第六章
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謎ブレンドで充分にぽかぽかした2人は、コップをマユリに返した。
「で、何で『毎回』なんだ?何のことだよ」
先程のなつみとマユリのやり取りに、疑問を抱く海燕。なつみは嫌そうに答えてあげた。
「この世界はループしてるってことですよ」
「ループ⁉︎」
「あるはずないのに、同じタイミングでいろんなことがあったような気がしているじゃないですか。繰り返しが発生してるんですよ。たぶん、ちょっとずつ元の世界でしたことと違いが出てくるから、昨日から一昨日に戻る度に、どんどん別パターンが生まれてたんですよ。寝る前の行動は変わらなかったようですが。一昨日、ぼく、市丸隊長と会ったのが、1回だったか、2回だったか、曖昧なんですよね。世界が自然と回ってけるように、ループして調整されたって感じですかね」
「君は賢いネ。その説もひとつだ。しかし、それだけでは、私にお茶を淹れさせるだけのインパクトは無いヨ」
「えぇ〜。ループってびっくりですけど」
「世界が存在を保つために起こしたというのも確かだが、私は誰かの意識が働いたことも起因していると考えているんだヨ」
「え⁉️ぼくみたいに、飛べる人がいるってことですか⁉️」
「特定できてるんですか」
徐々に状況把握し始めた海燕も、この話の流れに追いついてきた。
「それは見つけちゃっちゃ驚きですね。ずばり誰なんですか!」
なつみは前のめり。マユリの回答を待つ。沈黙の間。某4択クイズ番組のように、ためて、ためて…。
「……、それは知らんネ」
ガクッ💦
「わかんないんですか😅」
「わからんヨ」
さも当然。
「誰の仕業か特定には至っていないが、そこが更に興味深い憶測への手掛かりなんだヨ」
「「🤔❓❓❓🤔」」
わからないのに、面白い?お利口ななつみも今ははてなマークが浮いている。
「フフッ、考えるというのは大事なことだヨ。だが、夜も更けてきたからネ。今日のところは、親切に説明してあげるヨ。寝不足は身体に毒だからネ」
「ループのきっかけ……」
「そう。やり直しのきっかけだヨ。それは後悔だ。『あの時ああしていれば、こんなことにはならなかった』そう思ったら、何を夢見るかネ?想像に容易いヨ。過去に戻って、己の失敗を回避するということ。それは誰しもに覚えのあることだヨ」
「誰しもに……、ああ‼️」
「辿り着いたかネ?」
「お茶淹れなきゃ🤭」
「だろうネ」
「それは冗談だろ」
「もちろんです」「当然だヨ」
なつみとマユリはクスクスと笑っていた。
「でも、誰も知らないですよね。できるだなんて、騒いでる人見たことないもん。けどできる。無意識に」
「無意識だ。そのおかげで確かな情報を集めるのが、不可能に近いんだヨ。気が遠くなるネ」
「待て待て、待ってくださいよ。説明するって言ったじゃないすか」
海燕はまた置いてけぼり。
「ぼくももう少し説明が欲しいです。こんな凄いことが起きてるかもしれないのに、何の騒ぎも無いなんて、考えられないですもん。何で?どうやって」
「良いかネ?生物、取り分け動物は、睡眠をいくらか取らなければ、生命活動を維持していけないんだヨ。多くの私たちは、夜に眠る。眠りに落ちてしまえば、意識は奥底に沈んでしまう。その時瞼の裏に見るのが夢だヨ。夢は記憶の再現がほとんどではないかネ?長く生きていく程に、何万回と夢を見ることになる。そうすると、遠い昔に現実としてあった事も、夢の記憶に埋もれてしまう。眠っている認識があるのも相まって、人は夢で見た事を疑ったりはしないんだヨ。長くは覚えていられないというのも、なんとも都合の良いことだ。どれが思い出で、どれがただの幻か、判断が付かなくなる。そして、その夢の中に、現実のやり直しが紛れ込んでいたとしても、夢だと片付けてしまうネ。仲間内で思い出話をしていて、自分だけ記憶違いをしているのが発覚した経験は無いかネ?たまにあるだろう。忘却や勘違いかもしれないが、ループという不思議なことが起きていたとしても、否定することはできないんだヨ」
「それがみんなにできる能力として備わってて、どのタイミングで発動するかは、わかんないってことですね」
「俺にもできんのか!」
「ぼくも眠ると飛べるので、そこは一緒ですね。ぼくは特別すぎじゃないんだ〜。ふむふむ、でも、そっか。ぼくのはタイムトラベルだけど、みんなのはタイムリープなのか。そっちの方が良いのかな?」
「何だ、それ。違うのか?」
「違いますよ。ぼくたちがしたのは、タイムトラベルです。行き先には、その時間の自分がいて、同時に2人いる状態になっちゃう。いろいろとバレたらヤバくて、問題が起きやすいです。だけど、タイムリープは、意識だけが移動して、飛んだ先の自分の身体の中に入るんで、下手なこと言わなきゃバレませんよ」
「へぇー。便利だな」
「デジャブとか、ドッペルゲンガーの話は聞きませんから、タイムリープが有力説ですね。1人でしか飛べないのがさみしいとこですけど、こそこそしなくて良いのは楽ですよ」
うんうんと頷いて、なつみはタイムリープのメリットに羨んでいたが、とあることに気付いて、お茶を淹れる勢いの衝撃に襲われ、海燕にくっ付いた。
「ああーーーッ‼️‼️👉」
「何だよッ⁉️💦」
ビシビシとマユリに指差すなつみ。
「この人❗️タイムリープしようとしてる‼️‼️」
「はぁ⁉️」
「……😏」
「笑ってるし‼️‼️」
図星のようで、マユリはニヤついていた。
「ダメですよ❗️総隊長との約束破っちゃ❗️」
「何度も言わせないでくれ給え。総隊長の命令は、あくまで君の真似事を禁じるものだヨ」
「例え方法が違っても、時間を超えるのは同じです!やり方違うから良いもんなんて、屁理屈ダメです!怒られても知りませんよ」
「怒られて済むだけなら良いがな」
「まぁ、そう固いことを言うな。まだ構想を練っている段階に過ぎないからネ。君のように自由自在に飛び超えられるようになるかは、定かではない」
海燕となつみはムスッとして、マユリを睨んだ。そしてなつみには、その先も見えてしまっていた。
「全く、涅隊長ともあろう人が、自信も無く突飛なことに手を出そうとしてるんですか?」
お見通しを食らったマユリは、目を閉じてなつみの言葉の続きを待った。
「ぼくはもう今回のでこりごりなのにぃ!」
両手を腰に添えて、プンスカのポーズ。
「そう怒らないでくれ給え」
「お断りですッ😤」
「何を揉めてんだよ」
「揉めてないヨ」
「揉めてます‼️」
マユリは頬杖ついて拗ねた。
「……ケチだネ」
「💢」
相手は隊長であるため、握り拳と変顔のみで憤りを表すなつみ。
「抑えろって😅」
「もぉー。いけないことするって、ちゃんと思ってるんですよ。総隊長に見つからないように、こっそりやるつもりなんです。こっそりだから、ひとりでやんなきゃだけど、万が一、タイムリープで失敗するといけないから、そのとき助けに来るように、ぼくに頼みに来たんですよね。お茶持って‼️」
膝に伸ばした腕を置き、その内側でうずくまり、マユリが「フフフッ」と笑っているのが肩でわかった。
「私は見捨てられてしまうのかネ?」
「疲れちゃうのヤです。巻き込まないでください」ぷんぷん
「残念だネ。では仕方ない。君は諦めて、志波にしておくヨ」
「何で俺⁉︎」
「なァに、心配いらんヨ。単なる保険だからネ」
「『どぉーしても』が3回つくくらいどうしても助けが必要なときだけ、ぼくを呼んでください」
「おや、嬉しい譲歩だネ。何歩かネ?」
「おいしいお茶をいただいてしまったので❗️」
「フフフッ、ありがとう」
お礼になでなでしてやった。
「まーた厄介なことが起きそうだな」
「厄介ごとなど、この世に産まれ落ちた瞬間から巻き込まれているヨ。正義だの、陰謀だの」
「恋だの、愛だの😁」
キシシッとなつみが笑う。
「時間を支配できたところで、いつまでも未来は未知なるモノ。上手く悪用できるとは思っていないから、安心し給え」
何も慰めになっていないが。
「にしても、時間軸ってややこしいですね。よくわかんないや」ふーんと息を吐いて、広い星空を見上げた。「SFの小説とか映画とかだと、時間軸の流れは2種類に分けられるじゃないですか。
いっこは、運命っていう絶対的な時間軸の考えで、タイムトラベルをすることも最初から組まれてることだから、未来は変えられないっていうのと。
もいっこは、ぼくがみなさんにお話ししたパラレルワールドのタイプ。ある出来事が分岐点になって、運命とは違う別の時間軸が生まれるもの。過去に戻って未来を変えられるタイプです。ぼくがしたのが、それのはず。
なのに、他の人たちによるループもあって、時間軸はクルクル。過去、現在、未来って、真っ直ぐに時間が流れてるわけじゃないんですよ。ややこしくて考えるのイヤになります😑」
「嫌ならば、考えなければ良いことだヨ。正体を見つけ出したところで、我々が何かをするわけでもないだろうからネ。
なつみの言う通り、時間軸は複雑に進行しているらしいヨ。今挙げた説はどれも当てはまる。
3つのうちのどれかであって、同時に起きるわけが無いだと?そんな考えはつまらんネ。ある者がひとつの事象を発見し、それが単なる一部と知らず、あたかも全体がそうであるように話してしまう。早合点にも甚だしい、承認欲求の強い誇示なだけだヨ、そんなもの。世界は複雑で当たり前だ。事象がひとつであっても、それを見た人数分、千差万別の世界観があるのだからネ。
何かが何かでなければならない、常識という呪いに囚われすぎだヨ。だがまぁ、その呪いのおかげで、人々は諦められているのだがネ。過去には戻れないのが、この世の常識。そして人は失敗から学び、反省し、その先にある成功へと結びつける。後悔など、そう長続きはしないんだヨ。返る必要を感じていないのが大半だから、皆、宝の持ち腐れをしているんじゃあないかネ。
難しく考えたくなければ、皆のように常識に流されるのも、あながち悪くないだろう。過去から未来へと進む大きな流れは確かなものだヨ。訳もなく、当たり前に私たちは、今という現在に存在しているしネ。ありがたく、懸命に過ごさせてもらおうじゃないか。それを積み重ねて、一生懸命なのだろう?
時間とは、誰しもに平等に与えられている。生きているなら、必ず目の前にあるんだヨ。掴めやしないし、気付けば流れ去ってしまう。とても儚く尊いものだ。
私は未来を変えるものと思っていないヨ。今を最良のものにして、それを重ねて創り上げるものだと考えている。だから大切に過ごさなければネ。
それから、私たちの身体も、この世界も、それぞれ唯一の存在らしいんだヨ。ぞんざいにしないことを、オススメするヨ」
「え⁉️パラレルワールドできてても⁉️」
「君は君だろう?」
「そっ、そ、そうですよ」
「大事にしなさい。どんなに凄いことができても、不死身ではないんだヨ」
なつみは、「だいじだいじ」と両手のぐーを軽く前後にキュッキュとフリフリして、大事に今を生きていく決意を唱えた。
「世界はひとつか。なら、みんなもお前と思い出を共有してるってことじゃないか?思い出せるかどうかが問題なだけでよ。だったら、めちゃくちゃ普通だな」
「そうだヨ。君は決して、独りではない。どの記憶も、ひとつの心にまとまっていくんだヨ」
慰めてもらえているのだろうが、どうしても頭の中がこんがらがってしまい、スッキリしない。
(ワンチャン、あれアリ?)
むーんと、右手の親指と人差し指で形作ったLを口元に当てて、険しい表情のなつみ。
「最後にもうひとつ、確かなことを明らかにしておくとしよう。なつみがこうして覚醒したということは、つまり、世界は志波海燕を生かすことに決めたというわけだ。
自分が存在してはならないと、二度と私の前で言うんじゃないヨ。耳障りだ」
「なっ‼️」
「みみざわりだ😆」
「うるせぇッ」
同じセリフを吐いただけなのに、なつみは海燕におでこを叩かれてしまった。
「イテッ😣」
マユリは立ち上がり、尻の辺りを払った。
「そろそろ帰るとするヨ。喋り疲れてしまった」
「でしょうね」
「ああ、そうだ、なつみ。例の頼み、本格的に進められそうだヨ」
「ほぇっ⁉️マジっすか‼️」
「マジだヨ。だからあまりほいほいと有給を消費しないでくれ給え」
「は、はい❗️わかりました‼️」
「おやすみ」
「おやすみなさい‼️」
「おやすみなさい」
そしてマユリは姿を消した。
「わぁ〜い」
なつみは嬉しそうに、藤井風の『旅路』を奏でるウクレレを回収し、斬魄刀を納めた。
「頼みって何だよ。怪しいな」
「ぼくのいちばん叶えたい夢ですよ😁」
新章の予感に心が弾むなつみであった。
「良かったですね。盗撮室が封鎖できて」
「ああ。これでようやく、全ての監視の目を潰せたよ」
「なつみちゃんのこと、どうするつもりですか?」
「…、安心してくれ。殺しはしないよ。連れて行くつもりなんだ。その方が嬉しいんだろ?ギン」
「まぁ、そうですね」
「要はどう思う?」
「ここにいては、彼女の純粋な正義が汚れてしまいます。賛成ですよ」
「それは良かった。なら、新しく計画を組み込まなければね」
ここにも新たな展開が。
「で、何で『毎回』なんだ?何のことだよ」
先程のなつみとマユリのやり取りに、疑問を抱く海燕。なつみは嫌そうに答えてあげた。
「この世界はループしてるってことですよ」
「ループ⁉︎」
「あるはずないのに、同じタイミングでいろんなことがあったような気がしているじゃないですか。繰り返しが発生してるんですよ。たぶん、ちょっとずつ元の世界でしたことと違いが出てくるから、昨日から一昨日に戻る度に、どんどん別パターンが生まれてたんですよ。寝る前の行動は変わらなかったようですが。一昨日、ぼく、市丸隊長と会ったのが、1回だったか、2回だったか、曖昧なんですよね。世界が自然と回ってけるように、ループして調整されたって感じですかね」
「君は賢いネ。その説もひとつだ。しかし、それだけでは、私にお茶を淹れさせるだけのインパクトは無いヨ」
「えぇ〜。ループってびっくりですけど」
「世界が存在を保つために起こしたというのも確かだが、私は誰かの意識が働いたことも起因していると考えているんだヨ」
「え⁉️ぼくみたいに、飛べる人がいるってことですか⁉️」
「特定できてるんですか」
徐々に状況把握し始めた海燕も、この話の流れに追いついてきた。
「それは見つけちゃっちゃ驚きですね。ずばり誰なんですか!」
なつみは前のめり。マユリの回答を待つ。沈黙の間。某4択クイズ番組のように、ためて、ためて…。
「……、それは知らんネ」
ガクッ💦
「わかんないんですか😅」
「わからんヨ」
さも当然。
「誰の仕業か特定には至っていないが、そこが更に興味深い憶測への手掛かりなんだヨ」
「「🤔❓❓❓🤔」」
わからないのに、面白い?お利口ななつみも今ははてなマークが浮いている。
「フフッ、考えるというのは大事なことだヨ。だが、夜も更けてきたからネ。今日のところは、親切に説明してあげるヨ。寝不足は身体に毒だからネ」
「ループのきっかけ……」
「そう。やり直しのきっかけだヨ。それは後悔だ。『あの時ああしていれば、こんなことにはならなかった』そう思ったら、何を夢見るかネ?想像に容易いヨ。過去に戻って、己の失敗を回避するということ。それは誰しもに覚えのあることだヨ」
「誰しもに……、ああ‼️」
「辿り着いたかネ?」
「お茶淹れなきゃ🤭」
「だろうネ」
「それは冗談だろ」
「もちろんです」「当然だヨ」
なつみとマユリはクスクスと笑っていた。
「でも、誰も知らないですよね。できるだなんて、騒いでる人見たことないもん。けどできる。無意識に」
「無意識だ。そのおかげで確かな情報を集めるのが、不可能に近いんだヨ。気が遠くなるネ」
「待て待て、待ってくださいよ。説明するって言ったじゃないすか」
海燕はまた置いてけぼり。
「ぼくももう少し説明が欲しいです。こんな凄いことが起きてるかもしれないのに、何の騒ぎも無いなんて、考えられないですもん。何で?どうやって」
「良いかネ?生物、取り分け動物は、睡眠をいくらか取らなければ、生命活動を維持していけないんだヨ。多くの私たちは、夜に眠る。眠りに落ちてしまえば、意識は奥底に沈んでしまう。その時瞼の裏に見るのが夢だヨ。夢は記憶の再現がほとんどではないかネ?長く生きていく程に、何万回と夢を見ることになる。そうすると、遠い昔に現実としてあった事も、夢の記憶に埋もれてしまう。眠っている認識があるのも相まって、人は夢で見た事を疑ったりはしないんだヨ。長くは覚えていられないというのも、なんとも都合の良いことだ。どれが思い出で、どれがただの幻か、判断が付かなくなる。そして、その夢の中に、現実のやり直しが紛れ込んでいたとしても、夢だと片付けてしまうネ。仲間内で思い出話をしていて、自分だけ記憶違いをしているのが発覚した経験は無いかネ?たまにあるだろう。忘却や勘違いかもしれないが、ループという不思議なことが起きていたとしても、否定することはできないんだヨ」
「それがみんなにできる能力として備わってて、どのタイミングで発動するかは、わかんないってことですね」
「俺にもできんのか!」
「ぼくも眠ると飛べるので、そこは一緒ですね。ぼくは特別すぎじゃないんだ〜。ふむふむ、でも、そっか。ぼくのはタイムトラベルだけど、みんなのはタイムリープなのか。そっちの方が良いのかな?」
「何だ、それ。違うのか?」
「違いますよ。ぼくたちがしたのは、タイムトラベルです。行き先には、その時間の自分がいて、同時に2人いる状態になっちゃう。いろいろとバレたらヤバくて、問題が起きやすいです。だけど、タイムリープは、意識だけが移動して、飛んだ先の自分の身体の中に入るんで、下手なこと言わなきゃバレませんよ」
「へぇー。便利だな」
「デジャブとか、ドッペルゲンガーの話は聞きませんから、タイムリープが有力説ですね。1人でしか飛べないのがさみしいとこですけど、こそこそしなくて良いのは楽ですよ」
うんうんと頷いて、なつみはタイムリープのメリットに羨んでいたが、とあることに気付いて、お茶を淹れる勢いの衝撃に襲われ、海燕にくっ付いた。
「ああーーーッ‼️‼️👉」
「何だよッ⁉️💦」
ビシビシとマユリに指差すなつみ。
「この人❗️タイムリープしようとしてる‼️‼️」
「はぁ⁉️」
「……😏」
「笑ってるし‼️‼️」
図星のようで、マユリはニヤついていた。
「ダメですよ❗️総隊長との約束破っちゃ❗️」
「何度も言わせないでくれ給え。総隊長の命令は、あくまで君の真似事を禁じるものだヨ」
「例え方法が違っても、時間を超えるのは同じです!やり方違うから良いもんなんて、屁理屈ダメです!怒られても知りませんよ」
「怒られて済むだけなら良いがな」
「まぁ、そう固いことを言うな。まだ構想を練っている段階に過ぎないからネ。君のように自由自在に飛び超えられるようになるかは、定かではない」
海燕となつみはムスッとして、マユリを睨んだ。そしてなつみには、その先も見えてしまっていた。
「全く、涅隊長ともあろう人が、自信も無く突飛なことに手を出そうとしてるんですか?」
お見通しを食らったマユリは、目を閉じてなつみの言葉の続きを待った。
「ぼくはもう今回のでこりごりなのにぃ!」
両手を腰に添えて、プンスカのポーズ。
「そう怒らないでくれ給え」
「お断りですッ😤」
「何を揉めてんだよ」
「揉めてないヨ」
「揉めてます‼️」
マユリは頬杖ついて拗ねた。
「……ケチだネ」
「💢」
相手は隊長であるため、握り拳と変顔のみで憤りを表すなつみ。
「抑えろって😅」
「もぉー。いけないことするって、ちゃんと思ってるんですよ。総隊長に見つからないように、こっそりやるつもりなんです。こっそりだから、ひとりでやんなきゃだけど、万が一、タイムリープで失敗するといけないから、そのとき助けに来るように、ぼくに頼みに来たんですよね。お茶持って‼️」
膝に伸ばした腕を置き、その内側でうずくまり、マユリが「フフフッ」と笑っているのが肩でわかった。
「私は見捨てられてしまうのかネ?」
「疲れちゃうのヤです。巻き込まないでください」ぷんぷん
「残念だネ。では仕方ない。君は諦めて、志波にしておくヨ」
「何で俺⁉︎」
「なァに、心配いらんヨ。単なる保険だからネ」
「『どぉーしても』が3回つくくらいどうしても助けが必要なときだけ、ぼくを呼んでください」
「おや、嬉しい譲歩だネ。何歩かネ?」
「おいしいお茶をいただいてしまったので❗️」
「フフフッ、ありがとう」
お礼になでなでしてやった。
「まーた厄介なことが起きそうだな」
「厄介ごとなど、この世に産まれ落ちた瞬間から巻き込まれているヨ。正義だの、陰謀だの」
「恋だの、愛だの😁」
キシシッとなつみが笑う。
「時間を支配できたところで、いつまでも未来は未知なるモノ。上手く悪用できるとは思っていないから、安心し給え」
何も慰めになっていないが。
「にしても、時間軸ってややこしいですね。よくわかんないや」ふーんと息を吐いて、広い星空を見上げた。「SFの小説とか映画とかだと、時間軸の流れは2種類に分けられるじゃないですか。
いっこは、運命っていう絶対的な時間軸の考えで、タイムトラベルをすることも最初から組まれてることだから、未来は変えられないっていうのと。
もいっこは、ぼくがみなさんにお話ししたパラレルワールドのタイプ。ある出来事が分岐点になって、運命とは違う別の時間軸が生まれるもの。過去に戻って未来を変えられるタイプです。ぼくがしたのが、それのはず。
なのに、他の人たちによるループもあって、時間軸はクルクル。過去、現在、未来って、真っ直ぐに時間が流れてるわけじゃないんですよ。ややこしくて考えるのイヤになります😑」
「嫌ならば、考えなければ良いことだヨ。正体を見つけ出したところで、我々が何かをするわけでもないだろうからネ。
なつみの言う通り、時間軸は複雑に進行しているらしいヨ。今挙げた説はどれも当てはまる。
3つのうちのどれかであって、同時に起きるわけが無いだと?そんな考えはつまらんネ。ある者がひとつの事象を発見し、それが単なる一部と知らず、あたかも全体がそうであるように話してしまう。早合点にも甚だしい、承認欲求の強い誇示なだけだヨ、そんなもの。世界は複雑で当たり前だ。事象がひとつであっても、それを見た人数分、千差万別の世界観があるのだからネ。
何かが何かでなければならない、常識という呪いに囚われすぎだヨ。だがまぁ、その呪いのおかげで、人々は諦められているのだがネ。過去には戻れないのが、この世の常識。そして人は失敗から学び、反省し、その先にある成功へと結びつける。後悔など、そう長続きはしないんだヨ。返る必要を感じていないのが大半だから、皆、宝の持ち腐れをしているんじゃあないかネ。
難しく考えたくなければ、皆のように常識に流されるのも、あながち悪くないだろう。過去から未来へと進む大きな流れは確かなものだヨ。訳もなく、当たり前に私たちは、今という現在に存在しているしネ。ありがたく、懸命に過ごさせてもらおうじゃないか。それを積み重ねて、一生懸命なのだろう?
時間とは、誰しもに平等に与えられている。生きているなら、必ず目の前にあるんだヨ。掴めやしないし、気付けば流れ去ってしまう。とても儚く尊いものだ。
私は未来を変えるものと思っていないヨ。今を最良のものにして、それを重ねて創り上げるものだと考えている。だから大切に過ごさなければネ。
それから、私たちの身体も、この世界も、それぞれ唯一の存在らしいんだヨ。ぞんざいにしないことを、オススメするヨ」
「え⁉️パラレルワールドできてても⁉️」
「君は君だろう?」
「そっ、そ、そうですよ」
「大事にしなさい。どんなに凄いことができても、不死身ではないんだヨ」
なつみは、「だいじだいじ」と両手のぐーを軽く前後にキュッキュとフリフリして、大事に今を生きていく決意を唱えた。
「世界はひとつか。なら、みんなもお前と思い出を共有してるってことじゃないか?思い出せるかどうかが問題なだけでよ。だったら、めちゃくちゃ普通だな」
「そうだヨ。君は決して、独りではない。どの記憶も、ひとつの心にまとまっていくんだヨ」
慰めてもらえているのだろうが、どうしても頭の中がこんがらがってしまい、スッキリしない。
(ワンチャン、あれアリ?)
むーんと、右手の親指と人差し指で形作ったLを口元に当てて、険しい表情のなつみ。
「最後にもうひとつ、確かなことを明らかにしておくとしよう。なつみがこうして覚醒したということは、つまり、世界は志波海燕を生かすことに決めたというわけだ。
自分が存在してはならないと、二度と私の前で言うんじゃないヨ。耳障りだ」
「なっ‼️」
「みみざわりだ😆」
「うるせぇッ」
同じセリフを吐いただけなのに、なつみは海燕におでこを叩かれてしまった。
「イテッ😣」
マユリは立ち上がり、尻の辺りを払った。
「そろそろ帰るとするヨ。喋り疲れてしまった」
「でしょうね」
「ああ、そうだ、なつみ。例の頼み、本格的に進められそうだヨ」
「ほぇっ⁉️マジっすか‼️」
「マジだヨ。だからあまりほいほいと有給を消費しないでくれ給え」
「は、はい❗️わかりました‼️」
「おやすみ」
「おやすみなさい‼️」
「おやすみなさい」
そしてマユリは姿を消した。
「わぁ〜い」
なつみは嬉しそうに、藤井風の『旅路』を奏でるウクレレを回収し、斬魄刀を納めた。
「頼みって何だよ。怪しいな」
「ぼくのいちばん叶えたい夢ですよ😁」
新章の予感に心が弾むなつみであった。
「良かったですね。盗撮室が封鎖できて」
「ああ。これでようやく、全ての監視の目を潰せたよ」
「なつみちゃんのこと、どうするつもりですか?」
「…、安心してくれ。殺しはしないよ。連れて行くつもりなんだ。その方が嬉しいんだろ?ギン」
「まぁ、そうですね」
「要はどう思う?」
「ここにいては、彼女の純粋な正義が汚れてしまいます。賛成ですよ」
「それは良かった。なら、新しく計画を組み込まなければね」
ここにも新たな展開が。