第六章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ん、むんむん、んー…」
「あ、起きたかも」
「ふぁ〜🥱💤」
「大きなあくびやなぁ。赤ちゃんみたいや😊」
「むにゃむにゃ…」
「お、起き上がった」
「んー…?おょ…」
「目がしょぼしょぼしてるね」
「むぉっ」
起きたので。
「おはよう、なつみ」
「おはよう、木之本」
「おはよう、なつみちゃん」
「おはよー、みんな。おはようございます、たいちょう」
「おはよう、なつみちゃん」
「⁉️…///おはようございます、京楽隊長」
寝癖がぴょんぴょん、窓から吹いてきた風になびいていた。朗らかな病室で、なつみは今、目覚めたのだった。
美沙にお世話してもらいながら、なつみはどうなったのかお話を聞く。
「はい、水」
「くぴくぴ。ぷはぁ」
「はい、顔拭くよ」
「うぇ〜い」
「はい、髪とかすから、後ろ向いて」
「あいっ」
シュッシュッと霧吹きで髪を濡らす。それからスッスッとブラッシング。
「それで、今は何年何月何日の何時なんですか」
髪をすく度に、ぐいっふーと前後に揺れる。
「それがなぁ、なつみちゃん。あれから1週間経ってしもたんよ」
「😱‼️⁉️」
「はい、横向かない」
なつみから見て、ベッドの右に美沙がいて、ベッドを囲むように同期の6人がいて、その向こう側の脚を伸ばす方に市丸と京楽がいて、なつみは美沙に背を向けて座っていたので、右方向へギャバッと首だけ振り向いた。それを美沙が両手でホールドして、正面に直す。その正面に座るのは李空。
「冗談に決まってんだろ、バーカ」
「フシーッ‼️💢」
襲いかかろうとしたが、首根っこ掴まれて止められる。
「やめなさい」
「むぅ‼️」
「1週間も起きずにいたなら、お前が目ぇ覚ました瞬間に泣いて喜んでやってるよ」
「っ、李空…🥺」
「でも違ぇーから、人騒がせな野郎だなって思うだけ」
「李空ぅーッ👊💢」
「じっとしなさい‼️」
美沙の一喝で大人しくするなつみ。
「覚えてろよ、このヤロー」
「はいはい」
喧嘩するほど仲が良い2人だ。相変わらずで、見ていてほっこりする。当人たちも。
「なつみちゃん、安心して。キミらが過去に飛んだのは、まだ昨日の夜のことなんだ。なつみちゃんがこっちに帰ってきたのが、それから2時間後くらいで、今はお昼過ぎ。みんな急いでお昼ご飯食べてから、お見舞いに戻ってきたんだよ。どう?身体の調子は。怠くない?」
「はい!元気いっぱいです😊」
「よかった😌」
腕を上げて曲げ、げんきげんきのポーズをしてみせる。
「あ〜、なんかお前ののんきな顔見てっと、眠くなってきた」
「ね。こっちに睡魔が襲ってきてるよ」
お友だちらにふわふわと眠気が降りてきていた。
「せやから言うたやろ?無理せんでええよって」
「人手が必要だったじゃないですか」
「ほんま、なつみちゃんに優しいんやから」なつみに視線を移す。「あんな、なつみちゃんが戻ったいう連絡してから、結構早くみんな集まってくれてな。真夜中なのにやで?キミに力分けてくれたんよ。この子らも手伝ってくれたし、2回目やから勝手がわかってたで、昨日より上手に入れられたわ」
「更木隊長が来たのは、明るくなってからなんだけどね。彼が一気に注入しても耐えられるだけの土台は、それまでに間に合わせられてたよ。みんなに感謝しないとね」
なんだか誇らしげなお友だち。
「ありがとぉ〜、美沙ちゃーん」
なのに、きゅっと抱きついてお礼を言ったのは美沙の方。
「うん。良いよ。あんたのためだもん」
ちょっとご不満な周りの人達。
「木之本、俺らにも『ありがとう』は?」
「ひひっ」
自分にも抱きつけと構えたハルの手を掴んで、上下ににぎにぎ。
「ありがとっ、ハル!レンも、クーちゃんも、ケイジも、尾田も、李空もな。みんな、ありがとう」
その笑顔で報われる、何もかも。
「なぁなぁ!お前、昨日メロン食ったんだろ?どうだった。うまかったか?」
レンが前のめりできいてきた。
「あぁーッ‼️そうそうっ、そうなんだよな!木の箱に入って、高級そうだったから、てっきり朽木隊長が持ってきたものかと思ったんだ。けど、お前らだったんだよな。ありがとう。おいしかったよ😋」
「フフッ、誓いのメロンだったね。ボクもいただいたよ。おいしかった」
「あたし、もうびっくりしちゃってさ。急にこの人たちが『なつみにメロン買うから、ちょっと協力して』って頼んできたんだもん」
「仲間外れにしちゃいけないかなーと思って、美沙ちゃんにも頼んだんだ」
「そんな高かったの⁉️」
「レンが、箱入りじゃないとダメだって言うんだもん」
「当たり前だろ?『メロンです。請求書です』ってやりたかったんだもん」
「さすがレン。ふざけるときは全力で、だな」
「おうよ!😤」
「なぁ、何でそんなにメロンにこだわったん?」
「それはですね。だいぶ昔の話なんですけど、このバカが、『入院した人へのお見舞いの品の定番は何』っていうお題をフリやがったんですよ。俺らは正直どうでも良かったんですけど。でもほったらかすのかわいそうだから、ノってやって、りんごとメロンまで絞ったんですよ。で、コイツがメロンじゃなきゃ許さんって、熱弁振るってたっていう」
「そりゃメロンだよぉー。ごちそうだし、特別感で元気出せるんだもん。そしてバカじゃねぇし。てか、よく覚えてたね」
「覚えてるよ。お前にりんごでお見舞いしたら、何をお見舞いされるかわかんねぇからな」
「どういう意味だよ(笑)」
「木之本だって、ちゃんと覚えてたろ?お前が言い出したことだし」
それがさも当然であると言われてしまったなつみは、何か暖かいものに触れたようで、むず痒そうな笑顔が溢れた。
「ふふっ、うん///」
その訳を知る隊長2人は、安堵の表情を浮かべた。
「ほな、みんな、なつみちゃんが元気に起きてくれたから、もうええやろ。早めに戻って、仕事始まるまでちょっとでも寝といた方が、ええんとちゃう?」
「えー」という顔を向けられた。
「ここでおしゃべりしたいんもわかるけど、なつみちゃんはお腹空いとるやろ。ご飯食べに行こうや」
「はーい😄」
そうなれば、席を外さなければならない。
「わかりました。帰ろうぜ。もう大丈夫だろ」
有給休暇中で、のんびりニコニコななつみの頭を撫でて尾田が立ち上がり、それに続き他の5人も、美沙も、病室を出ていく。
手を振るなつみだが、やはり気になることがあった。手を緩め、声を、勇気を、振り絞った。
「ね、ねぇ!クーちゃん‼︎」
廊下に出ていたクーちゃんだが、呼び止められて、扉のところに戻った。ドア枠からひょこっと再登場。
「なぁに?なつみ」
呼び止めたのだが、それで勇気を使い切ってしまって、むぅむぅと喉を上り下りする想いが、一文字の固い唇をなかなか突き破れなかった。それを見たクーちゃんが声をかけてくれる。自分の胸に手を当てて。
「なつみ、こぉーこっ😉」
なつみも思わずマネをして、胸に両手を添えた。答えを探し求めて駆け巡る意識。そして見つける、と同時にクーちゃんが茶目っ気たっぷりに言った。
「なつみのせいで、俺の出世が遅れそうなんだけど」
クスクスッと聞こえてきた。
「ごめんってー‼️‼️💦」
クスクスが大きくなった。
「いいよ!俺の自慢を聞いてくれたら、許してあげる」
「なに…?」
「俺の自慢はね、俺の友だちに、なつみがいること、だよ」
フッと笑う。
「お疲れさま、なつみ。またね」
バイバ〜イと手を振ってから、クーちゃんは、隊長たちに会釈して、同じ自慢を持つ仲間たちのところへ去っていった。
「なつみちゃん、良かったね。許してくれるんやて」
「はいッ」
しゃくりあげる揺れに合わせて、美沙も直せなかったなつみの冠羽は、ひょいひょいしていた。
朝ご飯を寝過ごしたなつみ。お昼ご飯を四番隊の食堂で取ることにした。
「なんや、懐かしいな。ここでキミと李空が大声でケンカして、卯ノ花さんに怒られそうになったん、思い出すわ」
「静かに過ごさなきゃいけませんよっ」
「良いな〜、三番隊の思い出か。楽しそう」
「いやいや、あれはそんな良いものでは…」
なつみは元気におにぎりを2個とお味噌汁をもぐもぐした。その様子をあったかいお茶とともに眺める市丸と京楽。
「なつみちゃん、ボクら、キミに謝らなあかんね。ほんま、一昨日は邪魔してごめんな」
「いえいえ」
「事情を知らなかったとはいえ、しなくてもいい無理をさせてしまったね。ごめんよ」
「……、仕方ありませんよ。でもまぁ、なるようになりましたし。結果オーライってことで、めでたいしめでたしですよ♪」
お茶をひと口。
「うまくいったってことは、ちゃんとぼくのお願いを守ってくださったんですよね。ぼくがどうして2人いたのか、調べようとされなかった。なら、もう良いんですよ。隊長たちは悪いことしてませんから」
「そう言うてくれるの嬉しいけど、実は、ね」
「うん。実は、昨日の朝、キミの意識が戻らないと聞いて、キミのお見舞いに行った後、すぐに技術開発局に向かったんだ。どうしても無視できない事が起きてるんだって、心配になってさ」
「ボクも行ってまった。大人しく待ってられへんかったんよ。十三番隊長さんなら、何か知ってるはずや思て行った。そしたら、京楽さんおるし」
「偶然だろうけど、山じいもそのタイミングで来たんだ。隊首室に通してもらって、2人の涅隊長に本当のことを全部話してもらったよ。信じ難い内容だけど、実際に見たことを思い返せば、充分に納得できるものだった。ボクはてっきり、2人のなつみちゃんはどちらかが複製で、どちらかが消えなきゃいけないのかと思ってたんだ。どちらかが殺されちゃうのかと。でも違ったね。消えたのは、未来に帰っただけだった。怖いことは何も無かったんだ」
「そうですよ」
「キミが初めに見た時間軸での出来事となるべく変わらんように、ボクらは事実を知っても、夜にやった隊首会まで何も話さずにおったわ。何も知らん昨日までのなつみちゃんにもな。キミが望む未来と違うものになるとあかんから」
なつみは満足そうに2人の話を聞いた。
「なつみちゃんの望む未来になったかな」
京楽の問いに、頷いてみせた。
「はい。もちろんです。大満足です」
「無理矢理納得させようとしていないかい?」
「そんなことないですよ。ぼく、気づきましたから」
「何に?」
瞳を閉じて、これまでを愛おしそうに振り返る。
「どんなに世界が変わっても、みなさんの心、大切なところは変わらないって」
瞼を開き、輝く瞳。
「ぼくを励ましてくれる言葉を、同じ言葉を、いくつも聞かせてもらいました。共有できる思い出も大事ですけど、ぼくと仲良くしてくれるみなさんの気持ちが、何よりも大切だと知りました。その大事な想いが変わらずに、みなさんの中にあるなら、きっと楽しくて幸せな日々を過ごせます。ぼくの知らない今までも、これからもきっと。なので、これでミッションアコンプリッシュです」
任務達成とはいえ、もっと確かな証拠が欲しいところ。夜を迎えて、なつみは今夜もウクレレを携えて、宿舎の屋根に上がることにした。
「何にしようかな」
チューニングしながら、弾く曲を考える。
「そうだ。あれにしよう」
コード弾きと鼻歌のイントロから始まるこの曲は、平沢進の『バンディリア旅行団』だ。
「遠い昔に この声は響けよ
春ま近の あの丘の上から
岩へと根をはる木々の
秘宝で行く舟に乗り
思い出せば 君を呼ぶよ
いつか会うと 遥か
君 別れに
この唄と響けよ
遠いあの地の
エコーに身をよせて
陽は いつか暮れて海へ
知られず また波に咲く
水面の花に 君を見るよ
揺れて消えた 遥か
霧は地図と虫が歌う
破裂のような 夢は降りて
君よまた あの日へAh…
空横切る 水瓶の星団
陽は奇跡と 踊り手をはやして
四方を夜に隠した
眠りの秘儀で なお行く
思い出せば 君に触れるよ
今も遥か ここに
思い出せば 君に触れるよ
今も遥か ここに」
再びコード弾きと鼻歌のアウトロ。最後に4本の弦を上から下にゆっくりトロロロン。
パチパチパチ
「⁉️」
屋根の中腹で座って歌っていたなつみの後ろ、気付かぬうちに、棟に座ってその歌に聴き入る者が来ていたのだ。彼からの拍手だった。
「良い歌だな。たぶん」
「たぶん」とは失礼だが、それは置いといて、なつみはその人に飛びかかり、ぎゅっと抱きついた。
「志波副隊長ぉーッ‼️‼️」
「どわッ、危ねぇ、落ちる💦」
ウクレレは握ったまま、海燕の首に腕を回していた。会いたくてたまらなかった彼に。
「うおぉぉぉぉーッ😭」
「泣くな‼️うるせぇ‼️耳元で大声出すな‼️鼻垂らすなッ💢」
熱烈な歓迎を受けた海燕だが、くっつくなつみを引っ剥がそうと、彼女の背中を掴んだ。
「うおぉぉぉぉーッ😭」
「オラァァァーッ‼️‼️」
勝ったのは、もちろんなつみの馬鹿力だった。
「なんっだよ……。はいはい、ちゃんと約束守ってやったぞ。俺はここにいる」
「うぅうぅう、はいぃ。いばずぅ」
「あ、起きたかも」
「ふぁ〜🥱💤」
「大きなあくびやなぁ。赤ちゃんみたいや😊」
「むにゃむにゃ…」
「お、起き上がった」
「んー…?おょ…」
「目がしょぼしょぼしてるね」
「むぉっ」
起きたので。
「おはよう、なつみ」
「おはよう、木之本」
「おはよう、なつみちゃん」
「おはよー、みんな。おはようございます、たいちょう」
「おはよう、なつみちゃん」
「⁉️…///おはようございます、京楽隊長」
寝癖がぴょんぴょん、窓から吹いてきた風になびいていた。朗らかな病室で、なつみは今、目覚めたのだった。
美沙にお世話してもらいながら、なつみはどうなったのかお話を聞く。
「はい、水」
「くぴくぴ。ぷはぁ」
「はい、顔拭くよ」
「うぇ〜い」
「はい、髪とかすから、後ろ向いて」
「あいっ」
シュッシュッと霧吹きで髪を濡らす。それからスッスッとブラッシング。
「それで、今は何年何月何日の何時なんですか」
髪をすく度に、ぐいっふーと前後に揺れる。
「それがなぁ、なつみちゃん。あれから1週間経ってしもたんよ」
「😱‼️⁉️」
「はい、横向かない」
なつみから見て、ベッドの右に美沙がいて、ベッドを囲むように同期の6人がいて、その向こう側の脚を伸ばす方に市丸と京楽がいて、なつみは美沙に背を向けて座っていたので、右方向へギャバッと首だけ振り向いた。それを美沙が両手でホールドして、正面に直す。その正面に座るのは李空。
「冗談に決まってんだろ、バーカ」
「フシーッ‼️💢」
襲いかかろうとしたが、首根っこ掴まれて止められる。
「やめなさい」
「むぅ‼️」
「1週間も起きずにいたなら、お前が目ぇ覚ました瞬間に泣いて喜んでやってるよ」
「っ、李空…🥺」
「でも違ぇーから、人騒がせな野郎だなって思うだけ」
「李空ぅーッ👊💢」
「じっとしなさい‼️」
美沙の一喝で大人しくするなつみ。
「覚えてろよ、このヤロー」
「はいはい」
喧嘩するほど仲が良い2人だ。相変わらずで、見ていてほっこりする。当人たちも。
「なつみちゃん、安心して。キミらが過去に飛んだのは、まだ昨日の夜のことなんだ。なつみちゃんがこっちに帰ってきたのが、それから2時間後くらいで、今はお昼過ぎ。みんな急いでお昼ご飯食べてから、お見舞いに戻ってきたんだよ。どう?身体の調子は。怠くない?」
「はい!元気いっぱいです😊」
「よかった😌」
腕を上げて曲げ、げんきげんきのポーズをしてみせる。
「あ〜、なんかお前ののんきな顔見てっと、眠くなってきた」
「ね。こっちに睡魔が襲ってきてるよ」
お友だちらにふわふわと眠気が降りてきていた。
「せやから言うたやろ?無理せんでええよって」
「人手が必要だったじゃないですか」
「ほんま、なつみちゃんに優しいんやから」なつみに視線を移す。「あんな、なつみちゃんが戻ったいう連絡してから、結構早くみんな集まってくれてな。真夜中なのにやで?キミに力分けてくれたんよ。この子らも手伝ってくれたし、2回目やから勝手がわかってたで、昨日より上手に入れられたわ」
「更木隊長が来たのは、明るくなってからなんだけどね。彼が一気に注入しても耐えられるだけの土台は、それまでに間に合わせられてたよ。みんなに感謝しないとね」
なんだか誇らしげなお友だち。
「ありがとぉ〜、美沙ちゃーん」
なのに、きゅっと抱きついてお礼を言ったのは美沙の方。
「うん。良いよ。あんたのためだもん」
ちょっとご不満な周りの人達。
「木之本、俺らにも『ありがとう』は?」
「ひひっ」
自分にも抱きつけと構えたハルの手を掴んで、上下ににぎにぎ。
「ありがとっ、ハル!レンも、クーちゃんも、ケイジも、尾田も、李空もな。みんな、ありがとう」
その笑顔で報われる、何もかも。
「なぁなぁ!お前、昨日メロン食ったんだろ?どうだった。うまかったか?」
レンが前のめりできいてきた。
「あぁーッ‼️そうそうっ、そうなんだよな!木の箱に入って、高級そうだったから、てっきり朽木隊長が持ってきたものかと思ったんだ。けど、お前らだったんだよな。ありがとう。おいしかったよ😋」
「フフッ、誓いのメロンだったね。ボクもいただいたよ。おいしかった」
「あたし、もうびっくりしちゃってさ。急にこの人たちが『なつみにメロン買うから、ちょっと協力して』って頼んできたんだもん」
「仲間外れにしちゃいけないかなーと思って、美沙ちゃんにも頼んだんだ」
「そんな高かったの⁉️」
「レンが、箱入りじゃないとダメだって言うんだもん」
「当たり前だろ?『メロンです。請求書です』ってやりたかったんだもん」
「さすがレン。ふざけるときは全力で、だな」
「おうよ!😤」
「なぁ、何でそんなにメロンにこだわったん?」
「それはですね。だいぶ昔の話なんですけど、このバカが、『入院した人へのお見舞いの品の定番は何』っていうお題をフリやがったんですよ。俺らは正直どうでも良かったんですけど。でもほったらかすのかわいそうだから、ノってやって、りんごとメロンまで絞ったんですよ。で、コイツがメロンじゃなきゃ許さんって、熱弁振るってたっていう」
「そりゃメロンだよぉー。ごちそうだし、特別感で元気出せるんだもん。そしてバカじゃねぇし。てか、よく覚えてたね」
「覚えてるよ。お前にりんごでお見舞いしたら、何をお見舞いされるかわかんねぇからな」
「どういう意味だよ(笑)」
「木之本だって、ちゃんと覚えてたろ?お前が言い出したことだし」
それがさも当然であると言われてしまったなつみは、何か暖かいものに触れたようで、むず痒そうな笑顔が溢れた。
「ふふっ、うん///」
その訳を知る隊長2人は、安堵の表情を浮かべた。
「ほな、みんな、なつみちゃんが元気に起きてくれたから、もうええやろ。早めに戻って、仕事始まるまでちょっとでも寝といた方が、ええんとちゃう?」
「えー」という顔を向けられた。
「ここでおしゃべりしたいんもわかるけど、なつみちゃんはお腹空いとるやろ。ご飯食べに行こうや」
「はーい😄」
そうなれば、席を外さなければならない。
「わかりました。帰ろうぜ。もう大丈夫だろ」
有給休暇中で、のんびりニコニコななつみの頭を撫でて尾田が立ち上がり、それに続き他の5人も、美沙も、病室を出ていく。
手を振るなつみだが、やはり気になることがあった。手を緩め、声を、勇気を、振り絞った。
「ね、ねぇ!クーちゃん‼︎」
廊下に出ていたクーちゃんだが、呼び止められて、扉のところに戻った。ドア枠からひょこっと再登場。
「なぁに?なつみ」
呼び止めたのだが、それで勇気を使い切ってしまって、むぅむぅと喉を上り下りする想いが、一文字の固い唇をなかなか突き破れなかった。それを見たクーちゃんが声をかけてくれる。自分の胸に手を当てて。
「なつみ、こぉーこっ😉」
なつみも思わずマネをして、胸に両手を添えた。答えを探し求めて駆け巡る意識。そして見つける、と同時にクーちゃんが茶目っ気たっぷりに言った。
「なつみのせいで、俺の出世が遅れそうなんだけど」
クスクスッと聞こえてきた。
「ごめんってー‼️‼️💦」
クスクスが大きくなった。
「いいよ!俺の自慢を聞いてくれたら、許してあげる」
「なに…?」
「俺の自慢はね、俺の友だちに、なつみがいること、だよ」
フッと笑う。
「お疲れさま、なつみ。またね」
バイバ〜イと手を振ってから、クーちゃんは、隊長たちに会釈して、同じ自慢を持つ仲間たちのところへ去っていった。
「なつみちゃん、良かったね。許してくれるんやて」
「はいッ」
しゃくりあげる揺れに合わせて、美沙も直せなかったなつみの冠羽は、ひょいひょいしていた。
朝ご飯を寝過ごしたなつみ。お昼ご飯を四番隊の食堂で取ることにした。
「なんや、懐かしいな。ここでキミと李空が大声でケンカして、卯ノ花さんに怒られそうになったん、思い出すわ」
「静かに過ごさなきゃいけませんよっ」
「良いな〜、三番隊の思い出か。楽しそう」
「いやいや、あれはそんな良いものでは…」
なつみは元気におにぎりを2個とお味噌汁をもぐもぐした。その様子をあったかいお茶とともに眺める市丸と京楽。
「なつみちゃん、ボクら、キミに謝らなあかんね。ほんま、一昨日は邪魔してごめんな」
「いえいえ」
「事情を知らなかったとはいえ、しなくてもいい無理をさせてしまったね。ごめんよ」
「……、仕方ありませんよ。でもまぁ、なるようになりましたし。結果オーライってことで、めでたいしめでたしですよ♪」
お茶をひと口。
「うまくいったってことは、ちゃんとぼくのお願いを守ってくださったんですよね。ぼくがどうして2人いたのか、調べようとされなかった。なら、もう良いんですよ。隊長たちは悪いことしてませんから」
「そう言うてくれるの嬉しいけど、実は、ね」
「うん。実は、昨日の朝、キミの意識が戻らないと聞いて、キミのお見舞いに行った後、すぐに技術開発局に向かったんだ。どうしても無視できない事が起きてるんだって、心配になってさ」
「ボクも行ってまった。大人しく待ってられへんかったんよ。十三番隊長さんなら、何か知ってるはずや思て行った。そしたら、京楽さんおるし」
「偶然だろうけど、山じいもそのタイミングで来たんだ。隊首室に通してもらって、2人の涅隊長に本当のことを全部話してもらったよ。信じ難い内容だけど、実際に見たことを思い返せば、充分に納得できるものだった。ボクはてっきり、2人のなつみちゃんはどちらかが複製で、どちらかが消えなきゃいけないのかと思ってたんだ。どちらかが殺されちゃうのかと。でも違ったね。消えたのは、未来に帰っただけだった。怖いことは何も無かったんだ」
「そうですよ」
「キミが初めに見た時間軸での出来事となるべく変わらんように、ボクらは事実を知っても、夜にやった隊首会まで何も話さずにおったわ。何も知らん昨日までのなつみちゃんにもな。キミが望む未来と違うものになるとあかんから」
なつみは満足そうに2人の話を聞いた。
「なつみちゃんの望む未来になったかな」
京楽の問いに、頷いてみせた。
「はい。もちろんです。大満足です」
「無理矢理納得させようとしていないかい?」
「そんなことないですよ。ぼく、気づきましたから」
「何に?」
瞳を閉じて、これまでを愛おしそうに振り返る。
「どんなに世界が変わっても、みなさんの心、大切なところは変わらないって」
瞼を開き、輝く瞳。
「ぼくを励ましてくれる言葉を、同じ言葉を、いくつも聞かせてもらいました。共有できる思い出も大事ですけど、ぼくと仲良くしてくれるみなさんの気持ちが、何よりも大切だと知りました。その大事な想いが変わらずに、みなさんの中にあるなら、きっと楽しくて幸せな日々を過ごせます。ぼくの知らない今までも、これからもきっと。なので、これでミッションアコンプリッシュです」
任務達成とはいえ、もっと確かな証拠が欲しいところ。夜を迎えて、なつみは今夜もウクレレを携えて、宿舎の屋根に上がることにした。
「何にしようかな」
チューニングしながら、弾く曲を考える。
「そうだ。あれにしよう」
コード弾きと鼻歌のイントロから始まるこの曲は、平沢進の『バンディリア旅行団』だ。
「遠い昔に この声は響けよ
春ま近の あの丘の上から
岩へと根をはる木々の
秘宝で行く舟に乗り
思い出せば 君を呼ぶよ
いつか会うと 遥か
君 別れに
この唄と響けよ
遠いあの地の
エコーに身をよせて
陽は いつか暮れて海へ
知られず また波に咲く
水面の花に 君を見るよ
揺れて消えた 遥か
霧は地図と虫が歌う
破裂のような 夢は降りて
君よまた あの日へAh…
空横切る 水瓶の星団
陽は奇跡と 踊り手をはやして
四方を夜に隠した
眠りの秘儀で なお行く
思い出せば 君に触れるよ
今も遥か ここに
思い出せば 君に触れるよ
今も遥か ここに」
再びコード弾きと鼻歌のアウトロ。最後に4本の弦を上から下にゆっくりトロロロン。
パチパチパチ
「⁉️」
屋根の中腹で座って歌っていたなつみの後ろ、気付かぬうちに、棟に座ってその歌に聴き入る者が来ていたのだ。彼からの拍手だった。
「良い歌だな。たぶん」
「たぶん」とは失礼だが、それは置いといて、なつみはその人に飛びかかり、ぎゅっと抱きついた。
「志波副隊長ぉーッ‼️‼️」
「どわッ、危ねぇ、落ちる💦」
ウクレレは握ったまま、海燕の首に腕を回していた。会いたくてたまらなかった彼に。
「うおぉぉぉぉーッ😭」
「泣くな‼️うるせぇ‼️耳元で大声出すな‼️鼻垂らすなッ💢」
熱烈な歓迎を受けた海燕だが、くっつくなつみを引っ剥がそうと、彼女の背中を掴んだ。
「うおぉぉぉぉーッ😭」
「オラァァァーッ‼️‼️」
勝ったのは、もちろんなつみの馬鹿力だった。
「なんっだよ……。はいはい、ちゃんと約束守ってやったぞ。俺はここにいる」
「うぅうぅう、はいぃ。いばずぅ」