第一章
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始解を修得し、市丸と見せびらかさない約束をしたなつみだったが、できたことは自慢したいため、すぐにルームメイトである美沙に報告していた。
なつみが寝泊りしている宿舎は三番隊のものではなく、実は五番隊の宿舎だった。彼女が三番隊へ入隊したとき、都合悪く女子部屋に空きが無かったためだ。そこで、霊術院時代の友、美沙の部屋に特別に入れてもらうことになった。その彼女の所属する隊が五番隊なのだ。入隊してから何年とすぎたが、特に移動の指示が出されなかったので、ずるずるといっしょに生活している。
昇格が決定し、何やかんやと忙しくしていたため、美沙に始解を見せたかったが、タイミングが合わず、自慢してから4、5日経ってしまった。そんな日の夕方、なつみが宿舎に帰ってくると、外で美沙と藍染が話しているところに居合わせた。
「美沙ちゃーん、藍染隊長ー!ただいま戻りましたー!」
大きく手を振ってなつみは小走りに2人に近づいていった。
「なつみ、おかえりー」
「おかえり、木之本くん」
「何してるんですか?」
なつみの問いに美沙が答える。
「明後日の大掃除の区分けの調整してるの。その日休みって言ってたでしょ?あんたも手伝いなさいよ」
「ふぁーい✋」
半分ふざけて了解するなつみ。五番隊では半年に一度、所属隊士全員で大掃除を行う恒例行事があったのだ。
「木之本くん、せっかくの休みだったら、無理することはないからね」
「大丈夫ですよ。ぼくのおうちはここですから、お掃除手伝うのは当たり前です!」
「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう。では、当日よろしくね」
「お任せください!」
胸を張ってなつみはがんばりますアピールをした。そんななつみを前に、美沙がひらめいたように話題を変えてきた。
「ねぇ、藍染隊長もいらっしゃるし、場所も充分広いし、ちょうど区分けの話も終わったところだからさ、あんたの始解、今見せてよ!」
「え⁉︎今⁉︎」突然頼まれて驚くなつみ。
「木之本くん、始解できるようになったの?」横で普通に驚く藍染。「それは是非、見せて欲しいな」
「ですよね!ほらー、やりなさいよ、なつみ」藍染の賛同を得てご満悦の美沙。
人通りを確認するためになつみはキョロキョロする。
「どうしたんだい?人目が気になるのかな」
「…、はい。ちょっと恥ずかしいので」
今のところ通行人は無さそうだ。こちらを見ている人もいないだろう。
「何で恥ずかしいのよ。そんなに変な能力なの?」
「そんなことないけど。うん…、わかった、見せてあげるよ。今なら大丈夫そう」
なつみは斬魄刀を抜いた。
「ぼくの斬魄刀はね、狙った物をこちらに引き寄せる能力を持ってるんだよ」
「えー?引き寄せるだけなの?それって実践で使える?」
美沙には少し期待外れだったようだ。だが、藍染がフォローをする。
「んー、使えないことは無いと思うよ。遠くの敵をこちらに引き寄せて斬ることができるし。相手の動きが読みやすくなるなら、鬼道も当てやすくなるだろうからね」
「さっすが藍染隊長。その戦法いただきです!」と言って、なつみは斬魄刀を地面に刺した。「力は使いようってね。2人は敵じゃないし、攻撃するわけにもいかないから、今回は見せる用に考えた技を披露します。クーちゃんと遊んでるときにひらめいたんだよね。えへへ」
「何か変な予感がする」
「大丈夫、ぼくがエスコートするから。ではいきます!従え、夢現天子」地面に刺したままの斬魄刀の柄頭に手を置きながら、解号を唱えて霊力を放出する。「踊ろう」
なつみが伸ばした左手に美沙は引き寄せられていく。
「ヤダ!勝手に体が!」
美沙がなつみの真正面まで来ると、2人は手を取り合い、もう一方の手をなつみは美沙の腰に、美沙はなつみの肩に置いた。そこから自然な流れでワルツを踊り始める。合わせるのはなつみのご機嫌な鼻歌だ。
「♩♫♩、♩♫♩、♩♫♩、♩〜」
「こんなところで踊るなんて、恥ずかしい!っていうか、離れられないんだけど!」
美沙はなつみから離れようと考えてもうまく動けず、ずっと踊り続けてしまう。自分の腰に触れているなつみの手はただ添えられているだけで、力は感じない。
「楽しいでしょ、美沙ちゃん!次、藍染隊長もいかがですか?」
なつみは美沙を解放してあげると、今度は見えない力で藍染を引き寄せた。
「わぁ!本当だ。これは不思議だね」
「うぅぅ、お相手が藍染隊長だと、とっても照れちゃいますね///」
自分からしていることなのに、なつみは藍染の顔を見上げることができなかった。やはり恥ずかしくなり、目をきゅっとつむり、脚を運ぶ意識が弱くなる。
「駄目だよ。集中しなくちゃ」
「えっ」
耳元で囁かれ、とっさに視線が上がる。そこには優しい藍染の微笑みがあった。夕暮れ時の煌めきのせいで、いつもより彼のことが素敵に見えてしまう。
「はい!」
この際だから仕方がない。思い切ってやろう!と気持ちを切り替えて、なつみは藍染に体を寄せ、踊ることに集中した。文字通り、彼の胸を借りようと。何故だかその時の気分でエーデルワイスが頭の中で流れてきたため、それを口ずさみながら、ステップの踏み方をイメージしつつ、でも勝手に脚が動いていると悟られないように、こちらに引き寄せる命令を強く念じる。2人は自立している夢現天子の周りで軽やかにワルツを楽しんだ。
「たまにはこういうのも悪くないね」
「えへへっ、そうですね」
曲が終わり、なつみは藍染から離れ、お辞儀をした。
「お付き合い、感謝致します」
その挨拶に藍染も紳士的なお辞儀で返す。
「こちらこそ、どうもありがとう。楽しかったよ」
ニコッと笑うと、なつみは夢現天子を鞘にしまった。
「無意識になつみの方に行っちゃったのはすごいと思ったけど、能力としては単純じゃない?これだけのことなのに修得にえらく時間がかかったわね」
美沙にはそんなふうに思われた。だがその感想に、藍染は他にも思うところがあるようだった。
「木之本くん、まだ始解を修得して日が浅いんだよね。もっといろいろ試してみて、力の分析をしていくと良いよ。さっき思ったんだけど、引き寄せるだけが君の斬魄刀の能力ではないかもしれないからね」
なつみは思わず驚きと密かな困惑に襲われた。
「…どうして、そう思われましたか」
その質問に藍染は少しお説教気味に返答してあげた。
「いけないよ、すぐに答えをきこうとするなんて。こればかりは自力で探究しなければいけないことなんだ。楽をすることは、君と君の斬魄刀のためにならない。精進しなさい。だけど、ひとつだけならヒントをあげようかな」藍染は、少し屈んで目線の高さを合わせると、なつみの頭を優しく撫でながら話した。「君には無限の可能性を感じるよ」
素直に嬉しい気持ちもあった。が、見透かされている気がしてならなくて、うまく返す言葉が浮かんでこない。
「ありがとう、ございます。がんばります…」
「うん。期待してるよ」
なつみから離れる藍染。美沙の方に歩いていった。
「それじゃあ竹内くん、僕はこれで失礼するよ。君ももう、今日はこれで上がって良いからね。お疲れ様」
「お疲れ様です」
頭を下げる美沙。
「木之本くん!」
「は、はい!」
「おもしろいものを見せてくれて、ありがとう」
「お、お粗末様でしたっ」
なつみも頭を下げた。なつみと美沙が下を向いている間に、藍染の脚音は遠のいていった。美沙が頭を上げてなつみに、「藍染隊長に期待されるなんて、めっちゃ嬉しくない⁉︎超羨ましいんだけど‼︎」と言って駆け寄ろうとしたが、なつみの表情を前にその勢いは止められた。
「どうしたの?」
藍染の去っていった方を、難しい顔で見ていたなつみ。
「やっぱ、隊長ってすげーんだな」
「そりゃ、そうでしょ」
「ねぇ、美沙ちゃん、ぼく隠してることがあるんだ。部屋で話すから、先に戻ってるね。美沙ちゃんも早く来てね」
そう言い残して、なつみは宿舎に入っていった。
なつみが寝泊りしている宿舎は三番隊のものではなく、実は五番隊の宿舎だった。彼女が三番隊へ入隊したとき、都合悪く女子部屋に空きが無かったためだ。そこで、霊術院時代の友、美沙の部屋に特別に入れてもらうことになった。その彼女の所属する隊が五番隊なのだ。入隊してから何年とすぎたが、特に移動の指示が出されなかったので、ずるずるといっしょに生活している。
昇格が決定し、何やかんやと忙しくしていたため、美沙に始解を見せたかったが、タイミングが合わず、自慢してから4、5日経ってしまった。そんな日の夕方、なつみが宿舎に帰ってくると、外で美沙と藍染が話しているところに居合わせた。
「美沙ちゃーん、藍染隊長ー!ただいま戻りましたー!」
大きく手を振ってなつみは小走りに2人に近づいていった。
「なつみ、おかえりー」
「おかえり、木之本くん」
「何してるんですか?」
なつみの問いに美沙が答える。
「明後日の大掃除の区分けの調整してるの。その日休みって言ってたでしょ?あんたも手伝いなさいよ」
「ふぁーい✋」
半分ふざけて了解するなつみ。五番隊では半年に一度、所属隊士全員で大掃除を行う恒例行事があったのだ。
「木之本くん、せっかくの休みだったら、無理することはないからね」
「大丈夫ですよ。ぼくのおうちはここですから、お掃除手伝うのは当たり前です!」
「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう。では、当日よろしくね」
「お任せください!」
胸を張ってなつみはがんばりますアピールをした。そんななつみを前に、美沙がひらめいたように話題を変えてきた。
「ねぇ、藍染隊長もいらっしゃるし、場所も充分広いし、ちょうど区分けの話も終わったところだからさ、あんたの始解、今見せてよ!」
「え⁉︎今⁉︎」突然頼まれて驚くなつみ。
「木之本くん、始解できるようになったの?」横で普通に驚く藍染。「それは是非、見せて欲しいな」
「ですよね!ほらー、やりなさいよ、なつみ」藍染の賛同を得てご満悦の美沙。
人通りを確認するためになつみはキョロキョロする。
「どうしたんだい?人目が気になるのかな」
「…、はい。ちょっと恥ずかしいので」
今のところ通行人は無さそうだ。こちらを見ている人もいないだろう。
「何で恥ずかしいのよ。そんなに変な能力なの?」
「そんなことないけど。うん…、わかった、見せてあげるよ。今なら大丈夫そう」
なつみは斬魄刀を抜いた。
「ぼくの斬魄刀はね、狙った物をこちらに引き寄せる能力を持ってるんだよ」
「えー?引き寄せるだけなの?それって実践で使える?」
美沙には少し期待外れだったようだ。だが、藍染がフォローをする。
「んー、使えないことは無いと思うよ。遠くの敵をこちらに引き寄せて斬ることができるし。相手の動きが読みやすくなるなら、鬼道も当てやすくなるだろうからね」
「さっすが藍染隊長。その戦法いただきです!」と言って、なつみは斬魄刀を地面に刺した。「力は使いようってね。2人は敵じゃないし、攻撃するわけにもいかないから、今回は見せる用に考えた技を披露します。クーちゃんと遊んでるときにひらめいたんだよね。えへへ」
「何か変な予感がする」
「大丈夫、ぼくがエスコートするから。ではいきます!従え、夢現天子」地面に刺したままの斬魄刀の柄頭に手を置きながら、解号を唱えて霊力を放出する。「踊ろう」
なつみが伸ばした左手に美沙は引き寄せられていく。
「ヤダ!勝手に体が!」
美沙がなつみの真正面まで来ると、2人は手を取り合い、もう一方の手をなつみは美沙の腰に、美沙はなつみの肩に置いた。そこから自然な流れでワルツを踊り始める。合わせるのはなつみのご機嫌な鼻歌だ。
「♩♫♩、♩♫♩、♩♫♩、♩〜」
「こんなところで踊るなんて、恥ずかしい!っていうか、離れられないんだけど!」
美沙はなつみから離れようと考えてもうまく動けず、ずっと踊り続けてしまう。自分の腰に触れているなつみの手はただ添えられているだけで、力は感じない。
「楽しいでしょ、美沙ちゃん!次、藍染隊長もいかがですか?」
なつみは美沙を解放してあげると、今度は見えない力で藍染を引き寄せた。
「わぁ!本当だ。これは不思議だね」
「うぅぅ、お相手が藍染隊長だと、とっても照れちゃいますね///」
自分からしていることなのに、なつみは藍染の顔を見上げることができなかった。やはり恥ずかしくなり、目をきゅっとつむり、脚を運ぶ意識が弱くなる。
「駄目だよ。集中しなくちゃ」
「えっ」
耳元で囁かれ、とっさに視線が上がる。そこには優しい藍染の微笑みがあった。夕暮れ時の煌めきのせいで、いつもより彼のことが素敵に見えてしまう。
「はい!」
この際だから仕方がない。思い切ってやろう!と気持ちを切り替えて、なつみは藍染に体を寄せ、踊ることに集中した。文字通り、彼の胸を借りようと。何故だかその時の気分でエーデルワイスが頭の中で流れてきたため、それを口ずさみながら、ステップの踏み方をイメージしつつ、でも勝手に脚が動いていると悟られないように、こちらに引き寄せる命令を強く念じる。2人は自立している夢現天子の周りで軽やかにワルツを楽しんだ。
「たまにはこういうのも悪くないね」
「えへへっ、そうですね」
曲が終わり、なつみは藍染から離れ、お辞儀をした。
「お付き合い、感謝致します」
その挨拶に藍染も紳士的なお辞儀で返す。
「こちらこそ、どうもありがとう。楽しかったよ」
ニコッと笑うと、なつみは夢現天子を鞘にしまった。
「無意識になつみの方に行っちゃったのはすごいと思ったけど、能力としては単純じゃない?これだけのことなのに修得にえらく時間がかかったわね」
美沙にはそんなふうに思われた。だがその感想に、藍染は他にも思うところがあるようだった。
「木之本くん、まだ始解を修得して日が浅いんだよね。もっといろいろ試してみて、力の分析をしていくと良いよ。さっき思ったんだけど、引き寄せるだけが君の斬魄刀の能力ではないかもしれないからね」
なつみは思わず驚きと密かな困惑に襲われた。
「…どうして、そう思われましたか」
その質問に藍染は少しお説教気味に返答してあげた。
「いけないよ、すぐに答えをきこうとするなんて。こればかりは自力で探究しなければいけないことなんだ。楽をすることは、君と君の斬魄刀のためにならない。精進しなさい。だけど、ひとつだけならヒントをあげようかな」藍染は、少し屈んで目線の高さを合わせると、なつみの頭を優しく撫でながら話した。「君には無限の可能性を感じるよ」
素直に嬉しい気持ちもあった。が、見透かされている気がしてならなくて、うまく返す言葉が浮かんでこない。
「ありがとう、ございます。がんばります…」
「うん。期待してるよ」
なつみから離れる藍染。美沙の方に歩いていった。
「それじゃあ竹内くん、僕はこれで失礼するよ。君ももう、今日はこれで上がって良いからね。お疲れ様」
「お疲れ様です」
頭を下げる美沙。
「木之本くん!」
「は、はい!」
「おもしろいものを見せてくれて、ありがとう」
「お、お粗末様でしたっ」
なつみも頭を下げた。なつみと美沙が下を向いている間に、藍染の脚音は遠のいていった。美沙が頭を上げてなつみに、「藍染隊長に期待されるなんて、めっちゃ嬉しくない⁉︎超羨ましいんだけど‼︎」と言って駆け寄ろうとしたが、なつみの表情を前にその勢いは止められた。
「どうしたの?」
藍染の去っていった方を、難しい顔で見ていたなつみ。
「やっぱ、隊長ってすげーんだな」
「そりゃ、そうでしょ」
「ねぇ、美沙ちゃん、ぼく隠してることがあるんだ。部屋で話すから、先に戻ってるね。美沙ちゃんも早く来てね」
そう言い残して、なつみは宿舎に入っていった。