第七章
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浴室に逃げてきたなつみ。市丸の落ち込み様を見て、これはここで時間を稼がなければと判断し、既に入浴はしたのだが、全身洗ってみた。先程使ったタオルをもう一度使い、身体を拭いて、浴衣を羽織った。
(帯とパンツ、置いてきちゃった😔)
洗面台の前に籐のスツールを置いて、浴衣の前を閉じてそこに座った。ドライヤーで髪を乾かすのだ。
その音で気付けず、市丸が脱衣所に入ってきて、なつみは驚いた。
「あわっ」
慌ててドライヤーを止める。
「何で髪まで洗ったん?」
「ん…😥」
「気い遣わせてもうたんやな」
市丸は、なつみの首にかかっているタオルを彼の頭に被せてやった。後ろに立って、髪を拭いていく。
「ごめんな。さっき、気持ち悪かったやろ」
「いえ…。そんなことないです…。」
「嫌やなかったん?」
「ぼくが下手くそだから、隊長が手伝ってくださっただけです。隊長は悪くありません。謝らないでください」
「そうか…」
「ぼくの方こそ、ごめんなさい。男とキスするの、嫌でしたよね」
「…せやね。同性相手にあんなことするつもりなかったわ」
「……」
「せやけど、ボクからしにいってもうたから、好きでしとったんかもしれへん」
タオルを被った頭が、ちょっと上向きに動く。
「なつみちゃんが部屋出てって、ひとりになって考えとった。ちょっかい出すだけのつもりやったのに、どうして抑えられんくなったんか」
上を向いていた頭が下がった。
「どうしてキミと暮らすことにしたんか」
そこに触れている手も止まった。
「断ることも、嫌がることもできたのに」
振り返ってみたいけど、やめておきたい。落ち着かないこの気持ち。
「答えは1個や」
市丸は膝立ちに姿勢を変え、その腕をなつみのお腹に回す。ぎゅっと抱きしめて、顔をなつみの肩に付けた。タオルに隔てられ、直には見えないが、鏡には映っているその姿。
「ボクは、キミが好き」
小さくて、こもっていた。とても控えめで、聞き間違いかと疑いたくなるほど。でも、このときめきが、彼の表情が見えないことが、それを証明している。
確認したければ鏡を見れば良い。しかし、恥ずかしくてできない。市丸がいない方に視線を斜めに落とす。逃げそうななつみの耳元に口を近づけると、タオル越しに囁く。
「キミが女の子だろうと男の子だろうと、正直、どうでもええねん、ボク。キミが居ってくれることが一番大事で、キミが幸せなんが、ボクにとって嬉しいことなんや。見た目が変わったくらいで、ずっとそう想ってきたん、やめられるわけないんや」
そんな夢のようなことを、本当に思ってくれているのだろうか。取り返しのつかないことを、無理矢理言い聞かせて納得させて、なんとか収めようとしているだけじゃないのか。なつみは勇気を出して、そろりと市丸へ顔を向ける。と、タオルがはらりと肩に落ちた。
優しい瞳。潤んだ視界。
「好きやで、なつみちゃん」
お互いの額をそっと合わせる。
「お願いやから、今日あったこと、無かったことにせんとって。ボクは忘れたないから。キミに触れたこと…」
「隊長…、でも、…ぼくは、隊長の弟みたいなものですよ」
「せやね」
「乱菊さんは…」
「たまにはボクかて、間違えたいわ」
たまには。
「なつみちゃんは、そういうとき無いん?」
市丸は身体を離して、膝立ちから正座になった。
なつみは考える。これまで、なつみにとっていちばんは京楽だった。大好きな人だった。でも同じくらいに大好きな気持ちを、市丸にも抱いていた。しかし彼には乱菊がいた。だから、京楽に向いていたのに。男になった今、京楽のことは諦めなければならなくなった。そして市丸が、自分のことを好きだと言ってくれた。外見ではなく、なつみという同一性から。この上ない理想が、すぐ目の前にある。なのに、なつみは答えられなかった。性別など、問題ではない。誰を愛するかだ。相応しい運命の人は、きっと自分ではない。決められないほど迷えるのだから。
そんななつみを察して、市丸は手を差し伸べた。
「なつみちゃん、今晩だけ…」
「……?」
「今晩だけ、間違おうか。ボクら」
「……///」
「明日、朝んなったら、今まで通りの兄弟に戻ろ。せやから…、今晩だけ。あかん…?」
耐えられなくて、なつみは目をぎゅっと閉じた。しかし、返事は。
「…はいッ///」
消えそうなくらいだったが、頷いて、市丸に賛成した。
「今晩だけ…です」
手が、頬に届く。包む。
「ありがと…。行こか」
2人は静かに、手を繋いで寝室へ戻っていく。恋のときめきと、本命ではない人を相手にする背徳感で、心がざわついていた。
部屋の明かりは消えている。これから行われることは間違いだから、秘密にしておかなければならない。夜がこんなに優しいとは。
「落ちてたイチゴのパンツ見てな。なつみちゃんはなつみちゃんやんかーって、思ったんよ」
「何ですか、それ」
「男の子相手でも、それがなつみちゃんやったら、ボクには有りってこと」
「なぁ、さっきボクがしたげたこと再現してや」
「なッ、ヤですよ!///」
「復習や、復習。あ、そうや。ついでに予習もしよか」
「予習?」
「女の子とするときは、キミがリードしたらなあかんのよ。受けてばっかしじゃあかん。攻めも覚えなさい。そして、ゴムの着け方を覚えなさい!」
「💦💦💦」
「ヤバっ…、あの子ら、これされたん?」
「だから、ぼくは覚えてないんですって💢」
「ヤバぁ…。堪らんな」
「…ッ💢///」
「もっとしてや(笑)」
「💢💦///」
そうして夜は更けていく。ときに甘く、ときに激しく、ときにお勉強しながら、2人は身体を重ねた。不思議で曖昧な関係を楽しみながら。
翌朝。
「ナ゛ァーーーーーッ‼️‼️‼️⁉️😱」
なつみの絶叫から始まった。
「叫んだかて、遅刻やんか。もう諦めようやぁ…」
もぞもぞとベッドから出たくない市丸。
「諦めるとか、そういう問題じゃないです‼️」
跳び起きて、死覇装を急いで取り出す。
「早く起きて❗️お兄ちゃん❗️」
「🥱」
なつみは着替えずに寝室を出ていった。
(お兄ちゃん…な)
2人の絆は夜を経て、より強く結ばれたらしい。その絆が緩むことはないだろう。そして、それより先に進むこともないのだろう。これが彼らの愛のカタチだ。
「ムギャアァアアーーーッ‼️‼️‼️」
今度は浴室から。
叫び声の主の様子を見に行くと、シャワーを浴びようと全裸になっていたのだが、胸元を見て絶望していた。
「今度は何なん?」
「これッ‼️これッ‼️ぶつけた覚え無いのに、赤い痣ができてます‼️今度こそ異常発生ですぅ‼️‼️😫」
浴室の扉に寄りかかり、市丸は鼻で笑っていた。
「ほんまに…。それな、キスマークや」
「え⁉️」
「チューッて肌吸うと、そういうのがつくんよ。ボクの仕業😄」
「病気のサインじゃないんですか」
「せや。どっちかっちゅーと、『なつみちゃんはボクのもん』のサイン」
それを聞いてムスッとしたなつみは、黙ってキスマークを回道で治した。
「あ!消してもうた!ケチ!」
「うるさい!隊長もシャワーするなら早く脱いでください!」
先に浴びたくて、市丸を脱衣所に追い出すなつみ。
(ま、背中のは残ってるからええか)
(『自分のもの』だなんて。石けんの匂いで一緒なんだから、充分じゃん‼️)
もうこの香りに慣れてしまって、以前のように特別には思えなくなっていたが、きっと周りの人たちからしたら、なつみが市丸にとって特別な存在なのだとわかってしまうのだろう。
(やり直ししないって、ちゃんと決めてたのに。わざわざアト残すなんて、どういうつもりなんだろ。兄弟に戻るって言ったもん。普通にしよう❗️ナイショナイショだ❗️)
市丸とシャワーを交代して、なつみはせっせと身支度を開始する。…かと思われたが、ちょっと待った。何だか、ある曲を無性に聞きたくなってきた。伝令神機に入っているので、それでかけようか。いや、市丸に聞かれるのは恥ずかしいから、やめておこう。ここは、脳内再生と鼻歌で我慢だ。
「ふ〜ふふ〜ふんふ〜ふふふふん♪」
ご丁寧にイントロからだ。
(ご機嫌やな☺️)
なつみの鼻歌ではわからないだろうイントロクイズの答えを、こっそりお伝えしよう。正解はこちら。
KinKi Kids『Anniversary』
星の数ほどいる 人のなかでボクは
偶然、あの日出逢い 恋に落ちたよ
愛が苦しみだと もし教えられても
ボクは迷わずに キミを選んだだろう
この空で 数え切れない星が
生まれては 人知れず消えてゆくよ
「キミヲアイシテル」 そんなひとことが
飾らずに言えたなら どんなに楽なんだろう
もう二度とキミを 泣かせたくないから
何気ない今日と云う日が ボクらの記念日
なんか不思議なんだ キミがボクを好きな
理由がわからないよ…そんなもんかな?
趣味や仕草だって 違っているけれど
最近、似てきた…と 友達に言われる
嘘吐いて キミを泣かせたあの日
ただボクは黙ったまま 何も出来ず
キミがいるだけで ありふれた日々が
鮮やかに彩られ 愛が満ちてゆくよ
この気持ちだけは 忘れたくないから
何気ない今日と云う日が ボクらの記念日
「キミヲアイシテル」 そんなひとことが
飾らずに言えたなら どんなに楽なんだろう
もう二度とキミを 泣かせたくないから
何気ない今日と云う日が ボクらの記念日
「隊長ぉー‼️はやくぅ‼️」
玄関で足踏みパタパタ。
「ちょっと待ってや〜。急かさんといてー」
草鞋を履く。
「なつみちゃん、忘れ物してるんとちゃう?確認してや」
「ちゃんと全部持ちましたよぉ」
と言いつつ、鞄を見る。
「だいじょーぶです❗もう️行きますよー」
準備万端のなつみはノブに手をかけた。が、開けるのを阻止されてしまった。後ろから腕を掴まれてしまったのだ。何事かと振り返ると。
ちゅ…
「ほら、忘れとった。いってきますのチュー」
イタズラな笑顔。
「あわわわわ💦」
固まるなつみを他所に、市丸は扉を開けて、先に外に出ていってしまった。扉に手をかけたまま言う。
「こっからお仕事モードな♪」
ズルい男だ。
「ムキューーーッ😖💓💦」
慌てて後に続き、扉を閉めてもらい、落ち着かない気持ちで、なつみは鍵をかけた。貸してもらっている合鍵で。
(帯とパンツ、置いてきちゃった😔)
洗面台の前に籐のスツールを置いて、浴衣の前を閉じてそこに座った。ドライヤーで髪を乾かすのだ。
その音で気付けず、市丸が脱衣所に入ってきて、なつみは驚いた。
「あわっ」
慌ててドライヤーを止める。
「何で髪まで洗ったん?」
「ん…😥」
「気い遣わせてもうたんやな」
市丸は、なつみの首にかかっているタオルを彼の頭に被せてやった。後ろに立って、髪を拭いていく。
「ごめんな。さっき、気持ち悪かったやろ」
「いえ…。そんなことないです…。」
「嫌やなかったん?」
「ぼくが下手くそだから、隊長が手伝ってくださっただけです。隊長は悪くありません。謝らないでください」
「そうか…」
「ぼくの方こそ、ごめんなさい。男とキスするの、嫌でしたよね」
「…せやね。同性相手にあんなことするつもりなかったわ」
「……」
「せやけど、ボクからしにいってもうたから、好きでしとったんかもしれへん」
タオルを被った頭が、ちょっと上向きに動く。
「なつみちゃんが部屋出てって、ひとりになって考えとった。ちょっかい出すだけのつもりやったのに、どうして抑えられんくなったんか」
上を向いていた頭が下がった。
「どうしてキミと暮らすことにしたんか」
そこに触れている手も止まった。
「断ることも、嫌がることもできたのに」
振り返ってみたいけど、やめておきたい。落ち着かないこの気持ち。
「答えは1個や」
市丸は膝立ちに姿勢を変え、その腕をなつみのお腹に回す。ぎゅっと抱きしめて、顔をなつみの肩に付けた。タオルに隔てられ、直には見えないが、鏡には映っているその姿。
「ボクは、キミが好き」
小さくて、こもっていた。とても控えめで、聞き間違いかと疑いたくなるほど。でも、このときめきが、彼の表情が見えないことが、それを証明している。
確認したければ鏡を見れば良い。しかし、恥ずかしくてできない。市丸がいない方に視線を斜めに落とす。逃げそうななつみの耳元に口を近づけると、タオル越しに囁く。
「キミが女の子だろうと男の子だろうと、正直、どうでもええねん、ボク。キミが居ってくれることが一番大事で、キミが幸せなんが、ボクにとって嬉しいことなんや。見た目が変わったくらいで、ずっとそう想ってきたん、やめられるわけないんや」
そんな夢のようなことを、本当に思ってくれているのだろうか。取り返しのつかないことを、無理矢理言い聞かせて納得させて、なんとか収めようとしているだけじゃないのか。なつみは勇気を出して、そろりと市丸へ顔を向ける。と、タオルがはらりと肩に落ちた。
優しい瞳。潤んだ視界。
「好きやで、なつみちゃん」
お互いの額をそっと合わせる。
「お願いやから、今日あったこと、無かったことにせんとって。ボクは忘れたないから。キミに触れたこと…」
「隊長…、でも、…ぼくは、隊長の弟みたいなものですよ」
「せやね」
「乱菊さんは…」
「たまにはボクかて、間違えたいわ」
たまには。
「なつみちゃんは、そういうとき無いん?」
市丸は身体を離して、膝立ちから正座になった。
なつみは考える。これまで、なつみにとっていちばんは京楽だった。大好きな人だった。でも同じくらいに大好きな気持ちを、市丸にも抱いていた。しかし彼には乱菊がいた。だから、京楽に向いていたのに。男になった今、京楽のことは諦めなければならなくなった。そして市丸が、自分のことを好きだと言ってくれた。外見ではなく、なつみという同一性から。この上ない理想が、すぐ目の前にある。なのに、なつみは答えられなかった。性別など、問題ではない。誰を愛するかだ。相応しい運命の人は、きっと自分ではない。決められないほど迷えるのだから。
そんななつみを察して、市丸は手を差し伸べた。
「なつみちゃん、今晩だけ…」
「……?」
「今晩だけ、間違おうか。ボクら」
「……///」
「明日、朝んなったら、今まで通りの兄弟に戻ろ。せやから…、今晩だけ。あかん…?」
耐えられなくて、なつみは目をぎゅっと閉じた。しかし、返事は。
「…はいッ///」
消えそうなくらいだったが、頷いて、市丸に賛成した。
「今晩だけ…です」
手が、頬に届く。包む。
「ありがと…。行こか」
2人は静かに、手を繋いで寝室へ戻っていく。恋のときめきと、本命ではない人を相手にする背徳感で、心がざわついていた。
部屋の明かりは消えている。これから行われることは間違いだから、秘密にしておかなければならない。夜がこんなに優しいとは。
「落ちてたイチゴのパンツ見てな。なつみちゃんはなつみちゃんやんかーって、思ったんよ」
「何ですか、それ」
「男の子相手でも、それがなつみちゃんやったら、ボクには有りってこと」
「なぁ、さっきボクがしたげたこと再現してや」
「なッ、ヤですよ!///」
「復習や、復習。あ、そうや。ついでに予習もしよか」
「予習?」
「女の子とするときは、キミがリードしたらなあかんのよ。受けてばっかしじゃあかん。攻めも覚えなさい。そして、ゴムの着け方を覚えなさい!」
「💦💦💦」
「ヤバっ…、あの子ら、これされたん?」
「だから、ぼくは覚えてないんですって💢」
「ヤバぁ…。堪らんな」
「…ッ💢///」
「もっとしてや(笑)」
「💢💦///」
そうして夜は更けていく。ときに甘く、ときに激しく、ときにお勉強しながら、2人は身体を重ねた。不思議で曖昧な関係を楽しみながら。
翌朝。
「ナ゛ァーーーーーッ‼️‼️‼️⁉️😱」
なつみの絶叫から始まった。
「叫んだかて、遅刻やんか。もう諦めようやぁ…」
もぞもぞとベッドから出たくない市丸。
「諦めるとか、そういう問題じゃないです‼️」
跳び起きて、死覇装を急いで取り出す。
「早く起きて❗️お兄ちゃん❗️」
「🥱」
なつみは着替えずに寝室を出ていった。
(お兄ちゃん…な)
2人の絆は夜を経て、より強く結ばれたらしい。その絆が緩むことはないだろう。そして、それより先に進むこともないのだろう。これが彼らの愛のカタチだ。
「ムギャアァアアーーーッ‼️‼️‼️」
今度は浴室から。
叫び声の主の様子を見に行くと、シャワーを浴びようと全裸になっていたのだが、胸元を見て絶望していた。
「今度は何なん?」
「これッ‼️これッ‼️ぶつけた覚え無いのに、赤い痣ができてます‼️今度こそ異常発生ですぅ‼️‼️😫」
浴室の扉に寄りかかり、市丸は鼻で笑っていた。
「ほんまに…。それな、キスマークや」
「え⁉️」
「チューッて肌吸うと、そういうのがつくんよ。ボクの仕業😄」
「病気のサインじゃないんですか」
「せや。どっちかっちゅーと、『なつみちゃんはボクのもん』のサイン」
それを聞いてムスッとしたなつみは、黙ってキスマークを回道で治した。
「あ!消してもうた!ケチ!」
「うるさい!隊長もシャワーするなら早く脱いでください!」
先に浴びたくて、市丸を脱衣所に追い出すなつみ。
(ま、背中のは残ってるからええか)
(『自分のもの』だなんて。石けんの匂いで一緒なんだから、充分じゃん‼️)
もうこの香りに慣れてしまって、以前のように特別には思えなくなっていたが、きっと周りの人たちからしたら、なつみが市丸にとって特別な存在なのだとわかってしまうのだろう。
(やり直ししないって、ちゃんと決めてたのに。わざわざアト残すなんて、どういうつもりなんだろ。兄弟に戻るって言ったもん。普通にしよう❗️ナイショナイショだ❗️)
市丸とシャワーを交代して、なつみはせっせと身支度を開始する。…かと思われたが、ちょっと待った。何だか、ある曲を無性に聞きたくなってきた。伝令神機に入っているので、それでかけようか。いや、市丸に聞かれるのは恥ずかしいから、やめておこう。ここは、脳内再生と鼻歌で我慢だ。
「ふ〜ふふ〜ふんふ〜ふふふふん♪」
ご丁寧にイントロからだ。
(ご機嫌やな☺️)
なつみの鼻歌ではわからないだろうイントロクイズの答えを、こっそりお伝えしよう。正解はこちら。
KinKi Kids『Anniversary』
星の数ほどいる 人のなかでボクは
偶然、あの日出逢い 恋に落ちたよ
愛が苦しみだと もし教えられても
ボクは迷わずに キミを選んだだろう
この空で 数え切れない星が
生まれては 人知れず消えてゆくよ
「キミヲアイシテル」 そんなひとことが
飾らずに言えたなら どんなに楽なんだろう
もう二度とキミを 泣かせたくないから
何気ない今日と云う日が ボクらの記念日
なんか不思議なんだ キミがボクを好きな
理由がわからないよ…そんなもんかな?
趣味や仕草だって 違っているけれど
最近、似てきた…と 友達に言われる
嘘吐いて キミを泣かせたあの日
ただボクは黙ったまま 何も出来ず
キミがいるだけで ありふれた日々が
鮮やかに彩られ 愛が満ちてゆくよ
この気持ちだけは 忘れたくないから
何気ない今日と云う日が ボクらの記念日
「キミヲアイシテル」 そんなひとことが
飾らずに言えたなら どんなに楽なんだろう
もう二度とキミを 泣かせたくないから
何気ない今日と云う日が ボクらの記念日
「隊長ぉー‼️はやくぅ‼️」
玄関で足踏みパタパタ。
「ちょっと待ってや〜。急かさんといてー」
草鞋を履く。
「なつみちゃん、忘れ物してるんとちゃう?確認してや」
「ちゃんと全部持ちましたよぉ」
と言いつつ、鞄を見る。
「だいじょーぶです❗もう️行きますよー」
準備万端のなつみはノブに手をかけた。が、開けるのを阻止されてしまった。後ろから腕を掴まれてしまったのだ。何事かと振り返ると。
ちゅ…
「ほら、忘れとった。いってきますのチュー」
イタズラな笑顔。
「あわわわわ💦」
固まるなつみを他所に、市丸は扉を開けて、先に外に出ていってしまった。扉に手をかけたまま言う。
「こっからお仕事モードな♪」
ズルい男だ。
「ムキューーーッ😖💓💦」
慌てて後に続き、扉を閉めてもらい、落ち着かない気持ちで、なつみは鍵をかけた。貸してもらっている合鍵で。