第六章
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クーちゃんと別れたなつみは、技術開発局へ向かって歩いていた。その少し後ろを、なつみと海燕が尾行する。
「大前田副隊長との追いかけっこが、こんなカタチで役立つなんて。ご存知ですか?大前田副隊長って、ああ見えてすっごい足速いんですよ」
「だろうな。寄り道しないで、まっすぐ行ってくれそうだぞ、あいつ」
「そうみたいですね。じゅんちょーじゅんちょー😊」
「それは良かったな〜」
「はい。良かったです、市丸隊長😊」
……ん?
(⁉️)
「市丸隊長ぉーッ💦」
建物の壁に沿って道側から、海燕、なつみ、いつの間にか市丸の順に並んでいた。
「珍しい組み合わせやね。誰つけてんのー?」
「あわわわわ💦」
なつみはなつみを見ようと首を伸ばす市丸の身体を、陰の方に押し戻す。
「見ちゃダメですー‼️」
「むぅ」
なつみがケチをするので、市丸は拗ねた。
「おい、あいつ行っちまうぞ」
「わかってます。んー💦」
ムスッとしている市丸を険しい表情で睨んで考える。
「しょうがないです。ここはぼくに任せて、志波副隊長は先に追ってください。お願いします」
「わかった。早くついてこいよ」
「はい❗️」
海燕は物陰から表へ出て行った。彼の行った道を塞ぐように、目一杯腕を広げて、なつみは市丸を通せん坊した。
「こんなことしてええと思てんの」
「日々、ぼくが何のために鍛えてると思ってるんですか!」
「ボクを通せん坊するためやないやろ💧」
「通さないったら、通さないですぅ‼️」
上も通れないように、腕を広げたまま上げ下げした。
「ふんふん‼️」
「もー」
ちょっと膝を曲げて、市丸はなつみと目線を揃えた。
「悪いことしてんのとちゃうの?後で怒られたりせぇへん?」
「しません‼️」
ふんっ、と偉そうに腕組みをしてみせる。
「ふーん」
困ったため息をひとつ。
「変な自信。怪しい」
市丸も腕組み。
「これは極秘任務です!邪魔しないでください」
「誰からの依頼や」
「……。」
「……。」
「極秘だから言えるわけないじゃないですか!偉い人です!とーっても偉い人ッ!」
なつみは、市丸が来たであろう海燕が向かったのと逆の道へ、彼を突っ張っていった。
「ツッパリ、ツッパリ‼️ドスコイ‼️」
「ボクより偉いん?」
「偉ーい‼️」
なんとか道に出た。
「市丸隊長はお仕事あるんですよね!お散歩中のおサボり中なんですよね!こんなとこにいないで、隊舎に戻ってください!」
「なつみちゃんはお休みなのに、働いてんの?」
「はいはい、バイトですよ。バイト」
「報酬は?」
「明るい未来‼️」
「……」
「世界を救うスーパーヒーローには、そのご褒美で充分なんすよ✨」
「ヒーローなぁ」
「ってことなんで、お帰りください‼️」
頑なな瞳に押されて、市丸は折れることにする。
「わかった。なつみちゃんはあかんことしてるわけやないんやな?」
「そーですっ」
「ほな、信じて放っとくわ。でも約束やで?キミと十三番副隊長さんが何しとんのか、明日教えてや」
「明日は、ちょっと💦」
「ん?」
「明日の…、夜なら!」
「何でや。朝、隊舎来たときでええやん」
「いろいろあるんです!」
約束ならばと、先手必勝でなつみから小指を取った。
「明日の夜にわかります!それまで、このことについて、誰にも何にも言わないでください!約束です!」
「あぁ!ズルいで!」
サッと手を離して、なつみは急いで来た道をとんずらした。
「残念けど、ボクは悪者やからなぁ、なつみちゃん」
ズザーッと小道から飛び出て、右折するために低い体勢でブレーキをかける。それから技術開発局方面へと駆け出す。トントンと1歩、2歩進むと、3歩目から何故か足取りが重くなった。
「……」
立ち止まる。そして勢いよく振り向いた。
「あ‼️」
なつみが飛び出して来た脇道よりも手前のところから、追い風のように、自分の存在を知らしめるように、ある男の霊圧が呑み込んできた。
「京楽隊長‼️どうして。た、隊舎に戻られたんじゃないんですか💦」
「うん。逃げてきたよ」
逃がさない。圧力を上から降らせて捕らえる。
「うぅ💦」
「『どうして』はこっちの台詞だしね、なつみちゃん」
歩み寄り、耳元に口を近づける。
「どうして、なつみちゃんが2人いるの」
なつみは動けなくなった。
(見られた…)
京楽は身体を離す。
「キミは久原くんとお店の中にいたはずなのに、七緒ちゃんはキミが木の上にいるのを見たって言うんだ」
「それは…、パパッと移動したんですよ」
「…、嘘ついてるね」
鼻がヒクヒクするということは、その合図なのである。
「どうしてボクがなつみちゃんを見つけられたと思う?」
明らかにふよふよと泳ぐ目。
「霊圧だよ。普段からキミの霊圧は、周りの人達よりも高い。でも今日は、特別高かったんだよ。それはただ、いつもより元気いっぱいなだけかと思ってた。けど違ったんだね。よくよく探ってみたら、なつみちゃんの霊圧の根源が2つ見えたよ。
この道をなつみちゃんは歩いて行ったよね。そしてそのなつみちゃんを、キミと海燕くんがつけていた。言い訳しても無駄だよ。ちゃんと見てたんだから」
ここまで知りながら、京楽に混乱は見られなかった。至って冷静だった。その様子を前に、逆に混乱したのはなつみの方だった。
(どうするんだっけ。誰かに2人いるのを知られたら、どうするって言ってたっけ。……言ってたっけ)
そう。向こうで、そのハプニングについて言っていたかと問われたら。
(言ってないよぉー😱💦)
と答えなければならない。
(何で何で!誰かにバレるなんて、すぐ思いつくことじゃん!)
何で何でと考えると、たどり着く結論があった。
(そうか。バレる=失敗なんだ。ぼ、ぼく失敗しちゃったんだーッ‼︎‼︎)
本当を言うと、理由は別のところにある。隊長たちは必ず成功すると信じて、計画を立てていたため、失敗をリカバーすることは考えていなかったのだ。なつみが今悩んでいる問題は、問題ではないのである。
しかし、当の彼女は悩み倒す。
(どうしたら良いんだよ!相手は京楽隊長。騙し通せるわけないよ。嘘もすぐバレたし。でも今本当のことを言っちゃいけない。あっちのぼくに会わせちゃいけない。これ以上くちゃくちゃにしちゃいけない。どうすれば良いのか、わかんないよー!未来から来たことを隠し通せたとしても、2人いることはもう誤魔化せない。京楽隊長のことだから、絶対総隊長に報告するはず。そうなれば、もう1人のぼくにこのことが知れる。志波副隊長を助けに行くどころじゃなくなる!どうしよう!世界がめちゃくちゃだ!このままだと志波副隊長が消えちゃう!ぼくがトチったー‼︎‼︎)
パニックに襲われ、思考回路がキューッと狭まり、悪化の一方向にしか考えが進んでいけなかった。なつみはこの世界を諦めかけてしまったのだ。
ゴゴゴゴゴ……
「何だ。地震?」
京楽は微かな地鳴りを聞いた。
なつみはというと、膝から崩れ落ち、天を仰ぎ、この世の終わりを迎えるように号泣し始めてしまった。それはまるで、クラスのお友だちみんな持っている物を、自分だけ買ってもらえなかった小学生のように。
「うわあぁぁぁーッ‼️」
「なつみちゃん⁉︎わっ⁉︎」
2人の足元が大きく揺れ始めた。だがなつみはお構い無しに泣き続ける。
「うわーあーあーッ、ごめんなさいぃーッ‼️」
京楽には、その謝罪の対象がわからなかった。だから、どう慰めて良いのかもわからない。
地震の揺れは、瀞霊廷中に及んだ。大地がストレスを発散する自然発生の地震とは違い、今回のものは異常に揺れ続けていた。スーパーのお菓子売り場通路床で、寝転がって駄々をこねる3歳児の粘りに近い。思い通りにいかない世を前に、ひと暴れしているらしい。
「まさかこれ、なつみちゃんが起こしてるの」
近くの建物が破損して、瓦礫が頭上に落ちてくるかもしれないため、京楽はなつみを抱いて庇った。
「えーーん、えーーん」
「木之本!大丈夫か⁉︎そっちで何かあったのか⁉︎」
「ふぇッ、志波副隊長」
突然彼の声が聞こえて、ちょっと泣き止んだ。しかしその姿や気配は無く、発信源は彼女の胸元であった。
「こっちのお前は地震に驚いて、地面に蹲ってるが、恐らく問題無いだろう」
スピーカーくんが一生懸命しがみついて、話しかけてくれていた。マイクくんは気を遣い、自己判断で海燕についててくれていたのだ。
「そっちの状況はわからねぇが、とりあえず落ち着いて、よく周りを見ろよ。突破口は必ずある。諦めんな」
そこで息継ぎ。
「世界はまだある。俺も、お前もまだいるだろ。お前なら何とかできっから、諦めずに前を向け。この瀞霊廷に、お前の敵はいねぇんだからよ‼︎」
ピーンと海燕の言葉がなつみの身体に響き渡った。見上げた先で、心配そうに見つめる京楽の優しい視線とぶつかる。
(敵じゃない……)
「なつみちゃん」
海燕が励ましている間に揺れは徐々に小さくなり、なつみがクスンクスンして落ち着く頃には、しんと収まっていた。
「大丈夫?」
なつみは京楽の腕の中で、涙を拭った。
「はい」
海燕のおかげで視界と思考を広げられたなつみは、この状況をどう片付けるか、決心することができた。
(ぼくは無敵になるんだった)
いつか市丸とした約束が蘇った。
「スピーカーくん、危ないから降りてね。ひとりでおうち帰れる?」
蟲はクンと頷いてなつみから離れ、まっすぐに歩いていった。
「京楽隊長、刀抜くので、動かないでいただけますか」
鞘から確固たる決意で抜き出される斬魄刀。
「……。何する気だい?」
「口封じっす」
「大前田副隊長との追いかけっこが、こんなカタチで役立つなんて。ご存知ですか?大前田副隊長って、ああ見えてすっごい足速いんですよ」
「だろうな。寄り道しないで、まっすぐ行ってくれそうだぞ、あいつ」
「そうみたいですね。じゅんちょーじゅんちょー😊」
「それは良かったな〜」
「はい。良かったです、市丸隊長😊」
……ん?
(⁉️)
「市丸隊長ぉーッ💦」
建物の壁に沿って道側から、海燕、なつみ、いつの間にか市丸の順に並んでいた。
「珍しい組み合わせやね。誰つけてんのー?」
「あわわわわ💦」
なつみはなつみを見ようと首を伸ばす市丸の身体を、陰の方に押し戻す。
「見ちゃダメですー‼️」
「むぅ」
なつみがケチをするので、市丸は拗ねた。
「おい、あいつ行っちまうぞ」
「わかってます。んー💦」
ムスッとしている市丸を険しい表情で睨んで考える。
「しょうがないです。ここはぼくに任せて、志波副隊長は先に追ってください。お願いします」
「わかった。早くついてこいよ」
「はい❗️」
海燕は物陰から表へ出て行った。彼の行った道を塞ぐように、目一杯腕を広げて、なつみは市丸を通せん坊した。
「こんなことしてええと思てんの」
「日々、ぼくが何のために鍛えてると思ってるんですか!」
「ボクを通せん坊するためやないやろ💧」
「通さないったら、通さないですぅ‼️」
上も通れないように、腕を広げたまま上げ下げした。
「ふんふん‼️」
「もー」
ちょっと膝を曲げて、市丸はなつみと目線を揃えた。
「悪いことしてんのとちゃうの?後で怒られたりせぇへん?」
「しません‼️」
ふんっ、と偉そうに腕組みをしてみせる。
「ふーん」
困ったため息をひとつ。
「変な自信。怪しい」
市丸も腕組み。
「これは極秘任務です!邪魔しないでください」
「誰からの依頼や」
「……。」
「……。」
「極秘だから言えるわけないじゃないですか!偉い人です!とーっても偉い人ッ!」
なつみは、市丸が来たであろう海燕が向かったのと逆の道へ、彼を突っ張っていった。
「ツッパリ、ツッパリ‼️ドスコイ‼️」
「ボクより偉いん?」
「偉ーい‼️」
なんとか道に出た。
「市丸隊長はお仕事あるんですよね!お散歩中のおサボり中なんですよね!こんなとこにいないで、隊舎に戻ってください!」
「なつみちゃんはお休みなのに、働いてんの?」
「はいはい、バイトですよ。バイト」
「報酬は?」
「明るい未来‼️」
「……」
「世界を救うスーパーヒーローには、そのご褒美で充分なんすよ✨」
「ヒーローなぁ」
「ってことなんで、お帰りください‼️」
頑なな瞳に押されて、市丸は折れることにする。
「わかった。なつみちゃんはあかんことしてるわけやないんやな?」
「そーですっ」
「ほな、信じて放っとくわ。でも約束やで?キミと十三番副隊長さんが何しとんのか、明日教えてや」
「明日は、ちょっと💦」
「ん?」
「明日の…、夜なら!」
「何でや。朝、隊舎来たときでええやん」
「いろいろあるんです!」
約束ならばと、先手必勝でなつみから小指を取った。
「明日の夜にわかります!それまで、このことについて、誰にも何にも言わないでください!約束です!」
「あぁ!ズルいで!」
サッと手を離して、なつみは急いで来た道をとんずらした。
「残念けど、ボクは悪者やからなぁ、なつみちゃん」
ズザーッと小道から飛び出て、右折するために低い体勢でブレーキをかける。それから技術開発局方面へと駆け出す。トントンと1歩、2歩進むと、3歩目から何故か足取りが重くなった。
「……」
立ち止まる。そして勢いよく振り向いた。
「あ‼️」
なつみが飛び出して来た脇道よりも手前のところから、追い風のように、自分の存在を知らしめるように、ある男の霊圧が呑み込んできた。
「京楽隊長‼️どうして。た、隊舎に戻られたんじゃないんですか💦」
「うん。逃げてきたよ」
逃がさない。圧力を上から降らせて捕らえる。
「うぅ💦」
「『どうして』はこっちの台詞だしね、なつみちゃん」
歩み寄り、耳元に口を近づける。
「どうして、なつみちゃんが2人いるの」
なつみは動けなくなった。
(見られた…)
京楽は身体を離す。
「キミは久原くんとお店の中にいたはずなのに、七緒ちゃんはキミが木の上にいるのを見たって言うんだ」
「それは…、パパッと移動したんですよ」
「…、嘘ついてるね」
鼻がヒクヒクするということは、その合図なのである。
「どうしてボクがなつみちゃんを見つけられたと思う?」
明らかにふよふよと泳ぐ目。
「霊圧だよ。普段からキミの霊圧は、周りの人達よりも高い。でも今日は、特別高かったんだよ。それはただ、いつもより元気いっぱいなだけかと思ってた。けど違ったんだね。よくよく探ってみたら、なつみちゃんの霊圧の根源が2つ見えたよ。
この道をなつみちゃんは歩いて行ったよね。そしてそのなつみちゃんを、キミと海燕くんがつけていた。言い訳しても無駄だよ。ちゃんと見てたんだから」
ここまで知りながら、京楽に混乱は見られなかった。至って冷静だった。その様子を前に、逆に混乱したのはなつみの方だった。
(どうするんだっけ。誰かに2人いるのを知られたら、どうするって言ってたっけ。……言ってたっけ)
そう。向こうで、そのハプニングについて言っていたかと問われたら。
(言ってないよぉー😱💦)
と答えなければならない。
(何で何で!誰かにバレるなんて、すぐ思いつくことじゃん!)
何で何でと考えると、たどり着く結論があった。
(そうか。バレる=失敗なんだ。ぼ、ぼく失敗しちゃったんだーッ‼︎‼︎)
本当を言うと、理由は別のところにある。隊長たちは必ず成功すると信じて、計画を立てていたため、失敗をリカバーすることは考えていなかったのだ。なつみが今悩んでいる問題は、問題ではないのである。
しかし、当の彼女は悩み倒す。
(どうしたら良いんだよ!相手は京楽隊長。騙し通せるわけないよ。嘘もすぐバレたし。でも今本当のことを言っちゃいけない。あっちのぼくに会わせちゃいけない。これ以上くちゃくちゃにしちゃいけない。どうすれば良いのか、わかんないよー!未来から来たことを隠し通せたとしても、2人いることはもう誤魔化せない。京楽隊長のことだから、絶対総隊長に報告するはず。そうなれば、もう1人のぼくにこのことが知れる。志波副隊長を助けに行くどころじゃなくなる!どうしよう!世界がめちゃくちゃだ!このままだと志波副隊長が消えちゃう!ぼくがトチったー‼︎‼︎)
パニックに襲われ、思考回路がキューッと狭まり、悪化の一方向にしか考えが進んでいけなかった。なつみはこの世界を諦めかけてしまったのだ。
ゴゴゴゴゴ……
「何だ。地震?」
京楽は微かな地鳴りを聞いた。
なつみはというと、膝から崩れ落ち、天を仰ぎ、この世の終わりを迎えるように号泣し始めてしまった。それはまるで、クラスのお友だちみんな持っている物を、自分だけ買ってもらえなかった小学生のように。
「うわあぁぁぁーッ‼️」
「なつみちゃん⁉︎わっ⁉︎」
2人の足元が大きく揺れ始めた。だがなつみはお構い無しに泣き続ける。
「うわーあーあーッ、ごめんなさいぃーッ‼️」
京楽には、その謝罪の対象がわからなかった。だから、どう慰めて良いのかもわからない。
地震の揺れは、瀞霊廷中に及んだ。大地がストレスを発散する自然発生の地震とは違い、今回のものは異常に揺れ続けていた。スーパーのお菓子売り場通路床で、寝転がって駄々をこねる3歳児の粘りに近い。思い通りにいかない世を前に、ひと暴れしているらしい。
「まさかこれ、なつみちゃんが起こしてるの」
近くの建物が破損して、瓦礫が頭上に落ちてくるかもしれないため、京楽はなつみを抱いて庇った。
「えーーん、えーーん」
「木之本!大丈夫か⁉︎そっちで何かあったのか⁉︎」
「ふぇッ、志波副隊長」
突然彼の声が聞こえて、ちょっと泣き止んだ。しかしその姿や気配は無く、発信源は彼女の胸元であった。
「こっちのお前は地震に驚いて、地面に蹲ってるが、恐らく問題無いだろう」
スピーカーくんが一生懸命しがみついて、話しかけてくれていた。マイクくんは気を遣い、自己判断で海燕についててくれていたのだ。
「そっちの状況はわからねぇが、とりあえず落ち着いて、よく周りを見ろよ。突破口は必ずある。諦めんな」
そこで息継ぎ。
「世界はまだある。俺も、お前もまだいるだろ。お前なら何とかできっから、諦めずに前を向け。この瀞霊廷に、お前の敵はいねぇんだからよ‼︎」
ピーンと海燕の言葉がなつみの身体に響き渡った。見上げた先で、心配そうに見つめる京楽の優しい視線とぶつかる。
(敵じゃない……)
「なつみちゃん」
海燕が励ましている間に揺れは徐々に小さくなり、なつみがクスンクスンして落ち着く頃には、しんと収まっていた。
「大丈夫?」
なつみは京楽の腕の中で、涙を拭った。
「はい」
海燕のおかげで視界と思考を広げられたなつみは、この状況をどう片付けるか、決心することができた。
(ぼくは無敵になるんだった)
いつか市丸とした約束が蘇った。
「スピーカーくん、危ないから降りてね。ひとりでおうち帰れる?」
蟲はクンと頷いてなつみから離れ、まっすぐに歩いていった。
「京楽隊長、刀抜くので、動かないでいただけますか」
鞘から確固たる決意で抜き出される斬魄刀。
「……。何する気だい?」
「口封じっす」