宝石の国短編
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「フォス」
歩く。
背の高い草が地面を覆う、終わりなんてなさそうにすら見える草原を、一歩ずつ歩いて探す。
つい先程まで透き通るように青かった空は茜色に染まり、日中の強い日差しもいくらか柔らかい。
少し視線をずらすと遠くの空が暗くなってきている。
「フォス!」
もうみんな学校にいるのに、彼だけが現れない。きっとどこかで昼寝でもしているのだろう。
そんな子だから、僕は今こうして探しに出ている。
「あ」
風に揺れるは薄荷色。
うつくしい宝石。
その頭が揺れて、目が見開かれる。
ぼんやりとした声色で。
「……ペクト」
「フォスフォフィライト。もう夕方だよ」
少し怖い顔をしてやると、彼は「う」と呻いて立ち上がった。眠そうではあるがどこか欠けているということは無さそうだ。きっと普通に歩けるだろう。先に踵を返して学校へと向かう。
「ペクト」
背後から彼の声がする。
「ペクト!」
「何?」
歩みを止めて振り返ると思いのほかすぐ近くに、彼のきらめく瞳があった。僕の色が映り込んで、普段よりも複雑な色あいをつくっている。
それは何度かせわしなく瞬くと、僕の瞳をじっと見つめた。
ふいにその顔が歪む。唇が震える。
「夢を、見たんだ」
「夢を見たんだよ」
風に揺れるは宵の色。
うつくしい宝石。
遠い昔に失われたはずの笑顔。
輝き始めた一番星のように片目だけがほのかに明るい。
その手が僕に差し伸べられる。
顔も目も手も足も変わってしまった彼は、彼ではない金色のものを僕に差し出す。
「君がここにいない夢」
フォスフォフィライト。
彼はこんな顔をするものだったか。
歩く。
背の高い草が地面を覆う、終わりなんてなさそうにすら見える草原を、一歩ずつ歩いて探す。
つい先程まで透き通るように青かった空は茜色に染まり、日中の強い日差しもいくらか柔らかい。
少し視線をずらすと遠くの空が暗くなってきている。
「フォス!」
もうみんな学校にいるのに、彼だけが現れない。きっとどこかで昼寝でもしているのだろう。
そんな子だから、僕は今こうして探しに出ている。
「あ」
風に揺れるは薄荷色。
うつくしい宝石。
その頭が揺れて、目が見開かれる。
ぼんやりとした声色で。
「……ペクト」
「フォスフォフィライト。もう夕方だよ」
少し怖い顔をしてやると、彼は「う」と呻いて立ち上がった。眠そうではあるがどこか欠けているということは無さそうだ。きっと普通に歩けるだろう。先に踵を返して学校へと向かう。
「ペクト」
背後から彼の声がする。
「ペクト!」
「何?」
歩みを止めて振り返ると思いのほかすぐ近くに、彼のきらめく瞳があった。僕の色が映り込んで、普段よりも複雑な色あいをつくっている。
それは何度かせわしなく瞬くと、僕の瞳をじっと見つめた。
ふいにその顔が歪む。唇が震える。
「夢を、見たんだ」
「夢を見たんだよ」
風に揺れるは宵の色。
うつくしい宝石。
遠い昔に失われたはずの笑顔。
輝き始めた一番星のように片目だけがほのかに明るい。
その手が僕に差し伸べられる。
顔も目も手も足も変わってしまった彼は、彼ではない金色のものを僕に差し出す。
「君がここにいない夢」
フォスフォフィライト。
彼はこんな顔をするものだったか。
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