第七章
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後日、イヅルの計らいで男性死神協会会合への参加に漕ぎ着けたなつみは、突飛なアイデアを連発し、その場を沸かせることに成功した。射場会長には初め、「女じゃろ。雰囲気ブチ壊して、邪魔んなるだけじゃ、ほんなもん。1遍はええが、ワシらにビビって、やっぱりやめときます〜ちゅうて、懲りるに決まっとるわ」などと言われていたが、蓋を開ければ何の何の、他の会員たちのポンコツな意見よりも、なつみの提案の方がよっぽど魅力的に聞こえた。
例えば、男気溢れる上位席官隊士たちの一言を添えた日めくりカレンダーの販売。男の肉体美を鍛え上げるコツを指南する動画や、鬼道の詠唱を憧れの隊長らの声で聴いて覚える音声の定額での配信。スター発掘カラオケ大会開催。各隊に1サウナ計画。などなどをプレゼンしたのだ。「じゃけぇ」を駆使しつつ。
「お前はワシらの救世主じゃー‼️‼️」
「押忍‼️あざすじゃけー‼️‼️」
見事、初日にしてなつみは、男性死神協会の制服でもあるサングラスと腹巻を支給される運びとなった。
「これでお前もイッパシの男じゃけ。ワシらん仲間じゃ。よろしくの、木之本 ❗️」
「押忍じゃけ‼️😎」
「何や?ニコニコして。そないに楽しかったん?男性死神協会の会議」
「はい!ぼくのこと、歓迎してくれました!新入会員として、この協会を盛り上げて、資金集めで大活躍しますよ!そしたら、みなさんとパァーッと遊ぶんです!」
「そうか〜。そらええな」
「隊長も入れば良いのに。浮竹隊長も楽しそうですよ」
「ボクはええの。イヅルが変に気ぃ遣ってまうやろ?」
「そっか…」
「ほんで?旅行の方は話進んだん?」
「はい!行き先は、ぼくの生まれた地区になりました」
「ふーん、ええ温泉あんの?」
「あるんですよー、良いところが。あと、ぼくの実家と言っても過言ではない神社で、宿泊させてもらえるそうなんです。広場もあるので、花火やって遊ぼうって話もあって」
「冬やのに?」
「良いじゃないですかー。火だからあったかいですよ、きっと。志波副隊長のご家族にお願いして、手持ち花火を作ってもらってます」
「ウチは打ち上げ専門やーって、怒られんかったん?」
「怒られましたけど、志波副隊長の命の恩人の頼みだからって、引き受けてもらえました。お安い御用だって。弟の岩鷲くんががんばってくれるそうです」
「フフッ、嫌がってるやん」
「日にちはまだ調整中です。7人で揃えるの大変で。1泊2日確保するだけなんですけどね」
「なつみちゃんは自由自在やのにね」
「ぼくだって、長期の遠征任務やりたいですよ!虚圏でもどこでも行ってやりますって!」
「イヤや。1日くらいなら我慢できるけど、こうしてなつみちゃんとお風呂入られへんくなるやん」
「💢」
バシャバシャバシャッ💦
「それにしても、空鶴さんってかっこいいっすね〜。憧れちゃうなー🥰」
仲間たちとスケジュールを合わせるのに苦戦していたなつみは、寒い夜空の下、市丸宅の屋根の上に登り、熱心に祈りを捧げた。
「うぅぅ、寒い。ゴホンッ。えー、どうかみんなで旅行に行けるように、良い感じになってください!」
「良い感じって何だよ」
「良い感じったら、良い感じだよ」
「約2名から恨まれてるが、天は願いを聞いてくれるんだろうか」
「イジワル言わないでよ、ムッちゃん」
「このままで良いのか?」
「……」
「寂しいんだろ」
「美沙ちゃんも京楽隊長も、市丸隊長みたいに考えてくれたら良いのに」
「旅先で、何か見つかると良いな」
「何でそんなこと言うの」
「他人が変わらなければ、自分が変わるしかないだろう」
「ぼくはめっちゃ変わったぞ」
「私から見れば、ほんのちょーっぴりだ」
「む!」
「用は済んだろ。もう降りよう。風邪をひいてしまう」
「ご主人様はぼくだぞ!ぼくのことはぼくが決めるんだ!」
「そのご主人様を守るのが私の役目だ」
30cmのムッちゃんは瞬く間に180cmほどになり、脇の下から腕を回し、なつみを後ろから抱き上げて強制的に部屋へ戻っていった。
「随分と大きくなったな」
「ん?ムッちゃんが?」
返事は無かった。
ブオォォォォ……
「何でわざわざ」
「総隊長が言うには、たまにはお散歩したいらしいから、つれてってもらいなさいって」
みんなの視線は上の方。
「この寒い季節にゃ、ありがたい熱なんだろうけどさ」
「近く行ったら、熱すぎんじゃねーか?だって、それで殺すんだろ?」
「大丈夫だよ。悪い人にしか熱くないって。正義の心に灯る火で、火傷なんかするもんか!」
「だとしても、の、乗れるの?」
集合場所の少し手前で合流した7人は、とことこ歩いている。目的地にあるのは、ゴンドラ的な物。
「あのカプセルにね。運んでってもらうんだよ。上についてる棒をガッチリ掴んでさ。技術開発局の人たちが今日のために作ってくれたんだ。大変だけど、変わったことするの楽しいから、良い経験になったって」
「えーっと、この人、今日はお仕事無いの?」
「そんな事件聞いてないでしょ?帰りも送ってくれるって。ありがたいね〜。ムッちゃん曰く、この人すっごい暇してるから、退屈凌ぎにちょうどいいらしいよ」
「集合場所が双殛なんて、おかしいと思ったんだよ💧」
「瀞霊廷の真ん中だから、集まりやすいけども」
「こんな貴重なものを、プライベートジェットのように使うなんて…」
「さぁ〜、楽しい旅行の始まりだよ〜。よろしくね!燬鷇王さん!😆」
ブオォォォォ…
天に願いは届いて、無事に7人全員で1泊2日の旅行に出かけることができるなつみ。着替えと花火を持ってお出かけ。
お昼少し前の双殛の丘で、先に燬鷇王を解放しに来ていた元柳斎と、彼らの見送りに来ていた市丸に会った。
「あまり騒がしくするでないぞ。機嫌を損ねるやもしれん」
久しぶりの飛行にご機嫌な燬鷇王は、磔架に留まって待っている。
「なつみちゃん、みんな、楽しんできてや〜。おもろい土産話楽しみに待ってるで👋」
「「「「「「「絶対無い‼️‼️」」」」」」」
仕事の合間に抜け出してきた市丸は、何を期待しているのか。あらぬ想像をして、手を振りながらクスクスしていた。
なつみら7人は、カプセル後方に荷物を詰め込んでいく。座席は3人、4人の2列に並んでいた。前方3人掛けの真ん中がなつみの席だ。
「そこは絶対ぼくの場所だからね!やることあるから!😤」
「マジで怖いんだけど。すごい椅子が頑丈そうじゃね?」
ヘッドレストまでしっかりしている椅子だ。
「ロケットの中みたいだな」
「飛行中、頭を後ろにつけておけよ。さもないと、首をやるじゃろ」
「めっちゃ怖い忠告しないでくださいよ💦」
「らーぃどん たーぃむ こぉころにひを つぅーけて〜♪」
「レンくん、ギター持ってくんや」
「コイツに持って来いって言われたんで」
山下達郎の『RIDE ON TIME』を口ずさみながら躍るなつみの頭をぽんぽん叩く。
「焚き火囲って歌うんじゃないすか?」
ギターケースを横にして、壁に沿って立てかけた。
「弁当入ってる鞄て、これだよな」
「そー。いちばん上にしてよー」
気晴らしに羽を伸ばしたい人たちの遠足が、いよいよ始まる。
「いざ、ぼくの故郷へー、レッツゴー‼️‼️」
「その前に、アヤさんとこ寄るんだろ」
「そでしたー‼️‼️」
なつみは前方にかかっているマイクを取り、ボタンをポチ、スピーカーのボリュームをくーっと上げる。
「アテンションぷり〜ず。まもなく当機は離陸いたしまぁす。シートベルトをお締めください。飛行時間は適当に予定しております。それでは、快適な空の旅をお楽しみください」
準備完了合図ブザーのスイッチオン。
デオデオデオデオデオデオデオデオ
これは飛行機なのか、ジェットコースターなのか、そんなことを考えていると、ガシッとカプセルの上部を掴まれる振動が来た。
「なぁ、大丈夫だよな、これ。気まぐれに落とされたりしねぇよな」
「ビビんなよ、尾田。野生の鳥相手にしてるんじゃないんだから。気を付けて運んでくれるに決まってんじゃん」
カプセルは、羽ばたきに合わせて上下しながら上昇していく。
「おぇっおぇっおぇっ💦」
「ヤバい。酔う」
「ベルトが、くい、こむっ、うっ💦」
地上では、元柳斎と市丸が手を振ってお見送りしていた。
「うわ〜、絶対乗りたないわ、あんなん」
笑っています。
「初めだけじゃろ」
充分な高さまで昇ると、燬鷇王は頭を下げ、急降下を始めた。
ドゥゴォァアアアアアーーーッ
「うわあーーーッ‼️‼️」
高所が少し怖い尾田は、とびきり叫んでいた。
「イェーーーイッ‼️‼️」
「フーーーッ‼️‼️」
「ヤバーーーッ‼️‼️」
なつみとレンとクーちゃんは、楽しそうにはしゃいでいる。
「ムリムリムリーーーッ‼️‼️」
ハルはスリルを少し楽しむタイプのよう。
「ぐッ……」
「……」
ケイジと李空は静かに耐えていた。耐えていた?
しばらく落ちると、その推進力を利用してギュイッフワッと上昇した。燬鷇王は身体を水平にし、前進していく。
「うぃ〜。落ち着いたやんけー」
と言っても、風の抵抗を受けないように、カプセルの正面はほぼ地面を向いていた。
「この体勢で行くのかよ💧」
「こういうジェットコースターあるじゃんね」
「あるある。うつぶせのな!」
「ぼく乗ったことあるわー。ナガシマ最高だぞ」
「マジかよ!今度一緒に行こうぜ、木之本」
「あ、ズルーい。俺も行きたいって」
「行こー行こー!」
「でもこの姿勢ずっとって、体に悪そう」
「逆にしてもらう?仰向けで」
「何したって怖ぇーよッ‼️‼️早く着いてくれーッ‼️‼️」
「……〜👼」
気流に乗って飛んでいくなつみたちを連れた燬鷇王の姿が、どんどん小さくなっていく。手をかざして、眩しそうに遠くの空を見つめる市丸。
「行ったわ」
「そうじゃな」
踵を返し、帰ろうとする元柳斎の背に話しかける。
「いろいろと手配していただいて、ありがとうございます」
立ち止まり、少し顔を後ろに向ける。
「よい。あの子のためじゃ」
手を後ろに組んで、肩をすくめてみる。
「なつみちゃんのためは、世界のため…ですか?」
「フンッ…」
「この話持ち出された時、嫌がってましたやん。なのに行かせてくれたの、何でですか?」
元柳斎は進行方向のやや上に顔をあげた。
「お告げかの…」
「お告げ?(笑)」
耳を疑う。
「ある男が夢枕に立ちよってな。なつみに旅をさせるよう言うてきたんじゃ」
「誰ですか?」
「お前が知るには、まだ早い。そして儂も、彼奴が何を知らねばならんのか、わからんのじゃ。帰ってきてから、聞かせてもらおう。ものには順序があるからの」
また先程と同じだけ振り返る。
「お前ももう帰れ。久しぶりの静かな夜になるぞ」
これ以上話したくないらしく、そこで元柳斎は姿を消した。
「可愛いもんは、可愛いゆうことか」
ふと、市丸は磔架を見上げた。
「…、嫌や」
「ねぇ、なつみの前にあるレバーって何?」
「ほぇ?これ?何だろ」
扇型のマークがついている。
「上げられるのか」
床と水平に下ろされているレバー。差し込み口の穴の形状からすると、上にあげられそう。
「上げまーす‼️」
「おい!確認してからにしろって‼︎」
「うぇーいっ😝」
「聞けー💢」
ガァーーー
尾田の文句を聞かずに、なつみはレバーを上げた。すると、嬉しいことに下向きだったカプセルが、進行方向が真正面に見れるよう、燬鷇王の掴む棒の根元部分で傾いていった。
「良いじゃん」
「やっぱりな。ちゃんと座りやすくできんじゃん」
「さすがクーちゃん👏」
「『さすが』じゃねーよ!これの操縦教わったのお前だろうが!忘れてんじゃねーよ!」
「忘れたんじゃないもん!長い説明聞くと、聞かなくなる性格がはたらいただけだもん!😤」
「てめぇのその、全然わかってねぇのに勘で返事する癖やめろ💢」
がしかし、燬鷇王は旋回を始めた。
「あ、着いた」
「もうか!💦」
「降りるよ〜」
「ゆっくりな‼️‼️」
その注文を聞いてか、燬鷇王は左回りに大きめな円を描きながら、徐々に降下していった。
「快適じゃの〜」
なつみの斬魄刀は専用のスタンドに置かれており、彼は少し抜き、傾斜調整レバーにも手をかけた。
「そろそろかな。叶え、夢現天道子」
何故か解号を唱える。
「え、普通に降ろしてくれるんじゃねぇの」
お友達たちの間に、嫌な予感が過ぎる。
ギャア‼︎‼︎
「合図来た‼️」
燬鷇王の鳴き声が何かの合図らしく、前進が止まった。ホバリングのため、脚が下に伸びる。なつみは傾斜を戻した。
「燬鷇王さんの力は強すぎるから、地面に着いちゃダメなんだって」
その説明は聞いているなつみ。
「着いちゃダメってことは…」
肩からかかっているシートベルトを自然と握りしめる。
「Three❗️Two❗️One❗️」
急なカウントダウンからの。
パッ
「あ…」
離された。ちんさむからの。
ア゛ァアアアアアーーーーーッ‼️‼️‼️
と、叫びたいところだが、もう怖すぎて尾田からは何も出なかった。
「吹き上げて」
なつみの霊圧が高まり、術の発動。カプセルの重力が少し上回るほどの力で、竜巻が下から吹き上げてきた。
ふわっふわっふわっ
「おう、おう、ちょっと揺れるけど、これなら大丈夫そうだな」
7人の命を乗せているため、なつみはおふざけ無しで集中している。
「もう少しだ」
ゆっくり、ゆっくり。
その時、地上から。
「オーライ!オーライ!」
声がした。
「アヤさんだ」
カプセルは無事に着陸した。
最初の目的地は、アヤが暮らし、育てている広い農地だ。
「着いたぁ〜」
カプセルから降りて、ぐぅ〜っと伸びをするなつみ。
「ほんっとに男の子になっちゃんたっだね、なつみちゃん」
ここには、夕飯と朝食の2食分の食材をもらいに来たのだ。ハルが全員から集めたお金をアヤに渡し、他は箱に野菜を詰め込んでいた。
「こんなに良いの?伝えておいた金額より多いよ」
「そう?まぁ、取っといてよ。ちょっと荒らしちゃったみたいだし」
「あ、じゃあ、あっちの畑にりんごがなってるから、持っていって」
「わ〜い‼️‼️」
話を聞いていたハルではなく、遠くにいたなつみが真っ先に走っていった。
「かわいい(笑)」
アヤは思わず笑ってしまった。
「自称イケメンが本当にイケメンになったのに、中身はそのまんまなのね。結局かわいいまま😊」
「嫌じゃないんだ、アイツが変わったの」
「変だなとは思うけど、変わってるのがなつみちゃんだから、嫌はないかな。楽しそうだし、あれはあれで良いと思うよ」
「そっか」
向こうのほうでなつみがりんごを3個もぎ取って、こちらに駆け戻ってきた。
「とった❗️🍎🍎🍎」
「3個だけで良いの?」
「良いの😊」
なつみのほっぺも紅くなっていた。
「じゃあ、ありがたくいただこう。箱に入れとくよ」
ハルがりんごを受け取って、その場を離れていった。
「すごい立派な農園ですね」
「ありがとう。なつみちゃんたちのためにできることがしたくて、頑張ってるの。ここの仕事は楽しくて仕方ないよ。現世では得られなかったやりがいが感じられるし、お金の流れがとってもクリアだから、喜んで働きたくなるの。周りの人達は親切で、手伝ってくれるし」
「でもみなさん、食欲は無い方たちじゃ…」
「私たちにはいらないけど、死神さんたちには必要なんでしょ?死神さんたちがいないと、私たちは平和に暮らしていけないもの。だから協力するのは当然だよって、言ってくれてる」
「うれしぃ」
「威張ってて、ヤな感じな人もいるけど、なつみちゃんや、みんなや、美沙ちゃんみたいな優しい人たちがいるから、護廷隊のこと好きだし、尊敬してるし、力を貸したいんだ。ここに居られるように、やるべきことをしたい。こんな幸せ感じられるなんて、あの頃は思えなかったよ。私の選択は、間違ってなかった。今ならそう言える」
そこでアヤはなつみをぎゅっと抱きしめた。
「だから、なつみちゃんも間違ってないようにして。お願い」
「……」
なつみから離れた。
「後でお弁当食べるんでしょ?たくあん作ってみたんだ。よかったらそれも持っていって😄」
アヤは家へたくあんを取りに行った。
例えば、男気溢れる上位席官隊士たちの一言を添えた日めくりカレンダーの販売。男の肉体美を鍛え上げるコツを指南する動画や、鬼道の詠唱を憧れの隊長らの声で聴いて覚える音声の定額での配信。スター発掘カラオケ大会開催。各隊に1サウナ計画。などなどをプレゼンしたのだ。「じゃけぇ」を駆使しつつ。
「お前はワシらの救世主じゃー‼️‼️」
「押忍‼️あざすじゃけー‼️‼️」
見事、初日にしてなつみは、男性死神協会の制服でもあるサングラスと腹巻を支給される運びとなった。
「これでお前もイッパシの男じゃけ。ワシらん仲間じゃ。よろしくの、木之本 ❗️」
「押忍じゃけ‼️😎」
「何や?ニコニコして。そないに楽しかったん?男性死神協会の会議」
「はい!ぼくのこと、歓迎してくれました!新入会員として、この協会を盛り上げて、資金集めで大活躍しますよ!そしたら、みなさんとパァーッと遊ぶんです!」
「そうか〜。そらええな」
「隊長も入れば良いのに。浮竹隊長も楽しそうですよ」
「ボクはええの。イヅルが変に気ぃ遣ってまうやろ?」
「そっか…」
「ほんで?旅行の方は話進んだん?」
「はい!行き先は、ぼくの生まれた地区になりました」
「ふーん、ええ温泉あんの?」
「あるんですよー、良いところが。あと、ぼくの実家と言っても過言ではない神社で、宿泊させてもらえるそうなんです。広場もあるので、花火やって遊ぼうって話もあって」
「冬やのに?」
「良いじゃないですかー。火だからあったかいですよ、きっと。志波副隊長のご家族にお願いして、手持ち花火を作ってもらってます」
「ウチは打ち上げ専門やーって、怒られんかったん?」
「怒られましたけど、志波副隊長の命の恩人の頼みだからって、引き受けてもらえました。お安い御用だって。弟の岩鷲くんががんばってくれるそうです」
「フフッ、嫌がってるやん」
「日にちはまだ調整中です。7人で揃えるの大変で。1泊2日確保するだけなんですけどね」
「なつみちゃんは自由自在やのにね」
「ぼくだって、長期の遠征任務やりたいですよ!虚圏でもどこでも行ってやりますって!」
「イヤや。1日くらいなら我慢できるけど、こうしてなつみちゃんとお風呂入られへんくなるやん」
「💢」
バシャバシャバシャッ💦
「それにしても、空鶴さんってかっこいいっすね〜。憧れちゃうなー🥰」
仲間たちとスケジュールを合わせるのに苦戦していたなつみは、寒い夜空の下、市丸宅の屋根の上に登り、熱心に祈りを捧げた。
「うぅぅ、寒い。ゴホンッ。えー、どうかみんなで旅行に行けるように、良い感じになってください!」
「良い感じって何だよ」
「良い感じったら、良い感じだよ」
「約2名から恨まれてるが、天は願いを聞いてくれるんだろうか」
「イジワル言わないでよ、ムッちゃん」
「このままで良いのか?」
「……」
「寂しいんだろ」
「美沙ちゃんも京楽隊長も、市丸隊長みたいに考えてくれたら良いのに」
「旅先で、何か見つかると良いな」
「何でそんなこと言うの」
「他人が変わらなければ、自分が変わるしかないだろう」
「ぼくはめっちゃ変わったぞ」
「私から見れば、ほんのちょーっぴりだ」
「む!」
「用は済んだろ。もう降りよう。風邪をひいてしまう」
「ご主人様はぼくだぞ!ぼくのことはぼくが決めるんだ!」
「そのご主人様を守るのが私の役目だ」
30cmのムッちゃんは瞬く間に180cmほどになり、脇の下から腕を回し、なつみを後ろから抱き上げて強制的に部屋へ戻っていった。
「随分と大きくなったな」
「ん?ムッちゃんが?」
返事は無かった。
ブオォォォォ……
「何でわざわざ」
「総隊長が言うには、たまにはお散歩したいらしいから、つれてってもらいなさいって」
みんなの視線は上の方。
「この寒い季節にゃ、ありがたい熱なんだろうけどさ」
「近く行ったら、熱すぎんじゃねーか?だって、それで殺すんだろ?」
「大丈夫だよ。悪い人にしか熱くないって。正義の心に灯る火で、火傷なんかするもんか!」
「だとしても、の、乗れるの?」
集合場所の少し手前で合流した7人は、とことこ歩いている。目的地にあるのは、ゴンドラ的な物。
「あのカプセルにね。運んでってもらうんだよ。上についてる棒をガッチリ掴んでさ。技術開発局の人たちが今日のために作ってくれたんだ。大変だけど、変わったことするの楽しいから、良い経験になったって」
「えーっと、この人、今日はお仕事無いの?」
「そんな事件聞いてないでしょ?帰りも送ってくれるって。ありがたいね〜。ムッちゃん曰く、この人すっごい暇してるから、退屈凌ぎにちょうどいいらしいよ」
「集合場所が双殛なんて、おかしいと思ったんだよ💧」
「瀞霊廷の真ん中だから、集まりやすいけども」
「こんな貴重なものを、プライベートジェットのように使うなんて…」
「さぁ〜、楽しい旅行の始まりだよ〜。よろしくね!燬鷇王さん!😆」
ブオォォォォ…
天に願いは届いて、無事に7人全員で1泊2日の旅行に出かけることができるなつみ。着替えと花火を持ってお出かけ。
お昼少し前の双殛の丘で、先に燬鷇王を解放しに来ていた元柳斎と、彼らの見送りに来ていた市丸に会った。
「あまり騒がしくするでないぞ。機嫌を損ねるやもしれん」
久しぶりの飛行にご機嫌な燬鷇王は、磔架に留まって待っている。
「なつみちゃん、みんな、楽しんできてや〜。おもろい土産話楽しみに待ってるで👋」
「「「「「「「絶対無い‼️‼️」」」」」」」
仕事の合間に抜け出してきた市丸は、何を期待しているのか。あらぬ想像をして、手を振りながらクスクスしていた。
なつみら7人は、カプセル後方に荷物を詰め込んでいく。座席は3人、4人の2列に並んでいた。前方3人掛けの真ん中がなつみの席だ。
「そこは絶対ぼくの場所だからね!やることあるから!😤」
「マジで怖いんだけど。すごい椅子が頑丈そうじゃね?」
ヘッドレストまでしっかりしている椅子だ。
「ロケットの中みたいだな」
「飛行中、頭を後ろにつけておけよ。さもないと、首をやるじゃろ」
「めっちゃ怖い忠告しないでくださいよ💦」
「らーぃどん たーぃむ こぉころにひを つぅーけて〜♪」
「レンくん、ギター持ってくんや」
「コイツに持って来いって言われたんで」
山下達郎の『RIDE ON TIME』を口ずさみながら躍るなつみの頭をぽんぽん叩く。
「焚き火囲って歌うんじゃないすか?」
ギターケースを横にして、壁に沿って立てかけた。
「弁当入ってる鞄て、これだよな」
「そー。いちばん上にしてよー」
気晴らしに羽を伸ばしたい人たちの遠足が、いよいよ始まる。
「いざ、ぼくの故郷へー、レッツゴー‼️‼️」
「その前に、アヤさんとこ寄るんだろ」
「そでしたー‼️‼️」
なつみは前方にかかっているマイクを取り、ボタンをポチ、スピーカーのボリュームをくーっと上げる。
「アテンションぷり〜ず。まもなく当機は離陸いたしまぁす。シートベルトをお締めください。飛行時間は適当に予定しております。それでは、快適な空の旅をお楽しみください」
準備完了合図ブザーのスイッチオン。
デオデオデオデオデオデオデオデオ
これは飛行機なのか、ジェットコースターなのか、そんなことを考えていると、ガシッとカプセルの上部を掴まれる振動が来た。
「なぁ、大丈夫だよな、これ。気まぐれに落とされたりしねぇよな」
「ビビんなよ、尾田。野生の鳥相手にしてるんじゃないんだから。気を付けて運んでくれるに決まってんじゃん」
カプセルは、羽ばたきに合わせて上下しながら上昇していく。
「おぇっおぇっおぇっ💦」
「ヤバい。酔う」
「ベルトが、くい、こむっ、うっ💦」
地上では、元柳斎と市丸が手を振ってお見送りしていた。
「うわ〜、絶対乗りたないわ、あんなん」
笑っています。
「初めだけじゃろ」
充分な高さまで昇ると、燬鷇王は頭を下げ、急降下を始めた。
ドゥゴォァアアアアアーーーッ
「うわあーーーッ‼️‼️」
高所が少し怖い尾田は、とびきり叫んでいた。
「イェーーーイッ‼️‼️」
「フーーーッ‼️‼️」
「ヤバーーーッ‼️‼️」
なつみとレンとクーちゃんは、楽しそうにはしゃいでいる。
「ムリムリムリーーーッ‼️‼️」
ハルはスリルを少し楽しむタイプのよう。
「ぐッ……」
「……」
ケイジと李空は静かに耐えていた。耐えていた?
しばらく落ちると、その推進力を利用してギュイッフワッと上昇した。燬鷇王は身体を水平にし、前進していく。
「うぃ〜。落ち着いたやんけー」
と言っても、風の抵抗を受けないように、カプセルの正面はほぼ地面を向いていた。
「この体勢で行くのかよ💧」
「こういうジェットコースターあるじゃんね」
「あるある。うつぶせのな!」
「ぼく乗ったことあるわー。ナガシマ最高だぞ」
「マジかよ!今度一緒に行こうぜ、木之本」
「あ、ズルーい。俺も行きたいって」
「行こー行こー!」
「でもこの姿勢ずっとって、体に悪そう」
「逆にしてもらう?仰向けで」
「何したって怖ぇーよッ‼️‼️早く着いてくれーッ‼️‼️」
「……〜👼」
気流に乗って飛んでいくなつみたちを連れた燬鷇王の姿が、どんどん小さくなっていく。手をかざして、眩しそうに遠くの空を見つめる市丸。
「行ったわ」
「そうじゃな」
踵を返し、帰ろうとする元柳斎の背に話しかける。
「いろいろと手配していただいて、ありがとうございます」
立ち止まり、少し顔を後ろに向ける。
「よい。あの子のためじゃ」
手を後ろに組んで、肩をすくめてみる。
「なつみちゃんのためは、世界のため…ですか?」
「フンッ…」
「この話持ち出された時、嫌がってましたやん。なのに行かせてくれたの、何でですか?」
元柳斎は進行方向のやや上に顔をあげた。
「お告げかの…」
「お告げ?(笑)」
耳を疑う。
「ある男が夢枕に立ちよってな。なつみに旅をさせるよう言うてきたんじゃ」
「誰ですか?」
「お前が知るには、まだ早い。そして儂も、彼奴が何を知らねばならんのか、わからんのじゃ。帰ってきてから、聞かせてもらおう。ものには順序があるからの」
また先程と同じだけ振り返る。
「お前ももう帰れ。久しぶりの静かな夜になるぞ」
これ以上話したくないらしく、そこで元柳斎は姿を消した。
「可愛いもんは、可愛いゆうことか」
ふと、市丸は磔架を見上げた。
「…、嫌や」
「ねぇ、なつみの前にあるレバーって何?」
「ほぇ?これ?何だろ」
扇型のマークがついている。
「上げられるのか」
床と水平に下ろされているレバー。差し込み口の穴の形状からすると、上にあげられそう。
「上げまーす‼️」
「おい!確認してからにしろって‼︎」
「うぇーいっ😝」
「聞けー💢」
ガァーーー
尾田の文句を聞かずに、なつみはレバーを上げた。すると、嬉しいことに下向きだったカプセルが、進行方向が真正面に見れるよう、燬鷇王の掴む棒の根元部分で傾いていった。
「良いじゃん」
「やっぱりな。ちゃんと座りやすくできんじゃん」
「さすがクーちゃん👏」
「『さすが』じゃねーよ!これの操縦教わったのお前だろうが!忘れてんじゃねーよ!」
「忘れたんじゃないもん!長い説明聞くと、聞かなくなる性格がはたらいただけだもん!😤」
「てめぇのその、全然わかってねぇのに勘で返事する癖やめろ💢」
がしかし、燬鷇王は旋回を始めた。
「あ、着いた」
「もうか!💦」
「降りるよ〜」
「ゆっくりな‼️‼️」
その注文を聞いてか、燬鷇王は左回りに大きめな円を描きながら、徐々に降下していった。
「快適じゃの〜」
なつみの斬魄刀は専用のスタンドに置かれており、彼は少し抜き、傾斜調整レバーにも手をかけた。
「そろそろかな。叶え、夢現天道子」
何故か解号を唱える。
「え、普通に降ろしてくれるんじゃねぇの」
お友達たちの間に、嫌な予感が過ぎる。
ギャア‼︎‼︎
「合図来た‼️」
燬鷇王の鳴き声が何かの合図らしく、前進が止まった。ホバリングのため、脚が下に伸びる。なつみは傾斜を戻した。
「燬鷇王さんの力は強すぎるから、地面に着いちゃダメなんだって」
その説明は聞いているなつみ。
「着いちゃダメってことは…」
肩からかかっているシートベルトを自然と握りしめる。
「Three❗️Two❗️One❗️」
急なカウントダウンからの。
パッ
「あ…」
離された。ちんさむからの。
ア゛ァアアアアアーーーーーッ‼️‼️‼️
と、叫びたいところだが、もう怖すぎて尾田からは何も出なかった。
「吹き上げて」
なつみの霊圧が高まり、術の発動。カプセルの重力が少し上回るほどの力で、竜巻が下から吹き上げてきた。
ふわっふわっふわっ
「おう、おう、ちょっと揺れるけど、これなら大丈夫そうだな」
7人の命を乗せているため、なつみはおふざけ無しで集中している。
「もう少しだ」
ゆっくり、ゆっくり。
その時、地上から。
「オーライ!オーライ!」
声がした。
「アヤさんだ」
カプセルは無事に着陸した。
最初の目的地は、アヤが暮らし、育てている広い農地だ。
「着いたぁ〜」
カプセルから降りて、ぐぅ〜っと伸びをするなつみ。
「ほんっとに男の子になっちゃんたっだね、なつみちゃん」
ここには、夕飯と朝食の2食分の食材をもらいに来たのだ。ハルが全員から集めたお金をアヤに渡し、他は箱に野菜を詰め込んでいた。
「こんなに良いの?伝えておいた金額より多いよ」
「そう?まぁ、取っといてよ。ちょっと荒らしちゃったみたいだし」
「あ、じゃあ、あっちの畑にりんごがなってるから、持っていって」
「わ〜い‼️‼️」
話を聞いていたハルではなく、遠くにいたなつみが真っ先に走っていった。
「かわいい(笑)」
アヤは思わず笑ってしまった。
「自称イケメンが本当にイケメンになったのに、中身はそのまんまなのね。結局かわいいまま😊」
「嫌じゃないんだ、アイツが変わったの」
「変だなとは思うけど、変わってるのがなつみちゃんだから、嫌はないかな。楽しそうだし、あれはあれで良いと思うよ」
「そっか」
向こうのほうでなつみがりんごを3個もぎ取って、こちらに駆け戻ってきた。
「とった❗️🍎🍎🍎」
「3個だけで良いの?」
「良いの😊」
なつみのほっぺも紅くなっていた。
「じゃあ、ありがたくいただこう。箱に入れとくよ」
ハルがりんごを受け取って、その場を離れていった。
「すごい立派な農園ですね」
「ありがとう。なつみちゃんたちのためにできることがしたくて、頑張ってるの。ここの仕事は楽しくて仕方ないよ。現世では得られなかったやりがいが感じられるし、お金の流れがとってもクリアだから、喜んで働きたくなるの。周りの人達は親切で、手伝ってくれるし」
「でもみなさん、食欲は無い方たちじゃ…」
「私たちにはいらないけど、死神さんたちには必要なんでしょ?死神さんたちがいないと、私たちは平和に暮らしていけないもの。だから協力するのは当然だよって、言ってくれてる」
「うれしぃ」
「威張ってて、ヤな感じな人もいるけど、なつみちゃんや、みんなや、美沙ちゃんみたいな優しい人たちがいるから、護廷隊のこと好きだし、尊敬してるし、力を貸したいんだ。ここに居られるように、やるべきことをしたい。こんな幸せ感じられるなんて、あの頃は思えなかったよ。私の選択は、間違ってなかった。今ならそう言える」
そこでアヤはなつみをぎゅっと抱きしめた。
「だから、なつみちゃんも間違ってないようにして。お願い」
「……」
なつみから離れた。
「後でお弁当食べるんでしょ?たくあん作ってみたんだ。よかったらそれも持っていって😄」
アヤは家へたくあんを取りに行った。