第七章
夢小説設定
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食材を積み終えたので、出発しようとカプセルに乗り込む仲間たち。しかしなつみは悩んでいて、外にいたまま。
「うーん」
「どしたの?」
「どうやって燬鷇王さんとこまで飛ぶか、やり方忘れちゃったんだよね」
「は⁉︎」
「なんか言ってた気がするんだけど」
「どうすんだよ。降りて来てもらえねぇんだろ?」
「そー」
んーと見上げて考える。
「んー」
((((((んー…?))))))
「よし❗️」
おててポンッ。嫌な予感。
「力技でいこ」
「おいぃ‼️💦」
「何する気だよ⁉️」
斬魄刀を抜いて、左手で握る。カプセルの下は脚が4本生えており、地面から少し本体が浮いた状態になっている。その地面とカプセルの隙間に、しゃがみながら入っていくなつみ。
「ふいふい」
扉は開けたままで、なつみの様子を見ていたが。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないよー」
「アカンのかい‼️💦」
「重いんだって‼️」
背中で押し上げようとしているらしい。
「ちょっと、オラに力を」
「読んだことも見たことも無ぇのに、それを言うな。手ぇ出せ」
「ちょい、貰いながら考えるわ」
カプセルの下からなつみの腕が伸びてきた。それをまずは尾田が握ってやり、霊力を送っていく。
「ふむふむふむ…」
代わりばんこに霊力を貰い、チャージする。
「ムッちゃん、燬鷇王さんにそろそろ行くって伝えてきて」
「どうするつもりだ」
「任せて。力の使い方、思い出したから。藍染隊長と最近会ってないから、忘れてたんだよね」
「わかった」
ムッちゃんは飛び立った。
「おーい!そろそろ良いぞ。上げるぜ‼️」
「大丈夫かよ💧」
「ドア閉めろー。シートベルト締めろー。おしりの穴もキュッとして良いぜ」
「アホなことを」
「……」
アヤが心配そうに見つめる中、無茶な作戦が決行される。
「伝えた」
「OK‼️」
持っていた斬魄刀を置き、クラウチングスタートの体勢で集中する。
車内にて。
「んー……」
「何?」
「それさぁ、何のボタンだろう」
クーちゃんが、上に尖った細長い棒の下から炎が出ているようなマークが描かれたボタンを指差した。
「ミサイル?」
「危ねぇもん積んでんな」
「いや、違うでしょ。たぶんさ」
そこで、カプセルの下からドカッと持ち上げられた。なつみが縛道でドーム状の壁を作り、空間を高さ方向に広げたのだ。さっと地面を蹴り上げ、逆さになり、下から上へダンッと身体を伸ばした。鬼道を纏ったなつみは、効率よく力を伝え、タイミングと場所をうまく捉えたため、更にカプセルの高度を上げさせた。その下で斬魄刀を握り直し、地面に突き刺す。再びの始解。
「叶え、夢現天道子」
言葉を載せる方が発揮できるのだが、口を動かす時間は無い。解号と同時に、願いを脳内で念じる。
震える砂と土で熱を帯びる大地。霊圧の波も大気を震わせ、カプセル真下、ドーム内のみ気温が急上昇した。その壁下半分が消え去ると、冷えた空気と暖まった空気が一気にぶつかった。その一瞬で、上昇気流が発生する。
だが、そんな力ではまだ足りない。
「もう一発、かましたるぜ〜」
グググッとしゃがみ込んでバネの力を蓄える。落ちてくる前に、今の推力に下から加えてやるのだ。
「ッぴょーーーーーん‼️‼️」
勢いよく跳んだなつみは、バレーボールよろしく力一杯のトスを上げた。
「ィヤッホーイ😆」
その後を、無駄にバタ足してもっと押していく。
とその時、カプセルの4本の脚の先がピカッと光った。
「む?」
刹那、炎が真下に向かって噴射された。
「ぁわあッ‼️💦」
ドームのバリアは残っていたため、それと合わせてなつみは下へ落ちていく。
「わぁ〜〜〜」
「やっぱりジェット機能付いてんじゃん!これで上まで行けるよ」
中で例のボタンを押したらしい。
「おい、木之本落ちてったぞ💦」
「大丈夫でしょ。飛べるから」
その言葉通り、「わ〜」っと落下したなつみは地上50cmのところでぷぉんっと止まって、ベタッと着地。
「いってて〜」
「なつみちゃん!大丈夫⁉︎みんな行っちゃったよ。どうやって追いかけるの」
アヤがなつみの背中についた砂を払ってあげる。
「大丈夫大丈夫。ひとりなら、ぴょんぴょん行けるから」
なつみは立ち上がって、おしりをパンパン払った。
「じゃあ、また遊びに来ますね!バイバーイ😆」
アヤに手を振ってから斬魄刀を拾い、ザッと跳んだ。
「バイバイ…。大丈夫かな…」
瞬歩から、瞬間移動に切り替えて、カプセルの高さまで上がったなつみ。扉が開いておらず、中に入れない。
「開けろー‼️‼️」
その声で、まだ意識のある李空が扉を開けた。全開の半分ほどで幅は充分。
「あーとぉ!」
感謝を伝えつつ、無駄に転がり込む。すぐに扉は閉められ、なつみは起き上がった。
「言ってよ」
「お前がな‼️‼️」
斬魄刀をスタンドに置き、着席して、シートベルトを締める。
「でも今ので良かったかもよ。ジェットの火が変に飛んで、畑が燃えてたかもしれないから」
「結果おーら〜い」
「だとしてもだ。ちったぁ反省しろよ」
「なんか書くものないかな」
何がしたいのか、なつみはキョロキョロと見回してみて、取手を見つけた。それを引くと、パカッと蓋が開いて、収納スペースが現れた。その中に本とペンが。
「あった〜。ラッキー」
ペラッと開くと、ノートのページがあり、真っ白だった。
「ふんふん♪」
そこに何やら書き出して、書き終わるとペリペリとちぎった。
「ムッちゃん、アヤさんにこれ持ってって」
「了解」
おつかいに出るムッちゃん。
「もう燬鷇王さんとこ着くかな」
空を見上げるアヤのもとに、ムッちゃんがやって来た。
「やぁ、なつみは無事に乗り込んだぞ。これを預かった」
「えっと、ムッくんだっけ。どうもありがとう」
ムッちゃんから手紙を受け取る。
『おやさいいっぱいありがとう アヤさんだいすき!』
「ふふっ😊」
「わざわざな」
「なつみちゃんらしいよ。確かに、受け取りました。ありがとう、ムッくん。早くなつみちゃんのとこ戻ってあげて」
「ああ」
ムッちゃんはアヤの顔の前で止まった。ニコッと笑う。
「これからも、なつみと仲良くしてやってくれ」
「もちろん」
アヤも微笑んだ。
「ありがとう」
瞬きの間に、ムッちゃんは消えていた。
「ひよこ笑うの、かわいい///」
ムッちゃんがお留守の間。
「なぁ、その本って」
「え?思い出書くノートじゃないの?」
ケイジに指摘されて、なつみはパラーッと最初からページをめくってみた。
「取説じゃねぇーか、アホ‼️💢」
尾田からチョップを食らった。その弱った隙になつみから、このカプセルの取り扱い説明書を取り上げるケイジ。
「全部ちゃんと書いてある」
「信用されてねぇな、お前」
「うるせー!💦」
そんなことでやいやいしていると、ジェットからの振動が止まったような。
「ん?」
ちんさむ。
「ガス欠じゃね?」
「ぉ落ぁちるぁーーー‼️‼️」
尾田の絶叫が響き渡ると、またフリーフォールが始まる。
かと思われたが、ザッと燬鷇王がカプセルを拾い上げた。飛んでいたそのままの流れで来たため、彼らはおえおえしずに済んだのだった。これは燬鷇王からの気遣いである。
「ちょっと遅かったんじゃないの〜?わざとっすね〜😏」
「良いから、角度変えろってぇ‼️」
「ほーい」
ガチャコンッ
「っとまァ、ざっと操縦の説明をしたが、わかったかネ?」
「はい!」
疑心の視線。
「これに今話したことをまとめておいたから、忘れてしまったときは、これで確認してくれ給え」
「なんだ。がんばって覚えてたのに、忘れちゃっても良いってことですね!あーんしん♪」
「そういうことではないヨ💧」
そこは流魂街の端から瀞霊廷のちょうど中間地点にあたる地区。自然が豊かで、高い山が並んでいる。人里は、その盆地にある。
着地点は、燬鷇王が降りられそうなほど広い、山にそびえた岩壁の上。
ドゴン
カプセルを丁寧に置いた。
「おー。今回普通じゃん」
「辺りに人がいそうにないからね」
「ここでお昼食べようよ!お腹空いた」
「じゃあ、あの辺座るか。木陰ができてるから」
みんなが降りて、敷物やお弁当を広げる最中、なつみは何か手に持って飛んでいった。
「ちょっと行ってくるー!」
「って、どこにだよ!」
「これ!」かざしたのはランタンだ。「燬鷇王さんから火を貰ってくるの!花火で使おー!」
飛んでいってしまった。
「火なんて、自分で起こせば良いじゃん」
「特別な思い出にしたいんだよ。好きにさせてやろう」
燬鷇王は空でなつみを待っていた。
「すいません!火を分けてもらえますか」
お願いされたので、口の中で唾液を溜めるような動きをする燬鷇王。そして。
プッ🔥
火種を吐き出してくれた。
「ムッちゃん!」
なつみはランタンをムッちゃんに渡し、彼に火種を拾ってもらう。
「よっと」
「ナイスキャッチ👍」
蓋を閉めて、なつみに返してやった。
「ありがとう」
なつみにオイルは難しいので、ロウソク式なのだが、ガラスの中に灯る火は見たこともないような不思議な色で強く輝いていた。
「うわ〜✨」
見惚れてしまう。
「ありがとうございます!燬鷇王さん!また明日、ここにお迎え来ていただけますか?」
ギャァ!
「了解です!では、また明日」
お辞儀をして挨拶を済ませると、なつみは一瞬でみんなのところに帰った。
「見てみてー!綺麗だよー!焚き火しよー!」
「そう言うと思った。枝拾ってきたぜ」
「ありがとー!」
陽が高く上った時刻といえど、寒い季節に変わりはなく、焚き火を囲むと暖かくなった。
「たくあんおいしー」
パリパリもぐもぐむふむふ言いながら、なつみはおにぎりとたくあんを味わった。そして忘れていたことを思い出す。
「も!そうだ!レン、ギター弾いて!」
「は?今?」
「うん!今だよー。夜なんて、寒いし暗いし、できんて」
そう言って、急いでカプセルへ行き、鞄を掻き分け、ギターケースを取り出した。
「だけど、食ってからで良いだろ?」
追ってきたレンが言う。
「えー。BGM欲しいじゃん。食いながら弾け」
「はぁ?」
「花見ん時みたいに、食わしてやるから」
ケースをレンにドスッと押し付け、背中を押して、来た道を戻っていく。
「うるさくして、クマでも来たらどうすんだよー。飯食われるぞ」
「クマさんは冬眠のシーズンですぅ。いませーん」
「あーそーですか」
「そーですよー」
丁度いい岩に腰掛けて、レンは爪弾き始めた。
「何聴きたい?」
「BUMPの『スノースマイル』。冬やし」
「こな〜⤴︎ゆき〜⤵︎じゃねぇの?」
「ABBAでも良いぜ?」
「ワムだろ、そこ」
「はい、コード譜」
「あいよー」
レンがギターを弾き、なつみが歌う。なつみが差し出すおにぎりを、手を止めることなく自然な流れのまま食べるレン。あったかいお茶が入った湯呑みを両手で持って、その音楽に浸ると、どうしてもなつみとのお散歩を夢見てしまう他5人。BUMP OF CHICKEN『スノースマイル』の一節。
「二人で歩くには 少しコツが要る
君の歩幅は狭い
出来るだけ時間をかけて 景色を見ておくよ
振り返る君の居る景色を」
冬ではあるが、雪が降るほど寒くはないこの地域。山の木々は深い緑の葉をカサカサと揺すっている。
「次は?」
「ミヤジー‼️」
「えー、ミヤジは夜でしょ」
「じゃあ岡村ちゃん。『だいすき』❗️」
「俺さぁ、『ビバナミダ』好き」
「ブォオ‼️」
「なぁ!お前もそう思うだろぉ!ってクマァッ‼️⁉️」
レンの意見に賛同したと思われた者は、クマだった。
「うぉお💦さ、3頭もいる💦」
大中小と。
「ゴルディロックス?(笑)」
眠そうだが、おいしそうな匂いと楽しそうな音楽に誘われたのかもしれない。
「クマは冬眠するって」
「冬眠じゃないよ。冬ごもりだよ」
クマがしゃべった。
「びっくりした。お前かよ」
「へへ。心が通えば争いは起きないからね」
なつみは始解を発動し、みんながクマたちとお話しできるようにしていた。
「ねぇねぇ、なんかちょうだいよ」
大きいクマが、後ろから尾田に抱きついてお願いしていた。
「爪怖ぇって💦」
「この近くにおうちがあるの?」
「うん。寝てたけど、気になったから来た」
「そっかぁ。なんかごめんね」
中位のクマは、クーちゃんにモフモフされていた。
「あったかーい」
「これなに?」
小さなクマはギターに興味津々。
「弦に触ってみ?ジャラーンって」
レンの動きをマネして、小グマは上から下に弦に触れてみた。
「わぁ!鳴った!鳴った!」
ジャンジャンジャン♪
「君たち、火は怖くないの?」
焚き火を指して、ハルがクマたちに尋ねた。
「それ?怖くないよ。人の火じゃないもんね」
「?そうなんだ」
タッタカタッタッタ〜となつみはカプセルに戻って、自分の鞄を肩からかけ、また駆け足で帰ってきた。
「お3人さん。これで良かったら、受け取って」
そう言って鞄から取り出したのは、アヤからもらったりんごだった。
大きいクマから、中位のクマに、それから小さなクマへと、ひとつずつ渡してあげた。
「いいの?」
「良いよ。って、勝手にごめん。お前ら食べたかった?」
一応、みんなに確認を取る。
「俺らは帰ってアヤさんとこ貰いに行けば良いんだ。構わなねぇよ」
李空の意見にみんな頷いていた。
それならばありがたくと、クマたちはりんごを頬張った。シャリシャリ。
「おいしい🍎」
モコモコのお友達も増えて、賑やかなピクニックになった。
「ちょっと3人にききたいことがあるんだけど」
鞄から畳まれた紙を取り出すなつみ。広げると、それは地図だった。
「ぼくら、これからあそこの里に下りて行くんだ。この赤い線の道を通ると良いって言われたんだけど、広い道になってるのかな?あれに乗って行くつもりなの」
「は⁉︎歩きじゃねぇのか!」
「野菜積んでるんだから、無理に決まってるだろ」
「そっか」
「でも、車輪付いてないのに走れるの?」
「…あ〜、だからアイツの特等席」
クマたちは地図を眺める。
「これでも良いけど、遠回りだよ」
「他に行き方あるの?」
その問いに、毛むくじゃらのまん丸なお顔3つがくっついて答える。
「あるよ!」
「すっごい近道!」
「連れてってあげる!」
「ほんと❓ありがとう❗️よろしくね😆」
((((((何だろう。この胸騒ぎ💧))))))
カプセルに荷物を戻し、各々着席すると、もちろんだが満員だ。
「どこに座る?尾田の膝上?」
「骨砕けるわ💢」
「ブォフッ😌」
「待て待て❗️マジで座ろうとすんな💦」
「しかもいちばん大っきいコ」
「尾田、気に入られたね」
クマたちがひとしきり内装を見たり、ボタンやレバーに触ろうとしたり、尾田に座ろうとしたりした後、結局外に出て、それを追いかけてなつみも出た。
「里はあっち」
「うん。でも道はあっちだよね。あとをついてくから、先を歩いてくれる?」
「しないよ」
「何で?案内してくれるんじゃ…」
「連れてくの!乗って、なつみちゃん!」
中位のクマがなつみの背中を押して、カプセルに戻らせた。
「で、でも💦」
「みんなにしっかり掴まるように言って」
大きいクマが扉を閉めた。
「どうするんだよ。アイツら本当に道案内してくれるのか?」
「わかんない。つれてくとは言ってたけど、とにかくしっかり掴まってって」
「なつみ、力を解放しろ」
「ムッちゃん。でもどうやって」
「予定と同じで良い。ただし、集中しろよ。アイツらは少々手荒なんだ」
「ムッちゃん、会ったことあるの?」
「構えろ🐥」
なつみは言われるがまま斬魄刀を抜いて、解号を唱える。
「叶え、夢現天道子!このカプセルに命を!」
下を支えている4本の脚が屈伸運動をする。走る準備だろうか。その変化を確認すると、クマたちも行動に移す。
フロントガラスに向かって手を振る。何かの合図だ。
「ついてくよ。3人の動きをよく見てね」
と言ったが、クマたちが進んだ方向にはついていきたくなくなった。
「嘘だろ⁉️飛び降りたぞ⁉️」
驚いたが、確かにそちら方面に目的地があるため、近道ではある。しかし、それは岩壁のその先だ。彼らは崖から飛び降りたのだ。
「案内は…?」
なつみたちは中にいるため、クマたちの姿を見ることはできない。取り残されたよう。
すると次の瞬間、地面が大きく盛り上がった。大地がスライムのように柔らかくなったのだ。その波に乗せられて、カプセルは崖の方へ導かれる。ゆっくりと。
「アイツらやっぱり、クマじゃねぇよ」
燬鷇王の霊圧に平気でいられる者が、瀞霊廷の外にいるのはごく稀だ。ましてやそれが、冬ごもりを中断したてのクマだなんて。
「ヤバいかもォォォォオッ‼️💦」
珍しく、この手のことでなつみが叫んだ。マジのヤツである。暇つぶしの遊び半分で、彼らの命を狙う極悪人に騙されたのかもしれないという推測だ。
滑るように、動く歩道にいるように、じわじわと縁へ進んでいく。
「拒否権は無いの?」
「あの人たちの親切だしね」
「ほら、このスピードで行くんじゃねぇか?」
「だったら快適だな」
「おお。何が起きてんのか理解不能だが、ありがたい話だな」
「んだな」
「んだんだ」
疑っても、このカプセルを捨てて降りるわけにもいかないので、とりあえずの現実逃避。まぁ、なるようになるっしょ、と。
崖の端まで来て止まった。みんなの息も止まりそう。そんな彼らの前に、変わった光の反射が起きた。小さなクマの笑顔。
「おいしいりんごありがとう❗️お礼してあげるね❗️」
下が再び動き始めて、カプセルは傾いていく。それで見えた、ヤバい景色。崖の傾斜は大きく、下降するには「落ちる」の表現が合う所だが、盛り上がった分、周りが下がるのか、不思議な光景が作り上げられていた。ここを下りますよと言わんばかりのトンネル状の滑り台が伸びていたのだ。その先は木々が生い茂り、直接見えはしないが、目的地である神社が確かにあると思われる。土は丸く凹んで、木々は通り道を避けるように反ってチューブを形作っていた。
「いっくよ〜❗️」
大地が一段とグワッと上がり、滑走が始まる。気付いたらトップスピードだった。今思えば、燬鷇王は本当に安全に配慮して飛んでくれていたんだとわかる。
ギャァァァ……
出ようとした絶叫が自然と身体に戻る。うねってぐねって曲がって回って何が何だか。なつみに意思をもらったカプセルは、どうにか揺れを抑えようと、あちこちの関節を曲げ伸ばししてくれているが、間に合ったとて、足りないものは足りなかった。
「アカァアアアアアーーーンッ‼️‼️」
うわぁぁぁぁぁあ〜〜〜〜〜
砂煙が辺りを包んだがピューッと消え去り、自然があり得ない形に変形したトンネルも無くなっていた。何も無かったように。化かされたんだろうか。安心して放心状態になれたため、カプセルの気が緩んでバンッと扉が開いた。なつみらもガタガタと震えて動けなかった。
「おーい!着いたんだね!いらっしゃい、みんな!なつみちゃん!」
ウキウキとした足取りで、ある男がこちらに向かってきた。中が覗けるほどに到着。
「よく来たね!」
ギギギギ…とそちらに顔を向ける7人。
「「「「「「コンニチハ…」」」」」」
「タダイマ、オトーサン…」
期待していたのとは、違う様子だったらしい。
「大丈夫…?💧」
もう奇怪な連中や道連れは去ったとして、カプセルから降りることにした。ここはなつみの最初の家。今回の目的地である木之本神社だ。
「怖かったぁ…」
野菜の箱を持つ者の鞄は、他の者が代わりに持ち、「オトーサン」と呼ばれた恐らくここの神主である男について、大きな社務所へぞろぞろと行く。
「ここに来るまでに、何かあったの?」
「3匹のクマに…」
「クマ?」
「あの山の頂上から、ここまで降ろしてやるっていって、めちゃくちゃな目に遭って」
「何も変なこと無かったと思うけどなぁ…、…あ!」
「何すか」
「それ、あの山の主の仕業かも」
「「「「「「「ヌシ?」」」」」」」
「うん。山にはそれぞれ主がいるものなんだけど、あそこは3匹のクマに昔から守られているんだ。言い伝えだけどね。3匹の本当の姿はクマではなく、大地の精霊、草木の精霊、風の精霊らしいんだ。なつみちゃんが遊びに来てくれたから、嬉しくて逢いに来てくれたのかもしれないよ?😄」
クスクスクス
笑い声が耳の遠くで響いてきたため、例の山へズバッと振り返る7人。
「山から来たなら、帰りは登らなきゃならないんだよね?そっちの方が大変だろうから、また連れてってもらえるように、お願いしといたら?(笑)」
「丁重にお断りします‼️‼️」
エ〜?😙
ズバッと振り返る。
「命あって何よりだ。礼はしておこう」
さすがオカン。ケイジに倣って、みんなも荷物を置いて、山に向かって2礼2拍手。
「時短になりました。ありがとうございました」
「ありがとうございましたぁ」
1礼。
「ふふっ、みんな良い子だね😊」
「うーん」
「どしたの?」
「どうやって燬鷇王さんとこまで飛ぶか、やり方忘れちゃったんだよね」
「は⁉︎」
「なんか言ってた気がするんだけど」
「どうすんだよ。降りて来てもらえねぇんだろ?」
「そー」
んーと見上げて考える。
「んー」
((((((んー…?))))))
「よし❗️」
おててポンッ。嫌な予感。
「力技でいこ」
「おいぃ‼️💦」
「何する気だよ⁉️」
斬魄刀を抜いて、左手で握る。カプセルの下は脚が4本生えており、地面から少し本体が浮いた状態になっている。その地面とカプセルの隙間に、しゃがみながら入っていくなつみ。
「ふいふい」
扉は開けたままで、なつみの様子を見ていたが。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないよー」
「アカンのかい‼️💦」
「重いんだって‼️」
背中で押し上げようとしているらしい。
「ちょっと、オラに力を」
「読んだことも見たことも無ぇのに、それを言うな。手ぇ出せ」
「ちょい、貰いながら考えるわ」
カプセルの下からなつみの腕が伸びてきた。それをまずは尾田が握ってやり、霊力を送っていく。
「ふむふむふむ…」
代わりばんこに霊力を貰い、チャージする。
「ムッちゃん、燬鷇王さんにそろそろ行くって伝えてきて」
「どうするつもりだ」
「任せて。力の使い方、思い出したから。藍染隊長と最近会ってないから、忘れてたんだよね」
「わかった」
ムッちゃんは飛び立った。
「おーい!そろそろ良いぞ。上げるぜ‼️」
「大丈夫かよ💧」
「ドア閉めろー。シートベルト締めろー。おしりの穴もキュッとして良いぜ」
「アホなことを」
「……」
アヤが心配そうに見つめる中、無茶な作戦が決行される。
「伝えた」
「OK‼️」
持っていた斬魄刀を置き、クラウチングスタートの体勢で集中する。
車内にて。
「んー……」
「何?」
「それさぁ、何のボタンだろう」
クーちゃんが、上に尖った細長い棒の下から炎が出ているようなマークが描かれたボタンを指差した。
「ミサイル?」
「危ねぇもん積んでんな」
「いや、違うでしょ。たぶんさ」
そこで、カプセルの下からドカッと持ち上げられた。なつみが縛道でドーム状の壁を作り、空間を高さ方向に広げたのだ。さっと地面を蹴り上げ、逆さになり、下から上へダンッと身体を伸ばした。鬼道を纏ったなつみは、効率よく力を伝え、タイミングと場所をうまく捉えたため、更にカプセルの高度を上げさせた。その下で斬魄刀を握り直し、地面に突き刺す。再びの始解。
「叶え、夢現天道子」
言葉を載せる方が発揮できるのだが、口を動かす時間は無い。解号と同時に、願いを脳内で念じる。
震える砂と土で熱を帯びる大地。霊圧の波も大気を震わせ、カプセル真下、ドーム内のみ気温が急上昇した。その壁下半分が消え去ると、冷えた空気と暖まった空気が一気にぶつかった。その一瞬で、上昇気流が発生する。
だが、そんな力ではまだ足りない。
「もう一発、かましたるぜ〜」
グググッとしゃがみ込んでバネの力を蓄える。落ちてくる前に、今の推力に下から加えてやるのだ。
「ッぴょーーーーーん‼️‼️」
勢いよく跳んだなつみは、バレーボールよろしく力一杯のトスを上げた。
「ィヤッホーイ😆」
その後を、無駄にバタ足してもっと押していく。
とその時、カプセルの4本の脚の先がピカッと光った。
「む?」
刹那、炎が真下に向かって噴射された。
「ぁわあッ‼️💦」
ドームのバリアは残っていたため、それと合わせてなつみは下へ落ちていく。
「わぁ〜〜〜」
「やっぱりジェット機能付いてんじゃん!これで上まで行けるよ」
中で例のボタンを押したらしい。
「おい、木之本落ちてったぞ💦」
「大丈夫でしょ。飛べるから」
その言葉通り、「わ〜」っと落下したなつみは地上50cmのところでぷぉんっと止まって、ベタッと着地。
「いってて〜」
「なつみちゃん!大丈夫⁉︎みんな行っちゃったよ。どうやって追いかけるの」
アヤがなつみの背中についた砂を払ってあげる。
「大丈夫大丈夫。ひとりなら、ぴょんぴょん行けるから」
なつみは立ち上がって、おしりをパンパン払った。
「じゃあ、また遊びに来ますね!バイバーイ😆」
アヤに手を振ってから斬魄刀を拾い、ザッと跳んだ。
「バイバイ…。大丈夫かな…」
瞬歩から、瞬間移動に切り替えて、カプセルの高さまで上がったなつみ。扉が開いておらず、中に入れない。
「開けろー‼️‼️」
その声で、まだ意識のある李空が扉を開けた。全開の半分ほどで幅は充分。
「あーとぉ!」
感謝を伝えつつ、無駄に転がり込む。すぐに扉は閉められ、なつみは起き上がった。
「言ってよ」
「お前がな‼️‼️」
斬魄刀をスタンドに置き、着席して、シートベルトを締める。
「でも今ので良かったかもよ。ジェットの火が変に飛んで、畑が燃えてたかもしれないから」
「結果おーら〜い」
「だとしてもだ。ちったぁ反省しろよ」
「なんか書くものないかな」
何がしたいのか、なつみはキョロキョロと見回してみて、取手を見つけた。それを引くと、パカッと蓋が開いて、収納スペースが現れた。その中に本とペンが。
「あった〜。ラッキー」
ペラッと開くと、ノートのページがあり、真っ白だった。
「ふんふん♪」
そこに何やら書き出して、書き終わるとペリペリとちぎった。
「ムッちゃん、アヤさんにこれ持ってって」
「了解」
おつかいに出るムッちゃん。
「もう燬鷇王さんとこ着くかな」
空を見上げるアヤのもとに、ムッちゃんがやって来た。
「やぁ、なつみは無事に乗り込んだぞ。これを預かった」
「えっと、ムッくんだっけ。どうもありがとう」
ムッちゃんから手紙を受け取る。
『おやさいいっぱいありがとう アヤさんだいすき!』
「ふふっ😊」
「わざわざな」
「なつみちゃんらしいよ。確かに、受け取りました。ありがとう、ムッくん。早くなつみちゃんのとこ戻ってあげて」
「ああ」
ムッちゃんはアヤの顔の前で止まった。ニコッと笑う。
「これからも、なつみと仲良くしてやってくれ」
「もちろん」
アヤも微笑んだ。
「ありがとう」
瞬きの間に、ムッちゃんは消えていた。
「ひよこ笑うの、かわいい///」
ムッちゃんがお留守の間。
「なぁ、その本って」
「え?思い出書くノートじゃないの?」
ケイジに指摘されて、なつみはパラーッと最初からページをめくってみた。
「取説じゃねぇーか、アホ‼️💢」
尾田からチョップを食らった。その弱った隙になつみから、このカプセルの取り扱い説明書を取り上げるケイジ。
「全部ちゃんと書いてある」
「信用されてねぇな、お前」
「うるせー!💦」
そんなことでやいやいしていると、ジェットからの振動が止まったような。
「ん?」
ちんさむ。
「ガス欠じゃね?」
「ぉ落ぁちるぁーーー‼️‼️」
尾田の絶叫が響き渡ると、またフリーフォールが始まる。
かと思われたが、ザッと燬鷇王がカプセルを拾い上げた。飛んでいたそのままの流れで来たため、彼らはおえおえしずに済んだのだった。これは燬鷇王からの気遣いである。
「ちょっと遅かったんじゃないの〜?わざとっすね〜😏」
「良いから、角度変えろってぇ‼️」
「ほーい」
ガチャコンッ
「っとまァ、ざっと操縦の説明をしたが、わかったかネ?」
「はい!」
疑心の視線。
「これに今話したことをまとめておいたから、忘れてしまったときは、これで確認してくれ給え」
「なんだ。がんばって覚えてたのに、忘れちゃっても良いってことですね!あーんしん♪」
「そういうことではないヨ💧」
そこは流魂街の端から瀞霊廷のちょうど中間地点にあたる地区。自然が豊かで、高い山が並んでいる。人里は、その盆地にある。
着地点は、燬鷇王が降りられそうなほど広い、山にそびえた岩壁の上。
ドゴン
カプセルを丁寧に置いた。
「おー。今回普通じゃん」
「辺りに人がいそうにないからね」
「ここでお昼食べようよ!お腹空いた」
「じゃあ、あの辺座るか。木陰ができてるから」
みんなが降りて、敷物やお弁当を広げる最中、なつみは何か手に持って飛んでいった。
「ちょっと行ってくるー!」
「って、どこにだよ!」
「これ!」かざしたのはランタンだ。「燬鷇王さんから火を貰ってくるの!花火で使おー!」
飛んでいってしまった。
「火なんて、自分で起こせば良いじゃん」
「特別な思い出にしたいんだよ。好きにさせてやろう」
燬鷇王は空でなつみを待っていた。
「すいません!火を分けてもらえますか」
お願いされたので、口の中で唾液を溜めるような動きをする燬鷇王。そして。
プッ🔥
火種を吐き出してくれた。
「ムッちゃん!」
なつみはランタンをムッちゃんに渡し、彼に火種を拾ってもらう。
「よっと」
「ナイスキャッチ👍」
蓋を閉めて、なつみに返してやった。
「ありがとう」
なつみにオイルは難しいので、ロウソク式なのだが、ガラスの中に灯る火は見たこともないような不思議な色で強く輝いていた。
「うわ〜✨」
見惚れてしまう。
「ありがとうございます!燬鷇王さん!また明日、ここにお迎え来ていただけますか?」
ギャァ!
「了解です!では、また明日」
お辞儀をして挨拶を済ませると、なつみは一瞬でみんなのところに帰った。
「見てみてー!綺麗だよー!焚き火しよー!」
「そう言うと思った。枝拾ってきたぜ」
「ありがとー!」
陽が高く上った時刻といえど、寒い季節に変わりはなく、焚き火を囲むと暖かくなった。
「たくあんおいしー」
パリパリもぐもぐむふむふ言いながら、なつみはおにぎりとたくあんを味わった。そして忘れていたことを思い出す。
「も!そうだ!レン、ギター弾いて!」
「は?今?」
「うん!今だよー。夜なんて、寒いし暗いし、できんて」
そう言って、急いでカプセルへ行き、鞄を掻き分け、ギターケースを取り出した。
「だけど、食ってからで良いだろ?」
追ってきたレンが言う。
「えー。BGM欲しいじゃん。食いながら弾け」
「はぁ?」
「花見ん時みたいに、食わしてやるから」
ケースをレンにドスッと押し付け、背中を押して、来た道を戻っていく。
「うるさくして、クマでも来たらどうすんだよー。飯食われるぞ」
「クマさんは冬眠のシーズンですぅ。いませーん」
「あーそーですか」
「そーですよー」
丁度いい岩に腰掛けて、レンは爪弾き始めた。
「何聴きたい?」
「BUMPの『スノースマイル』。冬やし」
「こな〜⤴︎ゆき〜⤵︎じゃねぇの?」
「ABBAでも良いぜ?」
「ワムだろ、そこ」
「はい、コード譜」
「あいよー」
レンがギターを弾き、なつみが歌う。なつみが差し出すおにぎりを、手を止めることなく自然な流れのまま食べるレン。あったかいお茶が入った湯呑みを両手で持って、その音楽に浸ると、どうしてもなつみとのお散歩を夢見てしまう他5人。BUMP OF CHICKEN『スノースマイル』の一節。
「二人で歩くには 少しコツが要る
君の歩幅は狭い
出来るだけ時間をかけて 景色を見ておくよ
振り返る君の居る景色を」
冬ではあるが、雪が降るほど寒くはないこの地域。山の木々は深い緑の葉をカサカサと揺すっている。
「次は?」
「ミヤジー‼️」
「えー、ミヤジは夜でしょ」
「じゃあ岡村ちゃん。『だいすき』❗️」
「俺さぁ、『ビバナミダ』好き」
「ブォオ‼️」
「なぁ!お前もそう思うだろぉ!ってクマァッ‼️⁉️」
レンの意見に賛同したと思われた者は、クマだった。
「うぉお💦さ、3頭もいる💦」
大中小と。
「ゴルディロックス?(笑)」
眠そうだが、おいしそうな匂いと楽しそうな音楽に誘われたのかもしれない。
「クマは冬眠するって」
「冬眠じゃないよ。冬ごもりだよ」
クマがしゃべった。
「びっくりした。お前かよ」
「へへ。心が通えば争いは起きないからね」
なつみは始解を発動し、みんながクマたちとお話しできるようにしていた。
「ねぇねぇ、なんかちょうだいよ」
大きいクマが、後ろから尾田に抱きついてお願いしていた。
「爪怖ぇって💦」
「この近くにおうちがあるの?」
「うん。寝てたけど、気になったから来た」
「そっかぁ。なんかごめんね」
中位のクマは、クーちゃんにモフモフされていた。
「あったかーい」
「これなに?」
小さなクマはギターに興味津々。
「弦に触ってみ?ジャラーンって」
レンの動きをマネして、小グマは上から下に弦に触れてみた。
「わぁ!鳴った!鳴った!」
ジャンジャンジャン♪
「君たち、火は怖くないの?」
焚き火を指して、ハルがクマたちに尋ねた。
「それ?怖くないよ。人の火じゃないもんね」
「?そうなんだ」
タッタカタッタッタ〜となつみはカプセルに戻って、自分の鞄を肩からかけ、また駆け足で帰ってきた。
「お3人さん。これで良かったら、受け取って」
そう言って鞄から取り出したのは、アヤからもらったりんごだった。
大きいクマから、中位のクマに、それから小さなクマへと、ひとつずつ渡してあげた。
「いいの?」
「良いよ。って、勝手にごめん。お前ら食べたかった?」
一応、みんなに確認を取る。
「俺らは帰ってアヤさんとこ貰いに行けば良いんだ。構わなねぇよ」
李空の意見にみんな頷いていた。
それならばありがたくと、クマたちはりんごを頬張った。シャリシャリ。
「おいしい🍎」
モコモコのお友達も増えて、賑やかなピクニックになった。
「ちょっと3人にききたいことがあるんだけど」
鞄から畳まれた紙を取り出すなつみ。広げると、それは地図だった。
「ぼくら、これからあそこの里に下りて行くんだ。この赤い線の道を通ると良いって言われたんだけど、広い道になってるのかな?あれに乗って行くつもりなの」
「は⁉︎歩きじゃねぇのか!」
「野菜積んでるんだから、無理に決まってるだろ」
「そっか」
「でも、車輪付いてないのに走れるの?」
「…あ〜、だからアイツの特等席」
クマたちは地図を眺める。
「これでも良いけど、遠回りだよ」
「他に行き方あるの?」
その問いに、毛むくじゃらのまん丸なお顔3つがくっついて答える。
「あるよ!」
「すっごい近道!」
「連れてってあげる!」
「ほんと❓ありがとう❗️よろしくね😆」
((((((何だろう。この胸騒ぎ💧))))))
カプセルに荷物を戻し、各々着席すると、もちろんだが満員だ。
「どこに座る?尾田の膝上?」
「骨砕けるわ💢」
「ブォフッ😌」
「待て待て❗️マジで座ろうとすんな💦」
「しかもいちばん大っきいコ」
「尾田、気に入られたね」
クマたちがひとしきり内装を見たり、ボタンやレバーに触ろうとしたり、尾田に座ろうとしたりした後、結局外に出て、それを追いかけてなつみも出た。
「里はあっち」
「うん。でも道はあっちだよね。あとをついてくから、先を歩いてくれる?」
「しないよ」
「何で?案内してくれるんじゃ…」
「連れてくの!乗って、なつみちゃん!」
中位のクマがなつみの背中を押して、カプセルに戻らせた。
「で、でも💦」
「みんなにしっかり掴まるように言って」
大きいクマが扉を閉めた。
「どうするんだよ。アイツら本当に道案内してくれるのか?」
「わかんない。つれてくとは言ってたけど、とにかくしっかり掴まってって」
「なつみ、力を解放しろ」
「ムッちゃん。でもどうやって」
「予定と同じで良い。ただし、集中しろよ。アイツらは少々手荒なんだ」
「ムッちゃん、会ったことあるの?」
「構えろ🐥」
なつみは言われるがまま斬魄刀を抜いて、解号を唱える。
「叶え、夢現天道子!このカプセルに命を!」
下を支えている4本の脚が屈伸運動をする。走る準備だろうか。その変化を確認すると、クマたちも行動に移す。
フロントガラスに向かって手を振る。何かの合図だ。
「ついてくよ。3人の動きをよく見てね」
と言ったが、クマたちが進んだ方向にはついていきたくなくなった。
「嘘だろ⁉️飛び降りたぞ⁉️」
驚いたが、確かにそちら方面に目的地があるため、近道ではある。しかし、それは岩壁のその先だ。彼らは崖から飛び降りたのだ。
「案内は…?」
なつみたちは中にいるため、クマたちの姿を見ることはできない。取り残されたよう。
すると次の瞬間、地面が大きく盛り上がった。大地がスライムのように柔らかくなったのだ。その波に乗せられて、カプセルは崖の方へ導かれる。ゆっくりと。
「アイツらやっぱり、クマじゃねぇよ」
燬鷇王の霊圧に平気でいられる者が、瀞霊廷の外にいるのはごく稀だ。ましてやそれが、冬ごもりを中断したてのクマだなんて。
「ヤバいかもォォォォオッ‼️💦」
珍しく、この手のことでなつみが叫んだ。マジのヤツである。暇つぶしの遊び半分で、彼らの命を狙う極悪人に騙されたのかもしれないという推測だ。
滑るように、動く歩道にいるように、じわじわと縁へ進んでいく。
「拒否権は無いの?」
「あの人たちの親切だしね」
「ほら、このスピードで行くんじゃねぇか?」
「だったら快適だな」
「おお。何が起きてんのか理解不能だが、ありがたい話だな」
「んだな」
「んだんだ」
疑っても、このカプセルを捨てて降りるわけにもいかないので、とりあえずの現実逃避。まぁ、なるようになるっしょ、と。
崖の端まで来て止まった。みんなの息も止まりそう。そんな彼らの前に、変わった光の反射が起きた。小さなクマの笑顔。
「おいしいりんごありがとう❗️お礼してあげるね❗️」
下が再び動き始めて、カプセルは傾いていく。それで見えた、ヤバい景色。崖の傾斜は大きく、下降するには「落ちる」の表現が合う所だが、盛り上がった分、周りが下がるのか、不思議な光景が作り上げられていた。ここを下りますよと言わんばかりのトンネル状の滑り台が伸びていたのだ。その先は木々が生い茂り、直接見えはしないが、目的地である神社が確かにあると思われる。土は丸く凹んで、木々は通り道を避けるように反ってチューブを形作っていた。
「いっくよ〜❗️」
大地が一段とグワッと上がり、滑走が始まる。気付いたらトップスピードだった。今思えば、燬鷇王は本当に安全に配慮して飛んでくれていたんだとわかる。
ギャァァァ……
出ようとした絶叫が自然と身体に戻る。うねってぐねって曲がって回って何が何だか。なつみに意思をもらったカプセルは、どうにか揺れを抑えようと、あちこちの関節を曲げ伸ばししてくれているが、間に合ったとて、足りないものは足りなかった。
「アカァアアアアアーーーンッ‼️‼️」
うわぁぁぁぁぁあ〜〜〜〜〜
砂煙が辺りを包んだがピューッと消え去り、自然があり得ない形に変形したトンネルも無くなっていた。何も無かったように。化かされたんだろうか。安心して放心状態になれたため、カプセルの気が緩んでバンッと扉が開いた。なつみらもガタガタと震えて動けなかった。
「おーい!着いたんだね!いらっしゃい、みんな!なつみちゃん!」
ウキウキとした足取りで、ある男がこちらに向かってきた。中が覗けるほどに到着。
「よく来たね!」
ギギギギ…とそちらに顔を向ける7人。
「「「「「「コンニチハ…」」」」」」
「タダイマ、オトーサン…」
期待していたのとは、違う様子だったらしい。
「大丈夫…?💧」
もう奇怪な連中や道連れは去ったとして、カプセルから降りることにした。ここはなつみの最初の家。今回の目的地である木之本神社だ。
「怖かったぁ…」
野菜の箱を持つ者の鞄は、他の者が代わりに持ち、「オトーサン」と呼ばれた恐らくここの神主である男について、大きな社務所へぞろぞろと行く。
「ここに来るまでに、何かあったの?」
「3匹のクマに…」
「クマ?」
「あの山の頂上から、ここまで降ろしてやるっていって、めちゃくちゃな目に遭って」
「何も変なこと無かったと思うけどなぁ…、…あ!」
「何すか」
「それ、あの山の主の仕業かも」
「「「「「「「ヌシ?」」」」」」」
「うん。山にはそれぞれ主がいるものなんだけど、あそこは3匹のクマに昔から守られているんだ。言い伝えだけどね。3匹の本当の姿はクマではなく、大地の精霊、草木の精霊、風の精霊らしいんだ。なつみちゃんが遊びに来てくれたから、嬉しくて逢いに来てくれたのかもしれないよ?😄」
クスクスクス
笑い声が耳の遠くで響いてきたため、例の山へズバッと振り返る7人。
「山から来たなら、帰りは登らなきゃならないんだよね?そっちの方が大変だろうから、また連れてってもらえるように、お願いしといたら?(笑)」
「丁重にお断りします‼️‼️」
エ〜?😙
ズバッと振り返る。
「命あって何よりだ。礼はしておこう」
さすがオカン。ケイジに倣って、みんなも荷物を置いて、山に向かって2礼2拍手。
「時短になりました。ありがとうございました」
「ありがとうございましたぁ」
1礼。
「ふふっ、みんな良い子だね😊」