよか」
「え〜!そんな贅沢な、良いんですか!」
流石に食べすぎかなとか遠慮した方がいいかなと思ったけど結局、キキさんのお言葉に甘えて4つケーキを買ってもらい、わけっこして食べ比べする事にした。
そして、そのケーキたちが入った箱をまるで爆弾が入っている鞄かのように慎重に抱えてキキさんの家に無事帰り着いたのだった。
「お茶入ったよ〜」
「ありがとうございます〜!」
アールグレイだろうか、良い香りが立ち上るティーカップが机に置かれてゆく。
ミルクをとぽとぽと注がれて、茶葉の匂いが少しマイルドになった。
ケーキの入った箱を開けて、お皿に移す。まずはいちごのタルトと、アップルパイ。甘い匂いが漂って、美味しそう。
「ずんちゃん」
席に着いたキキさんが私の方を見る。
「誕生日おめでと」
「ありがとうございます」
キキさんに微笑まれて、顔が熱くなった気がした。
「じゃ食べよっかぁ」
「いただきまーす」
フォークをパイに入れた瞬間、ぱりぱりとパイ生地のいい音がした。
口を開けて、舌に触れる瞬間にもう美味しいなと思ってしまう。りんごの甘酸っぱい味、クリームのなめらかさ、サクサクの生地。
「美味しい〜」
そう言ってキキさんの方を見るとキキさんはスマホを構えていた。
「えっ、ちょ」
「もぐもぐずんちゃん可愛い〜!良かったねぇ、美味しかったんやねぇ」
ふふふと笑いながらでれでれと言う姿はまさしく彼女の愛犬キャンディちゃんと触れ合っている時のキキさんだ。
「なんかわんこ扱いされてません?あと無闇に撮らないでください!」
「だぁって可愛いんやもんしゃーない。無闇に撮ってるわけちゃうから撮らして」
しばらくこちらにスマホが向けられたまま、恥ずかしいと思いつつ食べていると、やがてピコンと音がしてキキさんはスマホを下ろした。動画だったんですか、それ。
「キキさん、あーん」
「ん」
キキさんの口元にパイを持っていくと、可愛らしく口を開けて食べてくれた。
あ、今の動画にすれば良かった。
「うま!」
「美味しいですよね〜」
もぐもぐキキさん可愛いな、と思っているとキキさんがいちごタルトを切り分けたフォークをずい、と私の口元に差し出してきた。
「ずんちゃんも、はい、あーん」
「あー……ん……美味し〜!」
あーんされるのはちょっと恥ずかしかったけど、やっぱり美味しい。いちごがとびきり甘くて、タルトのざくざく生地も食感が楽しい。
こっちを見ているキキさんと目が合って、思わず笑みがこぼれる。
「急に笑ってどないしたん」
「いえ、その……幸せだなぁって思って。キキさんと一緒にケーキ買いに行って、分けっこして食べて……」
自分で言って小っ恥ずかしくなって、下を向く。するとキキさんがすっと手を伸ばして私の体を引き寄せたかと思うと、次の瞬間私たちは唇を重ね合わせていた。
「ん……っう、ふ……」
舌が入り込んでくる。りんごの甘酸っぱい味がまだうっすら残っていた。
「私も今すっごい幸せ」
唇を離したキキさんはそう言って、目を細めて笑った。
ああやっぱりキキさんは綺麗だなと思って、思わず手を伸ばす。
「なに、もっかいしとく?」
「……キスだけですか」
「そ〜言われたらキスだけでは済まされへんなぁ」
キキさんがそう言って、またキスをした。ケーキも美味しいけど、今はキキさんが欲しい。
誕生日だからこれぐらいわがままでもいいよね。
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