第六章
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マユリの案内で十二番隊舎エリアにある、彼の秘密の研究所へ3人は移動していた。なつみは霊力を回復しきれず、足が未来に帰ってしまっている。
「眠いですぅ…」
「もう少しだ。耐えろ!」
「ここだヨ。入り給え」
そこは周りと変わらない建物に見える。
「地下に行くヨ」
マユリは土間を通り過ぎ、扉を開けて入っていった。それは地下へ降りる階段を隠す扉だった。地下通路へ出ると、両脇に部屋がいくつも並んでいるのが見えた。
「瀞霊廷の地下に、こんな空間があったのか…」
海燕は少し引いていた。そこは、隊士たちの宿舎のような温かみは一切無く、まるで、監獄や廃墟のような冷たさと恐怖が漂っている。
「何に使ってるとこなんすか」
「研究に決まっているだろう。被験者を連れてきて、いろいろと調べる施設だヨ」
恐らく、外部にはそのデータが出回っていないだろう。非道な実験を隠すための場所であると推測される。
マユリは鍵を取り出し、ひとつの扉を開けた。
「この部屋で過ごすと良い」
「ありがとうございます」
「なつみをそこに座らせてやれ」
「はい」
示されたのは診察台。海燕はそれになつみを降ろした。
現在、彼らといるマユリはこの時間のマユリである。未来から一緒に来たマユリは、技術開発局の自室で、なつみにメタスタシアの話をしてやっていた。全ての事情を知っている者の方が、事をうまく進められると考えたからだ。そのため、目の前にいるマユリは霊力回復薬を持っていなかった。
一粒、既になつみに与えていたため、それで間に合うと思っていたのだが、予期せぬことが連発してしまっていた。
「ごめんなさい。京楽隊長に、お店の裏で話しかけられたとき、びっくりしちゃって、お薬飲み込んじゃったんです。噛んでないといけないって言われてたのに……😔」
「フム…、そういう薬なんだネ。ならば、あったところで、すぐにどうにかなるというものでもなさそうだヨ」
「えー、そうなんですか」
1日先の自分が何をしたかは、想像に容易いとでもいうのか、物を見ずとも、マユリは成分と効果がわかったようだ。
「じゃあ、どうするんですか。俺ら2人じゃ」
「足りんだろうネ」
できることは無さそうだった。
「こうなってしまったならば、もう先に帰してしまえば良いだろう」
「「えッ⁉️」」
マユリの言葉に耳を疑う。
「で、でも、そうしたら、俺ら、俺と涅隊長はどうなるんですか!時空を飛べるのは、こいつだけなんすよ⁉︎」
マユリはうるさそうに、耳を塞いでいた。
「そんなに騒ぐことはないヨ。1000年前に取り残されるわけじゃあないんだからネ。たかが1日、何もしなくともあっという間に追いつけるヨ」
まぁ、そうであるが。
「ですが」
「この部屋を貸してやる。君らが出発した時刻まで、ここで隠れてい給え」
好き好んで、こんな不穏な部屋で過ごしたくはないが、他の考えが浮かばず、反論できない。
「ここに残しても、この子を回復させてやれない。だが、向こうに戻れば、手厚い看護が受けられるんだろう。帰すべきだヨ」
偉そうに椅子に座るマユリを、なつみは不満そうに見た。
「でも、ぼく、ちゃんとぼくが志波副隊長を助けに行くの、見届けたいです。確認して、安心できないと、未来に帰りたくないです!」
それもそうである。
「フーン…、そうだネェ…」
しかし、文句を言ったとて、なつみの消失は進んでいた。
「向こうの私は、明日もここでやることがあると言っていたヨ。奴は君らと帰る気が、初めから無かったようだネ。
それから、なつみが過去へ飛ぶのを確認するのは、君である必要はないヨ。私も、もう1人の私も、志波もいる。3人いれば充分だ。計画は必ず成功させると、皆決めているんだからネ。
君は役目を果たしたヨ。ここに2人も過去に飛ばすという大役を勤めた。よくやったネ。君ができることは、やり尽くしたんだ。
だから、安心して、私たちを信じて、君は未来に帰りなさい、なつみ」
なつみの口元はむにゅむにゅと動いて、瞳は駄々っ子のそれになってきた。
「帰りたくないですぅ…、ひとりで帰るなんて…。もっといたいです…」
デートでもじもじとこれを言われてしまったら、京楽でなくとも、前言撤回してお持ち帰りするところだが、今は違う。心を鬼にして、おうちに帰さなければ。すっくと立ち上がり、マユリはなつみのもとへ行き、隣に座って優しく抱き寄せた。なつみから、「ふぅぅん///」と照れくさそうな吐息が出た。
「私とて、君を帰したくはないヨ。2人いるなら、1人手元に置いておきたいくらいだからネ」どこかで聞いたぞ、そのセリフ。「だが、わかっているだろうが、君はとんでもない問題を起こしかねないんだヨ」
「(もうやっちゃいました)🥺」恐る恐る、マユリの胸にくっついた。「リスクが高くなるってことですか」
髪をふわふわと撫でる。
「2倍にネ」
「うぅぅぅ」
はっきり言われてしまった。
「君は、難しく考え過ぎてしまう癖があるネ。深刻に考えてしまう。深く熟考することは良いことだヨ。ただ、それで周りが見えなくなってしまうのは、良くないことだヨ。真実とは違う方向に思考を進めてしまえば、そこから抜け出せなくなってしまうからネ」
申し訳なさそうに、なつみの頭が動く。マユリは微笑んだ。
「そんな君の欠点を、どうしてやると良いと思うかネ?」
んーと考えて、なつみは答えた。
「落ち着いて、周りをちゃんと見るようにします」
ふんと、眉が上下に動いたのと同時に息が漏れた。不正解の合図だ。
「慌てん坊の君に、それができそうかネ?」
「うっ…」
「先程は志波に止められたから良かったものの、君ひとりでは、行くところまで行っていただろうネ。なつみは賢いから、反省はできるだろう。しかし、そうすぐに悪い癖は直せないものだヨ。今は冷静だから、気をつけられる。だが、一度混乱に陥れば、何を起こすかわからない。不確かなまま進めれば、君が望む未来には辿り着けなくなるヨ。失敗したらまた戻れば良いという選択肢もあるが、それをすれば、君とこの世界に多大な負荷がかかることだろうネ」
こう言われると、自分が悪いことをしているような気になってしまう。
「そう落ち込むことはないヨ。今のは、君が独りでどうにかしようとする場合の話だからネ」
どういうことだろうと、顔を上げるなつみ。
「1人分の考えでは狭すぎるなら、もう1人分足せば良いんだヨ。それで足りなければ、更に増やすだけのこと。君には、たくさんの協力者がいるじゃないか。無論、私もその内の1人だヨ。私は君よりも多く経験を積んでいるから、視野は格段に広げられると思うヨ。どうかネ?私は頼りにならないかネ?」
うんうんと頷く。
「頼れます。ぼくなんかよりもずっと頼りになる方です、涅隊長」
こんなに優しい表情のマユリは、なつみしか知らないだろう。
「ありがとう」ぎゅっと彼女を引き寄せた。「難しいことは、私に全て任せておしまい。君の欠点を、私が補ってあげるからネ。必ず君を幸せにするヨ」
(プロポーズかよ😑)
腕組みして壁に寄りかかる海燕を他所に、キラキラオーラの中にいる2人は身体を少し離して見つめ合った。
「安心して、お眠り、なつみ」
「…、はい///」
おやすみのキスを、マユリがなつみのおでこに落とすと、なつみの瞼がどんどん重くなっていった。力も徐々に抜けていく。
「涅隊長」
「わかっているヨ。なつみ、身体を倒すヨ」
「はぁい……」
ゆっくりとなつみを横に寝かせてやった。もう腰まで消えている。
「木之本、絶対ぇまた会えるからな。つか、会いに行くからな。未来で待ってろよ」
「はい。お先に失礼します。お2人はぼくの帰りを、…あれ、変なの。ぼくが帰るの待ってていただくんですね。あ、違いますよ、志波副隊長。ぼくは待ちませんよ。なんか、これから何時間も寝るみたいですね。寝るって、時間をスキップするみたい。ちゃんと起きれますように」
「ほらほら、難しく考えるなと言ったばかりじゃないか。おやすみ、なつみ。目を閉じ給え」
マユリが手を被せて、強制的になつみの目に暗闇を与えた。
「ふふっ、おやすみなさい、涅隊長。おやすみなさい、志波副隊長」
そっと右手の小指を海燕に差し出した。
「おう。おやすみ、木之本」
なつみに答えて、指切りをした。
「約束な」
静かになつみは未来へ帰っていった。
「眠いですぅ…」
「もう少しだ。耐えろ!」
「ここだヨ。入り給え」
そこは周りと変わらない建物に見える。
「地下に行くヨ」
マユリは土間を通り過ぎ、扉を開けて入っていった。それは地下へ降りる階段を隠す扉だった。地下通路へ出ると、両脇に部屋がいくつも並んでいるのが見えた。
「瀞霊廷の地下に、こんな空間があったのか…」
海燕は少し引いていた。そこは、隊士たちの宿舎のような温かみは一切無く、まるで、監獄や廃墟のような冷たさと恐怖が漂っている。
「何に使ってるとこなんすか」
「研究に決まっているだろう。被験者を連れてきて、いろいろと調べる施設だヨ」
恐らく、外部にはそのデータが出回っていないだろう。非道な実験を隠すための場所であると推測される。
マユリは鍵を取り出し、ひとつの扉を開けた。
「この部屋で過ごすと良い」
「ありがとうございます」
「なつみをそこに座らせてやれ」
「はい」
示されたのは診察台。海燕はそれになつみを降ろした。
現在、彼らといるマユリはこの時間のマユリである。未来から一緒に来たマユリは、技術開発局の自室で、なつみにメタスタシアの話をしてやっていた。全ての事情を知っている者の方が、事をうまく進められると考えたからだ。そのため、目の前にいるマユリは霊力回復薬を持っていなかった。
一粒、既になつみに与えていたため、それで間に合うと思っていたのだが、予期せぬことが連発してしまっていた。
「ごめんなさい。京楽隊長に、お店の裏で話しかけられたとき、びっくりしちゃって、お薬飲み込んじゃったんです。噛んでないといけないって言われてたのに……😔」
「フム…、そういう薬なんだネ。ならば、あったところで、すぐにどうにかなるというものでもなさそうだヨ」
「えー、そうなんですか」
1日先の自分が何をしたかは、想像に容易いとでもいうのか、物を見ずとも、マユリは成分と効果がわかったようだ。
「じゃあ、どうするんですか。俺ら2人じゃ」
「足りんだろうネ」
できることは無さそうだった。
「こうなってしまったならば、もう先に帰してしまえば良いだろう」
「「えッ⁉️」」
マユリの言葉に耳を疑う。
「で、でも、そうしたら、俺ら、俺と涅隊長はどうなるんですか!時空を飛べるのは、こいつだけなんすよ⁉︎」
マユリはうるさそうに、耳を塞いでいた。
「そんなに騒ぐことはないヨ。1000年前に取り残されるわけじゃあないんだからネ。たかが1日、何もしなくともあっという間に追いつけるヨ」
まぁ、そうであるが。
「ですが」
「この部屋を貸してやる。君らが出発した時刻まで、ここで隠れてい給え」
好き好んで、こんな不穏な部屋で過ごしたくはないが、他の考えが浮かばず、反論できない。
「ここに残しても、この子を回復させてやれない。だが、向こうに戻れば、手厚い看護が受けられるんだろう。帰すべきだヨ」
偉そうに椅子に座るマユリを、なつみは不満そうに見た。
「でも、ぼく、ちゃんとぼくが志波副隊長を助けに行くの、見届けたいです。確認して、安心できないと、未来に帰りたくないです!」
それもそうである。
「フーン…、そうだネェ…」
しかし、文句を言ったとて、なつみの消失は進んでいた。
「向こうの私は、明日もここでやることがあると言っていたヨ。奴は君らと帰る気が、初めから無かったようだネ。
それから、なつみが過去へ飛ぶのを確認するのは、君である必要はないヨ。私も、もう1人の私も、志波もいる。3人いれば充分だ。計画は必ず成功させると、皆決めているんだからネ。
君は役目を果たしたヨ。ここに2人も過去に飛ばすという大役を勤めた。よくやったネ。君ができることは、やり尽くしたんだ。
だから、安心して、私たちを信じて、君は未来に帰りなさい、なつみ」
なつみの口元はむにゅむにゅと動いて、瞳は駄々っ子のそれになってきた。
「帰りたくないですぅ…、ひとりで帰るなんて…。もっといたいです…」
デートでもじもじとこれを言われてしまったら、京楽でなくとも、前言撤回してお持ち帰りするところだが、今は違う。心を鬼にして、おうちに帰さなければ。すっくと立ち上がり、マユリはなつみのもとへ行き、隣に座って優しく抱き寄せた。なつみから、「ふぅぅん///」と照れくさそうな吐息が出た。
「私とて、君を帰したくはないヨ。2人いるなら、1人手元に置いておきたいくらいだからネ」どこかで聞いたぞ、そのセリフ。「だが、わかっているだろうが、君はとんでもない問題を起こしかねないんだヨ」
「(もうやっちゃいました)🥺」恐る恐る、マユリの胸にくっついた。「リスクが高くなるってことですか」
髪をふわふわと撫でる。
「2倍にネ」
「うぅぅぅ」
はっきり言われてしまった。
「君は、難しく考え過ぎてしまう癖があるネ。深刻に考えてしまう。深く熟考することは良いことだヨ。ただ、それで周りが見えなくなってしまうのは、良くないことだヨ。真実とは違う方向に思考を進めてしまえば、そこから抜け出せなくなってしまうからネ」
申し訳なさそうに、なつみの頭が動く。マユリは微笑んだ。
「そんな君の欠点を、どうしてやると良いと思うかネ?」
んーと考えて、なつみは答えた。
「落ち着いて、周りをちゃんと見るようにします」
ふんと、眉が上下に動いたのと同時に息が漏れた。不正解の合図だ。
「慌てん坊の君に、それができそうかネ?」
「うっ…」
「先程は志波に止められたから良かったものの、君ひとりでは、行くところまで行っていただろうネ。なつみは賢いから、反省はできるだろう。しかし、そうすぐに悪い癖は直せないものだヨ。今は冷静だから、気をつけられる。だが、一度混乱に陥れば、何を起こすかわからない。不確かなまま進めれば、君が望む未来には辿り着けなくなるヨ。失敗したらまた戻れば良いという選択肢もあるが、それをすれば、君とこの世界に多大な負荷がかかることだろうネ」
こう言われると、自分が悪いことをしているような気になってしまう。
「そう落ち込むことはないヨ。今のは、君が独りでどうにかしようとする場合の話だからネ」
どういうことだろうと、顔を上げるなつみ。
「1人分の考えでは狭すぎるなら、もう1人分足せば良いんだヨ。それで足りなければ、更に増やすだけのこと。君には、たくさんの協力者がいるじゃないか。無論、私もその内の1人だヨ。私は君よりも多く経験を積んでいるから、視野は格段に広げられると思うヨ。どうかネ?私は頼りにならないかネ?」
うんうんと頷く。
「頼れます。ぼくなんかよりもずっと頼りになる方です、涅隊長」
こんなに優しい表情のマユリは、なつみしか知らないだろう。
「ありがとう」ぎゅっと彼女を引き寄せた。「難しいことは、私に全て任せておしまい。君の欠点を、私が補ってあげるからネ。必ず君を幸せにするヨ」
(プロポーズかよ😑)
腕組みして壁に寄りかかる海燕を他所に、キラキラオーラの中にいる2人は身体を少し離して見つめ合った。
「安心して、お眠り、なつみ」
「…、はい///」
おやすみのキスを、マユリがなつみのおでこに落とすと、なつみの瞼がどんどん重くなっていった。力も徐々に抜けていく。
「涅隊長」
「わかっているヨ。なつみ、身体を倒すヨ」
「はぁい……」
ゆっくりとなつみを横に寝かせてやった。もう腰まで消えている。
「木之本、絶対ぇまた会えるからな。つか、会いに行くからな。未来で待ってろよ」
「はい。お先に失礼します。お2人はぼくの帰りを、…あれ、変なの。ぼくが帰るの待ってていただくんですね。あ、違いますよ、志波副隊長。ぼくは待ちませんよ。なんか、これから何時間も寝るみたいですね。寝るって、時間をスキップするみたい。ちゃんと起きれますように」
「ほらほら、難しく考えるなと言ったばかりじゃないか。おやすみ、なつみ。目を閉じ給え」
マユリが手を被せて、強制的になつみの目に暗闇を与えた。
「ふふっ、おやすみなさい、涅隊長。おやすみなさい、志波副隊長」
そっと右手の小指を海燕に差し出した。
「おう。おやすみ、木之本」
なつみに答えて、指切りをした。
「約束な」
静かになつみは未来へ帰っていった。