宝石の国短編
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窓の外には銀世界が広がり、ふわふわの雪が絶え間なく落ちてはすでに積もったそれに溶け込んでいく。
音もなく質量を増していくこの白いものはなんだか心を落ち着かせてくれる。こころなしかいつもより世界が少し静かな気がするくらいだ。
まあとにかく、今年もレッドベリルの寝巻きはかわいいなあ。
「ペクト」
「選んで」
「……な、何を?」
目の前に並ぶ同じ顔。
二人でひとつのアメシストは、同じトーンでコーラスする。
「「どっちの方がかわいいの?」」
その身にまとった服はいつもの黒いものではなくて、冬眠用の寝巻きだった。
ふわふわ、もこもこ。
かわいい。
アメシストは二人とも同じものだ。同じ顔に同じ服。
だから見分ける手段は髪型しかないのだけど、それすらたまに入れ替えて遊んでいるらしい。そんなのもうどうしようもないじゃないか。
「そんなこと聞かれても……」
「遠慮しないで」
「ほんとのこと言って」
いつもよりほんの少し強い語調で畳み掛けられる。
二人とも喧嘩でもしたのだろうか。
そんなことを言われても、僕には本当の意味で二人を見分けることすら出来ないのに。
「僕はサーティ」
「僕はエイティ」
自己紹介されてしまった。
「ふ、二人とも同じくらいかわいいよ!」
「「それは駄目」」
またコーラス。
同じくらいというか同じなんだけど、これが駄目となるともう何も言えない。
適当に片方を選ぶことは出来る、でもそれじゃあ不誠実だろう。
解決策を考えつつ、時間稼ぎを兼ねてふと頭に浮かんだ疑問を投げかけてみることにした。
「どうしてそんなに選んでほしいの?」
僕達はみんな平等に美しい。
自画自賛というか、先生がそう言ってくれているのだからそうなのだ。
だからアメシストでない他の誰か二人がこう言ってきても僕は「同じくらいかわいい」に落ち着くだろう。
それはアメシストにも分かっているはずなのに。
「ペクトが好きだから」
「ペクトに認めてほしい」
ぎゅ、と服のすそを握り、二人とも頬を染め俯いて。
それはあまりにも突然の話で。
「……嘘?」
「「本当」」
同時に詰め寄られて、一歩後ろに下がる。
これは。
なんだっけ、これは。
思い出せないけど。
アメシスト。
「ごめん。気づけなくて」
せめてそれを謝るべきだろう。
こんなに魅力的な二人に好きをもらって。
きらきらとした四つの瞳に見つめられて。
それに気づけないなんて酷いこと。
それなのに。
それを聞いた目の前の彼らの表情が、ふわりと緩んだ。
「いいんだよ」
「もう分かってくれたから」
その優しい笑顔が輝く。
同じ二人は同じ気持ちで僕をその目に映しているんだ。
ぴかぴか綺麗な、これは恋心というんだった。
いつだって二人で、こんなところまで一緒で。
そんな二人が、僕も好きで。
好きだから。
「やっぱり、二人ともかわいいよ……」
「「ずるい!」」
音もなく質量を増していくこの白いものはなんだか心を落ち着かせてくれる。こころなしかいつもより世界が少し静かな気がするくらいだ。
まあとにかく、今年もレッドベリルの寝巻きはかわいいなあ。
「ペクト」
「選んで」
「……な、何を?」
目の前に並ぶ同じ顔。
二人でひとつのアメシストは、同じトーンでコーラスする。
「「どっちの方がかわいいの?」」
その身にまとった服はいつもの黒いものではなくて、冬眠用の寝巻きだった。
ふわふわ、もこもこ。
かわいい。
アメシストは二人とも同じものだ。同じ顔に同じ服。
だから見分ける手段は髪型しかないのだけど、それすらたまに入れ替えて遊んでいるらしい。そんなのもうどうしようもないじゃないか。
「そんなこと聞かれても……」
「遠慮しないで」
「ほんとのこと言って」
いつもよりほんの少し強い語調で畳み掛けられる。
二人とも喧嘩でもしたのだろうか。
そんなことを言われても、僕には本当の意味で二人を見分けることすら出来ないのに。
「僕はサーティ」
「僕はエイティ」
自己紹介されてしまった。
「ふ、二人とも同じくらいかわいいよ!」
「「それは駄目」」
またコーラス。
同じくらいというか同じなんだけど、これが駄目となるともう何も言えない。
適当に片方を選ぶことは出来る、でもそれじゃあ不誠実だろう。
解決策を考えつつ、時間稼ぎを兼ねてふと頭に浮かんだ疑問を投げかけてみることにした。
「どうしてそんなに選んでほしいの?」
僕達はみんな平等に美しい。
自画自賛というか、先生がそう言ってくれているのだからそうなのだ。
だからアメシストでない他の誰か二人がこう言ってきても僕は「同じくらいかわいい」に落ち着くだろう。
それはアメシストにも分かっているはずなのに。
「ペクトが好きだから」
「ペクトに認めてほしい」
ぎゅ、と服のすそを握り、二人とも頬を染め俯いて。
それはあまりにも突然の話で。
「……嘘?」
「「本当」」
同時に詰め寄られて、一歩後ろに下がる。
これは。
なんだっけ、これは。
思い出せないけど。
アメシスト。
「ごめん。気づけなくて」
せめてそれを謝るべきだろう。
こんなに魅力的な二人に好きをもらって。
きらきらとした四つの瞳に見つめられて。
それに気づけないなんて酷いこと。
それなのに。
それを聞いた目の前の彼らの表情が、ふわりと緩んだ。
「いいんだよ」
「もう分かってくれたから」
その優しい笑顔が輝く。
同じ二人は同じ気持ちで僕をその目に映しているんだ。
ぴかぴか綺麗な、これは恋心というんだった。
いつだって二人で、こんなところまで一緒で。
そんな二人が、僕も好きで。
好きだから。
「やっぱり、二人ともかわいいよ……」
「「ずるい!」」
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